慶應義塾中等部の傾向と対策

  • 併設大学あり
  • 高校外部募集なし
  • 男女共学

志望にあたって知っておきたいこと

慶應義塾大学・三田キャンパスのすぐ近く、慶應女子高の隣に位置する共学校です。中等部を卒業した後は、男子は日吉の慶應義塾高校へ、女子は慶應義塾女子高校へと進学します。慶應中等部では、生徒が先生方を「さん」付けで呼んでいます。ここには、教員も生徒も立場こそ違えども、学校という場で「共に学びつつ成長していく」という、「半学半教」の慶應義塾が重んじる精神が色濃く反映されています。生徒の自主性が重んじられ、年に一度開かれる「生徒会総会」では全生徒が一堂に会し、様々な議題について議論がなされます。入試問題は、どの科目も共通して「教養」が求められる点が特徴的です。特に国語では言葉についての知識、正しい言葉の使い方が多く問われる独特の出題が見られます。算数では独特な問題は出されないものの、複雑な計算や、解答を正しく数値で答えさせる形式で、受験生の正確な処理能力が求められます。理科・社会では明らかにテキストの演習だけでは答えられない日常生活で培われる知識が出題の対象となります。そしてどの科目も制限時間が短く、スピーディーに解答する力が求められます。他校にない特徴の多い出題傾向ですので、過去問演習を数多く重ねて、「中等部らしさ」を早めに把握しておくことが必須です。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2022年度は大問6題で小問が全20題の構成です。同校の解答は答えのみで、しかもマークシートのように数字を答えさせる独特の形式です。大問1は計算問題が3題と数の性質の問題が2題、大問2は小問集合で小問数が5題、大問3が図形の小問集合で4題、大問4は立体図形の切断の問題、大問5が速さとグラフの問題、そして最終の大問6が数の性質の問題でした。同校の算数はニュートン算が含まれるように出題される単元が幅広いですが、問題の難度は基本レベルの占める割合が高いです。それだけに合格ラインも高得点となりますので、ミスなくスピーディーに問題を解き進める力が必要です。その中でも2022年度であれば大問2(5)の条件整理の問題や、大問5の速さとグラフの問題のように、急に難度が上がる問題が出てきます。また、大問4の立体図形の切断や、大問6の数の性質の問題のように、「解法を知っているかどうか」で得点が分かれる問題が出される点が特徴的です。数字単位で答えるマークシートのような独特の形式で慣れが必要ですので、過去問演習をくり返し解いて、解答に時間をかけ過ぎないように注意しましょう。

算数が苦手な受験生

同校の算数は得点を少しでも多く取るというより、失点を防ぐような解き方が求められます。合格ラインを突破するポイントは、苦手分野をつくらないことです。あらゆる単元から出題されると考えてよいほどの範囲の広さですが、問題の難度は低いので、基本的な解き方が習得できていれば得点を重ねることができます。ただし、解法自体は基本的でも計算が複雑な問題が多いです。ミスを起こしやすい数字の複雑さですので、普段の演習で計算間違いが多い場合は早期に自分の誤答パターンを分析して、ミスによる失点がないような体勢づくりをしておきましょう。また、2022年度であれば大問4の立体図形の切断で、向かい合う辺の長さの和が等しいことを利用して解く、といった典型的な解法パターンを習得しておくことも求められます。模試などでは問題の正誤だけでなく、解法をどれだけ習得できているかも常にチェックしておきましょう。高得点での戦いであることからも制限時間45分の中でどの問題にどれだけ時間をかけられるかといった戦略を立てておくことが不可欠です。

算数が得意な受験生

全体正答率が高い基本レベルの問題は瞬時に正解できるように、複雑な計算でもミスをしないようにしておくことが必須です。独特の解答正式も、同校の受験生であれば、だれもが慣れていると思っておいた方がよいでしょう。複雑な計算、基本レベルの問題、解答用紙への対応といった部分はパーフェクトに習得しておくことが必須で、ここで課題がある場合は、早期に対処しておきましょう。そのうえで合格ラインを突破するポイントは、難度の高い問題で確実に正解することにあります。当たり前のように思われますが、同校では難問の数は限られますので、そうした問題の解答に時間をかけられれば満点に近い得点も可能になります。難度が高いと言っても最難関校のレベルまでではありませんので、思考力を求めるような難問の対策を多く重ねるまでのレベルではありません。テキストの応用問題レベルを確実に解けるように訓練を重ねましょう。独特の解答形式は見直しがとてもしづらい構成です。見直す必要がない程に計算力を高めておくこと、制限時間内に解答づくりをスムーズにできるように過去問演習を進めることが必須です。

