青山学院中等部の傾向と対策

  • 併設大学あり
  • 高校外部募集あり
  • 男女共学

志望にあたって知っておきたいこと

 東京都内共学校の中で高い人気を持ち続ける大学附属校です。キリスト教の精神を重んじた教育が実践されていますが、自由な校風で在校生たちがのびのびと学校生活を送っている点が大きな魅力です。

 放課後に青山学院大学に通う卒業生たちが勉強のサポートをしてくれる「スタディルーム」が設置され、ランチタイムには海外からの留学生たちと触れ合う機会も設けてられるといった、大学に隣接するという立地が活かされ、大学生活を具体的にイメージし、国際的な視点を養う体制が整えられています。

 入試問題はどの科目も制限時間に対してボリュームがあり、スピーディーかつ正確に問題を処理する力が求められます。算数での図形の折り曲げや国語の詩の読解、社会の世界に関する問題など、同校ならではの問題もありますが、出題される範囲が幅広いので、どの科目も苦手分野を作らないことが必須です。問題数が多いだけでなく、難度の高い問題が含まれますので、問題の取捨選択、時間の配分の方法を練習するためにも、早めに過去問演習に取り組みましょう。

 なお、◆科目別学習対策でご紹介する「差がついた問題(合格者平均点と不合格者平均点の差が大きかった問題)」は、2024年4月22日に実施された塾対象説明会で発表されたものです。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

 2024年度は大問14題で小問が全18題の構成でした。同校では計算問題や小問集合も独立した大問として出され、最後の大問2題のみが小問構を含み、大問が小問3題、大問14が小問2題の構成となっているため、大問の数と小問の数に大きな違いがありません。

 大問1、大問2が還元算を含む計算問題、大問3が割合と比の問題、大問4が消去算、大問5がつるかめ算の応用問題、大問6がニュートン算の問題、大問7が平均算、大問8が速さと比の問題、大問9が平均算の応用問題、大問10が水深変化の問題、大問11が平面図形から折り曲げの問題、大問12が平面図形の面積の問題、大問13が条件整理の問題、そして最終大問14が水深変化の応用問題という構成でした。

 この中で「差がついた問題(合格者平均点と不合格者平均点の差が大きかった問題)」として挙げられたのは、大問4、大問7、大問10、、大問13(2)です。

 同校の算数は独特な内容の難問は出されませんが、計算問題と難度の低い1、2問以外は、全ては標準レベル以上の難度です。ひらめきを求めるような問題はなく、難問ぞろいながら普段の演習の成果が出やすいテストとなります。また、問題の種類が多岐にわたるため、時間の使い方が難しく、解き切る集中力も必要となります。平面図形を折り曲げる問題や平均算などは出題頻度が高いので、過去問演習を通して解き方を盤石としておく必要があります。

 解答は答えのみで、式や考え方を記述する問題は出されません。計算問題を含め、計算自体は複雑ではありませんので、問題内容を正確に把握して、習得してきたどの解法パターンを使えばよいのか、組み合わせればよいのかを思いつくようにしておくことが重要です。

算数が苦手な受験生

 同校の算数は上述の通り、標準レベル以上の難度の問題がずらりと並ぶ構成です。まず問題量が多いので、制限時間50分の使い方について過去問演習を通して固めておきましょう。最初の計算問題は見直ししなくても正解できるように計算練習を徹底的に重ねておくことが必須です。

 そのうえで合格ラインを突破するポイントは、難問を深追いせず、取るべき問題に時間をかけて正確に解くという戦術を実践することにあります。ただし、2024年度の問題構成を見ても、基本から標準レベルの問題をすべて正解したとしても、合格ラインには達しません。大問4から大問11の問題で正解を重ねることが必須となります。

 まずは頻出分野である平均算(2024年度の大問7、大問9)、折り曲げの問題(2024年度の大問11)については重点的に演習しながらも、幅広い単元から出題されますので、苦手分野をつくらないように普段の演習を進めておきましょう。

 同校の最終の2、3題(2024年度では大問12から大問14)は難度が大きく上がりますので、それまでに正解を重ねる方針になりますが、中盤の問題にも難問が含まれますので、そうした問題は抜かして、最終2題の(1)をとる、といった戦略も必要になります。

算数が得意な受験生

 算数が得意であれば、制限時間50分の中で全問に目を通せるような時間の使い方ができるように、スピーディーに解答する練習を重ねておきましょう。また、上記でも触れました、平均算、図形の折り曲げといった同校頻出の問題は全体正答率も上がる可能性がありますので、確実に正解できるように単元練習を徹底しましょう。

