女子学院中学校の傾向と対策

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志望にあたって知っておきたいこと

 東京女子御三家の1校であり、プロテスタント系の学校で、授業は週5日制です。生徒の自主性が重んじられ、制服をはじめ細かな校則がなく、自由な校風が多くの受験生の人気を集め続けています。2024年度の大学合格実績では東京大学に26名(現役25名)、京都大学に7名(現役6名)が合格、また慶応義塾大学医学部に2名(現役1名)、順天堂大学医学部に8名(現役7名)、東京慈恵会医科大学に4名(現役3名)など、医学系にも高い現役合格率を挙げています。

 入試問題では、東京女子御三家の中で唯一、4科目の配点(100点満点)、時間(40分)が均一で、理科・社会の得点が合否に与える影響が大きくなります。どの科目も共通して、幅広く深い知識と正確でスピーディーな問題処理能力が高いレベルで求められます。発想する力を問うような独特の問題はありませんが、一見スタンダードでありながら、解いてみると得点が思うように伸びない問題が多いです。

 算数は解答の方針は立てやすいものの解答の作業が多く手間がかかる問題が多く、国語では物語文が出されず随筆文が頻出という特徴があります。算数は答案用紙に計算スペースが設けられる点も特徴的です。理科・社会とも選択肢問題の難度が高く、社会では年度によって6~8個の選択肢から複数の正解を選ばせる問題も出されます。問題の出題形式が多岐にわたり、問題に合わせて知識をフル活用させ、正しくスピーディーに処理する力が求められる高難度のテストです。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

 2024年度は大問7題で小問数が全15題の構成です。ただし、小問の中に複数回答する項目があるため、全解答数は25題となります。大問1は計算と図形問題を含む小問集合、大問2がつるかめ算の応用問題、大問3は立体図形の回転体の問題、大問4が速さの問題、大問5は数の性質の問題、大問6が平面図形の面積の問題、そして大問7が流水算の問題でした。式と計算を書かせる問題が1題あります。

 同校の答案用紙には特徴があり、用紙の右端に計算スペースがあって、計算はそこに書いて進めるように指示されます。算数の問題の大きな特徴は、解答に至るまでの作業が多いことです。問題の内容自体はスタンダードで解答方針を立てること自体は難しくありません。その上では普段の演習の成果が出やすいテストなのですが、その方針に沿って進める作業がいくつもの段階を経るもので、計算ミスなども起こしやすい、手間のかかる問題が多いのです。

 そしてその中に難度の高い問題が、問題の順番関係なく(2024年度であれば大問1(2)、大問2)含まれますので、問題を解く順番を考慮する必要もあります。難度が高い問題と、標準的な難度ながら手間がかかる問題が混在するため、制限時間40分を戦略的に使わなければ、時間が足りなくなってしまうテストです。

算数が苦手な受験生

 問題の難度と問題の順番が関係ないテストですので、合格ラインを突破するポイントは問題を解く順番に十分に注意することにあります。制限時間40分の中で全ての問題を解こうとすると、先述のように一見すると解きやすそうで実は手間がかかる問題が多いことから、かえって得点が伸びなくなります。2024年度であれば、大問2(2)の角度の問題は、適切に補助線を引いて二等辺三角形を作り出す作業がやや難しい問題でしたので、一旦抜かして後で戻るという戦略も必要でした。また、2024年度であれば大問2のように、一見複雑に見えても式さえ立てられれば解答方針が見えてくる問題もありますので、頭の中で考えるだけでなく、記号を置いて式を立てる練習も必須となります。そして最終問題のように手間もかかり難度の高い問題には時間をかけ過ぎず、場合によっては見直しの時間を優先する方が有効になります。

