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新4年SAPIX入室テスト予想問題について
東京男子御三家の1校で、自由な校風に魅了された多くの男子生徒にとっての憧れの学校となっています。禁止されることはバイク登校とアルバイト、賭け事と下駄ばきくらいと言われるほどに校則が少なく、生徒が自主的に考えて生活を送るための環境となっています。
2001年から開催されている「ホーム・カミング・デイ」は、卒業生同士の親睦を深めることを目的として催され、卒業してからも交流を深める機会が設けられています。入試問題には麻布ならではの特徴が見られ、特に小問を解き進めることによってその問題の真意が理解できるといった、ひとつの授業を聴講するかのような高レベルの問題構成は、中学受験における最高水準と呼ばれることも多いです。
麻布を志望する場合は、解答できないまでも早めに問題を見ておいて、麻布では何が求められているのかをイメージしておくとよいでしょう。どの科目も記述量が多いので、考えて書いて推敲する、というサイクルの学習を徹底的に重ねておきましょう。
各大問のはじめの小問の解答で使った考え方を後半の難度の高い小問で活用するという高い応用力を求めるテストです。問題内容を正確に読解できるタイプ向きです。
難度の高い記述問題に対応するためにはテキストの読解演習だけでなく読書などで視覚的にイメージする力も鍛える必要があります。記述問題に強いタイプ向きです。
知識と読解力の両方を高いベルで求められます。時間の使い方を習得するためにも早めに過去問演習を進める必要があります。思考力型の問題に強いタイプ向きです。
あるテーマについてのリード文と資料からの出題で、時事的な話題に対する自分の考えを書かせる問題もあります。記述問題を確実に得点源にできるタイプ向きです。
2024年度は大問6題で小問が全15題の構成です。大問1が計算問題、大問2は平面図形から等積の問題、大問3は速さから流水算の問題、大問4は数字のかき込まれた正三角形が並ぶ規則性の問題、大問5は速さから周回運動の問題、大問6は規則性から数字の並びについての問題という構成でした。
全般に2024年度は図形問題が少なく、また速さ、規則性の問題の出題割合が高くなっていました。思考力を求める問題がやや例年より少なかったですが、効率的な手作業を求める問題が多く見られました。大問1以外は複数の小問で構成され、(1)から順番で解くことで、前の小問で使った解法を次の小問で応用できるといった誘導型の問題になっています。ただし、後半の小問になると難度が一気に上がるため、簡単に誘導にそって行けば解けるレベルではありません。
2024年度であれば大問5や大問6などは、前半の小問は解答方針が立てやすいながら、最後の小問になると急に難度が上がる構成になっています。普段の演習から、内容が複雑な問題に数多く取り組んで、算数ならではの読解力を身につける必要があります。また解答用紙のスペースが大きくありませんので、式や考え方の書き方を早めに練習しておくことが必須です。
ほぼ難問で構成される中、1、2問は難度の低い問題が含まれます。2024年度であれば大問1、大問2(1)、大問3、大問4(1)、大問5(1)は基本から標準的な難度でした。まずはそうした問題について、文章をしっかり読み込んで、書き出しなどをしながら確実に正解するようにしましょう。
そのうえで合格ラインを突破するポイントは、調べ上げの問題で正解を増やすことです。2024年度であれば大問4の(1)、(2)については、頭の中で処理をするのではなく、書き出しを行うことで規則性のルールが見えやすくなります。
ただ、解答の前提として平方数や三角数の解法に慣れておくことが必須となる点が麻布ならではの難しさになりますので、普段の演習から応用問題の解法を少しでも多く身につけておくようにしましょう。
書き出す量は多く、解答欄におさめることは難しいですが、最低限読み取れる書き方で、あてはまるケースをもれなく書き出せるようにしておきましょう。普段の演習から書き出しを使う問題に慣れておくことはもちろん、解答用紙を原寸大に拡大コピーして解答欄の使い方を練習しておくことも有効な対策です。
制限時間60分の中で深追いすべきでない問題を選別する必要があります。得意な算数で他科目を引っ張るくらいの得点を上げるためには、数多くの問題で正解することが必要にはなりますが、2024年度であれば最終問題にあたる大問6の(3)は無理に時間をかけると、かえってテスト全体の得点が伸びなくなります。
