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本科と医進・サイエンスで難度が大きく異なります。作図問題が出ることは共通しています。医進・サイエンスでは式を書く問題が出ます。調べ上げ問題に強いタイプ向きです。
2007年に前身の順心女子学園から改称・共学化してから人気が上昇し続け、今や東京共学校において屈指の人気を集める学校となっています。
本科、インターナショナル、医進・サイエンスの3つのコースが設置され、インターナショナルコースでは海外の大学との連携も多く結ばれるなど、積極的な英語教育が推進されていることで、「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール」に指定されました。
また、医進・サイエンスコースでは、他校では見られない専門的な知識、最先端の技術に触れる場が多く設けられ、医学部を目指す受験生を中心に高い人気を集めています。
2024年度卒業生で東京大学に9名(全員現役)、早稲田大学に129名(既卒生12名)、慶応義塾大学に93名(既卒生13名)など国内の国公立大、私立大で高い合格実績を挙げているだけでなく、海外大学でも多くの合格実績があり、大学の所在地もアメリカ、イギリスに限らず、オーストリア、カナダ、フランス、イタリアと多岐にわたります。
入試問題では、2/1午前・午後、2/5午前に試験が実施される本科と、2/2午後に実施される医進・サイエンスとで、試験の形式、難度が異なることに注意が必要です。特に、理科と国語で制限時間と満点が異なる点が特徴的です(国語は本科が50分・100点満点、医進・サイエンス30分・50点満点、理科は本科が30分・50点満点、医進・サイエンス50分・100点満点)。
問題の内容も、特に算数と理科で医進・サイエンスが本科より大きく難度がアップします。本科の算数が基本的な問題から難度の高い応用問題までバランスよく出題されるのに対し、医進・サイエンスは基本問題が皆無、すべてが思考力を求める難問で構成されます。
理科もリード文の長さ、読み取りづらさが本科よりも医進・サイエンスの方が何段階もアップし、記述問題の難度も上がります。国語は本科が物語文、説明文の両方を出題するのに対し、医進・サイエンスでは説明文のみの出題となります。
どの科目も与えられた題材(リード文、資料、国語の文章)に対して論理的に思考して、スピーディーに解答方針を立てる力が求められる点が共通した出題傾向となっています。
本科と医進・サイエンスで難度が大きく異なります。作図問題が出ることは共通しています。医進・サイエンスでは式を書く問題が出ます。調べ上げ問題に強いタイプ向きです。
文章を正確に読み取るための語彙だけでなく、選択肢の中の抽象的な言葉を確実に理解する解くための語彙も必要となります。選択肢問題に強いタイプ向きです。
難解でボリュームのあるリード文が提示されます。問題を解き進めることでテーマについての理解が深まる高度な構成です。リード文を使った問題の強いタイプ向きです。
記述問題のみで構成される最終問題が特徴的です。リード文・資料から、解答のヒントを速く正確につかむ力が求められます。資料の読み取り、記述問題に強いタイプ向きです。
◆本科
2024年度第1回は大問5題で小問数が全18題の構成でした。大問1は計算と小問集合、大問2がつるかめ算と不定方程式の問題、大問3は約束記号を使った数の性質の問題、大問4は場合の数の並べ方の問題、大問5は平面図形の面積比の問題でした。大問5はすべての小問が作図問題となっていました。大問1から大問4は、すべて答えのみを書かせる問題です。
大問1の計算と小問集合では、立体図形の問題のみ難度が高かったですが、それ以外は基本から標準レベルの難度でした。大問2から大問4も、最初の(1)はどれも解き方が思い浮かべやすい内容で、得点必須の問題と言えます。
ただし、同校の受験生レベルを考えると、大問1と大問2以降の(1)だけでは合格ラインを超えることが難しく、難度の高い問題の中からも正解を得られるように、基本から標準レベルの問題にかける時間を短縮することが必須です。
◆医進・サイエンス
2024年度は大問4題で小問数が全12題の構成でした。計算問題、小問集合はなく、大問1から小問で構成される問題となります。大問1は「ゴロム定規」を条件整理の問題、大問2は立方体の回転体の体積の問題、大問3が荷物の運び方についての場合の数の問題、そして大問4が折り紙を使った平面図形の問題でした。