 女子学院の算数は幅広い範囲から問題が出されますので、自分にとって解きやすく作業を進めやすい問題を選んで、その問題は確実に得点するように注意深く臨みましょう。計算が複雑な問題も出ますので、普段のテストの見直しを通して、自分の誤答傾向を把握しておくことが重要になります。そのうえで苦手分野をつくらないように日々の演習を進め、特に頻出の「速さ」「図形」ではテキストの応用問題までを確実に得点できるように、必要であれば集中特訓も交えて対策しましょう。

 過去問演習する際には、問題集の答案用紙を指示に従って実寸大に拡大コピーして、計算スペースの使い方を十分に練習しておく必要があります。計算なのだから特に練習は必要ないと考えることは禁物です。時間配分と答案用紙の使い方をマスターするためには、過去問演習に費やす時間が多く必要となる点を踏まえて、スケジュールを立てましょう。

算数が得意な受験生

 出題される範囲が広いので、どの単元でも平均以上の得点ができているかを、日々のテストで確認しておきましょう。そこで平面図形・立体図形、速さでの得点が低い場合には、早急に集中特訓をしてもれがないように体勢を整えてください。女子学院相手に、図形・速さを苦手にしていては太刀打ちできなくなります。

 同校の算数は計算を含め、作業が多くなりますので、普段のテストでは偏差値だけでなく、解法を整理して進められているかを必ずチェックしましょう。式や計算を書かせる問題は少ないので、式の立て方が得点対象になる(部分点がもらえる)ことはありませんが、作業を正確に積み上げなければ得点できない問題がズラリと並びます。

 合格ラインを突破するポイントは「解法を整理する方法」の定着にあります。2024年度であれば大問4の速さの問題のように、普設定された条件から問題内容を的確に整理して、不明の数は記号を使うなどして、いかにして式を立てるか、その段階で思考力を求める問題も出されます。普段のテストで点数がいくら高くても、解答の手順を正しく追わず、感覚的に正解した問題があっては、女子学院対策にはなりません。問題を見て解答方針を立て(ここまでは標準的な難度)、正解というゴールに至るまでの作業を無駄なく、また面倒がらずに積み上げる姿勢が求められます。

 2024年度であれば、最終の大問7の流水算は、条件の整理が必要になり、算数が得意な生徒さんでも全問解答は難しい可能性が高い難問でした。制限時間を意識して、特に前半の問題で取りこぼしがないように見直しの時間の作り方も確認しておきましょう。

 過去問演習では、答案用紙の指定の計算スペースに正確に作業を記録できているかをチェックしてください。作業の多い問題で得点するには、限られた計算スペースの使い方も重要で、その点も含めた処理能力が試されるのが女子学院の算数なのです。

国語

 2024年度は大問3題で、小問数が全28題の構成です。大問1、大問2ともに随筆文読解、大問3が漢字の書き取り6題でした。大問1は筆者が水田を映した写真を見て過去の記憶を反すうする内容、大問2は芸術家である筆者が、自分の絵と他者の絵を見比べてショックを受けた過去を振り返る内容で、どちらも読み進めるのに負荷がかかる文章ではありませんが、正しく読み取るために求められる語彙レベルは高いものでした。同校の文章読解では、物語文が出ることはほとんどありません。文章量は年度によってばらつきがありますが、2024年度の大問1は短め、大問2は標準的な分量でしたので、全体としては短めな年度でした。

 同校の国語の特徴のひとつとして、問題の種類が多岐にわたることがあります。2024年度は、選択肢問題、記述問題、言葉の意味を答える問題、慣用句の穴埋め問題が出されましたが、年度によっては書き抜き問題、年号を答えるなどの知識問題が出されることがあります。文章量が少なめとはいえ、問題数が多いことから、他科目と同じく時間的な余裕が全くないテストと言えます。

