武蔵中学校の傾向と対策

  • 併設大学あり
  • 高校外部募集なし
  • 男子校

志望にあたって知っておきたいこと

 2022年に創立100周年を迎え、「世界をつなげる自調自考のエンジン」を身に付けさせることを新生・武蔵の教育のミッションとして、自調自考の精神が培われています。もとよりサイエンス教育に定評があった同校で2017年に竣工した「理科・特別教室棟」には、その伝統と理念が凝縮されていると言われます。また、中学3年生から第二外国語の授業が週2時間実施されるなど、語学教育に力が入れられています。

 入試問題はどの科目も独自色が強く、算数の問題が手書きの字体である、国語で解答スペースに枠がないといった他校にない形式が見られますが、特に同校らしさが見られるのが、理科の最終問題で出される「お土産問題」です。実物が配布され、それについて考察するというスタイルには、同校が重きを置く「自ら調べ、自ら考える」が具現化されています。

 そして国語・理科・社会で記述問題の割合が高く、算数では式や考え方を書かせるといったかたちで、表現力、論理構成力を徹底的に追求してきます。独特ではありますが、奇抜ではなく、どの科目も基本的な知識の集積を大前提としたうえで、受験生が試験会場で能動的に考え、表現することを求める学校の求める生徒像がストレートに反映されたテストです。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

 2024年度は大問4題で小問が全13題の構成です。大問1以外の全ての問題で、式や考え方を解答用紙に書くように指示されています。

 計算問題はなく、大問1が数の性質と仕事算の小問で合わせて3題、大問2が平面図形から相似の問題、大問3が速さと周期の問題、大問4が数字を使った場合の数の問題でした。2024年度は、大問4以外は難問が少なく、全体として取り組みやすいテストだったと言えます。

 同校の受験生レベルを考えると高得点での戦い(算数の合格者平均点が100点満点で74.1点)となったため、いかに失点を防ぎ、制限時間内に最終問題以外を確実に得点するかが勝負の分かれ目となりました。問題数と難度を考えると、2024年度に関しては、制限時間は短くは感じられなかったと推測されます。

算数が苦手な受験生

 2024年度については、まず大問1(1)(2)のような、見た瞬間に解きやすいと思えるような問題、大問2(1)(2)、大問3(1)(2)といった、じっくり取り組めば解答方針を立てるのに負担を感じさせない問題が出されていましたので、それらを確実に得点したうえで、他の問題で少しでも多く得点をとることが合格ラインを突破するポイントとなりました。

 これらの問題をスピーディーに正確に解くためには、テキストの標準レベルで紹介される解法を適切に使いこなすことにあります。同校の受験生レベルを考えると、これらの問題が得点される可能性は非常に高く、失点を防ぐためには、問題用紙の中に式や考え方を見やすく書き残しておくことが必須となります。大問1以外は「式や考え方」を書くように指示されていますので、普段から見やすい字で式や考え方を書き残す練習を欠かさないようにしましょう。

 同校ではひらめきや独特な解き方を求める問題が出されるケースは少ないので、過去問演習に入る前に、まずはテキストの標準問題を徹底的に解いて、解法を多く身につけておくようにしましょう。また、同校は問題が手書きであるという特徴がありますので、データベースなどで原本のかたちを入手して問題のスタイルを見慣れておきましょう。

算数が得意な受験生

 2024年度であれば、最終の大問4(2)(4)以外は、確実に得点しておきたいところです。そしてその2題のうちどちらかを得点できるように、制限時間を有効に使い切る進め方が必要となります。

 合格ラインを突破するポイントは、標準から応用レベルの問題に対して、時間をかけずに全て正解する点にあります。2024年度であれば、大問2(3)、大問3(3)(4)といった問題が該当します。どれもそれまでの小問から一気に難度が上がっていますので、問題内容を正確に理解して、式や考え方を丁寧に書いて解答方針を固める力が必要になります。その点では、同校の問題であれば、指示がなくとも「式や考え方」を書く姿勢は必要不可欠なものです。普段から手を使って解く習慣を身につけておくようにしましょう。

 武蔵の算数はこれまで、割合・速さ・平面図形・場合の数と、頻出単元がかなり限られてきました。今後もその傾向に大きな変化はないと推測されますが、夏休みまでは特に単元を特化することなく、すべての単元について、標準から応用レベルの難度の問題に正確に対応できる力を培い、過去問演習に入る前段階として、頻出単元の集中特訓を進めるとよいでしょう。