大問1の「ゴロム定規」といった中学受験生にとって馴染みのない物を題材としたり、大問3の荷物の運び方といった一見算数とは関係のないように思える内容を使った出題がある点が特徴的です。ここには、問題の出され方に戸惑うことなく、冷静に問題内容を読み取り、解答要素を見つけ出す姿勢を同校が求めていることが現れています。
本科と同じように大問4で作図の問題があります。解答形式として、大問2と大問3の最終の小問で式や考え方を書く問題が出される点が本科と大きく異なります。理科と同じく、本科との難度の差が極めて大きいテストです。
基本から標準レベルの問題は皆無で、すべてが標準以上の難度、式や考え方を書かなくてはならない点でも、本科とは全く別のテストと考えるべきです。例えば、2024年度の大問2の回転体の体積の問題では、一見基本レベルの頻出タイプに見えて、必要な長さが与えられておらず、相似の考え方を駆使して長さを求める作業が必要となる、思考力を求める問題となっていました。
普段の演習から応用問題を数多く解き進め、特に場合の数や条件整理といった思考力、書き出しや調べ上げを求める問題を解き進め、解説を熟読して解法を身につけるようにしましょう。考え、調べ、式にまとめるといった流れを高レベルで進めることが必須のテストです。
制限時間は本科と同じですが、時間の使い方は全く異なりますので、時間配分についても本科とは別物として取り組む必要があります。
◆本科
上述の通り、同校本科の算数は基本から標準レベルの問題が含まれますので、まずはそうした問題で確実に取りこぼしなく得点できるように、普段の演習で苦手分野をつくらないように万遍なく解法を身につけておきましょう。
特に同校では規則性、数の性質、立体図形といった苦手とする受験生が多い単元が頻出となっていますので、こうした単元の理解度もしっかり高めておきましょう。
合格ラインを突破するポイントは、頻出単元で確実に得点を重ねることにあります。これらの問題では、調べ上げや場合分けといった作業が求められることが多く、2024年度第1回でも、大問2(3)や大問4(3)で、丁寧な書き出しが必要となりました。書き出しを求める単元では、応用レベルの問題まで取り組んでおくようにしましょう。
また、作図問題が出されますので、フリーハンドで見やすい図をかけるように、作図練習は欠かさずに対策しておく必要があります。
◆医進・サイエンス
算数が苦手な受験生にとっては非常に得点しづらいテストです。上述の通り基本から標準レベルの問題がありませんので、全ての問題を解くのではなく、解ける問題を確実に正解するという意識で臨むようにしましょう。
合格ラインを突破するポイントは、正解できる小問にかける時間を捻出することです。4つの大問の(1)は問題内容が理解できれば正解できるチャンスはあり、(1)の正解を利用すれば解答できる(2)も含まれます。ただ、本科の算数との違いは、問題内容が理解しづらい点にあります。
普段の演習から問題文が長い、2024年度の大問3のような一見算数とは思えないような設定の問題にも多く取り組んで、時間をかけて構いませんので、解答の方針を打ち立てる練習を重ねましょう。そのくり返しを経て、時間を短縮する練習へと進む必要があります。
作図問題は手間こそかかりますが、難度としては太刀打ちできない程ではありませんので、問題内容をしっかり読み込んで、作図だから避けるという意識は持たずにチャレンジするようにしましょう。
◆本科
算数が得意な受験生であれば、同校・本科の算数は4科目の中でも他科目を引っ張れるほどに得点をしたいところです。まずは頻出単元である規則性、数の性質、立体図形を得意分野にできるように、苦手な部分があれば早急に集中特訓をしておきましょう。
速さの問題の出題頻度が低く、2024年度第1回でも出題されませんでしたが、重要単元であるだけに、今後出題される可能性は低いとは言えません。どの単元が出されても対応できるように、単元のもれがないようにしておきましょう。
そのうえで合格ラインを突破するポイントは、時間配分に注意した戦略を立てることです。人気校の同校だけに、本科の算数は高得点での戦いとなること必至です。その中で、調べ上げや場合分けをどれだけスピーディーに正確に行うことできるかが、得点差を生むきっかけとなります。
そうした問題と、同校ならではの作図問題に少しでも時間をかけられるように、前半の難度の低い問題にかける時間を短くすることが必須です。
