武蔵中学校の傾向と対策

  • 併設大学あり
  • 高校外部募集なし
  • 男子校

志望にあたって知っておきたいこと

2022年に創立100周年を迎え、「世界をつなげる自調自考のエンジン」を身に付けさせることを新生・武蔵の教育のミッションとして、自調自考の精神が培われています。もとよりサイエンス教育に定評があった同校で2017年に竣工した「理科・特別教室棟」には、その伝統と理念が凝縮されていると言われます。入試問題はどの科目も独自色が強く、算数の問題が手書きの字体である、国語で解答スペースに枠がないといった他校にない形式が見られますが、特に同校らしさが見られるのが、理科の最終問題で出される「お土産問題」です。実物が配布され、それについて考察するというスタイルには、同校が重きを置く「自ら調べ、自ら考える」が具現化されています。そして国語・理科・社会で記述問題の割合が高く、算数では式や考え方を書かせるといったかたちで、表現力、論理構成力を徹底的に追求してきます。独特ではありますが、奇抜ではなく、どの科目も基本的な知識の集積を大前提としたうえで、受験生が試験会場で能動的に考え、表現することを求める学校の求める生徒像がストレートに反映されたテストです。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2022年度は大問4題で小問が全11題の構成です。大問1(1)以外は全て式や考え方を解答用紙に書くように指示されます。計算問題はなく、大問1が小問集合2題、大問2が平面図形から面積比の問題、大問3が分銅を使った場合の数の問題、大問4が半円上の点の移動の問題でした。2022年度は全体を通して難問と言えるのが最終の大問4(3)のみで、その他は取り組みやすい問題が大半でした。式や考え方を書いて解答する問題がほとんどである点を踏まえても、易しいテストでした。それだけに同校の受験生レベルを考えると高得点での戦いとなるため、いかに失点を防ぎ、制限時間内に最終問題以外を確実に得点するかが勝負の分かれ目となります。問題数と難度を考えると、2022年度に関しては、制限時間は短く感じられなかったでしょう。

算数が苦手な受験生

全11題の小問の中で、例えば大問2の平面図形の問題など、肩透かしを感じてしまうような基本問題が含まれていたのが2022年度の特徴でした。こうした易しい問題が毎年度多いことはありませんが、基本問題が出された際には、それらを確実に得点するために、少し時間をかけてでも見直しをして、間違いがないような慎重な取組みが必要となります。合格ラインを突破するポイントは、テキストの標準レベルで紹介される解法を使いこなすことにあります。2022年度であれば大問4で「角速度」をスムーズに使いこなすことがその解法にあたります。先にご紹介した基本問題は全受験生が正解すると思っておくべきで、そこでの得点に上積みするには、問題に対応した解法を的確に選ぶことが必須となります。同校は問題が手書きであるという特徴がありますので、データベースなどで手書きのかたちを入手して問題のスタイルを見慣れておきましょう。

算数が得意な受験生

満点を取ることは難しいとしても、最終問題以外は得点できるように時間の使い方を意識して解答を進めましょう。2022年度に関しては難問が見られませんでしたので、速く正確に多くの得点を重ねることが必須なります。合格ラインを突破するポイントは、どれだけの時間を最終問題に残せるかにあります。大問2まではスピーディーに解き進めることは必須として、大問3の場合の数では書き出しも必要になりますので、解法をしっかり整理して、解答時間の短縮を意識しながら正解を確保しましょう。同校ではほぼ全ての問題で式や考え方の記述を求められます。普段から式や書き出しを丁寧に見やすく記す練習を積み重ねておくことも、解答時間の短縮につながります。データベースなどで同校の手書きの問題を入手して、それを原寸大にまで拡大し(原寸サイズは過去問題集などに記載されています)解答欄に合わせた式や考え方の書き方を練習しておくことも有効です。

国語

2022年度は大問3題の構成で、大問1が物語文の読解、大問2が随筆文の読解、大問3が漢字5題とことわざの穴埋め問題9題でした。大問1の小問数が9題、大問2の小問数が4題という少なめの問題数です。読解問題の種類は、大問1は書き抜き問題が2題、空欄に入る言葉を自分で考えて答える問題が2題、残り5題は全て選択肢問題です。大問2は全て記述問題となっています。文章量は、大問1は標準的ですが、大問2は短めで、問題数の少なさと合わせて考えると、60分の制限時間には余裕が感じられそうですが、問題の難度を考えると、時間の使い方への高い意識が必要になります。
大問1の物語文は、小学生の女子とその叔父(おじ)が2人で旅をする様子を描いたもので、2人の会話の掛け合いで物語が進行します。登場人物が2人だけというシンプルな構成で、読みやすそうに見えますが、小学生にとっては内容の理解が難しい世界観が展開します。ポイントは物語の内容を正確に把握していることを前提としている問題が圧倒的多数である点です。内容の細かいところまでわからなくても解けるような問題はほんの少数で、その他は文章が理解できなければ太刀打ちできないものばかりです。
大問2の随筆文も文章量は少ないのですが、随筆文ならではの抽象的名表現が満載で、一見読みやすそうですが、内容の理解には高い読解力を必要とします。その上、問題はすべて記述問題であり、文章のポイントをしっかり解答に含めなければ得点になりません。
同校の国語の問題は、豊富な語彙力と文章への慣れを求める高いレベルのテストと言えます。普段から読書に慣れ、大人向けの本も含めて多くの文章に慣れていれば、問題を難しく感じることはないでしょう。一方で文章を読むことに慣れていないと、何が書いてあるのかわからない、結果として問題が解けないという事態になりかねません。その意味で、得点差が大きく生まれるテストとも言えます。
普段の演習から、漢字・語句の演習も含め、まずは基礎的な力にもれがないように、テキストの問題演習量を多く積み重ねておくことが必須となります。そのうえで、語彙を増やし、読みづらい文章にも対応できる力を養うために、読書の時間を重視することが有効です。6年生になると本を読む時間を確保するのが難しいですが、寸暇を惜しんで文章に触れる機会を絶やさないようにしましょう。

