芝中学校の傾向と対策

  • 併設大学なし
  • 高校外部募集なし
  • 男子校

志望にあたって知っておきたいこと

浄土宗・増上寺の教育機関を源とする中高一貫の男子校です。詰襟の制服に白バッグという固いイメージがありますが、生徒の自主性を重んじる自由な校風で、高い人気を集める伝統校です。増上寺を全校生徒が参拝する「御忌参拝」、増上寺の道場で、静坐と講話の修養を実践する「宗祖日」といった宗教行事が行われます。入試問題はどの科目も制限字数に対して問題数が多く、スピーディーで正確な対応力が求められます。算数は標準から応用レベルの問題が多数揃い、日頃の演習の成果が出やすい良問が多いテストといった定評があります。国語は2015年度から漢字・知識問題以外はすべて記述問題となりました。記述対策はもちろん難解な文章を正確に読み解く語彙力も求められます。社会は長いリード文と語句指定付きの記述問題が特徴的です。どの科目にも奇抜な問題はありませんが、標準から応用レベルの問題が多く、簡単な問題が少ないことからも、数多くの問題演習を通して対応力を鍛え上げた生徒を求める学校側の意向がうかがえます。時間配分の意識を高く持つためにも過去問演習には早めに取り組みたいところです。特に全問記述の国語、そして難度の高い典型問題を並べる算数は、夏休み中に1度は問題を見ておくと、後期の本格的な過去問演習を進めるうえで有利となります。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2022年第1回は大問9題で小問数が全16題の構成です。同校の算数の特徴のひとつとして、大問数に対して小問数が少ない点があります。つまり小問集合としての大問がなく、2022年度第1回も大問1の計算問題の後、大問2から独立した問題となります。さらに各大問に含まれる小問の数が多くて2題と少ないため、大問数に対する小問数が少なくなるのです。2022年度第1回の大問1は計算問題、大問2が食塩水の濃度の問題、大問3が平面図形から相似の問題、大問4が差集め算の問題、大問5が場合の数からカード並べ替えの問題、大問6が平面図形から面積の問題、大問7がニュートン算の問題、大問8が平面図形から反射の問題、そして大問9が速さとグラフの問題でした。解答はすべて答えのみを書かせる形式で、式や考え方を書く問題はありません。広範囲からの出題となりますが、その中でも平面図形の頻出度が高いです。どの問題も典型的な内容ですが、難度としては標準以上のものが多いです。例えば速さとグラフの問題では、動く2人の距離を表したグラフというこの単元の中でも難度の高いタイプが出されています。小問数は少ないですが、大問数9題と、問題がすぐに切り替わりますので、スピーディーに解き進めなければ、制限時間がとても短く感じられてしまいます。

算数が苦手な受験生

同校の算数には設定が独特で理解しづらいものや、思考力を問う難問はありませんが、一方で基本的な易しい問題もなく、標準から応用の問題が並ぶという構成です。問題内容も「どこかで見たことのある」典型的なものがほとんどですが、どの問題も、典型的な解き方の中でもやや応用に近い出題となっています。普段の演習では、特化した対策までは必要ありませんが、テキストの応用問題まで必ず手を付けておくようにしましょう。また大問1で複雑な計算問題が出される特徴もありますので、日々の計算練習を欠かさないようにしましょう。幅広い単元の中でも平面図形が頻出ですので、合格ラインを突破するポイントは平面図形で苦手分野をつくらないことにあります。これまでは円やおうぎ形よりも多角形を題材とした問題が圧倒的に多いですが、円やおうぎ形も含め、平面図形の対策は重点的に行っておきましょう。男子校の中で安定して人気の高い学校ですので、細かな失点は何としても防ぐ必要があります。特に制限時間50分に対して大問数が多いので、スピーディーに解き進めながらも正確に計算を進めることが大前提となります。過去問演習を通して50分の使い方を習得しましょう。