作図問題でも確実に得点を重ねられるように、作図練習を重ねたうえで、問題にどのくらいの時間がかけられるかを、過去問演習を通じてつかんでおくことが重要です。過去問演習に早めに取り組んで、時間の感覚をつかんでおきましょう。
◆医進・サイエンス
算数が得意な受験生であっても医進・サイエンスの問題は難敵です。正解数を増やすためには算数の難問を多く出題する男子最難関校の問題に対するような、解答方針をいかに立てるかに集中した取り組み方を鍛えましょう。2024年度の問題でも、問題内容を理解したうえで、該当するケースを調べ上げ、式の立て方を考えて行くといった踏むべき手順が多い難問ばかりが4題並びました。
合格ラインを突破するポイントは、調べ上げや書き出しといった作業をスピーディーに進めることにあります。2024年度でも大問3の場合の数の問題の(2)(3)は、当てはまるケースの書き出しに細心の注意と正確な作業が必須となりました。
問題数は多くありませんが、解答に時間のかかる問題ばかりですので、解答方針に迷っている時間の余裕はありません。図を自分でかいて、そこから法則を見出し、式の立て方を判断するといった流れを普段の演習で養成することを強く意識しましょう。
同校の過去問に早めに取り組むことはもちろんですが、聖光学院、駒場東邦といった、ひらめきは要しないものの手数のかかる問題を多く出す学校の問題も類題として活用することも有効です。
◆本科
2024年度第1回は大問4題で、小問数が全28題の構成でした。大問1が漢字の読み取り、書き取りの問題、大問2が語句の意味を答えさせる問題、大問3が物語文読解、大問4が説明文読解でした。問題の種類は、選択肢問題、書き抜き問題、記述問題が万遍なく出されます。記述問題は大問3、4にそれぞれ1題ずつ、90字以内と100字以内という制限字数がそれぞれ付くかたちで出されました。
2024年度第1回の物語文は、同じ作品から、創作クラブに入った中学1年女子が自作の小説を通じてクラスメイトとの心の交流を進める場面と、そのクラスメイトが大人になって、当時のことを回想する場面を描いた2つの文章が出題されました。2つの文章で主人公が変わる点が特徴的でしいた。
説明文は、友情のあり方を通して、他者を理解すること、自己を認識することの意義と重要性について、ニーチェやアリストテレスが提示した考え方を参考に考察する内容でした。
文章量は物語文、説明文ともに標準よりやや長めで、説明文は、以前は理科的・数学的な内容を題材としたものが多く出されていましたが、近年は幅広いテーマの内容が出されています。模試に近い出題形式ですが、文章量が長いことから制限時間には余裕を感じられません。
同校の本科の国語は上記の通り模試に近い出題形式ですが、文章量が多いこと、そして問題を正確に解くため語彙が必要となる点が特徴的です。合格ラインを突破するポイントは、選択肢問題で得点を重ねることにあります。
同校の記述問題は制限字数が100字前後と多く設定されているだけに、長い記述解答を正確に仕上げる練習が不可欠であることは確かですが、書くべきポイントは見つけやすく、分量の多い制限字数も、解答要素を盛り込むうえでは必要な分量であり、その点で制限字数が短く設定された問題よりも書きやすさがあると言えます。
それに対して選択肢問題は、正誤を明らかに見分けるポイントが見つけづらくなるように問題が構成されています。特に、正誤の判断に必要となる語彙レベルが高く、例えば2024年度第1回の物語文の問2は、「いたたまれなさ」「慎ましい」といった言葉の意味を正確に把握できていなければ正しい選択肢を選び出せないものでした。また説明文でも「逆説」という言葉の正しい意味を理解できていなければ得点できない問題が出されました。
説明文では、語彙レベルが極めて高くはないですが、標準以上の難度であるため、制限時間内に問題を解き進めるためには、普段の演習で不明な語彙は都度意味を確認するといった作業を地道に積み重ねて、語彙を豊富にしておく必要があります。
[2024年度第1回の出典]
大問3:小野寺史宜『みつばの泉ちゃん』
大問4:戸谷洋志『友情を哲学する 七人の哲学者たちの友情観』
◆医進・サイエンス
同校の医進・サイエンスの国語は、本科と制限時間・満点が異なり、30分制限で50点満点という国語では珍しい設定です。大問3題で小問全19題の構成で、大問1が漢字の読み取り、書き取りの問題、大問2が語句の問題、大問3が説明文読解と、読解問題が1題の構成です。
問題の種類は、選択肢問題、書き抜き問題、語句の意味を答えさせる問題、記述問題と幅広く出されています。記述問題は1題で、60字以上80字以内の制限字数が付きます。