 また、同校の解答用紙に慣れるために、データベースなどで同校の手書きの問題を入手して、それを原寸大にまで拡大し(原寸サイズは過去問題集などに記載されています)解答欄に合わせた式や考え方の書き方を練習しておくといった備えも万全にしておきましょう。

国語

 2024年度は大問2題の構成で、大問1が随筆的物語文の読解、大問2が漢字の書き取り8題でした。大問1の小問数は8題という少なめの設定です。問題の種類は、大問1は言葉の意味を答えさせる選択肢問題が3題の他は全て記述問題で、どの問題も制限字数は付かず、問題の横の空欄に書き込むかたちです。

 大問1の物語文は、町の上層階級の家の子供たちが多く集まる附属小学校に通う主人公が、貧しい家に育ったことに引け目を感じながら、それをまぎらすために勉強に打ち込む姿の描写から始まります。その後、転入してきた女子生徒が、その貧しさ故に教室で嘲笑の的になる姿に胸を痛めていたものの、彼女の作文と図画の抜きん出た才能に驚き、戸惑うといった様子を描いたものでした。

 読解問題が1題ということもあり、文章量が多く、大正時代の北海道を舞台としているために、その時代ならではの設定を踏まえる必要がありましたが、読み取りづらい語彙には注釈が付いており、決して読みづらい文章ではありませんでした。

 ただ、主人公の心情の変化が、典型的な物語文のような会話文や人物の行動からではなく、全て主人公の独白から読み取る必要があった点で、細かい変化を正確に把握するには、様々な文章に触れることで培われる読解力が必要となります。

 記述問題で問われる内容もほとんど主人公の心情や様子を説明する内容でした。文章内容を正確に理解することは前提として、特に最終の2題で得点力のある記述答案を作成するには、的確に言葉をつなぎ合わせる文章構成力が求められました。同校を志望する受験生の多くが高い記述力を持っていることを考えると、解答に使う言葉を選ぶ力、それらの言葉のつなぎ合わせ方を徹底的に鍛えておく必要があります。

 合格ラインを突破するポイントとして、まずは文章内容をスムーズに理解できるように、普段から読書に慣れ、大人向けの本も含めて多くの文章に慣れておくことが必要です。そして精度の高い記述答案を作れるように、物語文、論説文、随筆文を問わず、応用レベルの記述問題にじっくりと取り組み、模範解答との照合を通して、伝わりやすい文章の作り方を鍛える対策が必須となります。

 同校の漢字書き取りには、2024年度の「命脈(メイミャク)」、「老練(ロウレン)」といった難度の高い問題が出されることがあります。また、言葉の意味も「顔色がない」といったレベルが問われます。記述対策に時間をかけ過ぎて、漢字・語句・知識の習得がおろそかにならないように気をつけましょう。

[2022年度第1回の出典]
島木健作『随筆と小品』

理科

 2024年度は例年通り大問が3題の構成で、小問数は全16題でした。大問1は選択肢問題と記述問題、大問2は選択肢問題と計算問題、記述問題がバランスよく配置され、大問3は例年通りの「お土産問題」で、すべて記述問題でした。記述問題には制限字数が付かず、解答欄に合わせて字数を調整するかたちです。

 2024年度の大問1は火山に関する地学分野からの問題、大問2は「とける」をテーマとした化学分野の問題、そして大問3の「お土産問題」は、「くり出し式容器(スティックのりやリップクリームに使われる容器)」について考察する問題でした。

 武蔵の「お土産問題」とは、試験会場で受験生に実際の物体が配布され、それを観察しながら問題に答える形式です。2024年度の「くり出し式容器」では、問1で部品の形や構造の特徴を説明させて、問2では問1の解答を踏まえて、回転軸を回したときに台が上下する仕組みについて説明させるといった問題構成となりました。スティックのりという受験生にとっても身近な物体を対象として、容器を透明にすることで観察しやすい設定としたうえで、回転運動と上下運動のつながりを考察させるといった、武蔵らしい出題でした。