算数が得意な受験生

思考力を問う難問や特異な問題はなく、日頃の演習の成果が出やすい良問の多いテストですので、算数が得意な受験生にとっては、他科目をリードするような得点を何としても出したいところです。合格ラインを突破するポイントは制限時間50分の使い方にあります。他校と比べて難問も少ない一方で簡単な問題も少ない特徴があります。標準以上のレベルの問題で、単元を問わず高得点が出せるように、まずは日頃の演習で応用問題を徹底的に解き重ね、また模試や塾のテストでは、テスト後半で最終問題以外の問題で確実に得点できているかをチェックし、正誤に関わらず解答を見直して、抜けてしまっている解法がないか、細かく確かめておきましょう。独特な問題はありませんので、塾のカリキュラムが一通り終わったところで、一度過去問を解いておくことも有効です。同校の問題の難易度レベルを確かめて、理解が足りない単元はないかをチェックしておきましょう。そして何より、同校の算数を解くための50分という時間の長さを体感することに意義があります。大問数が多いので、問題を解く順番を変えることも有効な手段になります。人気校の算数で高得点を獲得するためには、重厚な過去問演習が不可欠です。本格的な演習は9月以降にするとしても、少なくとも夏の間に問題を見て制限時間を体感しておくことが有効な対策となります。

国語

2022年度第1回は大問4題構成で、小問数が全18題の構成です。大問1が熟語の知識問題5題、大問2が漢字の書き取り5題、大問3が論説文読解で4題、大問4が物語文読解で4題、読解の合計8題はすべて記述問題です。この読解問題が全て記述という構成は2015年度からのことです。記述問題の制限字数は最も短くて25字以内、最大字数で100字以内です。
2022年度第1回の論説文は、バーチャルリアリティーが盛んになった際の「暗黙知」の重要性を説く内容、物語文は孤児院で暮らす主人公が、高校進学に関して同じ孤児院の生徒たちから嫌がらせを受けるといった内容でした。文章量はどちらも標準的ですが、2022年度第1回では論説文が極めて難解でした。テーマとなる「暗黙知」という言葉は問題対象となるため注釈なしで文脈からその内容を理解しなければならず、その他にも「グーグル」「ウィキペディア」といったネット社会では常識的な言葉ですが、小学生にとっては難度の高い言葉が頻繁に出てきます。物語文は孤児院という設定ではありますが、主人公はほぼ等身大の人物で、内容としては読みづらいものではありませんでした。ただし、年度によっては物語文も難解な内容となることがあります。
同校の国語の最大の特徴はすべて記述問題という点ですが、その問題内容は自分の意見を述べるものではなく、あくまで文章内容の理解を前提としたものです。もちろん記述解答を時間内に正確に完成させる表現力は必要ですが、合格ラインを突破するポイントはむしろ問題内容を正確に理解する読解力にあります。2022年度第1回の論説文のような難解な文章について、意味が不明な言葉があっても前後の文脈から冷静に類推するといった姿勢が不可欠になります。普段の演習でも語彙難度の高い文章に多く触れて類推する力をしっかり養っておきましょう。そうして文章内容を完全まででなくともポイントさえおさえられれば、記述解答をつくる作業自体は難しくありません。論説文であれば文章中のポイントを正確につなげ合わせること、物語文であれば心情や発言の内容を登場人物の置かれた環境を踏まえることで正解となる解答に近づくことができます。記述解答を作ることに集中し過ぎることなく、語彙を増やし、意味を類推する力をしっかりと鍛えましょう。
 
