栄光学園中学校の傾向と対策

  • 併設大学なし
  • 高校外部募集なし
  • 男子校

志望にあたって知っておきたいこと

神奈川男子御三家の1校で、開放的なキャンパスは、見学に訪れた受験生、親御さんが瞬時に魅了されると高く評価されています。卒業生の3人に1人前後が毎年東大に進学するなど、高い合格実績を維持しています。4科目それぞれが特徴的な内容ですが、すべて高難度の問題で構成されます。特に算数は思考力はもちろん、正解に行き着くために粘り強く、かつスピーディーに作業を進める力も求められます。国語だけでなく、理科・社会でも高い記述力が求められ、独特の資料や実験など、バラエティに富んだ高難度の資料を活用した問題が出されるなど、最高難度の問題が占める割合が非常に高いテストです。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2022年度は大問4題で小問が全23題の構成です。計算や小問集合はなく、大問1から総合問題がスタートします。大問1は分数の性質を使った数の問題、大問2すごろくを使った条件整理の問題、大問3が旅人算、大問4が円すいについての立体図形の問題でした。正確な書き出しや、算数の基本知識を使って解ける小問が3題ほどありますが、その他は問題の内容を理解するのも難しい思考力を求める問題ばかりです。旅人算の問題も場合分けをしてそれぞれの内容を細かく整理しなければ正解に行き着くことができず、すごろくの問題も地道な調べを集中力を保って続けなければならないといった、解答の体力も求められます。制限時間が国語より10分長く与えられますが、捨て問を作らなければ時間内に高得点は得られないテストです。

算数が苦手な受験生

大問の最初にある(1)の中には、他の問題よりも難度が大きく下がる問題がありますので、まずはそれらを逃さず正解しましょう。そのうえで合格ラインを突破するポイントは図形問題で少しでも得点を重ねることです。同校の問題の中では図形問題が比較的解きやすくなっています。それでも難度は塾テキストの最高難度のレベルです。制限時間内に全ての問題を解くことは想定せずに、確実に捨て問を作って、解ける問題を確実に解くという方針で解き進める方がよいでしょう。普段の演習では、思考力を求める問題を解く時間をより多く持って、解答のつくり方を取得する必要があります。

算数が得意な受験生

まずは他単元より得点のチャンスがある図形問題は確実に満点を取りたいところです。ただし、年度によっては図形の難度も上がりますので、難問は深追いしないことです。同校の思考力を求める問題は、解答をつくる上での手順が非常に多くなります。地道に時間をかけて解き進めるための体力づくりをするために、普段からテキストの最高難度の問題だけでなく、『中学への算数』の難問や、算数オリンピックの問題を解く時間を定期的に取り入れて、なぜこの解き方なのか、といった着想の段階から正確に身につける練習を重ねましょう。合格ラインを突破するポイントはそうした練習を重ねて、大問の中で捨て問を最小限に止めることです。過去問演習に早めに取り組んで、問題との相性も見極めましょう。

国語

2022年度は大問1が論説文の読解、大問2が物語文の読解、大問3が漢字の書き取り10題という3題構成でした。大問1、2の読解の小問数は全9題と少ないですが、そのうち6題が記述問題のため、制限時間60分は時間配分をうまく進めなければ足りなくなってしまう時間数です。
同校の論説文は学校が問題を作成する年度もあるように、構成がしっかりとした文章であることが多いです。難しい言葉には注釈が付きますが、全般に語彙レベルは高く、文章量が多いため読み取りには時間がかかります。2022年度の大問2は谷川俊太郎の詩を題材とした随想的な内容で、言葉自体は難しくないのですが、論じられている内容の読み取りが難しい内容でした。年度によって内容の違いはありますが、読み取りが難しい文章が出題され、かつ記述問題に答えるための要素を文章中から見つけ出すのが困難なケースが多いです。
物語文も年度によって様々な内容からの出題となりますが、ひとつの特徴は海外の作品が使われることが多い点です。2022年度も海外作品からの出題でした。出題内容は日本の物語文を出典とする場合と同じく、登場人物の心情やその変化の理解をメインとなりますが、舞台が外国であるだけに設定や人物名の認識など、慣れていないと意外と時間を費やしてしまう要素があります。
合格ラインを突破するポイントは記述問題で高得点を獲得することにあります。上述の通り、論説文、物語文ともに簡単に読み通せる文章ではなく、そこから問題で求められる説明に必要な要素を見つけ出す力が必要です。また問題もどのように説明するかの構成をしっかり立てなければ、読みづらい解答になってしまいがちな設定になっています。すべての記述問題の難度が高いことはありませんが、高得点での戦いとなる可能性が高いだけに、普段の演習から記述問題では精度の高い解答になっているか厳しくチェックをする習慣をつけておくことが必須です。また海外の物語文が出されるケースが多いので、立教女学院の古い過去問など、他校の問題も活用して海外の文章に慣れておくとよいでしょう。

