渋谷教育学園幕張中学校の傾向と対策

  • 併設大学なし
  • 高校外部募集あり
  • 男女共学

志望にあたって知っておきたいこと

千葉県内にとどまらず1月に入試を実施する中で最難関の学校です。2023年度の大学合格実績では卒業生349名のうち東大合格者が74名(現役は59名)を含め国公立大合格者が計217名(現役155名)、医学部合格者が114名といった国内の実績だけでなく、海外の大学にも毎年進学実績を挙げていることもあって、都内御三家に合格しながらも同校への進学を選ぶ受験生が出る程の高い人気を集めています。4科目ともに思考力、深い洞察力、問題選定などの対応力そしてスピーディーに問題を解く処理能力と、あらゆる面で高い水準の力が求められます。独特な設定やひらめきを求める奇抜な問題などはなく、典型的な構成ながら豊富な知識と深い思考力が求められますので、併願する学校以外にも、男女問わず各科目の難問を出す傾向のある最難関校の入試問題を積極的に解くことが有効な対策となります。理科、社会での幅広い知識、国語物語文の古い作家の作品など、テキストの演習にとどまらず、読書を含めて貪欲に知識を求める姿勢が同校を受験する絶対条件となります。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2022年度第1回は大問5題で小問が全12題の構成でした。大問1が規則性の方陣算の問題、大問2が場合の数の問題、大問3がロウソクの長さを表したグラフ読み取りの問題、大問4が平面図形から円とおうぎ形の問題、大問5が立体図形の切断の問題でした。同校では解き方の説明をさせる問題が出されることがありますが、2022年度第1回は全て答えのみを答えさせる問題でした。ほとんどの問題が標準以上の難度の問題ですが、大問4の平面図形など、計算も複雑でなく解き方も方針も立てやすい基本問題が出されることがあります。渋谷幕張だから全ての問題が難しいと決めつけずに、冷静に見極めて基本レベルの問題は確実に正解をとるようにしましょう。その他の問題は、典型的なパターンは少なく、問題の内容を正確に把握することが難しい設定となっています。頭の中だけで処理しようとすると解き方が全く見えませんので、書き出しを使って問題の設定を解答しやすいかたちに自分で解きほぐす高い水準の対応力が求められます。

算数が苦手な受験生

2022年度第1回であれば大問4や大問1(1)のような基本から標準レベルの難度の問題を確実に得点することが合格ラインを突破するポイントになります。もちろんそれらの問題だけでは得点としては低いままなのですが、取れる問題を確実に取ることが、他の難問に臨むモチベーションを上げます。同校の算数の難問は、手数が多く、高い思考力を求める問題ばかりですので、そうした精神的な側面も重視する必要があります。難問については問題の選別が必須です。2022年度で言えば大問2の場合の数の問題や大問5の立体図形の切断の問題といった内容の理解から難しい問題については深追いしないという決断を早期に下さなければ、大問3のグラフ読取りのような、じっくり取り組めば得点のチャンスが大きく広がる問題に時間をかけられなくなります。2022年度の大問4は同校としては異例の易しさでしたが、難度のバランスが幅広い問題ですので、時間をかけるべき問題とあえて捨て問とする問題を選別することを高く意識しましょう。

算数が得意な受験生

2022年度第1回の大問3のような、標準より難度は高いものの、内容の解きほぐしさえできれば正解できる問題をスピーディーに処理することが合格ラインを突破するポイントになります。そのためには普段の演習から設定自体は独特ではないものの、内容を理解する洞察力を必要とする難問に数多く触れておく必要があります。開成や麻布、駒場東邦といった男子最難関校や、本郷や豊島岡女子といった算数の難度が高い学校の問題に早めの時期から取り組むことも有効な対策となります。それらの難問に対しては正解できたかどうかよりも、どのような切り口で問題を見て、どの解法を使えばよかったのか、といったプロセス重視の見直しを徹底してください。2022年度第1回であれば制限時間50分は妥当と言えますが、通常は時間的な余裕が全くないテストです。時間をかければ正解できる問題、手数がかかり過ぎる問題など、難度の高さにも違いがある出題をしてきますので、問題選択や、解答時間のかけ方などを過去問を使って徹底的に鍛えておくことが大前提です。

国語

2022年度第1回は大問2題で、小問が全19題の構成です。大問1が論説文の読解、大問2が物語文の読解、漢字の書き取りはそれぞれの大問に含まれます。問題の種類は記述問題が6題、選択肢問題が7題、その他、語句を答えさせる問題、そして同校の特徴のひとつである文学史の問題が出題されました。
同校の国語の最大の特徴は、問題文の難度の高さです。特に物語文は三島由紀夫や菊池寛などの古い文章が使われるなど、読み取りが非常に困難な文章が出されます。2022年度は新刊からの出典でしたが、平野啓一郎という大人でも読みづらい独特の言葉まわしで文章をつづる作家の作品で、母親を亡くした主人公がAIで母親を蘇らせるという近未来の設定でした。本作品は全体として小学生が読むには相応しくないと思われる大人向けの描写を含みますが、その冒頭の部分がピックアップされていました。一方の論説文は物語文よりは読みやすいことが多く、2022年度は例年以上に読みやすい内容でした。それでも中学受験全般で考えれば難度は高く、大人向けの文章に読み慣れていないと、読み取りに時間がかかってしまいます。合格ラインを突破するポイントは、こうした難度の高い文章に読み慣れておくことにあります。大人向けの作品を通読し続ける時間はありませんが、少し古い(大正から昭和期)作家の作品の中から、自分にとって接しやすい世界観のものを選んで、その一部でも読む時間を何とか設けたいところです。また、他校の過去問から同じような難度の高い文章に触れることも有効になります。古い文章であれば一時期の攻玉社が挙がりますが、攻玉社の文章の読みづらさと渋谷幕張の文章の難解さは異なりますので、フェリス女学院の文章などを活用するとよいでしょう。
問題では選択肢問題の難度が特に高いです。選択肢問題の中にも、2022年度であれば大問1で出された数問のように、簡単に解けるものもあります。ポイントは選択肢の文章が長い問題です。通常は選択肢の文章が長い方が消去の材料が見つけやすくなるのですが、同校では長いうえに区別がしづらいという苦行のような問題が出されます。長い文章の選択肢に慣れるためには、聖光学院中や豊島岡女子中の問題で練習することも有効です。他校では出題頻度の低い文学史が同校では頻出となります。資料集などで、特に近現代の文学史は徹底的に固めておきましょう。

