女子学院中学校の傾向と対策

  • 併設大学なし
  • 高校外部募集なし
  • 女子校

志望にあたって知っておきたいこと

東京女子御三家の1校であり、プロテスタント系の学校で、授業は週5日制です。生徒の自主性が重んじられ、制服をはじめ細かな校則がなく、自由な校風が多くの受験生の人気を集め続けています。2023年度の大学合格実績では卒業生数214名のうち東京大学に27名(現役22名)、京都大学に6名(全員現役生)が合格、コロンビア大学をはじめ海外の大学にも合格実績を挙げています。入試問題では、東京女子御三家の中で唯一、4科目の配点(100点満点)、時間(40分)が均一で、理科・社会の得点が合否に与える影響が大きくなります。どの科目も共通して、幅広く深い知識と正確でスピーディーな問題処理能力が高いレベルで求められます。発想する力を問うような独特の問題はありませんが、一見スタンダードでありながら、解いてみると得点が思うように伸びない問題が多いです。算数は解答の方針は立てやすいものの解答の作業が多く手間がかかる問題が多く、国語では物語文が出されず随筆文が頻出という特徴があります。算数は答案用紙に計算スペースが設けられる点も特徴的です。理科・社会とも選択肢問題の難度が高く、社会では6~8個の選択肢から複数の正解を選ばせる問題も出されます。問題の出題形式が多岐にわたり、問題に合わせて知識をフル活用させ、正しくスピーディーに処理する力が求められる高難度のテストです。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2022年度は大問6題で小問数が全18題の構成です。ただし、小問の中に複数回答する項目があるため、全解答数は23題となります。大問1は計算と図形問題を含む小問集合、大問2が数の性質の問題、大問3はゲームを使った条件整理の問題、大問4立体図形の展開図の問題、大問5は水深変化とグラフの問題、そして大問6が仕事算の問題でした。式と計算を書かせる問題が1題あります。また同校の答案用紙には特徴があり、用紙の右端に計算スペースがあり、計算はそこに書いて進めるような指示があります。同校の算数の大きな特徴は、解答に至るまでの作業が多いことです。問題の内容自体はスタンダードで解答方針を立てること自体は難しくありません。その上では普段の演習の成果が出やすいテストなのですが、その方針に沿って進める作業がいくつもの段階を経るもので、計算ミスなども起こしやすい、手間のかかる問題が多いのです。そしてその中に難度の高い問題が、問題の順番関係なく(2022年度であれば大問2)出されますので、問題を解く順番を考慮する必要もあります。難度が高い問題と、標準的な難度ながら手間がかかる問題が混在しますので、制限時間40分を戦略的に使わなければ、時間が足りなくなってしまうテストです。

算数が苦手な受験生

問題の難度と問題の順番が関係ないテストですので、合格ラインを突破するポイントは問題を解く順番に十分に注意することにあります。制限時間40分の中で全ての問題を解こうとすると、先述のように一見すると解きやすそうで実は手間がかかる問題が多いので、かえって得点が伸びなくなります。幅広い範囲から問題が出されますので、自分にとって解きやすく作業を進めやすい問題を選んで、その問題は確実に得点するように注意深く臨みましょう。計算が複雑な問題も出ますので、普段のテストの見直しを通して、自分の誤答傾向を把握しておくことが重要になります。そのうえで苦手分野をつくらないように日々の演習を進め、特に頻出の図形問題ではテキストの応用問題までを確実に得点できるように、必要であれば集中特訓も交えて対策しましょう。過去問演習する際には、問題集の答案用紙を指示に従って実寸大に拡大コピーして、計算スペースの使い方を十分に練習しておく必要があります。計算なのだから特に練習は必要ないと考えることは禁物です。時間配分と答案用紙の使い方をマスターするためには、過去問演習に費やす時間が多く必要となる点を踏まえて、スケジュールを立てましょう。