[2022年度第1回の出典]
落合陽一『働き方5.0 これからの世界をつくる仲間たちへ』
井上ひさし『四十一番の少年』「汚点(しみ)」より

理科

2022年度第1回は大問が4題で、小問数が全34題の構成でした。大問1が物理・生物・生物・地学4分野の総合問題、大問2以降が各分野からの出題です。問題の種類は、選択肢問題の割合が圧倒的に高く、その他に計算問題、記述問題、語句を答える問題、そしてグラフを作成する問題と多岐に渡る出題構成です。2022年度第1回は記述問題が2題でそのうちの1題に20字の制限字数が付きました。
2022年度第1回の大問1は海辺の生物に関して親子の会話をリード文とした総合問題、大問2が物理分野から電流回路の問題、大問3は地学分野から雲のでき方、台風に関する問題、大問4は化学分野から石灰石と塩酸の反応を題材とした化学分野の問題、大問5は生物分野から光合成、呼吸についての問題でした。
同校の理科で出される問題の知識レベルは標準的なものがほとんどです。選択肢問題で5、6個の選択肢から「2つ選ぶ」や「すべて選ぶ」といったタイプの出題がありますが、選択肢の内容は区別しやすいものです。また、難度が高く見えても解答のヒントがリード文の中に明示されている問題もありますので、リード文やグラフなどの資料を注意深く見る必要はありますが、対応しづらい特異性はありません。合格ラインを突破するポイントは計算問題で高い正答率を獲得することにあります。同校の計算問題は実験内容やグラフで提示される内容を細かく正確にとらえることを大前提としているうえに、2022年度第1回であれば大問4の問4から問6のように、解いた問題の答えをそのまま次の問題に使うケースがありますので、1問の間違いがより多くの失点につながってしまう特徴があります。普段の演習でも計算問題については重点的に対策をする必要があります。記述問題は字数も少なく、簡潔に内容をまとめれば正解できるものが多いです。グラフを作成する問題も合わせて、何が問われているのかを速く正確にまとめる練習をしておく必要がありますが、特化した練習までを求めるものではありません。このように標準レベルの問題が多いテストですが、時間配分には十分な注意が必要です。40分で解き通すには問題数が多く、計算問題で慎重な取り組みが必要な点を踏まえると、捨て問題をつくることを含め、時間配分の意識を、過去問演習を通して早期に身につけておくようにしましょう。

社会

2022年度第1回は大問4題で、小問数は全35題という構成でした。問題の種類は選択肢問題、語句を答える問題、記述問題がバランスよく出されています。
2022年度の大問1は中部地方を題材とした地理分野の問題、大問2は各時代のことがらについて問う歴史分野の問題、大問3は国際社会と裁判についての公民分野の問題、大問4は現代社会に関する総合問題という構成でした。
同校の社会にはいくつかの特徴が見られますが、特に際立つのが最後に出される記述問題です。リード文が扱うテーマについて、ポイントとなる内容を3つの指定語句を使って100字以内で答える問題です。2022年度第1回は、現実の社会がリード文で解説される「月の街」のような社会になるために必要なことを説明させる内容でした。この問題については、社会の知識よりも、リード文の内容を正確に読み取り、指定語句を正しく使って字数内にまとめる「国語の力」が求められます。その題材となるリード文は読みづらくはありませんが、字数が多くボリューム感があります。同校の問題はこの最終問題以外にもう1問(2022年度第1回は大問3)、長いリード文を使った問題が出されます。合格ラインを突破するポイントはこれらの長いリード文をスピーディーに読み通し、問題のポイントを的確に抽出することです。テスト全体の時間配分にも関わりますので、普段の演習からリード文を使った問題は重点的に練習を重ね、海城中などの長いリード文を使った問題を出す学校の過去問を類題演習として活用することも有効となります。同校の社会のもう1つ大きな特徴は、選択肢問題の構成です。ただ正解にあたる選択肢を答えさせるのではなく、正解の選択肢を正しく組み合わせたものを選ぶ形式で、解答に時間を要します。内容は標準レベルのものが多いですが、特に歴史分野については、時代の並べ替えを含め、細かい知識が必要となります。ただ知識を増やすだけでなく、関連する内容や背景まで確認する習慣を身につけておきましょう。また、「ジェンダー」や「アイヌ民族支援法」を書かせる問題や、スピーチを紹介したうえで、その発言者「マララ・ユスフザイ」を選ぶ問題など、重要な時事ニュースを扱う問題が多く出されますので、時事問題対策もぬかりなく進めておく必要があります。問題数は標準的ですが、最終の記述問題、独特な選択肢問題、そして長いリード文と時間のかかる要素が多いテストです。問題を解く順番を含め、過去問演習を通して時間の使い方を徹底的に練習しておきましょう。

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