大問3の説明文は、人間が言語を使って気持ちを共有する仕組みについて、「三項表象の理解」という考え方にそって説明する内容でした。説明される内容自体は難しくないのですが、文章中で使われる語彙のレベルが高く、普段の演習から説明文で多く使われる高難度の言葉に慣れておくことが必須となります。
上述の通り、国語の入試問題で「30分/50点満点」という形式はほとんど見られませんので、過去問演習を通して、時間の使い方を徹底的に体得しておく必要があります。特に長い文章を読み込むのにどれだけの時間を要するかを早めにチェックして、医進・サイエンスの説明文を読み取れるだけの読解力・語彙力が身についているかを確かめておくようにしましょう。
合格ラインを突破するポイントは、本科と同じく選択肢問題で確実に得点を重ねることにあります。医進・サイエンスの説明文は分量が多く、語彙レベルも高いため、まずは本文の内容を正確に理解することが重要ですが、さらに選択肢の中で使われる言葉も、本文の言葉を抽象的に言い換えるなど、難度が高くなっています。
まずは普段の演習から、不明な言葉は都度ノートにまとめて意味を調べるといった語彙を増やす作業を地道に重ねる対策が必須です。その上で、模試などでの見直しでは、選択肢問題の解答根拠を詳しく確かめて、選択肢を区別する力を養成しましょう。
医進・サイエンスの記述問題は一見解きやすそうで、解いてみると内容を制限字数内におさめることが難しいので、注意が必要です。文章を読んで記述解答を作る初動、そこからの文章構成に時間をかけ過ぎていないか、答案に抜けている要素がないか厳密にチェックするようにしましょう。
[2024年度の出典]
長谷川眞理子『進化的人間考』
◆本科
2024年度第1回は大問が4題、小問が全23題の構成で、4分野から大問1題ずつ出題されました。選択肢問題、語句を答える問題、計算問題、記述問題がバランスよく出題されています。記述問題は大問1の物理分野の問題以外、すべての大問で出され、字数制限がありませんでした。
2024年度第1回の大問1は物理分野からばねの関する問題、大問2は化学分野からものの状態の変化についての問題、大問3は生物分野からつる植物をテーマとした問題、大問4は地学分野から雲のでき方を題材とした問題でした。
同校の本科の理科は、難度が際立って高い問題が多く出されませんが、問題の種類を問わず、標準以上の難度の問題が数多く出されます。普段の演習から、テキストの応用問題のレベルを解き重ねて、知識の活用方法を徹底的に身につけておく必要があります。
合格ラインを突破するポイントは、リード文、実験、資料といった問題の素材となる設定を正しく理解することにあります。特に長いリード文が特徴的で、その長文から解答のヒントをピックアップするには、文章を正確に読み取る力が必須となります。
2024年度第1回であれば大問2の化学分野の問題で、冒頭から長いリード文が提示され、さらに途中の問3に新たに長いリード文が出されるといった構成になっており、限られた時間で複数の長文を読み取り、そこから解答要素を見つけ出すための、高い読解力と集中力が求められました。
物理分野と化学分野の計算問題の難度が高く、ここでも実験内容とリード文を的確に理解することが大前提となります。また、2024年度第1回の大問1で、ばねと浮力が混合する問題が出されるなど、各単元の理解を徹底するだけでなく、それらを組み合わせた問題にも対応できるように、模試などでの難問について、単元の理解度を細かく確認しておく必要があります。
小問を解き進めることで問題内容の理解度が高まる構成になっていますので、解いた小問の答えが次の小問につながることを強く意識することが必須です。問題量に比べて制限時間が短いので、時間配分を意識した過去問演習に早めに着手しましょう。
◆医進・サイエンス
制限時間、満点が本科とは異なり(本科は30分・50点満点、、医進・サイエンスは50分・100点満点)、問題のボリューム、難度ともに本科よりも大きくアップします。
2024年度は大問数が4題、小問数が全31題で、4分野から大問1題ずつ出される構成は本科と同じなのですが、各大問で示されるリード文の長さ、内容の難しさは本科とは一線を画すもので、小問もすべて難度が高く、容易に解答できる小問は極めて少ないです。
2024年度の大問1はカーボン紙を使った電流回路に関する物理分野の問題、大問2は物質の分析方法をテーマとした化学分野の問題、大問3はヒトの血液型についての生物分野の問題、大問4は太陽系の天体をテーマとした地学分野の問題でした。