算数が得意な受験生

出題される範囲が広いので、どの単元でも平均以上の得点ができているかを、日々のテストで確認しておきましょう。そこで平面図形・立体図形での得点が低い場合には、早急に集中特訓をしてもれがないように体勢を整えてください。図形を苦手にしていては太刀打ちできなくなります。同校の算数は計算を含め、作業が多くなりますので、普段のテストでは偏差値だけでなく、解法を整理して進められているかを必ずチェックしましょう。式や計算を書かせる問題は少ないので、式の立て方が得点対象になる(部分点がもらえる)ことはありませんが、作業を正確に積み上げなければ得点できない問題がズラリと並びます。合格ラインを突破するポイントはそうした「解法を整理する方法」の定着にあります。普段のテストで点数がいくら高くても、解答の手順を正しく追わず、感覚的に正解した問題があっては、女子学院対策にはなりません。問題を見て解答方針を立て(ここまでは標準的な難度)、正解というゴールに至るまでの作業を無駄なく、また面倒がらずに積み上げる姿勢が求められます。過去問演習では、答案用紙の指定の計算スペースに正確に作業を記録できているかをチェックしてください。作業の多い問題で得点するには、限られた計算スペースの使い方も重要で、その点も含めた処理能力が試されるのが女子学院の算数なのです。

国語

2022年度は大問3題で、小問数が全34題の構成です。大問1が随筆文読解、大問2が論説文読解、大問3が漢字の書き取りでした。同校の文章読解では、物語文が出ることはほとんどありません。文章量は年度によってばらつきがあり、2022年度の大問1は短め、大問2は標準的な分量でしたので、全体としては短めな年度でした。同校の国語の特徴のひとつとして、問題の種類が多岐にわたることがあります。2022年度も、選択肢問題、記述問題、書き抜き問題の他、言葉の意味を答える問題、文法の問題(敬語)、そして第二次世界大戦が終わった年を答えるといった知識問題も含まれました。字数制限のない記述問題も含まれます。文章量が少なめとはいえ、問題数が多いことから、他科目と同じく時間的な余裕が全くないテストです。
女子学院の国語は文章の難度は標準的ですが、上述の通りあらゆる角度からの問題が出され、いわば「総合的な国語力」を厳しい制限時間の中で問うテストと言えます。物語文が出されないことも特徴的で、中学受験生の多くが苦手とする随筆文が出されますので、随筆文対策は徹底的に固めておく必要があります。多岐にわたる問題の中で、文章内容の理解を前提とする選択肢問題や記述問題は、問題の構成が簡潔なため、一見すると解きやすそうですが、いざ解答を作ろうとすると、解答のポイントがつかみづらいものが多いです。そんな中でも合格ラインを突破するポイントは選択肢問題を確実に得点することにあります。選択肢の文章は豊島岡女子のような長さはないのですが、絶妙に差異が見えづらくなっています。文章内容の確実な把握が前提となることはもちろんですが、文章中の表現と同じ意味が言い換えられた表現を相違なく見つけるための語彙と、選択肢の違いを短時間で見極める目を徹底的に鍛えておくことが必須となります。同校の受験生レベルを考えると、記述問題では多くが高得点を取ると考えられますので、選択肢問題を確実に得点できるかどうかが勝負の分かれ目になります。また、随筆文では高難度の語彙が求められますので、随筆文に対して苦手意識を持たないように、練習を重ねましょう。
制限時間40分は非常に厳しい設定ですので、早めに過去問演習に取り組んで、時間配分を正確にできるようにしておきましょう。文章の長さ、記述問題のタイプの違いはありますが、総合的な国語力を求める点、語彙の難度が高い文章が出される点で、フェリス女学院中の問題を類題として活用することも有効な対策です。

