城北中学校の傾向と対策

  • 併設大学なし
  • 高校外部募集あり
  • 男子校

志望にあたって知っておきたいこと

 約40,000㎡という東京23区内の私立中高一貫校の中では群を抜く校地面積で、2022年にリニューアルされた人工芝グラウンドは23区内最大級の大きさを誇ります。校内の設備も充実しており、理科実験室は全8室もある他、大型モニターやプロジェクターなどが整備されたアクティブラーニングのための教室「iRoom」が設置されています。

 大学進学では、2024年度卒業生で、東京大学に7名(現役5名)、東京科学大学(旧・東京工業大学)に10名(現役7名)、一橋大学に9名(全員現役)といった国公立大学での高い実績の他、早稲田大学に83名(現役58名)、慶応義塾大学に58名(現役47名)、東京理科大に140名(現役110名)、国公立医学部医学科に10名(現役8名)、私立医学部医学科に45名(現役19名)など高い実績を挙げています。

 自習室が高校2年生・3年生は平日20時まで土曜18時まで利用できる他、長期休暇中の講習や高校3年生対象の特別講座、夏休みを利用した大町山荘での9泊10日の勉強合宿など、充実した学習環境が提供されています。

 入試問題はどの科目も独特な設定や超難問は出されないものの、各科目とも出題傾向に特徴があります。算数は各小問の配点がほぼ均一ですので、前半の計算、小問集合での確実な得点が必須となる他、速さとグラフの問題、立体図形の問題の頻出度が高い傾向があります。

 国語は2017年度から、物語文読解と漢字書き取りの大問2題となり、長い物語文を素材とした記述問題中心の構成になりました。理科では配点こそ高くないものの作図問題が出され、社会は制限時間40分に対して小問数が50~55題と多く、選択肢問題に難問が多い特徴があります。

 普段の演習の成果が出やすいテストと言えますが、知識や解法の定着が曖昧のままでは解答できない問題の占める割合が圧倒的に高いため、模試やテストの見直しを通して知識を完備させる対策が不可欠となります。

 どの科目も時間配分の意識を高く持つ必要があるため、過去問演習には早めに取り組みたいところです。特に物語文1題で記述重視の国語、問題数が多く選択肢問題の難度が高い社会については、出題傾向を早期に習得するためにも、後期の本格的な過去問演習を進める前の夏休み中に1度は問題を見ておくとよいでしょう。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

 2025年第1回は大問5題で小問数が全19題の構成です。大問1は計算問題が2題、大問2が5題の小問集合、大問3が速さとグラフの問題、大問4が立体図形の問題、大問5が図形を題材とした規則性の問題でした。大問1から大問4は例年通りの問題構成で、大問5は年度によって異なりますが、2025年度は規則性の問題となりました。

 解答の形式も例年通りで、式や考え方を書かせることなく、解答のみを答えるかたちです。

 同校が公開する動画「入試分析会」によると、各大問の「合格者と不合格者の平均点の差」は、大問1が2.22点、大問2が5.88点、大問3が2.50点、大問4が6.13点、大問5が1.51点となりました。大問1の計算問題は合格者、不合格者ともに平均点が高く、逆に大問3の速さとグラフの問題、大問5の規則性の問題は、合格者、不合格者ともに平均点が低くなったと推測されます。

 大問3の速さとグラフの問題は、例年の傾向の通り、問題文を読んでグラフに自分で数値を記入することで解答方針を立てるタイプの出題でしたが、(1)から速さの逆比を利用する難度の高い問題であったため、(3)まで行き着くことができなかった受験生も多かったと推測されます。

 大問5は毎年難度が高く、解答に時間を要する問題が多く、今年度は図形の中からひし形を見つけ出す規則性の問題でしたが、(1)は比較的易しかったものの、時間内に(2)(3)まで正解するのは困難な内容でした。

 その中で大問4の立体図形の問題は、直方体の頂点どうしを糸で最短距離となるように結ぶ頻出タイプの問題でした。この中の(2)が2025年度第1回で最も平均点の差がついた問題となりましたが、展開図を自分でかいて相似を利用すれば解答方針が立つところを、思い込みで長さを求めてしまうと、正解に行き着けないタイプの問題でした。