[2022年度第1回の出典]
大問1:桑原武夫『ものいいについて』
大問2:平野啓一郎『本心』

理科

2022年度第1次は大問数が4題で小問が全23題の構成です。問題の種類は選択肢問題、記述問題、語句を答えさせる問題、そして計算問題、さらには作図問題やグラフを書く問題まで含まれ、あらゆる角度から理解度が試されます。問題の形式はリード文を使ったものが多いですが、このリード文が難解で、理科の知識を十分に備えておくことははもちろん、読解力、文章を最後まで読み切る集中力が必要となります。
大問1はポップコーンの作り方を題材とした化学分野と生物分野の問題、大問2は新型コロナウィルスについての生物分野の問題、大問3は星の色と明るさについての地学分野の問題、大問4は音の速さを扱った物理分野の問題でした。
同校の理科の問題は、理科の知識をただ答えるのではなく、問題の内容に合わせて知識を柔軟に組み合わせて、解答を作らせる応用度の高い内容ばかりが出されます。単に知識を数多く積み上げても、リード文や与えられた資料を読み解き活用する力がなければ、手も足も出ないテストと考えておいた方がよいでしょう。特に2022年度であれば大問2の新型コロナウィルスについての問題で見られたような、大問の中に「ストーリー」があり、小問を解き進める中で次の問題を解くポイントが見つかるような高度な誘導が見られる点も大きな特徴です。合格ラインを突破するポイントは、こうしたリード文を使った問題で時間をかけ過ぎずに正解を得ることにあります。同校のリード文を読み解き解答のヒントを見つけるには、普段のテキストでの演習や公開模試の問題だけでは足りません。同じような高度な構成で難度の高い問題を出す学校の過去問を使うことが有効になります。特に、麻布中の問題は、傾向が同じとまでは言えませんが、リード文を使った問題としては最高峰のレベルですので、活用する価値が高いです。麻布の問題を使う際には、制限時間は意識せずに、じっくりと取り組み、解説をよく読んで、リード文を攻略するポイントを得るようにしましょう。また、ブルーバックスなどの本を読んで、「理科的な文章」に触れることも対策のひとつになります。計算問題も難度が高いので、普段の演習では最難関校の理科の計算問題を多く取り入れて、与えられたデータのどこを使えば正解が得られるのか、そのプロセスを吸収する時間を持つようにしましょう。制限時間の75分は全く余裕がありませんので、過去問演習で時間の感覚をつかんでおくことも必須です。

社会

2022年度第1次は大問3題で小問が全34題の構成です。問題の種類は記述問題が9題と多く、その他が選択肢問題と語句を答えさせる問題となり、記述問題が多いこと以外はスタンダードな形式に見えますが、同校の選択肢問題は独特で非常に難しいことを踏まえておく必要があります。2022年度であれば大問1で出される正誤問題、大問2、大問3で散見される正しい選択肢の組合せを選ばせる問題は、同校ならではの特徴的な出題形式で、細かな知識を深く切り込んでくるうえに、複数の内容を合わせ読まなければならず、ただ正しい選択肢を選ぶ場合と比べて倍以上の負担が感じられます。記述問題には制限時間が付くものとそうでないものがありますが、いずれにしても思考力を求めるものがほとんどです。
大問1は銀行をテーマにした総合問題で、公民分野を中心に時事的な問題も含まれました。大問2は「童(わらわ)」を題材とした歴史分野からの問題、大問3が「平年値」「和食」などいくつかのテーマについての地理分野の問題でした。どの大問にもリード文が与えられますが、大問1の銀行のような中学受験生にとって馴染みの薄い内容になると、読み進めるだけでも難しくなります。また絵図などの歴史的な資料も多く使われます。
同校の社会で求められる知識は、普段演習するテキストの内容に収まるものではなく、普段の生活から時事的なニュースをはじめ、幅広い視野で知識を積み重ねておく必要があります。合格ラインを突破するポイントも、幅広く深く知識を集積することとなります。例えば大問1で金利の高低を穴埋めさせる問題が出されましたが、リード文の内容をよく読み込めば、知識がなくとも答えを出すことはできるのですが、金利についての知識があれば即答が可能で、結果として他の難問に使う時間を捻出できるのです。中学受験生が金利について詳しく知る必要があるのか、と疑問に感じられるかもしれませんが、円高円安にからめて金利がニュースで取り上げられることが多いことを考えると、知り得るチャンスはあると言えます。同校の社会では、このような社会の知識に関連する日常のニュースで得られる知識のうち、中学受験生が知るべきギリギリの線を細かく突いてきます。また、絵図から推理して答えさせるなど、その場での対応力を求める問題も出されます。普段の演習で社会の知識を積み上げることはもちろんのこと、それに関連する知識まで広げて、それを深く掘り下げて覚え、さらには柔軟に対応するという高難度の解答力を求めるのが、渋谷幕張の社会なのです。

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