 女子学院の国語は文章の難度は標準的ですが、上述の通りあらゆる角度からの問題が出され、いわば「総合的な国語力」を厳しい制限時間の中で問うテストと言えます。物語文が出されず、中学受験生の多くが苦手とする随筆文が出される点が特徴的です。随筆文対策は徹底的に固めておく必要があります。多岐にわたる問題の中で、文章内容の理解を前提とする選択肢問題や記述問題は、問題の構成が簡潔なため、一見すると解きやすそうですが、いざ解答を作ろうとすると、解答のポイントがつかみづらいものが多いです。

 そんな中でも合格ラインを突破するポイントは選択肢問題を確実に得点することにあります。選択肢の文章は豊島岡女子のような長さはないのですが、女子学院においてはむしろ選択肢の文章が長い問題の方が解答のヒントを見つけやすく、得点のチャンスが広がる一方で、短い文章の選択肢問題は絶妙に差異が見えづらくなっています。2024年度でも大問1問4、大問2問1、問7などがそのタイプに該当します。文章内容の確実な把握が前提となることはもちろんですが、文章中の表現と同じ意味が言い換えられた表現を相違なく見つけるための語彙と、選択肢の違いを短時間で見極める目を徹底的に鍛えておくことが必須となります。

 同校の受験生レベルを考えると、記述問題では多くが高得点を取ると考えられますので、選択肢問題を確実に得点できるかどうかが勝負の分かれ目になります。ただ、記述問題も決して難度が低いのではなく、2024年度であれば大問1問3、大問2問3などは、抽象的な表現の具体的内容を的確に把握し、そのうえで文章中での表現の意味を正しく理解するといった高レベルの作業が求められる難問でした。また、随筆文では高難度の語彙が求められますので、随筆文に対して苦手意識を持たないように、わからない語句はその都度調べて覚えることを徹底しましょう。

 制限時間40分は非常に厳しい設定ですので、早めに過去問演習に取り組んで、時間配分を正確にできるようにしておきましょう。文章の長さ、記述問題のタイプの違いはありますが、総合的な国語力を求める点、語彙の難度が高い文章が出される点で、フェリス女学院中の問題を類題として活用することも有効な対策です。

[2024年度の出典]
篠田桃紅『その日の墨』所収「水田の写真に」
大竹伸朗『見えない音、聴こえない絵』所収「斑模様の遠近法」

理科

 2024年度は大問が4題で、小問数が全39題の構成でした。選択肢問題、語句を答える問題、計算問題、記述問題さらには作図問題と例年通り多種の問題が出されました。作図問題は生物分野で、トマトの切断面に種の位置をかき込む問題でした。

 2024年度の大問1は月を題材とした地学分野の問題、大問2は植物の生態に関する生物分野の問題、大問3は化学分野から気体の性質や化学反応についての問題、大問4は物理分野からものの浮き沈みに関する問題と、各分野から大問1題ずつが出されました。

 同校の理科では、複雑な計算問題や理解が難しいような設定の問題こそ出されず、求められる知識レベルも標準的なものが多いですが、知識については曖昧さが一切許されず、幅広く確実な習得が求められます。それが顕著の見られるのが選択肢問題で、2024年度には見られませんでしたが、分野を問わず同校の選択肢問題は「すべて選ぶ」タイプや「正しい組み合わせを選ぶ」ものが多く、確実な知識が固まっていなければ正解に行き着くことができないものばかりです。

 また選択肢の区別も細かなもので、選択肢問題を解く際に想定外に時間がかかってしまう点にも注意が必要です。2024年度も「すべて選ぶ」タイプの出題はなかったものの、大問3、4を中心に慎重に選ばなければ得点できないレベルの問題が見られました。記述問題はシンプルな構成ですが、知識が確実に習得できていなければ説明しづらい内容をあえてぶつけてきます。2024年度でも、大問1の地球にクレーターができにくい理由は、ズバリ的確に説明しなければ点数にならない問題でした。

