慶應義塾湘南藤沢中等部の傾向と対策

  • 併設大学あり
  • 高校外部募集あり
  • 男女共学

志望にあたって知っておきたいこと

1992年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスに開校した共学校で、慶應義塾の中でも唯一の中高一貫校で、中等部1年生~高等部3年生を「1年生」~「6年生」と呼びます。2013年に開校した慶應義塾横浜初等部の卒業生は原則、湘南藤沢中等部に進学します。卒業生は他の慶應義塾の各高校と同様に、推薦によって慶應義塾大学の全10学部に進学することができます。入試問題はどの科目も慶應付属校らしく深い教養が求められます。特に国語・社会の文系科目の難度が高く、社会では深い知識を圧倒的なスピードで導き出す力、国語では同校ならではの思考型記述問題を通して、自分の考えをまとめる力が求められます。算数・理科については奇抜な設定や独自性の強い問題はないものの、解法を数多く備え、正確に問題を処理する力が求められます。典型的な問題が多いですが、手間がかかり、処理を誤ると点数が重ねられない問題構成になっています。また、どのテストも制限時間が短く、どの問題から解くかといった工夫を意識した時間配分が必須です。できるだけ早く過去問演習に取り組む必要があります。特に理科・社会は知識の集積を早期に済ませ、過去問演習を少しでも早くスタートさせる必要があります。過去問演習のスケジュールを春先には決めて、そのために知識をどれくらいのペースで固めればよいかを考えましょう。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2022年度は大問6題で小問が全18題の構成です。大問1は計算問題が3題、大問2は小問集合が3題、大問3が平面図形の面積の問題、大問4が規則性の数列の問題、大問5が速さと比の問題、大問6が立体図形の水深変化の問題でした。同校の算数では思考力を求める超難問は出題されず、難度にして標準からやや難の問題の割合が多いです。難度を1から5までの段階に分けるとすれば、3、4レベルの問題が多く見られます。また大問3以降の応用問題でも、各大問の(1)、場合によっては(1)(2)が非常に取り組みやすくなることがあります。ただ、同校の受験生レベルを考えると、それらの問題は必答となります。大問1の計算問題、大問2の小問集合もほとんどは基本レベルの難度ですが、2022年度であれば「中央値」のような、知識を求める問題が含まれることがあります。捨て問とするまでではありませんが、あまり時間をかけ過ぎないように注意が必要です。

算数が苦手な受験生

上記のように、難度が圧倒的に高い超難問は出題されませんが、その分、平均点が高くなりがちですので、失点をいかに防ぐことが重要になります。合格ラインを突破するポイントは、全体正答率が高い標準レベル以下の難度の問題で確実に正解することにあります。テスト後半の問題は、解答に手間がかかることはありますが、テキストで見たことのある典型問題に近い内容のものが多いです。ひらめきを求める問題も少ないので、解法をスピーディーに見つけ、解答作業に時間をかけられるような取り組みが必要です。普段の演習で最高難度以外の問題を多く演習して、解法を多く持っておくことが必須です。速さであればグラフ、立体図形であれば断面図など、解答に必要なツールを自分でかくことが正解を多く得るために必要ですので、普段からかいて解く作業を重ねておきましょう。後半の問題でも(1)は難度が非常に低いこともありますので、テスト全体を見渡して、点数を拾い上げて行く感覚を身につけましょう。作業時間がかかる問題が含まれますので、制限時間の使い方を練習する意識を高く持って、過去問演習に取り組みましょう。

算数が得意な受験生

割合と比、速さ、図形、規則性と幅広い単元からの出題となりますが、数の論理や条件整理といった数に対するセンスを求めるような問題はあまり見られません。数に対する感覚やひらめきよりも、普段の演習で鍛えた解法を駆使させる問題が多く、普段の演習の成果が反映されやすいテストと言えます。普段の演習では最高難度の問題まで手を広げる必要はありませんので、その分、応用から発展問題を確実に正解する練習を重ねて、解法を多く身につけておくようにしましょう。大問2までは全問正解、大問3以降も、すべての問題とまでいかなくても、問題を見た瞬間に解法が浮かび作業に瞬時に着手できる問題を多くしておく必要があります。合格ラインを突破するポイントは、速さや図形の問題など、問題内容を理解するための図を駆使できるかどうかにあります。その図を速く正確にかく必要がありますので、特別な練習は不要ですが、普段から図を見やすくスピーディーにかく練習をしておきましょう。明らかな捨て問がないだけに、制限時間内でどこまで解答するかの戦略が立てづらい一面があるテストです。苦手分野はつくらないようにした上で、後半の大問の最終問題については、時間内でどこまで取り組むかの判断が必要です。時間の使い方を確認するうえで、過去問演習では常に時間を意識してください。