[2022年度の出典]
増田れい子『インクの壺』所収「色鉛筆」
中川裕『アイヌ語をフィールドワークする』

理科

2022年度は大問が4題で、小問数が全44題の構成でした。選択肢問題、語句を答える問題、計算問題、記述問題さらには作図問題と多種の問題が出されます。作図問題は地学分野で、星の高度の変化をグラフとして図示する問題でした。
2022年度の大問1は冬の大六角形を題材とした地学分野の問題、大問2は植物のからだのつくりなど生物分野の問題、大問3は化学分野からものの燃え方についての問題、大問4は物理分野からふりこの問題と、各分野から大問1題ずつが出されました。
同校の理科では、複雑な計算問題や理解が難しいような設定の問題こそ出されず、求められる知識レベルも標準的なものが多いですが、知識については曖昧さが一切許されず、幅広く確実な習得が求められます。それが顕著の見られるのが選択肢問題で、分野を問わず同校の選択肢問題は「すべて選ぶ」タイプや「正しい組み合わせを選ぶ」ものが多く、確実な知識が固まっていなければ正解に行き着くことができないものばかりです。また選択肢の区別も細かなもので、選択肢問題を解く際に想定外に時間がかかってしまう点にも注意が必要です。記述問題はシンプルな構成ですが、問題内容を正確に読み取れていなければ、解答の方針を立てることができません。2022年度の作図問題はグラフを完成させるタイプで、星の動きとグラフの関係が理解できれば、解きづらいものではありませんでした。
このように求める知識レベルや問題の複雑さは標準の域を超えないものの、正確な知識と資料で表されるデータの処理能力、そして問題内容全体を踏まえての思考力がそろっていなければ解答できない問題がズラリと並んでいるのが女子学院の理科です。知識を覚えたうえで、それを問題解答の素材として使いこなせるまでに習得することが求められる高度なテストです。その中でも合格ラインを突破するポイントとなるのが選択肢問題での高い得点です。同校の受験生レベルを考えると、選択肢問題はどのような構成(全て選ぶ、組合せを選ぶといったかたち)でも正しく対応できなければ、大きく得点差をつけられてしまいます。普段の演習から、覚えた知識を活用する術を覚えるために、問題演習量を徹底的に増やすようにしましょう。また制限時間40分に対して問題数が多く、スピーディーな対応が不可欠となります。できれば夏休みのはじめに一度過去問を解いてみて、同校ならではの問題の難しさ、時間の短さを体感しておきましょう。

社会

2022年度は大問3題で、小問数は全37題という構成でした。大問ごとにテーマが設定され、そこに地理・歴史・公民分野の問題が混ざって出されます。問題の種類は、選択肢問題の割合が圧倒的に高く、その他、記述問題、語句を答えさせる問題といった構成です。
2022年度の大問1は「災害」をテーマにした地理分野と歴史分野の問題、大問2は「洪水への対策」を題材とした地理分野と公民分野の問題、そして大問3は女子学院の前身のひとつである原女学校の創設者・原胤昭(たねあき)氏の業績をもとにした歴史分野・公民分野の問題でした。時事問題は出題されていません。
「女子学院の社会は難しい」と言われることが多いですが、その要因はテキストの演習を通して習得する知識だけでは解くことができない問題が多く出題されることにあります。日常の生活の中で触れる出来事について、社会的な視点を持って対峙できているかを問う極めて高水準のテストなのです。例えば2022年度の問題では、大問2の問1は地方公共団体が行っていることとして正しいものを選ばせる問題でしたが、この中に「保健所を設置し、感染症の拡大防止に努める。」という選択肢が含まれます。まさに2022年度は新型コロナウィルスの感染拡大が収まっていない時期で、連日のニュースでも保健所という言葉が多く出てきました。そこで「保健所の設置はどこの担当なのだろうか?」という疑問を持ってそれを解明する姿勢があれば解ける問題なのです。実際、保健所の設置は地方公共団体の仕事ですので、この選択肢は正しくなります。その他にも「災害の被害を減らすための個人的な取り組み」を選ばせる問題など、時事問題こそ出題されないものの、常に社会的な目を持って日常を過ごすことが求められるのです。合格ラインを突破するポイントはそうした問題を含め、選択肢問題での正答率を上げることにあります。同校の選択肢は6個から8個と多くなるケースが見られます。そこで速く正確に正解に行き着くために、知識を万全にしておくことはもちろん、誤った選択肢を即時消去する見方を鍛えておく必要があります。記述問題の難度は標準的ですが、即時解答できるものではありませんので、制限時間40分は非常に短く感じられます。時間配分を十分に意識した過去問演習を早期にスタートする必要があります。

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