 そのうえで合格ラインを突破するポイントは、速さや平面図形、条件整理の難問で得点を重なることにあります。同校の速さの問題は、場合分けやグラフの活用など、自分で書き出しをすることで解答の方針を固めさせる難問が多いです。2024年度でも最終の大問14は水深変化の問題でしたが、解き方は速さと同じようにグラフをかいて問題内容を整理する解法が求められました。

 同校の算数は難問ぞろいと言っても奇抜な問題はなく、普段の演習で培った解法で対応できる範囲の難度の高さです。そのため、普段の演習では、テキストで応用から発展問題とされているレベルまで確実に着手し、解法を少しでも増やしておきましょう。

 算数が得意な受験生にとっても、50分で「全問題を解き切る」のは困難ですので、問題の取捨選択をスムーズにすることを目標に、時間配分を意識した過去問演習を早めに始められるように計画を立てておく必要があります。

国語

 同校の国語は、ボリュームの多いテストの代表格と言えます。2024年度は大問5題で、小問数が36題でした。問題数も多いですが、詩以外の文章が長くなることが多く、2024年度は大問4、大問5の文章量が多くなりました。大問1が漢字の書き取り、大問2が詩の読解、大問3が論説文読解、大問4も論説文読解、最後の大問5が物語文読解でした。最近では出題する学校が限られる詩の読解を毎年度出すところも青山学院中等部の大きな特徴です。

 問題の種類は選択肢問題と書き抜き問題がほとんどで、記述問題は物語文の最終問題で1題出されたのみでした。漢字の書き取りは6題で、ほとんどが基本から標準レベルですが、毎年度1題は難度の高い問題が含まれ(2024年度では「肥大」)、この1題が2024年度の「差がついた問題(合格者平均点と不合格者平均点の差が大きかった問題)」のひとつとなりました。

 問題の特徴として、詩を含めて、文章の内容を要約した文章の穴埋めをさせるタイプの出題がある点が挙げられます。そのほとんどは書き抜きですが、中には自分で言葉を考えて答える問題もあります。漢字以外の2024年度の問題で「差がついた問題(合格者平均点と不合格者平均点の差が大きかった問題)」とされたのが、大問3(4)、大問5(2)と、いずれも書き抜き問題でした。これらの問題を得点できると有利なことは確かなのですが、制限時間を考えると、難しい書き抜き問題は深追いせずに抜かすという判断が必要になります。

 同校では物語文の文章量が多い傾向がありますが、2024年度では論説文の分量も多くなりました。2024年度の論説文の難度は標準レベルでしたが、年度によっては随想的な内容など、抽象的な論説が延々と続くケースもあります。合格ラインを突破するポイントは、論説文の内容を速く正確に読み取ることにあります。文章中の語彙レベルも標準以上ですが、難解な内容ではなく、問題はスタンダードなものが多いです。普段の演習の成果が出やすい問題ですので、見直しではどのようなプロセスで解答に行き着いてのかまで確認しておくようにしましょう。

 物語文は、分量は多いものの内容としては等身大の人物を主人公としたものがほとんどですが、2023年度の母親を亡くした成人女性の話のように、難度が上がるケースもありますので、幅広く多くの種類の物語文を解く練習を重ねておく必要があります。

 読解問題が3題(詩を除いて)になりますので、文章の読み込みに多くの時間をあてられません。いきなり制限時間を設定する必要はありませんが、時間を意識した長文の読み込みを重ねることが同校の読解対策としては不可欠になります。また、詩の演習は塾の通常のカリキュラムでは不足しがちです。詩が苦手にはならないように、詩の演習を継続して取り入れるようにしましょう。

[2024年度の出典]
山崎るり子『地球の上でめだまやき』
市橋伯一『増えるものたちの進化生物学』
真山仁『“正しい”を疑え!』
如月かずさ『給食アンサンブル2』

理科

 2024年度は例年通り、大問が5題で、小問数が例年通り全25題の構成でした。50点満点であることから、1問2点の均等配点の可能性もあります。問題の種類は、選択肢問題が中心で、そこに計算問題と語句を答える問題が混ざり、記述問題は出されていません。

 大問1は例年通り各分野からの小問集合、大問2が昆虫の分類についての生物分野の問題、大問3が地学分野から地層と岩石に関する問題、大問4が化学分野からものの溶け方に関する問題、大問5が手回し発電機を題材とした物理分野の問題でした。

