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東京男子御三家の中でも偏差値トップであり続けている学校です。校章にも表されている「ペンは剣よりも強し」の精神が実施される高レベルの教育は勉強面だけでなく、自主自律の精神も培われ、生徒それぞれが個性を発揮できる場が用意されています。
2021年に創立150周年を迎え、2024年7月には新校舎の建設が完成する予定です。冷暖房完備の大体育館をはじめ、高校普通教室の校舎、中高合わせた全校生徒が利用する特別教室や体育館、食堂など、中学校舎の一部を除くほぼすべての施設が新設となります。
入試問題は4科目とも処理能力と思考力、問題内容を深く理解する力が総合的に要求されます。国語の出題傾向が毎年異なるように、ただ高い水準の知識を身につけておくだけでなく、どのような出題内容に対しても柔軟に対応するしなやかさも求められます。どの科目の問題も、問題数だけ見ると制限時間が多く与えられる印象ですが、実際に解いてみると解き方が盤石に整っていないと、膨大な時間を要してしまうように作られています。
より速く解く方法がないのか、解法の装備を貪欲に進めることが必須になります。問題の種類が記述に傾倒するといったかたちではなく、バランスよく配置され、どのような問題にも正確に対応できるように、普段の演習では常に総合力を高めることを強く意識する必要があります。
問題を速く正確に解く処理能力、普段触れたことのないタイプの問題にも取り組める柔軟な思考力が求められます。初見の問題にも思考力を活用できるタイプ向きです。
年度によって問題構成が変わり、問題の形式も異なります。どのような問題が来ても焦らずに対応できる取組み姿勢が求められます。記述問題に強いタイプ向きです。
出題の形式はスタンダードですが、正確な読解力、資料の処理能力が非常に高いレベルで求められるテストです。理科についての知識を貪欲に求めるタイプ向きです。
幅広く深い知識、時事的な知識、思考力、超高速で問題を解き進める推進力など、あらゆる力が求められる高水準のテストです。問題に柔軟に対応できるタイプ向きです。
2024年度は大問3題で小問が全17題の構成です。昨年度の大問5題、小問18題から大問題数は減少しましたが、問題の難度は易化した昨年度からは難化し、本来の開成らしさが戻っていると言えます。
大問1は小問3題で、(1)が1から9の数を使って2024を作る問題、(2)が比を使って解く文章題、(3)が平面図形の回転移動の問題、大問2がカードを使った場合の数の問題、大問3が立体図形の複数切断の問題でした。
大問1の小問集合から難問が含まれます。(1)の2024を作る問題では複数の解答がある中で与えられた条件に合わせることが求められ、(2)の比の問題も、問題文をよく読んで、その部分の差を使えばよいのかが難しい問題でした。一方で(3)は典型的な回転移動の解きやすい問題でした。
大問2の場合の数の問題はカードの並べ方を問うもので、設定されたカードの並べ方についての規則を正しく理解できなければ時間がかかりますが、規則を確実に解法に活用できれば得点源にできる、差がつく問題でした。
大問3は今年度の算数で最も難度が高い問題でした。立体を3つの平面で切断してできる立体の展開図から解き進めるのですが、展開図が完成していないという複雑な要素が含まれていました。まず切断によって変形した立体と展開図の関係をつかんだうえで、足りない面がどのような形になるのかを正しくイメージする力が求められる難問でした。
問題を見てすぐ解法が浮かぶ問題もあれば、高レベルの想像力を必要とする難問もあるという、幅広い難度の問題が散りばめられたテストです。難しい問題に時間をかけたいところですが、解答方針が立てやすい問題も慎重に解かなければ失点してしまうといった、高レベルの対応力が求められるテストです。
取るべき問題を確実に得点することは開成中でなくとも必要となる鉄則の方針ですが、特に開成中では問題の順番と難易度が一致しません。つまり、テスト前半にも難問が出される可能性が高いので、過去問を通して問題選択に対する意識をしっかり養っておく必要があります。
2024年度であれば、大問1(1)、(3)、大問2の(1)、(2)の(ア)(イ)は確実に得点しておきたいところです。ポイントになるのが、大問1(2)、大問2(2)の(ウ)(エ)、大問3(1)で得点を重ねることにあります。
特に大問1(2)と大問2を解くためには、問題文を正確に読み取り、条件を的確に活用する必要があります。合格ラインを突破するポイントは、こうした「算数の読解力」を養成することにあります。普段の演習の積み重ねで、大問1(3)を正解するための「処理力」は十分に養成されると思われます。それに対して「算数の読解力」を培うには、条件を多く含む問題を、文章題、図形問題を問わず幅広く多数解いておく必要があります。
開成中の過去問演習に入る前段階として、テキストの発展問題に含まれる問題設定の理解に負担のかかる問題を数多く解いて、集中して問題を読み込む練習を徹底しておきましょう。また、開成中では年度によって問題数や難度が変化する特徴があります。「開成だから…」といった固定観念は捨てて、素直に問題に向き合う姿勢も鍛錬しておきましょう。
