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思考力やひらめきよりも正確な処理能力が問われるテストです。超難問はほとんどなく、スタンダードで難度の高い問題が多いです。速さ、図形問題に強いタイプ向きです。
1992年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスに開校した共学校で、慶應義塾の中でも唯一の中高一貫校で、中等部1年生~高等部3年生を「1年生」~「6年生」と呼びます。2013年に開校した慶應義塾横浜初等部の卒業生は原則、湘南藤沢中等部に進学します。卒業生は他の慶應義塾の各高校と同様に、推薦によって慶應義塾大学の全10学部に進学することができます。
入試問題はどの科目も慶應付属校らしく深い教養が求められます。特に国語・社会の文系科目の難度が高く、社会では深い知識を圧倒的なスピードで導き出す力、国語では同校ならではの思考型記述問題を通して、自分の考えをまとめる力が求められます。
算数・理科については奇抜な設定や独自性の強い問題はないものの、解法を数多く備え、正確に問題を処理する力が求められます。典型的な問題が多いですが、手間がかかり、処理を誤ると点数が重ねられない問題構成になっています。
どのテストも制限時間が短く、どの問題から解くかといった工夫を意識した時間配分が必須です。国語は思考型記述問題に時間がかかるだけでなく、近年文章量が増加傾向にありますので制限時間の使い方への高い意識が不可欠です。理科・社会は知識の集積を早期に済ませ、過去問演習を少しでも早くスタートさせる必要があります。過去問演習のスケジュールを春先には決めて、そのために知識をどれくらいのペースで固めればよいかを考えましょう。
思考力やひらめきよりも正確な処理能力が問われるテストです。超難問はほとんどなく、スタンダードで難度の高い問題が多いです。速さ、図形問題に強いタイプ向きです。
様々な題材について100字以上を書かせる記述問題が特徴的です。読解の文章量が非常に多く、高い語彙力が求められるテストです。記述問題と知識問題に強いタイプ向きです。
基本から標準レベルの問題が多く含まれますが、制限時間が短いため、速く正確に知識をアウトプットする必要があります。生物分野の知識が豊富なタイプ向きです。
問題数が多く超高速で解く力が求められます。難度の幅が広いので、問題を解く順番がポイントになるテストです。統計資料を使った問題、時事問題に強いタイプ向きです。
2024年度は大問6題で小問が全18題の例年通りの構成でした。大問1は計算問題が2題と数の性質の小問が1題、大問2は小問集合が3題、大問3が規則性の数表問題、大問4が平面図形から回転移動の問題、大問5が立体図形から水深変化の問題、大問6がニュートン算の問題でした。
同校の算数では思考力を求める超難問は出題されず、難度にして標準からやや難の問題の割合が多いです。難度を1から5までの段階に分けるとすれば、3、4レベルの問題が多く見られます。また大問3以降の応用問題でも、各大問の(1)、場合によっては(1)(2)の難度が高くなく、解答方針が立てやすくなることがあります。
ただ、同校の受験生レベルを考えると、それらの問題は必答となります。大問1、大問2の計算・小問集合もほとんどは基本レベルの難度ですが、年度によっては高度な知識を求める問題が含まれることがあります。捨て問とするまでではありませんが、あまり時間をかけ過ぎないように注意が必要です。
上記のように、難度が圧倒的に高い超難問は出題されませんが、その分、平均点が高くなりがちですので、失点をいかに防ぐことが重要になります。
合格ラインを突破するポイントは、全体正答率が高い標準レベル以下の難度の問題で確実に正解することにあります。テスト後半の問題は、解答に手間がかかることはありますが、テキストで見たことのある典型問題に近い内容のものが多いです。2024年度の大問3では数の感覚が求められる設定がありましたが、ひらめきを求める問題は少ないので、解法をスピーディーに見つけ、解答作業に時間をかけられるような取り組みが必要です。普段の演習で最高難度以外の問題を多く演習して、解法を多く持っておくことが必須です。
速さであればグラフ、立体図形であれば断面図など、解答に必要なツールを自分でかくことが正解を多く得るために必要ですので、普段からかいて解く作業を重ねておきましょう。後半の問題でも(1)は難度が非常に低いこともありますので、テスト全体を見渡して、点数を拾い上げて行く感覚を身につけましょう。
2024年度であれば大問3、そして大問6のような、問題設定の理解、作業時間がかかる問題が含まれますので、それらを捨て問(できれば(1)だけでも解く)として、他の問題を確実に得点に結びつけるといった戦略をもって、制限時間の使い方を過去問演習を通して身につけましょう。
割合と比、速さ、図形、規則性そしてニュートン算と幅広い単元からの出題となりますが、数の論理や条件整理といった数に対するセンスを求めるような問題はあまり見られません(2024年度では大問3で数の感覚があればよりスピーディーに解ける設定が見られました)。数に対する感覚やひらめきよりも、普段の演習で鍛えた解法を駆使させる問題が多く、普段の演習の成果が反映されやすいテストと言えます。