国語

2022年度は大問4題で、小問数が全29題の構成です。大問1が語句の読み方に関する知識問題、大問2が論説文読解、大問3が物語文読解、そして最終の大問4が同校定番の思考型記述問題です。小問数は少なめに感じますが、最終の記述問題には時間がかかりますので、制限時間45分は短く感じられるでしょう。
同校の国語の最大の特徴は、最終の記述問題の難しさです。合格ラインを突破するポイントもこの記述問題で高得点をとることです。与えられるテーマは年度によって様々で、これまでも詩を題材にしたものから、ジャンケンのルール説明、教室の設計をする際の工夫についての説明など、多岐にわたります。2022年度は、オリンピックのソフトボール競技を題材に、自分が監督であったらどのように試合に臨むかというケーススタディタイプでした。字数は毎年100字以上で、2022年度は140字以内という多めの設定でした。同校を受験する以上、この記述問題の対策は必須ですが、テーマが多岐にわたるため、様々な題材を用いて練習する必要があります。同校の過去問はもちろんですが、例えば時事的な話題について、自分の考えを100字から150字でまとめる練習を通して、長い字数の中に自分の考えを収める感覚をつかめるようにしておきましょう。読解問題については、まず文章の長さに注意が必要です。2022年度は論説文・物語文ともに標準より長めといった程度でしたが、年度によっては模試などでは見たことのないようなボリュームで出題されることもあります。鴎友女子などの問題も使って、長い文章に慣れておくとよいでしょう。読解の問題には複雑な心情の読み取りを求める難問は見られませんが、慶應付属校らしく、言葉についての知識を問うものが多く見られます。普段から正確に言葉を使っているかどうかを試すような出題もあります。単に語句の知識を増やすだけでなく、様々な文章に触れて語彙を増やしておきましょう。物語文の内容も年度によって様々ですが、2022年度は幸田文の文章で少し古めの設定でした。特徴的だったのは、注釈について、文章中の言葉に印が付くという一般的なかたちではなく、ただ最後にいくつかの語句についての説明が示されるだけなのです。つまり読んでいてどの言葉の注釈が付くのかわからないという難しさがあります。この点も、時代設定が古くても注釈に頼り過ぎずにまずは読み進める姿勢を奨励する、教養重視の慶應らしさがうかがえます。
最終の記述問題があるうえに、文章量が多いので、時間配分が非常に難しいテストです。とにかく早めに過去問演習に着手して、時間の感覚をつかんでください。

[2022年度の出典]
ドリアン助川『プチ革命 言葉の森を育てよう』
幸田文『濃紺』

理科

2022年度は大問が4題で、小問数が全18題の構成でした。選択肢問題の割合が高く、その他、語句を答える問題、計算問題、記述問題が1、2問ずつ出される構成です。記述問題は2問でしたが、どちらも制限字数付きでした。選択肢問の中には「すべて答える」タイプの問題も含まれ、正確で深い知識が必要です。記述問題の難度は高くありませんが、制限時間25分は余裕が持てるものではありません。
大問1は生物の深化に関する問題、大問2が太陽光発電をテーマとした問題、大問3が浮力についての問題、大問4がドライアイスを題材とした問題でした。
同校の理科は全般に難度が基本から標準レベルの問題が多い構成です。問題を見た瞬間に解答できる問題も含まれますが、同校の受験生レベルを考えると、それらは完全に必答問題です。記述問題の中には思考力を求める問題もあります。2022年度では、太陽光パネルを北海道などの地域で設置する際の特徴的な対応について答える問題がそれに該当しましたが、「積雪」が思い浮かべれば容易に解答を作成できます。むしろ理科の知識がなくても、与えられた条件から推察すれば解答を導き出せる、読解力があれば解ける問題と言え、字数に注意すれば難度は高くありません。そんな中で、生物分野では細かな知識が求められ、しかも選択肢問題が「すべて選ぶ」タイプですので、難度が上がります。合格ラインを突破するポイントは日常生活で得られる知識を正確に蓄えておくことにあります。生物分野の知識問題はテキストで得られるものも多いですが、普段から生物の生態などに興味を持っておくと、有利に働くことがあります。また、ドライアイスの問題では、ドライアイスと二酸化炭素の関係をつかんでおけば、ほぼ秒で正解できる問題もありました。同じ慶應付属校でも普通部ほどではありませんが、やはり「身の回りの事象」を見る目は鍛えておく必要があります。また、2022年度は、浮力の問題の難度が非常に高かったです。慶應湘南藤沢の理科は取り組みやすい、という先入観で臨むことなく、応用レベルの問題までしっかりと演習しておきましょう。

社会

2022年度は大問が7題で、小問数が全41題でした。選択肢問題、語句を答える問題、記号の並べ替え問題という構成で、記述問題は出されていません。リード文、統計資料からの出題がほとんどで、リード文が会話形式になる問題もあります。制限時間25分で40題ほどの小問を解くため、1問に30秒ほどしかかけられない、超高速解答が求められるテストです。
 大問1が人口に関する地理と時事の問題、大問2がSDGsをテーマとした総合問題、大問3~大問5が歴史の問題で、大問3が縄文時代、大問4が室町時代から戦国時代、大問5が明治時代の問題でした。大問6は司法制度に関する公民分野の問題、そして大問7が戦後の日本経済についての問題でした。
 同校の社会の最大の特徴は、制限時間25分で40題近い問題を解くという、時間的に全く余裕がない点です。ただし、記述問題はなく、また問題の中には即答できるものも多く含まれていますので、一問一答式に解答を連発できるところをスピーディーに解いて、そこで捻出できた時間を他の問題に充てるという戦略は立てられます。まずは普段の演習で基礎知識を完璧に覚え込み、一問一答式に即答する練習をしっかり積んでおきましょう。そのうえで合格ラインを突破するポイントは、統計資料を使った思考型の問題と、時事問題で得点を重ねることにあります。2022年度であれば大問1の人口に関する問題の中で、日本の総人口を使った計算問題があるのですが、問題中に総人口は表示されていません。知識として総人口をおさえ、それを使って計算を進める問題なのです。別の問題でも、日本の水力発電が発電量で2位である知識を前提にする内容もあり、資料の読み取りと知識を合わせて解かせる点が特徴的です。普段の演習では資料問題の解き方を徹底して身につけておきましょう。また時事問題は、基本レベルにとどまらず、「インフォームドコンセント」の「コンセント」をカタカナで書かせるといった難問もあります。普段からニュースに敏感である姿勢を求める点は、まさに慶應付属校らしいと言えます。2022年度であれば大問1の資料問題に時間がかかり、一方で大問3~大問5は一気に解くことができます。問題を解く順番も重要となりますので、そうした解き方の工夫を意識して、過去問演習に取り組みましょう。

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