上述の通り、開成中は年度によって難易度に差があります。つまり4科目の中で算数で引っ張れる年度とそうでない年度が分かれてきます。昨年度のような易しい問題が多い年度では得意の算数で差をつけられないという傾向もありますが、まずはテストの内容に関わらず、難問を少しでも得点できる体勢を整えておきましょう。
合格ラインを突破するポイントは、上記「算数が苦手な受験生」でも触れた「算数の読解力」に加えて、問題の解答方針につながる確かな「イメージ力」を鍛えておく必要があります。2024年度であれば最終の立体図形の複数切断の問題で、展開図から切断された立体の見取り図を的確にイメージして、頂点の位置関係を正しくつかむための力となります。
そのためにも、普段の演習から自分で図をかく習慣を身につけておくことが必須となります。算数が得意な場合、図をかかなくても解答方針を立てられる問題が多く、模試などでも図をかくことなく高い偏差値をとれているかもしれません。ただ、開成中の難問に対応するには、図をかいて養成されるイメージ力が不可欠となります。意識して図をかくように気をつけましょう。
問題の条件の読み取りが必要であったり、イメージ力を求める問題への対応力をより強くするために、開成中の過去問だけでなく、駒場東邦中や栄光学園中などの問題設定の理解に負担のかかる問題を多く出す学校の過去問も活用して、集中して問題を読み込み、解答方針を正しくイメージする練習を徹底的に鍛えておきましょう。
開成の国語は年度によって問題構成が異なる特徴があります。大問の数も1題の年度もあれば2題の年度もあります。文章の種類としては、2題構成の場合は、物語文と、論説文か随筆文で、1題のみの場合は物語文であることが多いです。
2024年度は論説文1題、物語文1題の構成で、漢字の書き取りの5題は大問2の物語文に含まれます。漢字を除く問題は記述問題がメインで、1題は書き抜き問題でした。開成中で書き抜き問題が出されるのはあまりないことですが、統一した出題傾向のない学校ですので、どのタイプの問題が出ても不思議ないと思っておく方がよいです。
記述問題の制限字数ですが、こちらも年度によってバラバラで、2024年度は大問1の論説文は制限字数つき、大問2の物語文は制限字数なしで、解答欄に合わせて書く形式でした。制限字数は60字以内、50字以内で設定されており、大問2の解答欄の行数も1.5行から2行ですので、ほぼ50~60字の字数となるように設定されています。
問題文は物語文の方が長めでしたが、どちらも標準を大きく超える分量ではありません。ただし、内容は容易に読み取れるものではなく、特に大問1の論説文は難度が高く、「アフォーダンス」という言葉の意味について実践例を示して説明する内容でした。哲学的な文章で多く見られるような難解な語彙はないのですが、「アフォーダンス」の意味自体が難しく、具体的な例と言葉の意味の関連がつかみづらい内容です。記述問題もすべてこの言葉の意味の正確な理解が大前提となるため、読み取りが甘いと全く点数にならないように作問されています。
物語文は主人公の男性が小学校時代を回想する設定で、自分がいじめられないように、友人の秘密を明かしてしまう主人公の苦しみ、心の痛みを描いた内容でした。友人の体にタトゥーが彫られているといった馴染みのない設定こそありますが、内容自体は物語文の典型的パターンのひとつと言えます。ただし、記述問題の難度は高く、特に比喩的に表現された対象に込められた主人公の心情を説明させる問題は、同校の受験生レベルをもってしても難解であったと推測されます。
合格ラインを突破するポイントは、やはり記述問題での高得点獲得となります。決して簡単ではなかった2024年度の国語でも、合格者平均点は60.2点と、過去5年間の中でも最高得点となり、開成中受験生がいかに記述問題の特訓を徹底していたのかがうかがえます。
同校の記述問題は、一見するとシンプルな問いですが、解答要素を文章中から選び出すのが非常に難しいです。論説文であれば2024年度の「アフォーダンス」のように、言葉の意味を正確にとらえることが難しい中で、その理解そのものを深く追求してくる問題がズラリと並びます。物語文であれば、人物の些細な言動を見逃さずに、その言動にどのような背景があるのか、物語の流れをしっかりつかんだ上で理解する必要があります。
普段の演習では、まずは文章としての減点要素がないように、記述力は早めに完成させたうえで、例えば武蔵中や学習院女子などの記述問題のみで構成される学校の問題を解いて、文章から解答要素を見つける訓練を重ねることも有効となるでしょう。
[2022年度の出典]
佐々木正人『時速250㎞のシャトルが見える』
千早茜『鵺の森』
2024年度は大問が4題で、小問数が全29題の構成でした。問題の種類としては、選択肢問題が中心で、そこに計算問題、語句を答える問題、そして作図問題が混ざります。2024年度は記述問題が出されませんでした。記述問題や超難問こそ出されないものの、リード文、実験の内容を正確に理解するのに時間を要するため、制限時間40分は全く余裕がないものと考えておいた方がよいでしょう。