それよりも難度の高い他の問題で細かなミスをしていないか見直しをする時間を作る方が有効でしょう。合格ラインを突破するポイントは、速さや平面図形で多く見られる、「ひとひねり」された問題で正解を確保することです。2024年度であれば大問5の速さの問題を全問正解することになりますが、後半の小問では面積図を的確に利用することを瞬時に思い浮かべる力が求められます。
同校の「ひとひねり」はテキストの演習だけでは対応する力が養えません。難問を多く集めた問題集や、算数の難問が多い難関校の問題を解くことで、典型的な解き方から工夫を加えなくては解けない問題で頭を悩ませましょう。考えに考えて、そのうえで解説をよく読んで解法を素直に吸収することが、麻布の算数の「ひとひねり」にも対応するためには必須です力を鍛えられます。
2024年度も物語文1題の構成は変わりありません。小問は4つの語句の漢字の書き取りが1題、選択肢問題が3題、書き抜き問題が2題の他、残りの7題全てが記述問題です。記述問題には全て制限字数が付けられていません。
2024年度の物語文は、小学3年生男子の守が、母親の言いつけ通りに学級委員になってから、夏休みの林間学校を過ごすまでの様子が描かれています。クラスメイトからの人望が厚い達哉くんと自分を比べて、その「やさしさ」にどのような違いがあるのかを認識しながら、自分の気持ちに素直に生きることの大事さを知って行く過程を読み取らせるものです。麻布の出典は、等身大の人物が主人公となるものが多いですが、会社勤めの女性が主人公となったり、ロバや自転車が主人公となる年度もあったりと、その内容はバラエティに富みます。
それでも一貫して問われるのが「変化」です。2024年度の守がやさしさへの考え方を変えることで、自分らしく生きることに目覚めるように、麻布の物語文に出てくる主人公は、心情の変化や心の成長を見せるケースがほとんどです。
麻布の国語というと記述問題を中心とした各小問を解き進めることで文章の内容理解も進められ、最後の記述問題で総括的な解答が求められるという特徴がありますが、2024年度もその傾向に変わりはありませんでした。「やさしさ」について、母親にどのように指示され、それが林間学校での出来事を通じてどのように守が戸惑い、そして最後に達哉と自分の違いを認識することで、心の成長を果たす過程を、問題を解きながら理解して行く、麻布ならではの絶妙な構成となっています。
合格ラインを突破するポイントは、記述問題で高得点をとることにあります。麻布の漢字書き取りや選択肢問題は難度ガ低く、ほぼ全ての受験生が正解すると思っておいた方がよいでしょう。得点差のつく記述問題は難しいというイメージが強いですが、全てが難問なのではなく、文章の中にあるヒントを正しく構成すれば答案を作れる標準レベルの問題も含まれます。
もちろん解きやすいとは言っても、解答に使う要素が見つけやすいという意味合いで、解答の文章を仕上げるには、選んだ要素を読みやすく組み立てる文章構成力が求められます。同校の受験生レベルを考えると、この構成力が十分でないと勝負になりません。普段の演習では、わかりやすい記述答案が作れているかを厳しくチェックするようにしましょう。
2024年度の問題で麻布ならではの難しさが特に感じられたのは問11の2題の記述問題です。(1)で守の自らの表現に対する姿勢の変化を問い、その変化の理由を(2)で答えさせるものなのですが、文章のテーマとなる「やさしさ」への守の考え方の変化が、「表現に対する姿勢」の変化とどのようにつながるのかが見えづらく、解答方針が立てづらい問題でした。
「やさしさ」に考えを限定せずに文章全体を通して守が成長した過程を的確にとらえ、自分の言葉を交えて文章を構成する力が求められる難問です。麻布の高難度の記述問題に対応するには、テキストだけの演習では対策として不十分です。類推する力を養成するために読書や映画やドラマといった映像作品に触れる機会を多く持つことも、麻布の国語を攻略するうえでは必要となります。
[2024年度の出典]
真下みこと『やさしいの書き方』
2024年度は大問が4題で、小問数が全29題の構成でした。問題の種類としては、選択肢問題、記述問題、語句を答える問題、計算問題、そして図を完成させる問題と多岐にわたります。記述問題は5題ですが、図を完成させる問題が5題と多めに出されました。
大問1は動物に深度記録計や温度計、照明付きビデオカメラなどを付けて行動を分析する「バイオロギング」を素材とした問題、大問2は物質を構成する「つぶ」の結びつき方で分類する「核磁気共鳴分光法」に関する問題、大問3は電流計と流れる電流の関係、「デジタルマルチメーター」についての問題題、大問4は関東大震災から100年であることから地震に関する問題、岩石の研磨についての問題が出されました。
