雙葉中学校の傾向と対策

  • 併設大学あり
  • 高校外部募集なし
  • 女子校

志望にあたって知っておきたいこと

東京女子御三家の1校で、カトリック系の学校のため週1回、宗教の時間があります。学校創立の元がフランスの修道会であることから、中学3年生では週に1.5時間フランス語の授業があり、高校では英語の代わりにフランス語を第一外国語とすることができます。2023年度の大学合格実績では卒業生数166名のうち東京大学に13名(現役12名)が合格しています。入試問題では、どの科目も知識と記述力をバランスよく見る傾向があります。その中でも算数と国語の問題が特徴的で、算数ではすべての問題で式と計算を書かせる他、コンパスを使った作図問題が出されます。国語は求める語彙レベル、知識レベルが高く、大人であれば普段の生活で使うような言葉が文章中に多数出てきます。記述問題が中心となる読解問題では、文章中に書かれている表現だけでなく、そこから類推される内容を詳しく説明する力が求められる点で、中学受験の国語において最高難度の学校のひとつと言えます。どの科目も問題を見た印象では制限時間に余裕がありそうに感じられますが、実際に解いてみると解答に時間を要する問題が多く、制限時間の使い方が重要となります。過去問演習には時間配分の確認、そして解答欄にどれだけの字数を埋められるかといった解答の作り方を確認する意識を持って早めに取り組みましょう。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2022年度は大問5題で小問数が全12題の構成です。大問1は計算と小問集合、大問2が速さに関する作図問題、大問3は数表を使った規則性の問題、大問4は和と差に関する問題、大問5は速さと比の問題でした。全ての問題が式と計算を書かせるタイプの問題で、毎年度1問作図が含まれますので、小問数は少なめですが、制限時間50分は余裕を感じる長さではありません。大問1から大問3までは基本から標準レベルの難度で、作図問題以外はテキストで演習するようなスタンダードな内容の問題です。作図問題は点の動いた跡を書かせるタイプの問題で、コンパスを使って作図する点が特徴的です。同校を受験するうえではコンパスを速く正しく使う練習をしておく必要があります。また、同校の算数の特徴のひとつが計算の複雑さにあります。大問1の小問集合は難度こそ基本から標準レベルですが、計算が細かく、特に小数計算は工夫が使えないだけにミスをしないような高い計算力が必須となります。また後半の問題は設定が複雑で、手作業を通して内容を理解しなくてはならない高難度の問題となることが多いです。

算数が苦手な受験生

テストの後半(2022年度であれば大問4、大問5)は難度が大きくアップしますので、まずは大問3までを確実に得点する必要があります。その中で合格ラインを突破するポイントは、作図問題で正解することにあります。点の円運動をコンパスを使って作図するタイプですが、大問として成立しているので、点の動きを簡単に見つけることは困難です。まずは問題内容を正確に理解することに集中しましょう。この理解を曖昧にしたままに作図作業に進んでしまうと、途中で修正しなくてはなりませんが、コンパスを使うだけに修復が困難となります。焦らず問題内容を確実に理解することを意識して、普段の演習から作図問題を演習する時間を多めに確保しておきましょう。もうひとつのポイントが確実に計算をすることです。当たり前のように聞こえますが、同校の計算は式を立てること自体は簡単なのですが、小数計算が非常に複雑です。普段から計算演習を多く重ねておくことと、筆算を見やすく書く練習を欠かさないようにしましょう。問題数以上に時間がかかるテストですので、過去問演習では時間の使い方、特に作図にどれだけの時間を使えるかを意識しましょう。また、筆算の書き込み方も練習して計算ミスを徹底的に防ぎましょう。