2024年度の大問1は化学分野から水溶液の性質の問題、大問2は地学分野からスーパームーンを題材とした問題、大問3は会話文をもとにした昆虫の性質についての生物分野の問題、大問4は物理分野から電流回路についての問題でした。
2024年度の理科の合格者平均点は70点満点で60.2点、受験者平均点が55.1点と、合格者平均点、受験者平均点ともに80%前後と、2023年度に続いて高レベルでの戦いとなりました。これは同校の受験生レベルが高いためだけではなく、同校の理科に長い字数をかけて説明させる記述問題や、独特な問題構成といった特徴的な出題が見られないことが要因となっています。
各大問の中には標準レベルの内容も含まれますので、それらを確実に得点することは必須で、そのうえで合格ラインを突破するポイントは、問題内容を正確にスピーディーに理解することにあります。同校の理科では、独特な問題に対応するための発想力ではなく、問題内容を確実に理解し、そこから得た情報を正確に使いこなすという「理科的な読解力」が高いレベルで求められるのです。
2024年度であれば、大問2のスーパームーンを題材とした問題では、細かな数値の計算問題や、語句を選ばせる問題が出されましたが、月の周期と「昔の暦」との関係などを説明したリード文の内容を正確に理解できれば、解答の材料を確実につかむことができるものでした。
独特の設定の問題はありませんが、作図問題の難度が高い点には注意が必要で、合格者平均点を鑑みると、大問2、大問4の作図問題を得点できたがどうかが勝負の分かれ目になったと推測されます。
同校の理科では思考力というよりも読解力や、与えられた材料から深く推察する力が求められると言えます。普段の演習では、まず標準レベルの問題を1問も失わずに得点するために、知識の集積は徹底的に固めておきましょう。そのうえで、他校の難度の高い理科の過去問を解いて知識のアウトプットを正確に進める練習を早めの段階で取組み、合わせて開成中の過去問も早めに取り組めるように計画を立てましょう。
さらに『Newton』などの理科に関する専門的な雑誌や、ブルーバックスのような理科の新書などを、時間を作って読むことで理科的な情報を取り入れる練習を重ねることが、理科的な読解力を養う上では有効となるでしょう。普段から理科に関する時事なども積極的に知識として取り入れるなど、理科の知識に対して貪欲に取り組むようにしましょう。
2024年度は大問4題構成で、大問1が1924年、1964年の周年を題材とした総合分野、大問2が都道府県に関する地理分野の問題、大問3が「歴史カルタ」を使った歴史分野の問題、大問4が歴史分野に「東京問題」が含められた問題でした。
問題構成は選択肢問題、語句を答えさせる問題、並べ替えの問題に計算問題が1題出され、2024年度は記述問題が出されていません。小問数は全42題ですが、小問1題の中で複数の語句を答えさせる問題があるため、解答する問題数は全部で58個にもわたり、思考力を求める記述問題がないとは言え難問が多く、制限時間40分は非常に短く、超高速で解答する必要があります。
2024年度の社会は70点満点で合格者平均点が52.5点、受験者平均点が48.1点と2023年度よりは下がりましたが、ほぼ例年通りの結果でした。同校の受験生レベルを考えるとその難度の高さがうかがえますが、リード文や資料の構成は標準レベルで、思考力を求める記述問題は含まれていません。それでも平均点が上がらないのは、深掘りした知識を必要とする問題が多いためと言えます。
問題形式だけを見ると標準的ですが、求められる知識レベルは高く細かく、例えば、2020年にノーベル平和賞を受賞したWFP(国際連合世界食糧計画)の紋章を選ばせる問題や、日本の終戦当日の内閣総理大臣として鈴木貫太郎を選ばせる問題など、テキストの学習だけでは対応できない知識問題が出されます。
高難度の問題が多いテストといえども基本レベルの問題も数問は含まれます。特に語句を答える問題に基本問題が多く見られますので、漢字表記のミスに注意して全てを正解しましょう。そのうえで、合格ラインを突破するポイントは、広く深い知識をスピーディーに導き出すことにあります。
当たり前のように思われますが、開成の社会はあらゆる角度から受験生の知識を確かめる問題を出してきます。選択肢問題の中には知識を細かく覚えていなければ選択肢の区別が不可能な問題が多く見られ、時事的な知識についても、2024年度は「ChatGPT」や「物流2024問題」が題材となる問題が出され、難度こそ高くはありませんでしたが、常識としておさえておく必要がありました。過去には、巨大IT企業の総称「GAFA」の「G・グーグル」を答えさせるなど、普段のテキストを使った演習だけでは対応できないレベルの問題が多数出されます。
また、資料文が示す人物について答えさせる問題で、その問題だけでは難度が高いものの、その後に出される小問にヒントが含まれるといった柔軟な対応を求める問題もあります。
開成の社会に対応するには、知識力、思考力、柔軟な対応力、そして超高速で解答を続ける推進力と、社会についてのほぼ全ての力が必要になると言えます。