開成中学校の傾向と対策

  • 併設大学なし
  • 高校外部募集あり
  • 男子校

志望にあたって知っておきたいこと

東京男子御三家の中でも偏差値トップであり続けている学校です。校章にも表されている「ペンは剣よりも強し」の精神が実施される高レベルの教育は勉強面だけでなく、自主自律の精神も培われ、生徒それぞれが個性を発揮できる場が用意されています。その代表格が春に行われる運動会で、同校を象徴する一大イベントは運営も生徒たち自身によって行われています。入試問題は4科目とも処理能力と思考力、問題内容を深く理解する力が総合的に要求されます。国語の出題傾向が毎年異なるように、ただ高い水準の知識を身につけておくだけでなく、どのような出題内容に対しても柔軟に対応するしなやかさも求められます。どの科目の問題も、問題数だけ見ると制限時間が多く与えられる印象ですが、実際に解いてみると解き方が盤石に整っていないと、膨大な時間を要してしまうように作られています。より速く解く方法がないのか、解法の装備を貪欲に進めることが必須になります。問題の種類が記述に傾倒するといったかたちではなく、バランスよく配置され、どのような問題にも正確に対応できるように、普段の演習では常に総合力を高めることを強く意識する必要があります。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2022年度は大問4題で小問が全17題の構成です。大問1計算問題1題と文章題と図形の小問が4題、大問2が円すいの体積比、面積比についての問題、大問3がマス目を塗りつぶす場合の数の問題、大問4が時計算の応用型の問題でした。大問1の4題については満点が必須となるだけでなく、計算や式の立て方での工夫をすることで解答時間を短縮し、後半の問題にかける時間を捻出する必要があります。大問2の立体図形の問題はテスト全体の中でも難度が低く、ここもまた得点必須となります。また相似を利用する問題であることからも、解法を工夫して時間を短縮することが求められます。残る大問3、大問4については、まず問題内容の正確な理解が大前提となります。大問3は解答用紙で塗りつぶしの作業をしなければならず、時間がかかる上に単純な場合分けでは対応できない内容となっています。大問4の時計算も一見すると「遅れる時計」の典型のようですが、解いてみるとその典型パターンには当てはまらず、グラフなどの解答材料を自分で作らなくてはなりません。難度が高いだけでなく、解き方の工夫をしなければ膨大な時間がかかってしまうテストです。

算数が苦手な受験生

まずは大問1、2で満点を目指しましょう。合格ラインを突破するポイントは解法の工夫を使いこなすことにあります。例えば大問2の円すいの問題では、体積比を使うことがわかった瞬間に、計算のほとんどを比の値で進める判断が必要になります。ここで急いで解答しようとして、比を使わずに実際の数値で解き進めると、間違いなく時間のロスが発生して解けない問題が続出します。普段の演習から解放の工夫は常に意識して、テストや模試などでは解説をよく読み、より時間短縮できる解法がなかったかを確かめるようにしましょう。時間内に全ての問題を解答することは難しいので、解かない問題を早めに判断して、そこでできた時間で見直しに充てたり、大問3のような実際に作図する問題にかける時間に充当するなどの意識を持つ必要があります。

算数が得意な受験生

大問1、大問2をスピーディーに全問正解することは必須として、残る大問での得点が重要となります。合格ラインを突破するポイントは各大問の(1)を確実に得点することにあります。それらの小問全てが解きやすいとは残念ながら言えませんが、得点のチャンスが大きいのは確かです。そのためには問題内容を正確に把握することが大前提です。どんな難度の高い問題でも、最初の(1)は問題内容を正確に理解できているかのチェックになっています。言い換えれば、問題内容さえ正確に理解できていれば、(1)を解くのに大きな負担はないのです。そのためには普段の演習から、設定が難しい問題に数多く触れて、内容を理解する力を強化し続ける必要があります。それでも同校の算数に対応するだけの思考力は簡単には養えません。問題を解いた後に、自分の解法が正しかったのか、言わば謙虚な姿勢で問題に対することが、思考力の強化につながります。難問の解説を素直に受け入れる体勢を維持しましょう。

国語

開成の国語は年度によって問題構成が異なる特徴があります。大問の数も1題の年度もあれば2題の年度もあります。文章の種類としては、2題構成の場合は、物語文と、論説文か随筆文で、1題のみの場合は物語文であることが多いです。文章量は全体として多めです。
2022年度は物語文1題、その中に小問が6題で問1が漢字の書き取り4題、その他の5題はすべて記述問題という構成でした。記述問題がほとんどである点は年度によって変わることはありません。2022年度の記述問題はすべて制限字数が付きましたが、この点も年度によってバラバラで、すべての記述問題が武蔵中のように制限字数なしの枠のみの解答欄となる年度もあります。
2022年度の記述問題は、問題該当部がすべて主人公の発言や心の声という特徴がありました。その言葉はどれも短く、答えるべき解答のポイントをまとめるのがとても難しくなっています。その言葉の背景、そこに至るまでの経緯を正確におさえなければ解答をつくれないものばかりです。2022年度は幼なじみの中学3年生の男子を主人公に、幼なじみの女子生徒や、嫌がらせをしてくる男子、父親との関係と、物語の設定そのものはよく見られるパターンでした。これが年度によっては、女子高生どうしの微妙な人間関係の移ろいなど、小学生男子には到底想像できないような世界が展開することもあります。自分の知り得る範囲の世界にはおさまらないような物語を解きほぐす力が求められます。まずは普段の演習で、ジャンルを限定せずに幅広く様々な種類の文章に触れておきましょう。
そのうえで合格ラインを突破するポイントは、やはり記述問題での高得点獲得となります。同校の記述問題は、一見するとシンプルな問いですが、解答要素を文章中から選び出すのが非常に難しいです。特に物語文の場合は、人物の些細な言動を見逃さずに、その言動にどのような背景があるのか、物語の流れをしっかりつかんだ上で理解する必要があります。普段の演習では、まずは文章としての減点要素がないように、記述力は早めに完成させたうえで、例えば武蔵中や学習院女子などの記述問題のみで構成される学校の問題を解いて、文章から解答要素を見つける訓練を重ねることも有効となるでしょう。