問題の種類も本科と同じく、選択肢問題、語句を答える問題、計算問題、記述問題が万遍なく出されます。記述問題は本科よりも出題割合が高く、1題のみ制限字数が15字以内で設定されましたが、その他はすべて制限字数はなしでした。本科の記述問題と比べて書く分量が大きく増えることはないのですが、解答すべき内容の難度が高く、正確に解答をまとめるのは容易ではありません。制限時間は本科の30分に対して50分と倍近いですが、時間的余裕は全く感じられないテストです。
上記の通り、各大問の内容を見るだけでも、問題設定の難度の高さが見られますが、同校の医進・サイエンスの理科で提示されるリード文は、標準的な入試問題のリード文のレベルをはるかに超えた、学科論文のような趣さえ感じられるものです。言葉遣いはわかりやすく、あくまで中学受験生を対象とした書き方なのですが、その内容は短い時間で一読して理解するには、読解の訓練を多く積んでおくことが必須となるレベルです。
また、大問の中にリード文が1つという構成ではなく、各小問の中でも詳しい説明が展開され、大問1題を完答することで、問題のテーマを理解させるといった、まるでひとつの授業を受けるかのような問題構成になっているのです。2024年度でも大問4の地学分野の問題では、問2を除くすべての小問の問題文が数行にわたるボリュームで、スピーディーに、かつ正確に問題文を読むことができなければ、時間内に解くことができない問題が続出してしまいます。
合格ラインを突破するポイントは本科と同じくリード文の内容を正確に理解することにありますが、求められる理解度のレベルが大きくアップします。ただし、リード文で解説される内容が初見であっても、その内容を素直に的確に読み取る意識を強く持って臨めば、活用する知識レベルは極めて高いものではありません。
2024年度でその傾向が顕著であったのが、大問2の物質の分析方法をテーマとした問題で、そこでは「TG(熱重量分析)」や「DTA(示差熱分析)」といった、中学受験のテキストでは見ることのないような分析方法が提示されました。それでも、問題文の中でそれらの分析方法について詳しい説明がなされていますので、その説明をしっかり読み込んで理解できれば、問題として扱われる化学反応は、銅の酸化など、標準的な難度のものがほとんどとなっていました。
ここに同校の問題が、必ずしも高い知識レベルを求めているのではなく、初見の内容でも問題文を真摯に、粘り強く読み込み、理解を進めようとする姿勢こそを強く求めていることが見て取れます。過去問を見て求められる知識レベルにしり込みするのではなく、問題文を的確に読み取ろうとする意識を高く持つように心がけてください。
基本的な知識を積み重ねる演習はできる限り早期に仕上げながら、医進・サイエンスがどのような出題形式なのかをイメージするために、問題自体は一度早めに見ておくとよいでしょう。
難度の高いリード文を使った問題を数多く解いたうえで、麻布中、渋谷教育幕張中のような高いレベルのリード文から出題する学校の問題について、制限時間をあえて設定せずに、じっくりと問題を解いて、リード文からポイントを抽出する方法をじっくり養成することが有効です。
◆本科
2024年度第1回は大問4題で、小問数は26題の構成でした。地理・歴史・公民分野それぞれから1題ずつ出される大問3題と、最終問題として記述問題2題で構成される大問1題が出されました。
大問1から大問3は選択肢問題と語句を答える問題のみで、記述問題は最終問題に集中して出されます。小問数は多くありませんが、大問1から大問3のリード文や資料を正確に読み取るための時間、そして最終の記述問題にかかる時間を考えると、制限時間30分は短いと言えます。
2024年度第1回の大問1は広島県をテーマとした地理分野の問題、大問2は日本と朝鮮半島の関係についての歴史分野の問題、大問3はSDGsに関しての公民分野の問題でした。
そして大問4の記述問題は2題。ひとつは世界各国の「女性参政権の獲得年」の一覧と一枚の写真を資料として、1914年から1920年の間でヨーロッパの多くの国で女性参政権が獲得された理由を説明する問題、もうひとつは「ダイナミック・プライシング」、「ロードプライシング」といった、商品やサービスの価格に幅がある仕組みについて、企業側のメリットを説明する問題でした。どちらの問題も字数制限はありません。
