フェリス女学院中学校の傾向と対策

  • 併設大学あり
  • 高校外部募集なし
  • 女子校

志望にあたって知っておきたいこと

 神奈川女子最難関校です。2024年度卒業生で東京大学に6名(現役5名)、千葉大学に4名(現役3名)、東京工業大学に5名(現役3名)をはじめ、国公立大、早慶へ多数の進学者を輩出しています。

 入試問題は4科目とも難度が高く、合格ラインを突破するには知識量、思考力ともに高レベルにまで仕上げておくことが前提になります。特に算数は難問揃いで、同校の過去問はもちろん、男子難関校の難問の演習まで固めておく必要があります。また、国語の物語文・随筆文では小学生にはイメージのしづらい内容が長文で出される特徴があります。

 算数の2024年度入試は大問数が前年より1題減り、基本レベルの問題が微増したことで受験者平均点も前年度より上がりましたが、難問での得点が合否を分けるポイントとなる点は変わりません。国語で自分の考えを200字以内で記述させる同校ならではの問題は2024年度も出されていました。

 どの科目も総合的な力を判定する構成になっていますので、苦手な分野は作らないことを強く意識して普段の演習を地道に進めるようにしましょう。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

 2024年度は大問数が2023年度の5題から4題に減りましたが、小問数は全18題と例年通りでした。大問1が計算と小問集合、大問2が素因数分解に関する数と性質の問題、大問3が時計算の問題、大問4が立体図形の問題という構成でした。大問3、4には「求め方」を書かせる問題が含まれます。

 同校の算数は、ほとんどが標準レベル以上の難問で、一見すると典型題でありながら、作問にひと工夫がされており、問題の成り立ちを考えなければ立式が難しい問題が多く含まれます。

 2024年度であれば大問3の時計算の問題で、長針と短針の作る角度を2等分する線(シャドー)の問題なのですが、角の2等分がある時間帯に何回起こるか、その中で最も小さい角度になる時の大きさは何度かを求めさせるという難問でした。同校の受験生レベルであれば、シャドーの考え方は定着していますが、それを応用させた問題に対応するための思考力が求められました。

 ただ、難問の中にも問題を見てすぐに解答方針が立てられるような基本レベルの問題(2024年度であれば計算問題以外では、大問1(4)①、大問3(1)、大問4(1)が該当します)が含まれるため、まずはそれらの問題を確実に得点することが必須となります。2024年度は基本レベルの問題がやや多かったこともあってか、受験者平均点が57点と、2023年度から7点アップしました。

算数が苦手な受験生

 合格ラインを突破するポイントは、上記でも触れました基本レベルの問題を確実に得点したうえで、テキストの応用問題レベルの問題で点数を重ねることにあります。2024年度であれば、大問1(2)①、大問1(3)①、大問1(5)①、大問2(1)が該当します。

 これらの問題での正答率をアップさせるために、テキストの全単元について応用問題レベルを解き書さえたうえで、男子難関校の難問(最難関校の超難問までは必要ありません)を活用することが有効です。

 特に割合と比、平面図形の面積比・相似は頻出単元ですので、比を使いこなして解く問題は優先的に解き進めるようにしましょう。

 確実に抜かす問題を作ることが必須ですので、過去問演習には早めに取り組んで、問題の取捨選択を時間内に着実に行えるような時間の使い方を練習しておきましょう。

算数が得意な受験生

 合格ラインを突破するポイントは、典型タイプからひとひねりされた難度の高い応用問題での正解を重ねることにあります。2024年度であれば、大問3の時計算と大問4の立体図形の問題でどれだけ速く解答方針を立てて、正解に至るかが重要となります。

 まずはテキストの応用問題レベルは単元を問わず数多く解き重ねて、応用問題の出題パターンに慣れたうえで、早期に男子難関校の難問を解いて、自分で図を書いたり、書き出しをすることが必要な難問への対応力を向上させる必要があります。

 基本レベルの問題での取りこぼしは厳禁ですので、比を使った問題は強化したうえで、苦手な単元を作らないようにしましょう。算数が得意であっても時間的に余裕があるテストではありませんので、普段の演習から頭の中で解き進めるのではなく、解き方の過程をていねいに記す習慣をつけておきましょう。