 この大問4(2)に代表されるように、同校の算数は奇抜な設定は出されず、普段の演習で培った力が点数に結びつきやすいタイプの出題ですが、標準から応用レベルの解法パターンを確実に理解して、問題を見て思い込みで解き始めるのではなく、確かな根拠を持って解法を使いこなす方策が必須となります。

 小問数は決して多くないですが、大問2の小問集合に時間をかけ過ぎると、後半の問題で正解を取りこぼす事態を招きかねません。時間配分をしっかり意識して解答プランを立てる力も求められます。

 大問数が8題と多いため、速いペースで解き進めなければ、制限時間がとても短く感じられてしまいます。

算数が苦手な受験生

 同校の公開動画によると、2025年度第1回の配点が、大問1で14点、大問2で32点、大問3で18点、大問4で18点、大問5で18点であり、大問1の計算問題、大問2の小問集合で満点をとると46点と半分近くまで到達できる構成になっています。その上で大問3以降の1題6点の小問で少しでも点数を積み重ねれば合格ラインが見えてくるようになっています。

 それだけに合格ラインを突破するポイントは、大問1、大問2での失点を最小限にとどめることにあります。もちろん満点をとれれば言うことはないのですが、同校の大問2の小問集合には基本レベルを超えた難度の問題が含まれ、実際に「合格者と不合格者の平均点の差」では大問2が5.88点と高くなっています。

 対策として、まずはテキストの標準レベルの問題までに出てくる典型的な解法パターンを確実に習得することを必須としましょう。また、テストでも小問集合や大問の前半の問題で間違いがあった場合、式を立てるのに時間がかかった問題については、解説を熟読して、その都度解法を身につけるようにsましょう。

 その上で、頻出の速さとグラフの問題、立体図形の問題は苦手とならないように演習をくり返し、特に自分でグラフを完成させる練習は欠かさないように気をつけましょう。

 これまでの同校の算数の問題構成に大きな変化はありませんので、過去問を使って問題を解く順番、時間配分をしっかり身につけておきましょう。

算数が得意な受験生

 算数が得意で、算数で4科目の合計得点を引っ張ることを目指す場合には、、まずは大問1、大問2は満点を目指しましょう。上述の通り、大問2の中には難問も含まれますが、1題あたりの配点も大きいので、満点を目指す姿勢は崩さないように臨みましょう。

 その上で合格ラインを突破するポイントは、速さとグラフの問題、立体図形の問題での失点を最低限にとどめることにあります。これらの大問は(1)から難度が上がることがあり、また解答に時間がかかってしまうケースも多くあります。

 同校の速さとグラフの問題では、与えられたグラフに数値がすべて書き込まれておらず、自分で数値を的確にグラフに書き込み、そこから相似を含めた「比」の活用がスピーディーにできるかどうかが得点のポイントになります。

 また、図形の問題では今年度の展開図のように、自分で図をかくことが大前提となる問題が多く出されます。グラフや図をかくことで解答方針を立てるというスタンスが同校算数を攻略するうえでは不可欠となります。普段から手を休めずにグラフ、図をかく練習を欠かさないようにしましょう。

 同校の最終問題では、毎年、調べ上げや書き出しを正確に進めたうえで、問題の骨子となる法則をつかむ力が求められます。全体の時間配分の中で、最終問題の完答は容易ではありませんが、やはりここでも書き出しをともなう調べ上げを最速で進めることが必須となります。

 奇抜な設定こそありませんが、2025年度第1回の大問3のように問題を見て自分で解答手順を立てる流れをスムーズに進めることが必須となる問題が多いので、初見の問題に多く接して、解法を選び出す作業を重ねて問題対応力を高めておきましょう。

国語

 同校では2017年度から出題傾向が変わり、物語文の読解が1題と、漢字の書き取り10題の、大問2題構成となりました。2025年度第1回も大問構成は変わっていません。

 大問1の物語文は、小問数が12題で、そのうち記述問題が5題と半分近くの割合を占め、すべて字数制限(40字以内、50字以内、60字以内の3種類)がつきます。その他は、語句の意味を答えさせる問題を含む選択肢問題が6題でした。その中には、近年多くの学校で出題されるようになった、「生徒の会話文が選択肢となり、その中から解釈として正しいものを選ばせる」選択肢問題が出されました。この出題形式は、同校では近年、2019年度第1回、2021年度第2回、2024年度第1回(この回は記述問題でした)に出題されており、今後も出題される可能性が高くあります。