算数が得意な受験生

作図問題を含めて、大問3までは全問正解を目指しましょう。合格ラインを突破するポイントは、大問4、大問5の難問での得点です。同校の算数は式と計算を全ての問題で書くことになりますが、これら難問を解くためにはこの作業が有効になります。まず問題内容を整理するために、表や図を使って式の立て方を整理します。この過程で手を動かさずに頭の中だけで処理しようとすると、混乱してしまうような問題設定になっています。問題内容を整理→式の書き出し→計算の流れをいかにスムーズに進めるかは最初の整理がポイントになります。まずは普段の演習で、特に「速さ」、「割合と比の文章題」についてはテキストの応用タイプの問題まで確実に演習しておきましょう。さらに対応力をアップさせるために、他校の問題では最難関校にまで手を広げる必要はありませんが、男子難関校を中心に演習量を多く重ねておきましょう。また、終盤の問題に多くの時間をかけられるように、作図問題を含めた前半の問題でどれだけ時間を短縮できるかが重要になりますので、過去問演習には時間の使い方と式を丁寧に見やすく書く意識を高めて臨みましょう。

国語

2022年度は大問3題で、小問数が全29題の構成です。大問1が随筆文読解、大問2が物語文読解、大問3が漢字の書き取り・読み取りでした。同校の文章読解は年度によって、物語文+説明文、随筆文2題など、文章の種類が異なります。その中でも随筆文の出題頻度が高く、説明文も随筆文に近い内容となることが多いです。かつては雙葉と言えば詩の読解でしたが、近年は詩が独立して出題されることはなくなりました。ただし、年度によっては説明文の中に詩が使われるケースも見られます。問題の種類は記述問題が圧倒的に多く、そのほとんどは字数制限がありません(2022年度はすべて制限なし)が、年度によっては100字以内といった長い字数の制限がつくことがあります。
雙葉の国語は難しいと言われることが多いですが、その要因のひとつが文章の難度です。長さは標準より短めで、物語文での複雑な設定や、論説文での大人向けの価値観などが扱われることはありません。難度を上げているのが、言葉の難しさです。2022年度であれば「はからずも」や「良かれと思って」など、大人であれば日常生活で使うものの、小学生にとっては耳馴染みのない言葉が非常に多く使われます。その中には言葉の意味を答えさせる問題になるものもありますが、多くは知っていることを前提に使われています。それらの言葉に対応するには、難語テキストを活用するだけでなく、とにかく多くの本を読んでおくことが不可欠となります。この読書量を求める雙葉の意図は問題からも見て取れます。
 同校の問題で合格ラインを突破するポイントは、記述問題で得点を重ねることにあります。ただ、その記述問題の中に、テキストを使った記述演習に数多く取り組むだけでは対応できないものが含まれるのです。2022年度であれば、大問1の随筆文で、筆者が祖母から授かった宝物が、現在の執筆活動にどのように生かされているのかを説明する問題がそれに当たります。この問題の解答の要素は問題文の中に明示されておらず、文章全体を読み通したうえで、解答者がその趣旨から外れない範囲で推測を働かさなくてはならないのです。そこには的確な言葉選び、読み手にわかりやすく内容を伝える表現力が高いレベルで求められます。こうした問題で得点を確保するには、テキストを使った記述演習は大前提で、そのうえで読書を通して語彙を増やし、推察力を培うといった対策までが必須となります。記述問題の対策であれば、学習院女子や栄光学園といった学校の過去問演習が有効ですが、雙葉ならではの文章・記述問題に多く触れるために、過去問演習は早めから、数多くの年度に取り組んでおきましょう。