[2022年度の出典]
森沢明夫『おいしくて泣くとき』

理科

2022年度は大問が4題で、小問数が全31題の構成でした。問題の種類としては、選択肢問題が中心で、そこに計算問題、語句を答える問題が混ざります。2022年度は記述問題が出されませんでした。記述問題はなくとも、計算問題は難度が高く、何より実験、問題の設定を正確に理解するのに時間を要するため、制限時間には全く余裕がないと考えておいた方がよいでしょう。
大問1は生物分野から植物の性質についての問題、大問2は風船の膨張を題材とした物理分野からの問題、大問3は会話文をもとにした物質の性質についての化学分野の問題、大問4は地学分野から気象についての問題でした。
同校の理科の問題には、長い字数をかけて説明させる記述問題や、独特な問題構成といった特徴的な出題は見られません。問題の中には標準レベルの内容も含まれます。それでも同校のテストは非常に得点しづらい内容で、問題内容を正確に理解できるかどうか、理科的な読解力が高いレベルで求められます。合格ラインを突破するポイントも、問題内容を正確にスピーディーに理解することに尽きます。2022年度であれば、大問2の物理分野の問題でのバルーンアートで使う細長い風船を使った膨張の実験、大問4の気象についてのグラフや資料の読み取りが難しく、特に大問2は時間がかかり過ぎる可能性が高い難問でした。まずは問題の内容を正確に理解し、そのうえで粘り強く問題に取り組んで正解の連鎖を生み出すことが必要です。
このように思考力というよりも読解力や、与えられた材料から深く推察する力が求められるテストと言えます。普段の演習では、まず標準レベルの問題を1問も失わずに得点するために、知識の集積は徹底的に固めておきましょう。そのうえで、他校の難度の高い理科の過去問を解いて知識のアウトプットを正確に進める練習を早めの段階で取組み、合わせて開成中の過去問も早めに取り組めるように計画を立てましょう。そのうえで、『Newton』などの理科に関する専門的な雑誌や、ブルーバックスのような理科の新書などを、時間を作って読むことで理科的な情報を取り入れる練習を重ねることが、理科的な読解力を養う上では有効となるでしょう。普段から理科に関する時事なども積極的に知識として取り入れるなど、理科の知識に対して貪欲に取り組むようにしましょう。

社会

2022年度は大問3題構成で、大問1が歴史分野、大問2が地理分野を中心にエネルギー問題なども含まれる問題、大問3が公民分野を中心に時事問題や思考力を求める記述問題などが含まれる総合型に近い問題でした。小問数は全39題ですが、小問1題の中で複数の語句を答えさせる問題があるため、解答する問題数は全部で65個にもわたり、思考力を求める記述問題も含まれることを考慮すると、制限時間40分は非常に短く、超高速で解答する必要があります。
大問1は医学の歴史をテーマとして、人名や書籍名など語句を答える問題を中心に構成されています。大問2の地理分野を中心とした問題では、記述問題が2題含まれ、その他、地図や資料を読み取る問題なども出されています。大問3は国際社会の中の日本の役割や日本の公害問題、そして「ジェンダー平等」に関する思考力を求める記述問題など、問題の種類がバラエティーに富んでいます。
開成の社会といえども基本レベルの問題も数問は含まれます。特に語句を答える問題に基本問題が多く見られますので、漢字表記のミスに注意して全てを正解しましょう。そのうえで、合格ラインを突破するポイントは、広く深い知識をスピーディーに導き出すことにあります。当たり前のように思われますが、開成の社会はあらゆる角度から受験生の知識を確かめる問題を出してきます。選択肢問題の中には知識を細かく覚えていなければ選択肢の区別が不可能な問題が多く見られますし、歴史上の日本国内の戦争の中で名称に干支が含まれるものを答えさせるなど、まるでクイズのような問題もあります。時事的な知識についても、例えば巨大IT企業の総称「GAFA」の「G・グーグル」を答えさせるなど、普段のテキストを使った演習だけでは対応できないレベルの問題が多数出されます。また、資料文が示す人物について答えさせる問題で、その問題だけでは難度が高いものの、その後に出される小問に大ヒントが含まれるといった柔軟な対応を求める問題もあります。最終問題は、ジェンダー問題の中でも「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」について、具体的な会話から該当する事例を答える記述問題でした。開成の社会に対応するには、知識力、思考力、柔軟な対応力、そして超高速で解答を続ける推進力と、社会についてのほぼ全ての力が必要になると言えます。

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