 武蔵の理科と言えば、最終問題の「お土産問題」が特徴的で、実物を自分の手で加工したり動かしたりしながら記述問題を中心とした考察問題に答えるスタイルは他校では見られないものです。この問題ばかりは、テキストや他校の過去問が一切活用できませんので、同校の過去問演習を通して、どのような考え方で臨めばよいのかを確かめておきましょう。

 ただ、難しいのは最終問題ばかりではありません。2024年度であれば大問1の最初の選択肢問題が「すべて答えさせる」タイプの問題で、難度こそ高くはありませんが、慎重に取り組み過ぎると、その後の時間配分に大きく影響を及ぼすものとなるため、確実な知識をスピーディーに引き出す取り組みが大前提となるものでした。また、大問1最終の記述問題では、軽石の穴ができる仕組みを答えさせるなど、背景・理由を確実に踏まえて説明する力が高レベルで求められる内容となりました。

 合格ラインを突破するポイントは、記述問題で高い正答率を獲得することにあります。上記の選択肢問題のような難問も出されますが、やはり記述問題で正確に伝わりやすい解答を作成することが必須となります。武蔵を受験するにあたっては科目を問わず記述対策が不可欠ですが、塾のテキストでも理科の記述問題には重点的に取り組み、模範解答を参考にして、伝わりやすく要素を盛り込む練習を重ねましょう。

 全体を通すと制限時間の40分はとても短く感じられますので、過去問演習に入る前から、記述問題に制限時間をつけて解答する練習をくり返しておくとよいでしょう。また、基本姿勢として、知識の集積を目的とした勉強だけでなく、学校での実験や、身の回りで起きた出来事について、「なぜそうなるのか」という考え方を持ち続けるようにしましょう。

社会

 2024年度は日本の労働の歴史と課題に関するリード文と資料を題材とした大問1題で、小問数は全10題でした。分野としては、地理・歴史・公民分野の中では歴史分野からが6題と出題割合が高く、そこに公民分野、時事的な問題が含まれるかたちでした。2024年度は地理分野からの出題がありませんでした。

 問題の種類としては、字数制限のない記述問題が6題と、語句を答えさせる問題(地図上の地名を答えさせる問題を含む)が4題で、2024年度は選択肢問題が出題されませんでした。

 同校の社会の最大の特徴はリード文の長さです。約2000字にもわたるリード文を読み、そこから出題される問題に対応するためには、集中してリード文を読み通し、そこから重要なポイントを確実にキャッチして行く訓練が必要です。特に注意すべきは、リード文に下線がないことです。問題に該当する部分がどこに書かれているのか、自分で把握しなくてはならず、ここで思いのほか時間がかかるケースが多いので、国語の読解のように、重要と思われる箇所に線を引くといった対策が有効になります。

 合格ラインを突破するポイントは、問題の大半を占める記述問題で確実に得点を重ねることです。特に2024年度のように、語句を答えさせる問題の難度が低い場合、同校の受験生レベルを考えると、それらの問題はほぼパーフェクトに解答される可能性が高く、得点差が生まれるのは記述問題に限定されます。

 記述すべき内容自体は特段難しくはありませんが、先に触れたように、リード文のどこの部分を使って文章を作るかを決める作業が、他校よりも進めづらい点があります。制限字数もありませんので、リード文のどこを使うかを決める→内容を解答欄に合うように調整する、といった一連の記述の作業を正確に、かつスピーディーに進めることが重要になります。

 問題のほとんどはリード文と資料を的確に読み取れば正解が作り出せるのですが、2024年度最終問題の「ワーク・ライフ・バランス」に関する問題のように、時事的な話題について、解決策を自分で提案するタイプのものもあります。リード文や資料の内容だけでなく、ニュースなどから得られる情報が必要となる問題に対応するためにも、普段から時事的な内容には高い関心を持って、自分であればどう思うのか、といった意見をまとめておく必要があります。

 また、解答欄に収まる字数の中で、どこまで具体的な内容を盛り込めるのかで得点差が生まれてしまいますので、過去問演習を通して、解答欄に収める記述答案の作り方に慣れ、また模範解答を必ず確認して、どこまでの要素を盛り込む必要があったのか、徹底的に確認する対策が必要です。

 制限時間の40分は短くはありませんが、リード文の長さ、記述問題の多さを考えると、時間の使い方を十分に踏まえておく必要がありますので、時間への意識を高く持って過去問演習を進めましょう。

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