国語

 2024年度は大問4題で、大問1が物語文読解、大問2が説明文読解、大問3が敬語の問題、大問4が漢字の書き取り、読み取りでした。大問2には自分の考えを書かせる、同校では定番の200字記述問題が出されました。

 大問1は文章量が多くなるのが例年のことですが、2024年度の物語文も字数が9000字を超える長文でした。さらに物語の内容が戦時中の少年と将校の交流を描いたもので、読書習慣のない受験生にとっては長いうえに読み取りづらい、時間がいくらあっても足りない感覚になりかねないものでした。

 大問2の説明文の文章は短く、読み取りやすい内容である点も例年通りでした。知識に頼らず考えることの重要性を訴えるというテーマも普段の演習で触れたことのある典型的なものであったと言えます。

 問題の種類ですが、大問1は主人公の学年と物語が描かれた季節を答える問題と書き抜き問題1題以外はすべて選択肢問題でした。大問2は語句の意味を答える問題が4題に、穴埋め問題が2題、選択肢問題が1題、記述問題が3題と多岐に渡りました。

 同校の国語で最も特徴的な200字記述問題ですが、2024年度は祖父と祖母、両親の会話が提示され、祖父の孫になった設定で家族の意見をまとめるために、どのような提案をすべきか説明させる内容でした。

 大問1では長い文章を正確に読み取る力が、大問2では文章の内容をまとめ、さらに自分の意見を述べるといった記述力が求められ、さらに大問3では語彙の正しい使い方を求められるといった、1つのテストで国語の力を総合的に判定する構成は例年通りのものでした。

 高いレベルでの競争の中で、合格ラインを突破するポイントは2点、まず長く設定が読み取りづらい文章を正確に理解すること、そして短い時間で確実にわかりやすい文章を作ることにあります。

 1点目は大問1の文章が該当します。年度によっては物語文が随実文になることもありますが、時代設定や人間関係が普段の生活からはイメージしづらい内容が出されることが多くあります。古い年に発刊された出典が選ばれることが多く、他校にない出典ですので、同校の過去問を古い年度までさかのぼって演習し、そこで使われた作品と同じ作家の文章に触れるなどして、文章への慣れを養成する必要があります。

 2点目の記述問題の対策としては、普段のテストで触れた文章を80字以内で要約する練習、また新聞のコラムなどを活用して自分の意見を200字でまとめる練習を重ねておきましょう。特に2024年度のように、記述問題以外の問題の難度が低い場合、同校の受験生レベルを考えると、記述問題の得点で差が生まれますので、伝わりやすい文章をスピーディーに完成させることが必須となります。過去問演習では記述問題にどれだけの時間を使えるかを確かめる意識を強く持つようにしましょう。

[2024年度の出典]
大問1:竹西寛子『神馬/湖―竹西寛子精選作品集』所収
大問2:松浦弥太郎『考え方のコツ』

理科

 2024年度は大問数が4題で小問が全42題の構成でした。記述問題が5題で、大問2以外の全ての大問で出されました。実験の内容を理解するための時間、記述問題にかける時間の確保が必要となり、制限時間の30分は非常に短いと言えます。

 大問1は空気中に含まれる気体についての化学分野の問題、大問2はニクロム線を題材とした電流に関する物理分野の問題、大問3はヒトの誕生をテーマとした生物分野の問題、大問4は水の流れ方を題材とした地学分野の問題でした。

 同校の理科の問題は、知識と思考力、表現力そして計算力の全てが求められる高難度のテストです。まず記述問題の出題割合が高い点が特徴的です。2024年度は大問2で出題がありませんでしたが、年度によっては全ての大問で記述問題が出題されることがあります。

 合格ラインを突破するポイントは、これらの記述問題で高得点をとることにあります。その内容は、実験の内容を正確に理解したうえで、その実験で起きた現象の理由を説明する問題や、実際の生活の中で起こる現象について理科の見地から説明する問題など、幅広い内容となります。