各大問に基本的な知識や、リード文を読み取った内容から直結して解くことができる基本問題が含まれますが、全体的には難度が非常に高いテストです。どの大問も、易しい基本問題からスタートして、徐々に難度がアップして行く構成になっています。特徴的なのは、リード文がひとつではなく、問題を解き進めて行くと新たなリード文が出て来るというくり返しが見られることです。
つまり、ひとつの大問にリード文が複数あるというかたちになっているのです。それらのリード文を読み進めるうちに、大問のテーマをより深く掘り下げられるという高い水準の形式になっています。この形式に慣れるためにも、過去問演習には早めから取り組んでおく必要があります。
また、実際に使われている科学的器具や、分析方法が題材となることが多く、2024年度でも大問1の「バイオロギング」、大問2の「核磁気共鳴分光法」、大問3の「デジタルマルチメーター」、大問4の「クリノメーター」が該当します。これらの題材について、問題内容を正確に理解したうえで、その内容がどのように題材に活用されているのかを理解する力が求められます。
合格ラインを突破するポイントは、思考力を求める計算問題、記述問題で得点を重ねることにあります。それらの難問を解答するためのヒントはリード文の中に含まれているのですが、このリード文に書かれている内容、そして「バイオロギング」などの題材と知識のつながりが容易に把握できないところに、麻布の理科の難しさがあります。
リード文は一見読みやすいのですが、問題を解くためのヒントとなる要素が見つけづらいです。理科の知識を幅広く持っていなければ、そうした要素を見逃してしまいます。知識の有る無しで、リード文の読み方が全く変わってしまうと言えます。リード文を有効に活用するためには知識を覚えるだけでなく、問題形式の演習を多く積んで、問題で求められる知識を正確に引き出す練習が不可欠となります。
毎年あるテーマに基づいた長いリード文と表やグラフなどの資料をもとにした大問1題が出されます。2024年度のテーマは「学校教育」で、大問に含まれる小問数は全13題でした。リード文は「奈良時代から鎌倉時代」、「江戸時代」、「明治時代以降」、「第2次世界大戦後」、と時代を追って、それぞれの時代における学校教育の特徴について説明がなされ、最後に「これから教育」という小見出しのもと、現代教育の課題について問題提起するかたちで完結します。例年通り、まるでひとつの授業を聴講するかのような分量と構成ですが、内容はわかりやすく、ポイント自体はつかみやすいものです。
そのリード文と資料をもとに出される問題は、記述問題が8題と圧倒的に多く、そこに語句を答えさせる問題、地図から藩校があった場所を選ばせるなどの選択肢問題が混ざります。記述問題は最終問題のみ100~120字の制限字数が付きますが、それ以外は制限字数なしで解答用紙の行に合わせて答えるタイプです。
麻布の社会というと難問揃いというイメージがありますが、基本的な選択肢問題や、リード文や資料を正確に読み取れれば容易に解答できる記述問題が含まれます。2024年度も語句を答えさせる問題の難度は低かったです。まずはそうした問題は確実に得点できるように、知識を集積し、リード文や資料の活用方法を鍛えておきましょう。
そのうえで、合格ラインを突破するポイントは、思考力を求める記述問題で得点することです。麻布の記述問題は、リード文の内容と知識を組み合わせて答える問題、資料の正確な読み取りを前提とする問題、問題文の中の表現から想起される内容をまとめる問題、そしてそれまでの内容を総まとめして答える最終問題と、様々な角度から受験生の「思考力」を徹底的に求めてきます。2024年度の問11では、制定当時の教育基本法第10条にある「国民全体」という語に着目し、GHQの原案による「日本にすむすべての人びと」の意味とは異なる「国民全体」という語に日本政府が変更したことによって生じた問題について説明させるものでした。
ここで「日本にすむすべての人びと」と「国民全体」の違いが、日本国籍を持たない人まで含めるかどうかの違いにつながるといった想起を瞬時に行う力が求められます。また最終問題は、「学校教育は人びとの価値観や考え方に影響をあたえることで、どのような社会をつくってきたか。そしてそのような人びとによってつくられた社会にはどのような問題があるか」を答えさせる問題でした。
この麻布の最終問題は、自分の考えを盛り込みやすくできているのですが、あくまでリード文、資料から読み取れる内容から解答を作成するもので、それを逸脱することまでは許されていません。それまで解いてきた内容を踏まえて解答をつくる作業は難度が高いですが、それでも過去問演習を通して解答づくりのプロセスをしっかり身につけておけば、決して手の届かないものではありません。まずは解答のつくり方に集中して練習を重ね、慣れてきたところで制限時間の使い方を練習する、という流れで過去問演習を進めるとよいでしょう。