同校の本科の社会では、求められる知識レベルは細かすぎることなく、標準的ではありますが、リード文の内容、そして提示される資料の読み取りが難しく、確かな読解力が求められます。合格ラインを突破するポイントは、リード文・資料を正確に読み取り、様々な聞き方をしてくる問題に柔軟に対応することにあります。
2024年度第1回では、大問1の広島の新旧の地図が3種提示され、大問3の日本の1955年から2020年までの日本の経済成長率の推移を示す4つのグラフから正解を選ぶ問題では、4つともグラフの変化が細かいところまで示され、区別が難しい問題でした。
また、選択肢問題では、ただ正誤を答えるのではなく、正しい組合せを答える問題が出されます。この組合せの数が非常に多くなることがあり、2024年度第1回でも12個の組合せから正解を選ばせる問題が出されました。ただし、冷静に問題内容を整理すれば、選択肢が多くなっても難度が上がることはありませんので、過去問演習を通して、出題形式に慣れておきましょう。
そして同校の社会と言えば、最終の記述問題を確実に得点することが必須となりますので、それまでの問題をスピーディーに処理する必要があります。記述問題は答えるべき内容自体は特別な対策が必要なものではないのですが、リード文の内容を正確に読み取らなければ得点が伸びない構成になっています。リード文から的確にヒントをつかみとる練習を重ねるためにも、早めに過去問演習に取り組みましょう。
◆医進・サイエンス
2024年度の問題構成は本科と同じで、大問数は4題、小問数は25題の構成でした。地理・歴史・公民分野それぞれから1題ずつ出される大問3題と、最終問題として記述問題の大問1題という構成、問題の種類も本科と同じです。
2024年度の大問1は1970年前後と現代の日本との比較をテーマとした地理分野の問題、大問2は日本の農業の発展と税と生活の関係を題材とした歴史分野の問題、大問3は国際社会やエネルギーなどについての公民分野の問題でした。
大問4の記述問題も本科と同じく2題で構成されています。ひとつは富士川の山系と水系図、江戸時代の年表、富士川に関する文章かたちの資料をもとに、江戸幕府が角倉了以という商人に富士川の開削(舟が通りやすいように整備すること)を命じた理由を説明させる問題、もうひとつは「比較生産費説」とさせる問題でした。どちらの問題も字数制限はありません。
同校の医進・サイエンスの社会は、理科ほどに本科との難度の差はありませんが、それでも選択肢問題の選別の難しさ、資料の読み取りづらさは本科より高めに設定されています。2024年度でも、大問2の問4、問7のように選択肢の文章が、本科の問題では見られないような長さとなり、正誤の区別が見つけづらい出題が見られました。
そして最終の記述問題も、「比較生産費説」といった中学受験のテキストでは学習しないような説について、問題文での説明を正確に理解したうえで、具体的な数値を使って説明させるといった、本科よりも深い考察が求められる問題が出されています。
こうした難問が多いテストにおいて、合格ラインを突破するポイントは、本科と同じくリード文・資料を正確に読み取り、様々な聞き方をしてくる問題に柔軟に対応することです。2024年度でも、大問1の問6の日本の国内旅客輸送における航空・鉄道・旅客船の、輸送客数と輸送距離の「積」を示したグラフが出され、この「積」をうっかり見逃してしまうと正解に行き着けないような設定となっていました。
また、同じ大問1の問7では、1960年と2021年、日本の輸出と輸入という4つの要素を組み合わせて資料を読み解く取り組みが求められました。
リード文・資料を読み取る力が求められる点は本科と同じですが、求められる読解力がより高く組み立てられているのです。
医進・サイエンスのテストは問題の難度がやや高いながら、制限時間が本科と同じ30分と短いので、正確にスピーディーに問題ひとつひとつを処理しなければなりません。医進・サイエンスの受験生レベルを考えた場合、最終の記述問題での得点が勝負の分かれ目になりますので、より多くの時間を最終問題のために捻出するためにも、注意力を高く保ったまま、最終問題までは高速で正解を重ねる必要があります。
地理・歴史・公民各分野の基本知識は早めに固めて、過去問演習では時間配分を、特に最終の記述問題にかける時間を確保するための戦略を組むようにしましょう。記述問題について特化した対策までは必要ありませんが、時事的な話題、身近な問題について考察のうえ記述させる問題を出す上位難関校の問題を類題として活用することも有効です。