 難度が高い記述問題が出されることも多く、2024年度では、大問3の中での「妊娠中に尿を出す回数が増える理由」を説明させる問題、大問4の中での、「雨量と川の流量のグラフからどのような結果がわかれば、森林が洪水を防ぐことが正しいか」を説明させる問題の難度が特に高かったです。

 普段の演習から様々なタイプの実験に触れて、実験によって起こる現象が起きる理由を正確に説明する練習、資料やグラフの結果からわかる内容を説明する練習が必要となります。テキストの記述問題や、模試で出された記述問題については、どのように要素を組み合わせて解答としたかの確認まで徹底するようにしましょう。

 また、計算問題も難度が高くなることが多く、2024年度では大問1の後半の問題で、どのような式を立てればよいのかを思考する力が求められました。計算問題についても、分野を問わず難度の高い問題を多く解いて、資料からどのデータを計算に使えばよいのかを瞬時に判断できるように練習を重ねましょう。

社会

 2024年度は大問3題で小問が全35題の構成でした。問題の種類は、選択肢問題、語句を答えさせる問題、記述問題で、選択肢問題の出題割合が高いです。記述問題は全5題で、大問1、大問2で出題されました。

 大問1は日本国内の地名の由来をテーマとした地理・歴史分野複合の問題、大問2は日本の住まいの変遷についての歴史分野の問題、大問3が「居住・移住の自由」に関する公民分野の問題でした。全ての大問がリード文をもとにした出題で、その中にグラフや資料が含まれています。統計資料は読み取りづらいものではなく、リード文と合わせて解答のヒントとするのに難しさは感じられないでしょう。

 同校の社会は、基本から標準レベルの難度の問題の中に、選別の難しい選択肢問題や、思考力を求める記述問題が含まれるといった、幅広い難度の問題構成になっています。制限時間は30分と短いため、難度の低い問題にかける時間を短縮して、思考力を問う選択肢問題、記述問題に時間を割く方針で臨む必要があります。

 合格ラインを突破するポイントは、選択肢問題で確実に得点を重ねることにあります。同校の社会の語句を答えさせる問題では、問題を見た瞬間に答えが浮かぶような基本、標準レベルの問題が多い特徴があります。2024年度でも、「風土記」や「土偶」、「警察予備隊」など、特別な対策を講じなくとも答えられる基礎問題が出されていました。

 また、記述問題では、思考力を求めるものも含まれますが、問われる内容自体は決して難しくなく、リード文や資料をしっかり読み取れれば正解に行き着くことができるものが多いです。2024年度でも、大問1のA-eの「唐津コスメティック構想」が唐津市民にもたらす利点を説明させる問題は、表で示された内容から解答要素を容易に見つけられるものであり、またD-bの「江戸の長屋のくらし」について説明させる問題も、与えられたグラフの意味するところがわかりやすいものでした。

 同校の受験生のレベルと考えると、記述問題は確実に正解し、少なくとも部分点はとれるようにしておく必要がありますので、記述問題の練習は普段から欠かさないようにしましょう。

 その上で差がつく可能性が高いのが、選択肢問題です。選択肢の文章は見た目がシンプルで短いのですが、判断に迷うように情報が盛り込まれています。2024年度でも、大問1のC-dは、洞爺湖と同じようにつくられた湖を選ばせる問題で、洞爺湖がカルデラ湖であることを踏まえ、火山活動によって作られた湖として「十和田湖」を確実に選ぶ力が求められました。

 また、大問1のC-aで、新潟県にある「親不知」という場所の地形的特徴を選ばせる問題では、リード文の中にある「危険な場所」「道が整備されて往来が容易になった」という要素から、「断崖」を選ぶ、といったリード文を読み取る問題も出されました。

 こうした選択肢問題に冷静に対応し、知識を使いこなして正解を得るために、普段の演習から知識を覚える際にはその背景となる事実までしっかり踏まえておく必要があります。

 問題数に比して制限時間の30分はあまりに短いので、どの問題から解答すべきかといった判断を即時行い、スピーディーにリード文、資料を読み取る姿勢が不可欠となります。基本知識は早期に固めて、早めに過去問演習に取り組み、30分の時間感覚つかむように計画を立てましょう。

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