 物語文は、2025年度入試において最も多く出題された、『透明なルール』(佐藤いつ子)が出典となりました。自分の居場所がなくなることに強い不安を抱く中学生の女子が、クラスメイトと過ごす時間に違和感を抱く中で、ギフテッドの女子生徒の考え方に強く触発されることによって、自分の考え方、生き方を見つめ直して行く過程を描いた作品で、その中でも「同調圧力」についての新たな視点を提供する場面がメインの出題箇所となりました。

 主人公は女子ですが、等身大であり、読みづらさは感じられない内容です。ただし、文章量が多いため、文章を読み取るための時間が多くなり過ぎて記述問題を解く時間が不足しないように注意が必要です。

 ちなみに2025年度の他の回の物語文は、第2回が『八秒で跳べ』(坪田侑也)、第3回が『アルプス席の母』(早見和真)と、いずれも2025年度物語文出典の頻出度上位に入る作品でした。トレンドをつかんだ出典と言えますが、同校で出題される物語文が「読みづらさを感じさせず、それでいてテーマ、中学受験的表現において高く評価される作品」から選ばれていることがわかります。

 その点では、文章に関しては特異な出典がないため、模試や塾のテストで取り上げられるような文章を通して、しっかり読み込む練習を重ねておくことが、有効な読解対策になると言えます。

 問題における同校の国語の最大の特徴は、記述問題が占める割合の高さにあります。記述問題で問われる内容は、人物の心情、表現の真意を答えさせるもので、記述に使うポイントは見つけやすいですが、得点差がつく問題では、文章中の解答要素を選び出したうえで、自分の言葉も使って解答文を作る力も求められます。

 同校の入試分析会の動画解説で紹介された、「合格者と不合格者の平均点の差が最も開いた問題」となった大問1の問10(「透明なルール」の真意を説明させる問題)も、文中の言葉をそのまま使うのではなく、自分の言葉を適切に用いて正しく解答要素をつなぎ合わせる力が求められました。

 合格ラインを突破するポイントは、こうした記述問題で得点を重ねることにあります。同校物語文の選択肢問題は消去が進めやすく、基本から標準レベルの難度であるため、同校受験生のレベルを考えると、全体正答率は高くなると推測されます。選択肢問題で失点を防ぐことを大前提として、記述問題でどれだけ得点を重ねられるかが、テスト全体の点数に大きく影響します。

 上記の通り、記述問題で答えるべきポイントは文章中から見つけやすいですが、そのポイントを伝わりやすい文章となるように、的確につなぎ合わせる力が求められます。さらに、限られた時間内に長い文章を読み通し、そのうえで5題もの記述問題に臨むため、1題を解くために設定できる時間は限られます。普段の演習から、制限字数50字前後で読みやすく文章を構成する練習を多く重ね、必ず解答を見直して、解答要素をもれなく含められたか、伝わりやすい文章になっているかを、綿密にチェックする習慣を身につけましょう。

 テスト全体を通しての時間の使い方に慣れるため、2017年度以降の過去問に早めに取り組み、50分の時間の使い方を体感しておきましょう。そのうえで、長い物語文対策として鷗友学園女子の過去問を、記述対策として芝中や学習院女子の過去問を活用することも有効となります。

[2025年度第1回の出典]
佐藤いつ子『透明なルール』

理科

 2025年度第1回は大問が5題で、小問数が全38題の構成でした。大問1が光の進み方に関する物理分野の問題、大問2が化学反応についての化学分野の問題、大問3が消化酵素に関する生物分野の問題、そして大問4が地震についての地学分野の問題でした。大問数は年度によって4題から6題で推移していますが、2025年度第1回は4題構成でした。

 問題の種類は、選択肢問題、計算問題、語句を答える問題、作図問題、そして2024年度は出されなかった記述問題が2題出されました。記述問題は10~20字の短い文章で答えをまとめる内容となっています。

 同校の理科は独特の設定や、長いいリード文、複雑な構成の実験などは出題対象とならず、普段の演習の成果が出やすいタイプのテストと言えます。求められる知識レベルは標準的なものがほとんどであるため、選択肢問題、語句を答える問題での失点は極力避けたいところです。