[2022年度の出典]
大問1:阿部公彦『詩的思考のめざめ 心と言葉にほんとうは起きていること』
大問2:シンシア・ライラント作 斎藤倫子訳『メイおばちゃんの庭』

理科

2022年度は大問が1題で、乾燥させた豆苗がどのように回復するかをテーマに総合問題が出されました。生物分野からの出題ですが、算数の解法を使う計算問題など様々なタイプの問題が含まれます。小問数は全11題でそのうちの記述問題は4題です。その難度は高く、例えば「実験の問題点とその解決方法」を説明させる問題など、思考力を求めるものがほとんどです。合格ラインを突破するポイントはこれらの記述問題で確実に得点を重ねることにあります。同校の記述問題は思考力を求める問題の中でも、柔軟な発想と確かな表現力を求めるものが多く含まれ、先に挙げた実験の問題点に関する記述だけでなく、実験の内容を変更させた際にどのような現象が生じるかを説明させるといった難問も出されます。まず実験内容と、その結果としての表やグラフが表す内容を正確に把握することが大前提となりますので、普段から様々なタイプの実験に触れて、その実験が何を証明するものなのかを自分の言葉で説明する練習を重ねておくとよいでしょう。そのうえで難度の高い記述問題に対応するために、テキストだけでなく他校の過去問から、難度の高い記述問題を解く練習に早めに取り組む対策が効果的です。
計算問題はグラフと表が正確に読み取れれば計算自体は複雑ではないものが多いです。これらの計算問題は正答が必須になりますので、基本知識の集積と合わせて、計算問題は標準レベルまで早めに仕上げておきましょう。
同校の理科では、グラフを自分で完成させる問題も出されます。ここでも実験内容を確実に把握することが前提になりますので、実験内容とグラフの関係をつかむ練習をテキストの応用問題を使って重ねておくことが不可欠です。
記述問題をはじめとした応用問題の演習に早めに取り組むためにも、基本知識の集積はできるだけ早く完成させる必要があります。理科は後回しでよいという考えは同校の理科対策としては不適切です。できれば夏休みまでに基本知識は固めて、夏から実戦的な演習を始めましょう。過去問演習では、解説の見直しに十分な時間を確保して、記述問題の書き方だけでなく、どのような着想で記述をすればよかったのかを必ず確かめるようにしましょう。

社会

2022年度は大問5題ですが、各大問が全く別の内容ではなく、全大問に共通するテーマ「地図」が設定されるかたちです。そのうえで大問1は奈良時代の「行基図」を題材にした問題、大問2は江戸時代に作られた「赤水図」を題材にした問題、大問3と大問4は伊能忠敬が作成した図を中心とした問題で、最終の大問5はそれまでの問題の内容を踏まえた記述問題という構成です。小問数は全21題と多くはありませんが、そのうち7題が記述問題で、最終の大問5は長い字数が必要となりますので、制限時間40分の使い方が非常に難しいテストです。
大問1から大問4の分野別の問題構成は、歴史分野の割合が高く、一部地理分野が含まれていますが、公民分野からの出題がありませんでした。これは毎年度のことではなく、公民分野からの出題が含まれる年度もあります。年度によって問題構成が変わりますので、出題されない分野があっても戸惑わないように心がけておく必要があります。
問題の難度はほとんどが標準以上の高レベルで、特に記述問題は単に知識量があるだけでは解答の方針すら立てられないものが多く、リード文や資料から考えられることを短い時間で整理し、それをわかりやすく、長くなり過ぎないように文章にまとめるといった、思考力と表現力のどちらも高いレベルで求められる問題が多いです。知識問題もただテキストに載っている情報だけでなく、それに関連する知識まで求められる問題があります。普段の演習からテキストだけでなく、資料集をフル活用して、幅広く視覚的に知識を吸収する練習を重ねておく必要があります。
合格ラインを突破するポイントは記述問題で得点を重ねることにあります。テキストの難度の高い記述問題は早々に仕上げたうえで、他校の最難関レベルの思考力を必要とする記述問題の演習に取り組み、知識や資料から得られる情報をどのように組み合わせて問題が求める視点を鍛えておくことが有効な手段となります。少しでも多くの時間を記述問題対策に充てられるように、知識の集積は早めに完成させておきましょう。知識問題の中には一部基本レベルの問題もありますが、同校を受験するうえではこれらの問題は正解必須ですので、記述問題だけに集中するのではなく基本知識を確実におさえておくことも忘れないようにしましょう。

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