[2022年度第1回の出典]
大問1:乗代雄介『旅する練習』
大問2:池澤夏樹『旅をした人 星野道夫の生と死』

理科

2022年度は大問が3題で、小問が全20題の構成です。大問1は全て選択肢問題、大問2は選択肢問題と語句を答える問題、記述問題がバランスよく配置され、大問3は計算問題と記述問題という構成でした。記述問題には全て制限字数が付きません。
大問1は全分野からの総合問題で、例えば「化石」や「コンデンサー」といった語句について説明した4つの選択肢の中から誤ったものを選ぶ正誤問題です。誤った選択肢の数が決まっていない(誤った選択肢がないパターンも含める)という点が、問題の難度を大きく上げています。2022年度の大問2は、生物分野から動物・植物の生態に関する問題が出されました。主にグラフをはじめとした資料を使って解く問題で、グラフを自分で完成させる問題も含まれます。大問3が同校で定番の「お土産問題」です。毎年、ある素材の実物が受験生に与えられ、そこから考察する問題が出されるのですが、2022年度のお土産は「針金」で、針金を折り曲げて起こる現象を自分で実践しながら解いて行きます。
同校の理科と言えば、最終問題の「お土産問題」が特徴的です。実物を自分の手で加工したり動かしたりしながら記述問題を中心とした考察問題に答えるスタイルは他校では見られないものです。この問題ばかりは、テキストや他校の過去問が一切活用できませんので、同校の過去問演習を通して、どのような考え方で臨めばよいのかを確かめておきましょう。
ただ、難しいのは最終問題ばかりではありません。大問1の総合問題も、幅広く正確な知識が必要とされます。大問2、大問3ともに時間がかかりますので、大問1の解答はスピーディーに進める必要があります。合格ラインを突破するポイントは、この大問1で失点を防ぐことにあります。大問2も独特の資料を読み取る力が求められる難問です。2022年度は比較的取り組みやすい問題が多かったですが、高水準の思考力を求められます。
基本姿勢として、知識の集積を目的とした勉強だけでなく、学校での実験や、身の回りで起きた出来事について、「なぜそうなるのか」という考え方を持ち続けるようにしましょう。

社会

2022年度は日本の教育制度の歴史に関するリード文と資料を題材とした大問1題で、小問数は全9題でした。分野としては、地理・歴史・公民分野の中では歴史分野からの出題割合が高く、そこに時事的な問題も含まれるかたちです。問題の種類としては、字数制限のない記述問題が5題と半数以上を占め、その他、語句(寺子屋)を答えさせる問題が1題と、地図を使った問題を含む選択肢問題が3題という構成でした。
同校の社会の最大の特徴はリード文の長さです。約2000字にもわたるリード文を読み、そこから出題される問題に対応するためには、集中してリード文を読み通し、そこから重要なポイントを確実にキャッチして行く訓練が必要です。同校のリード文には下線がないため、問題に該当する部分がどこに書かれているのか、自分で把握しなくてはなりません。ここで思いのほか時間がかかるケースが多いので、国語の読解のように、重要と思われる箇所に線を引くといった対策も有効になるでしょう。
合格ラインを突破するポイントは、問題の大半を占める記述問題で確実に得点を重ねることです。記述すべき内容自体は特段難しくはありませんが、先に触れたように、リード文のどこの部分を使って文章を作るかを決める作業が、他校よりも進めづらい点があります。制限字数もありませんので、リード文のどこを使うかを決める→内容を解答欄に合うように調整する、といった一連の記述の作業を正確に進めることが重要になります。問題の中には、時事的な話題が関わってきたり、解決策を自分で提案するタイプのものもあります。そうしたリード文や資料の内容だけでなく、ニュースなどから得られる情報が必要となる問題に対応するためにも、普段から時事的な内容には高い関心を持って、自分であればどう思うのか、といった意見をまとめておくとよいでしょう。
制限時間の40分は短くはありませんが、リード文の長さ、記述問題の多さを考えると、時間の使い方を十分に踏まえておく必要がありますので、時間への意識を高く持って過去問演習を進めましょう。

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