 計算問題について、2025年度第1回では大問1の物理分野で1題、大問2の化学分野で2題出されていました。物理分野の問題は注意深く解かなければミスが起こりがちな、やや難しい内容でしたが、どの問題も与えられたデータをもとにすれば、算数の知識を利用して正解を得られる点で、高難度とまでは言えないレベルの問題でした。

 注意すべきは作図問題で、入試分析会の動画解説によると、合格者と不合格者の平均点で最も差が開いたのが、大問1問5の光の屈折に関する作図問題でした。この問題ではリード文の内容と、屈折の基本知識を結び付ければ作図できる問題でしたが、リード文の読み取りが足りないと、作図に思った以上に時間がかかってしまったと推測されます。

 合格ラインを突破するポイントは作図問題で高い正答率を獲得することにあります。上記の屈折に関する問題以外にも2025年度第1回ではグラフをかかせる問題も出されています。上記の通り、まずはリード文や実験内容を正確に理解して、そこにリード文には書かれていない知識を追加して、解答方針を立てることが必須となります。いずれの作図問題も「定規を使って」と指示がありますので、フリーハンドよりは作図しやすいですが、その分、正確さも求められ、また制限時間を考えると多くの時間を使えない分、スピーディーな処理が必要となりますので、普段から定規を使った作図は多く練習量を重ねておきましょう。

 分野としては物理分野、地学分野の問題が比較的難しく設定される特徴があり、特に地学分野が天体の問題となった場合に難度が高くなりますが、2025年度第1回は地震に関する問題で、正解しやすい基本レベルの問題が多く見られました。ただし、「南海トラフ地震の被害想定地域」を選ばせる問題が出されたように、時事問題の対策も必須となります。

 社会と比べると制限時間に対して問題数は多くありませんが、作図問題や計算問題のように時間がかかる問題が含まれるため、時間の使い方を習得する目的のため、過去問演習には早期に着手するように意識しましょう。

社会

 2025年度第1回は大問3題で、小問数は全50題という構成でした。問題の種類は選択肢問題、語句を答える問題で構成され、第1回は例年通り記述問題は出されていませんが、第3回では10字以内を制限字数とする記述問題が出されましたので、来年度以降、記述問題が出される可能性があるとして対策する必要があります。

 2025年度第1回の大問1は「物流2024問題」を題材とした地理分野と時事問題の複合問題、大問2は城北中のある「板橋」をテーマとした歴史分野の問題、大問3は国会や憲法、選挙に関する公民分野の問題という構成でした。配点は大問1(地理・時事)、大問2(歴史)がそれぞれ25点、大問3(公民)が20点と設定されています。

 分野別の難度では、地理・歴史分野に公民分野よりも難問が多い傾向があります。

 同校の社会の最も大きな特徴は、選択肢問題の難しさにあります。出題割合も全体の76%(50題中の38題)と高く、その中でも特に「誤っているものを選びなさい」というタイプの正誤問題において、誤った箇所がどこにあるのかを正確に見分ける難度が高く設定されています。

 例えば歴史分野での「縄文時代の生活について」(大問2問2)や、「鎌倉政府の支配の仕組み」(大問2問7)など、問題のテーマ自体はスタンダードなのですが、4つの選択肢の中にある誤りが細かい内容となっているため、一見すると正解が見つけづらくなっているのです。

 さらに40分の時間制限に対して小問数が50題と、制限時間に対して小問数が多いことも同校社会の特徴であり、記述問題がないために解き進めやすそうに見えて、上記のように選択肢問題の難度が高いため、1問をじっくりと考える時間は与えられていません。

 まずは各単元の知識について、細かな点まで正確に覚え込むことが必須となります。普段のテストや模試では、全体正答率が低い選択肢問題でも必ず解説を見直して、知識を深く固める習慣をつけておきましょう。

 さらに、グラフや表を扱う問題でも時間をかけられませんので、どの点に着目すればよいのかを都度見直すようにしてください。

 各小問の配点が1点か2点で設定されていますので、難しい問題には時間をかけずに抜かす、といった戦略が有効になります。時間配分や問題選択の練習を数多く積むために、早めに過去問演習に取り組む計画で進めましょう。

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