例えば2024年度の最終問題ではニュートン算が出され、リードとなる問題文が6行、(3)だけで5行と文章が長く、一見複雑な設定でしたが、問題内容を正確に式にすれば十分に得点のチャンスが開けるものでした。
普段の演習では最高難度の問題まで手を広げる必要はありませんので、その分、応用から発展問題を確実に正解する練習を重ねて、解法を多く身につけておくようにしましょう。大問2までは全問正解、大問3以降も、すべての問題とまでいかなくても、問題を見た瞬間に解法が浮かび作業に瞬時に着手できる問題を多くしておく必要があります。
合格ラインを突破するポイントは、速さや図形の問題など、問題内容を理解するための図を駆使できるかどうかにあります。2024年度であれば、大問1(2)、大問4が該当します。その図を速く正確にかく必要がありますので、特別な練習は不要ですが、普段から図を見やすくスピーディーにかく練習をしておきましょう。
明らかな捨て問がないだけに、制限時間内でどこまで解答するかの戦略が立てづらい一面があるテストです。苦手分野はつくらないようにした上で、後半の大問の最終問題については、時間内でどこまで取り組むかの判断が必要です。時間の使い方を確認するうえで、過去問演習では常に時間を意識してください。
2024年度は大問4題で、小問数が全28題の構成でした。大問1が漢字の音読みに関する知識問題、大問2が論説文読解、大問3が物語文読解、そして最終の大問4が同校定番の思考型記述問題です。問題の種類は、大問2がすべて空所を穴埋めする問題で、一部書き抜き問題も含まれました。大問3も小問全10題のうち、書き抜き問題が3題と出題割合が高く、その他、穴埋め問題、選択肢問題、そして制限字数なしの記述問題が1題出されました。
全体の小問数は標準的ですが、問題文が長く、最終の記述問題には時間がかかりますので、制限時間45分は短く感じられるでしょう。
同校の国語の最大の特徴は、最終の記述問題の難しさです。合格ラインを突破するポイントもこの記述問題で高得点をとることです。与えられるテーマは年度によって様々で、これまでも詩を題材にしたものから、ジャンケンのルール説明、教室の設計をする際の工夫についての説明など、多岐にわたります。
2024年度は、「独立」「鉄道」「リゾートホテル」「スポーツ」「温泉」「自然」といった多種な言葉15個から「世の中をハッピーにしている」と考えられるものを3個選んで、その理由を150字以内で説明させるといった内容の出題でした。高い文章構成力が必要なことははもちろんですが、15個の言葉のうち、文章を構成しやすい3個を選ぶ視点も求められる難問でした。
同校を受験する以上、この記述問題の対策は必須ですが、テーマが多岐にわたるため、様々な題材を用いて練習する必要があります。同校の過去問はもちろんですが、例えば時事的な話題について、自分の考えを100字から150字でまとめる練習を通して、長い字数の中に自分の考えを収める感覚をつかめるようにしておきましょう。
読解問題については、まず文章の長さに注意が必要です。近年同校の文章量は増加傾向にあり、2024年度は特に物語文の文章量が多くなりました。年度によっては模試などでは見たことのないようなボリュームで出題されることもあります。長文を出題する傾向のある鴎友学園女子などの問題も使って、長い文章に慣れておくとよいでしょう。
読解の問題には複雑な心情の読み取りを求める難問は見られませんが、慶應付属校らしく、言葉についての知識を問うものが多く見られます。2024年度も穴埋め問題のかたちで、言葉の意味を問う出題がありました。普段から正確に言葉を使っているかどうかを試すような出題もあります。単に語句の知識を増やすだけでなく、様々な文章に触れて語彙を増やしておきましょう。
物語文の内容は年度によって様々ですが、2024年度は27歳の女性を主人公としていますが、クラス会の場で小学6年生の頃の思い出を回想する内容でしたので、読み取りづらさは感じられませんでした。ただし年度によっては、時代設定が古い文章が出されることもありますので、普段から幅広い内容の文章に触れておく必要があります。
最終の記述問題があるうえに、文章量が多いので、時間配分が非常に難しいテストです。とにかく早めに過去問演習に着手して、時間の感覚をつかんでください。
[2024年度の出典]
大問2:松村圭一郎『うしろめたさの人類学』
大問3:森絵都「むすびめ」(『出会いなおし』所収)
2024年度は大問が4題で、小問数が全25題の構成でした。選択肢問題の割合が高く、その他、語句を答える問題が2題、計算問題が1題、記述問題が3題出されました。記述問題はすべて制限字数(15字、15字、25字)が付きます。選択肢問題の中には「すべて答える」タイプの問題も含まれ、正確で深い知識が必要です。記述問題の難度は高くありませんが、制限時間25分は余裕が持てるものではありません。
大問1は海に住む生物に関する生物分野の問題、大問2は月をテーマとした地学分野の問題、大問3が電流回路に関する物理分野の問題、大問4が気体の性質についての化学分野の問題でした。