 求める知識レベルや問題の複雑さは標準の域を超えないものの、正確な知識と資料で表されるデータの処理能力、そして問題内容全体を踏まえての思考力がそろっていなければ解答できない問題がズラリと並んでいるのが女子学院の理科です。知識を覚えたうえで、それを問題解答の素材として使いこなせるまでに習得することが求められる高度なテストです。

 その中でも合格ラインを突破するポイントとなるのが時間の使い方です。同校の理科には特に各大問の序盤にいたって基本的な問題が出されます。2024年度は特にその傾向が顕著でした。同校の受験生レベルを考えると、これらの問題では得点差がつきません。それらの問題以外の難度がアップした問題、特に記述問題、作図問題、複雑なグラフの読み取り問題で得点を重ねられるように、40分という問題数に対して非常に短い制限時間の中で、難問の解答時間を確保しておく必要があります。普段の演習から、解ける問題をスピーディーに確実に解き、難問にかける時間を得る意識を高く持つようにしましょう。できれば夏休みのはじめに一度過去問を解いてみて、同校ならではの問題の難しさ、時間の短さを体感しておくとよいでしょう。

社会

 2022年度は大問4題で、小問数は全44題という構成でした。女子学院では大問ごとにテーマが設定され、そこに地理・歴史・公民分野の問題が混ざるケースが見られますが、2024年度は「水」を1つのテーマとして、4つの大問で様々な視点から出題がなされました。問題の種類は、選択肢問題の割合が高く、その他、記述問題、語句を答えさせる問題といった構成でした。

 2024年度の大問1は縄文時代から江戸時代の水と人々の生活に関する問題、大問2は近代から現代にかけての水と人々の生活に関する問題、大問3は日本各地での水の利用状況に関する問題、そして大問4は世界における水利用の状況と問題点を題材とした問題でした。「水」ひとつでここまで幅広く、掘り下げた問題が多量に出されるところが、さすが女子学院と言えますが、例年通りの難問ぞろいで解答に大きな負担がかかるテストでした。

 「女子学院の社会は難しい」と言われることが多いですが、その要因はテキストの演習を通して習得する知識だけでは解くことができない問題が多く出題される点にあります。高難度の知識を集積することは大前提として、その背景にある事実、理由にまで考えを及ばせる姿勢が確実に身についているかを問う、極めて高水準のテストなのです。

 例えば2024年度の問題では、大問1の問1からいきなり、「縄文時代の人が井戸をつくらなかった理由を考えるためには何を調べればよいのか」といった、調査方法を問う出題がありました。そしてその直後に井戸をつくらなかった理由を選ばせる問題が出されます。この2題は個別に考えるよりも、2つ合わせて考察する方が解答に近づきやすくなります。そういった解き方の工夫も講じなければ、短い時間内に得点を重ねることが困難になるのです。

 また、大問1問7の、川と2つの集落を記した地図から「どちらの集落の方が水を得るのに有利だったかを選ばせる問題、大問3問7の、ため池の位置と等高線が記された地図から、「ため池が決壊しても被害を受けない場所」を選ばせる問題では、情報が決して多くないシンプルな地図から、問題内容を理解し、深く考察する力が問われました。普段から地図を注意深く見ることはもちろん、何を判断基準とすべきなのかを短時間で考察する力を十分に養っておくことが必須となります。

 合格ラインを突破するポイントは問題量が多く、難度が高い選択肢問題での正答率を上げることにあります。記述問題も決して難度が低いことはありませんが、求められる知識はやはり選択肢問題が際立って高水準にあります。時には選択肢が6個から8個と多くなるケースもあり、そこで速く正確に正解に行き着くために、知識を万全にしておくことはもちろん、誤った選択肢を即時消去する見方を鍛えておく必要があります。また、思考力を養成するために、麻布や海城といった男子難関校の問題も類題として活用するとよいでしょう。

 問題数の多さ、それらの難度の高さからすると、制限時間40分は非常に短く感じられます。時間配分を十分に意識した過去問演習を早期にスタートする必要があります。

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