 同校の理科で求められる知識は標準レベルのものが多いですが、年度によっては時事的な知識や、テキストに載っていないような知識も含まれます(2024年度には含まれませんでした)。大問ごとに難度の幅が広く、前半には基本から標準レベルの問題が多い構成で、後半になるに連れて徐々に難度が上がり、思考力を求める問題も含まれてきます。

 2024年度では大問3の地学分野の問題でのボーリング調査、大問5の手回し発電機を導線と同じに扱うといった設定が複雑で、問題の難度を上げていました。「差がついた問題(合格者平均点と不合格者平均点の差が大きかった問題)」は、大問1(4)の音の計算問題、大問1(5)のノーベル賞のもととなったノーベルが発明した「ダイナマイト」を答えさせる問題、大問3(3)の地層の傾きについての問題、大問5(3)の手回し発電機の光量を求める問題でした。

 合格ラインを突破するポイントは、思考力を求める問題、複雑な設定を読み取る力を求める問題で多く得点することにあります。一問一答式に集積した知識だけでは高得点を取ることはできません。習得した知識を正確にアウトプットできるように、様々なタイプの問題を解いておくようにしましょう。

 計算問題では、2023年度の化学分野の問題のように、実験の内容さえ把握できれば計算自体は複雑ではありません。いかに問題内容を正確につかむかが重要となるため、普段の演習でも計算問題は解答のプロセスまで確認しておきましょう。また、出題される単元が幅広いため、苦手分野がないようにしておくことが必須です。

 制限時間25分に対して小問数が25題の構成は、厳しい時間設定ではないように見えますが、問題内容を把握するのにかかる時間を考慮すると、解答時間には全く余裕がありません。スピーディーに問題を処理することが必須でありながら、選択肢が紛らわしい問題や思考力を求める問題が多く含まれますので、焦ってミスをすると雪崩式に失点が重なってしまいます。過去問演習を進める際には必ず制限時間を設定し、時間内に解けなかった問題をマークしておくといった方法で、25分内に解答時間を収める練習に早めに着手しましょう。

社会

 2024年度は大問7題で小問数が全31題の構成でした。歴史・地理・公民分野全てから出題となりますが、歴史分野からの出題が比較的多かったです。制限時間25分で小問数が31題と、問題が次々へと立て続けに出てくるような印象を受けます。問題の種類はほとんどが選択肢問題で、そこに語句を答えさせる問題が一部混ざるかたちで、2024年度も記述問題は出題されませんでした。

 大問1は琵琶湖周辺を題材とした地理分野の問題、大問2は近畿地方について地理分野の問題、大問3は京都をテーマとした歴史分野と時事の問題、大問4は「百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)」を題材とした歴史分野の問題、大問5が明治維新についての歴史分野の問題、そして大問6が表参道にある石碑を題材とした歴史分野の問題、大問7が少子化と人口に関する問題でした。

 深い思考力を求める問題は少なく、基本知識を活用することで解ける問題が多いですが、出題される単元の範囲が広く、2024年度であれば、「インバウンド」「オーバーツーリズム」とった時事的な語句を答えさせる問題、京野菜ではないものを選ばせる問題や、日本の三大美林などが出題対象となりました。普段の演習でも苦手分野や知識のもれを作らないようにしながら、話題になったニュースの重要語もおさえておく必要があります。

 歴史分野では細かい知識が問われることが多く、「差がついた問題(合格者平均点と不合格者平均点の差が大きかった問題)」では、大問6(1)①、大問4(1)②といった歴史的出来事を並び替える問題、大問3(2)の平安京の位置に関する問題、大問6(2)の昭和20年の出来事の正誤問題と、歴史分野の問題ばかりが挙がりました。歴史分野の学習では年表を使う習慣を身につけておきましょう。

 合格ラインを突破するポイントは、上記の歴史分野の知識を正しく集積しておくことと、資料を使った問題で正解を重ねることにあります。特に同校では地図を使った問題が多く出題されます。説明する場所を地図から選ばせるといったパターンの問題が多いので、普段から地図を手元に置いて主要都道府県、都市の位置を確認するといった演習も重ねておきましょう。

 また、同校の特徴のひとつとして、世界に関する問題が出されます。2024年度はインドの現首相の名前を書かせる問題、インドがIT業界で発展した理由についての問題が出されました。時事的なニュースについては該当する国だけでなく、関連する国々の位置を地図で確かめる習慣を身につけておく必要があります。
 
 深く考えさせる思考力型の問題は少なく、リード文も短いので、4科目の中では比較的制限時間を使いやすいですが、資料の読み取りなどにかかる時間を考慮する必要がありますので、時間感覚を養うためにも過去問演習には早めに着手しましょう。

ページのトップへ