同校の理科は全般に難度が基本から標準レベルの問題が多い構成です。問題を見た瞬間に解答できる問題も含まれ、2024年度では、大問3の電流回路の問題で、難度の低い問題が多く見られましたが、同校の受験生レベルを考えると、それらは完全に必答問題となります。
合格ラインを突破するポイントは、細かな知識、高い思考力を求める選択肢問題で確実に得点することにあります。例えば、2024年度では生物分野の大問1で、アジが体内の塩分濃度を保つためのからだの仕組みを答えさせる問題が出され、アジの尿の排出量と塩分濃度の関係を思考する必要がありました。大問2の月に関する地学分野の問題でも、月に基地を建てる際に、赤道付近よりも南極付近にする方が良い理由を答えさせる問題で、月で太陽光エネルギーを得る場合の位置の違いを考える力が試されました。
これらの知識問題に対応するためにも、普段から分野・単元を問わず幅広く知識を集めて、ただ覚えるだけでなく、その理由や背景までに着目して、テストでは解説をよく読み込むといった対策を重ねておく必要があります。
また、2024年度では「海のエコラベル」に関する問題や、国際自然保護連合のレッドリストに選ばれている水産物を選ぶ問題といった知識問題が出さたように、時事的なニュースについても広く知識を得ておく対策が不可欠となります。
記述問題では、年度によっては思考力を求める問題もあり、また、理科の知識がなくても、与えられた条件から推察すれば解答を導き出せる、読解力があれば解ける問題が出されることもありますが、2024年度の記述問題はすべて理科の知識をフル活用すればスムーズに解答できる内容でした。ただし、制限字数が少ないため、短くポイントをまとめる記述練習を重ねておきましょう。
2024年度は計算問題が1題で、難度は高くありませんでしたが、2022年度には、浮力に関する難度の高い計算問題が出されましたので、計算問題についても応用問題まで確実に演習しておくようにしましょう。
際立った難問は出されませんが、勝負の分かれ目となるのは難度の高い応用問題ですので、慶應湘南藤沢の理科は解きやすい問題が多い、という先入観で臨むことなく、応用レベルの問題までしっかりと演習しておく意識が必要です。
2024年度は大問が7題で、小問数が全30題でした。選択肢問題、語句を答える問題、記号の並べ替え問題という構成で、記述問題は出されていません。リード文、統計資料からの出題がほとんどで、リード文が会話形式になる年度もあります。
2024年度は、大問1が新幹線と各地の産業に関する地理分野の問題、大問2が北海道をテーマとした地理分野の問題、大問3~大問5が歴史の問題で、大問3が鎌倉時代の仏教、大問4が江戸時代後期の出来事、大問5が1945年に起きた出来事に関する問題でした。大問6は少子化についての公民分野と時事の問題、そして大問7が内閣についての公民分野と時事の問題でした。
同校の社会の最大の特徴は、時間的に全く余裕がない点です。2024年度は小問数が30題でしたが、資料の読み込みなど解答に時間がかかる問題が含まれました。また、年度によっては小問数が40題近くにもなることがあり、超高速解答が求められるテストであると言えます。
ただし、記述問題はなく、また問題の中には即答できるものも多く含まれていますので、一問一答式に解答を連発できるところをスピーディーに解いて、そこで捻出できた時間を他の問題に充てるという戦略は立てられます。まずは普段の演習で基礎知識を完璧に覚え込み、一問一答式に即答する練習をしっかり積んでおきましょう。
そのうえで合格ラインを突破するポイントは、統計資料を使った思考型の問題と、細かい知識を求める問題で得点を重ねることにあります。統計資料については、2024年度の大問1で東京出発の新幹線の路線断面図が提示され、どの路線に該当するかを選ばせる問題や、大問2の問5で北海道を訪れる国別の外国人宿泊者数を示したグラフが出されました。
前者では東京と新幹線の行き先となる都市を結ぶ、日本列島の断面図を即時思い浮かべられるだけのイメージ力と地理の知識が求められ、後者では選択肢の中でオーストラリアだけだが南半球に位置することを踏まえてグラフの違いを見極める力が求められました。同校ではこのような、資料の読み取りと知識を合わせて解かせる点が特徴的ですので、普段の演習から資料問題の解き方を徹底して身につけておきましょう。
また知識問題の中では、大問1で『智恵子抄』『雪国』といった文学作品と新幹線の路線を結びつける問題が、大問2で石狩鍋の材料を選ばせる問題が、大問4江戸時代後期に生産されていない農作物を選ばせる問題が出されています。単元についての細かな知識はもちろん、他科目で学習する知識、日常生活で得られるような知識まで幅広く求められる点に、総合的な知識を求める「慶應義塾らしさ」が見られます。
時事問題では、岸田内閣の「こども未来戦略方針」を答えさせる問題といった少し前の出来事も出題対象となりますので、受験が行われる前の年に起きた出来事だけでなく、数年前まで視野を広げて知識をまとめておくようにしましょう。
限られた制限時間で問題数が多い同校の問題設定を攻略するためには、解かずに抜かす問題を作ることも必要となります。問題を解く順番も重要となりますので、そうした解き方の工夫を意識して、過去問演習に取り組みましょう。