[2022年度の出典]
上橋菜緒子『物語ること、生きること』
志賀直哉『菜の花と小娘』

理科

2022年度は大問が4題で、小問数が全25題の構成でした。選択肢問題、語句を答える問題、計算問題、記述問題と万遍なく出題されます。記述問題は大問2の化学分野の問題以外、すべての大問で出され、字数制限がありません。作図問題など解く作業に時間のかかる問題や、複雑な計算問題は出されず、求められる知識レベルも標準的です。ただし、同校の理科の難しさは、記述問題を中心に、現象とその基本となる原理を結びつける論理的思考力を高いレベルで求める点にあります。
2022年度の大問1は火山に関する地学分野の問題、大問2はものの燃焼についての化学分野の問題、大問3はオオカナダモを題材とした生物分野・植物の問題、大問4は紙コップでスピーカーを作る自由研究をテーマとした物理分野の問題でした。
先に触れました通り、同校の理科の知識レベルは決して高いものではなく、基本的なものも含まれます。また計算問題は複雑な計算になることはあっても、問題に書かれた内容の誘導に従えば正解に行き着くことは難しくはありません。同校の理科の最大の特徴は記述問題にあり、合格ラインを突破するポイントも記述問題での得点となります。記述問題は長い字数を書かせるものではありませんが、題材とした現象について、その根本にある原理についてまで触れることを求めており、その原理が抜けてしまうと、大きく減点、もしくは得点にならないことも想定されます。例えば2022年度であれば、大問4の物理分野の問題で、紙コップでつくるスピーカーの音量を上げる作成方法を説明する問題で、ただ紙コップを大きくして底面積を広げることのみを記述するのではなく、それによってより多くの空気を振動させることにまで触れなければなりません。制限字数が与えられていれば、何か不十分な部分があることに気づきますが、すべての記述問題に制限字数がありませんので、自分で書くべき内容をすべて包括できているかを判断しなくてはなりません。同校の受験生レベルを考えると、選択肢問題や計算問題の全体正答率は高いと想定されますので、記述問題での減点を何としても防がなくてはなりません。記述問題対策として、普段の演習で男子最難関校の問題などに出てくる高レベルの記述問題にまで手を広げる必要はありませんので、記述問題の見直しで、見逃しているポイントはないか、特に理由となる部分を正確に書けているかを厳しくチェックしましょう。

社会

2022年度は大問3題で、地理・歴史・公民分野それぞれから1題ずつ出題される構成でした。小問数は全39題で、各大問に1題ずつ記述問題が含まれるため、制限時間30分は短く感じられます。
大問1は「貧困」をテーマにした公民分野の問題、大問2は東京都・秋田県・群馬県に関する地理分野の問題、大問3は歴史の総合問題でした。
同校の社会では、幅広く正確な知識を必要とする選択肢問題と思考力を求める記述問題のどちらもが高いレベルで出されます。特に合格ラインを突破するポイントは選択肢問題で確実に正解数を増やすことにあります。選択肢問題の中には「正しいものを選ぶ」スタンダードなパターンだけでなく、複数の選択肢を選ばせる問題、歴史分野で順番を変えるタイプの問題と様々なパターンが見られます。そうした問題で間違いなく得点するためには、普段の演習から正しい根拠で正解に行き着けたかをチェックする必要があります。曖昧に正解するよりも、間違えた問題でどのポイントを見逃してしまったのかを細かくチェックする習慣を身につける方が、同校の選択肢問題を攻略するためには有効です。また知識の幅広さでは、例えば2022年度の地理分野の問題で、秋田県の八郎潟と同じ北緯40度を通る世界の都市を2つ選び、合わせて経度も答えさせる問題のように、世界地図を題材とした問題や、東京都・秋田県・群馬県の郷土料理を正しく区別させる問題が出されています。テキストで演習する問題だけでなく、地図に普段から接し、日々の一般常識についても正確に吸収する意識を持っておく必要があります。
また記述問題では、2022年度には「貧困状態で暮らしている人に対して個人の責任の問題である」という意見に対して、日本国憲法が保障する人権を挙げて反対意見を書くという難問が出されました。その人権が何を保障しているのかを正しく踏まえたうえで解答を作る力が求められます。こうした思考力を求める記述問題については、鷗友女子などの同様の問題を出す難関校の問題を演習することも対策に含めるとよいでしょう。

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