国語

2022年度は大問5題で、小問数が漢字以外で全22題、最終大問5の漢字の書き取りが15題の構成です。大問1が物語文読解、大問2が随筆文読解、大問3が短歌の問題、大問4が慣用句に関する問題、最終の大問5が漢字の書き取り15題でした。漢字の難度はかつてほどではないですが、やはり高く、漢字テキストの最高難度の問題まで演習しておく必要があります。問題の種類は選択肢問題が圧倒的に多く、20字以上25字以内の記述問題1題以外は、穴埋め問題を含めてすべて選択式です。文章量は2題とも標準よりやや少なめです。
同校の国語には言葉に関する知識を求める問題が多い特徴があります。読解問題でも空欄補充をはじめ言葉の知識に関するものが多く、単に言葉を答えるだけでなく、例えば「ユニーク」という言葉の意味を正しく把握しておくことが大前提になる問題が出されています。前後の脈略から正解を類推することはできるのですが、限られた時間の中で確実に正解を導き出すには言葉の意味を踏まえておくと断然有利に働きます。同校ではそうした語彙力のある生徒を求める傾向が強くあると言えるでしょう。その分、物語文で登場人物の複雑な心情の流れを答えさせるような問題は少なく、選択肢も区別しやすいものが多いです。読解力はもちろん必要ですが、普段の演習では読み取りづらく長い文章に取り組むよりも、わからない語彙はその都度確かめておく、といった言葉に対する意識を高めておくことが有効です。
また短歌・俳句といった他校では出題頻度の低い韻文が同校では頻出で、2022年度は俵万智の和歌が出題対象となりました。テキストで問われるようなスタンダードな内容ではないところが慶應中等部らしさで、こうした問題に対応するには、韻文の表現技法などの知識よりも普段の生活の中で起こるできごとがどのように言語化されるのか、といった視点が必要になります。合格ラインを突破するポイントは、こうした韻文を含めた「言葉の感覚」を要する問題で正解を確実にとることにあります。まず読書をはじめ、普段から文字に触れる時間を多く持ち、言葉の使い方を曖昧にしないことが重要です。この点は塾よりもご家庭の中で修練される部分ですので、普段からご家庭内で言葉の使い方に注意をしておくとよいでしょう。

制限時間45分は余裕がないとまでは言えませんが、文章量は多くありませんので、1問に時間をかけ過ぎなければ十分な時間となるでしょう。ともすれば時間をかけさせるような問題がありますので、過去問演習を通して、そうした問題に引きずられない練習をしておきましょう。

[2022年度の出典]
※出典不明

理科

2022年度は大問が5題で、小問数が全20題の構成でした。選択肢問題の割合が高く、その他、語句を答える問題、計算問題が出され、記述問題は1題出されました。記述問題には20字以内の制限字数が付きます。細かな知識だけでなく、題材となる現象の根本的な原理原則についての理解まで求める問題が多く見られます。問題数こそ多くはありませんが、解いてみると時間がかかる問題が多いこともあり、制限時間の25分は短く感じられるでしょう。
大問1はメダカとアメンボの会話を題材とした生物分野の問題、大問2はてこの原理を使ったハサミなどの道具についての問題、大問3は気体の性質についての化学分野の問題、大問4は電流回路を扱った物理分野の問題、そして大問5が日食と月食についての問題でした。
同校の理科では基本的な知識をどれだけ正確に覚えているかを確かめる問題はもちろんですが、その知識の根本にある原理原則を正しく把握できているかを確かめる問題が多く出されます。問題の種類としては選択肢問題が圧倒的に多いのですが、それらの問題でも、実験や現象について、「なぜそうなるのか」といった部分にまで深く一歩踏み込んで理解を固めておく姿勢が求められます。全体的に問題の難度は標準レベルが多いですが、2022年度であれば大問4の電流回路の問題のように、起こり得る現象をパターン分けして調べるという、作業に時間のかかる問題が含まれます。合格ラインを突破するポイントは、そうした解答に時間のかかる問題について、解き方を正しく整理し、スピーディーに処理することにあります。普段の演習から、知識を答える問題だけでなく、自分で書き出しなどを行って解くタイプの問題を解く練習を重ねておきましょう。
同校の理科の問題は難度の幅が広いので、簡単に解ける問題は瞬時に解答し、2022年度の大問4や大問5のような難度が高く手間のかかる問題に少しでも多くの時間をあてるといった解き方に対する高い意識が必要です。25分という制限時間はあまりに短いので、過去問演習を数多く解いて制限時間の感覚を早めから身につけておく必要があります。書き出しを求める問題では、どのように書き出しをすれば見やすく問題内容を整理できるかを丁寧に確認しておきましょう。

社会

2022年度は、大問4題で小問数が全18題でした。ただし、1つの小問に解答すべき項目が多く、全解答数は42題に及びます。問題の種類は、選択肢問題の割合が高く、そこに語句を答えさせる問題が数問(2022年度は7題)含まれ、最後に2題、いずれも20字以上50字以内の制限字数付きの記述問題が出されます。記述問題2題は必答であることを念頭に置いて、制限時間の使い方を考えて取り組まなければ点数が伸びないテストです。
大問1は日本各地の建物や施設を地図で答えさせる問題、大問2が第二次世界大戦後の日本の現代史と、政治の仕組みに関する問題、大問3が関東地方の自然についての問題、そして大問4が日本の交通の歴史をテーマとした総合問題でした。
同校の社会は、まず制限時間25分に比して問題数が多く、しかも思考力を求める記述問題が2題含まれるといった、時間の使い方が非常に難しいテストです。選択肢問題や語句を答えさせる問題には見た瞬間に解答できる(しなくてはいけない)ものが多いですが、その中にテキストの演習だけでは解答できないような「常識問題」が含まれます。2022年度であれば、からっ風の別名「おろし」を答えさせる問題や、「しもばしら」を書く問題が該当します。「しもばしら」は知識としては既知であっても、それが解答となると判断する力が求められる点で難度が高い問題でした。それらは解答が思い浮かばなければ捨て問として構いませんが、捨て問にできないのが最終2題の記述問題です。合格ラインを突破するポイントは、これらの記述問題で確実に得点を重ねることです。同校の受験生レベルを考えると、記述問題2題で満点が必要となります。問題内容は与えられたリード文や資料から考察できる内容をまとめるもので、最難関校や同じタイプの問題を出題する鷗友女子や頌栄女子の過去問題などを演習しておけば、有効な対策になるでしょう。重要なのは時間配分で、制限時間25分内で知識をフル活用したうえで記述問題で満点解答をつくるには、十分な訓練が不可欠となります。まずは同校の過去問を解いて時間の感覚をつかみ、時間短縮に必要な力を確認したうえで、それを他校の過去問などを使って強化、そしてまた過去問演習に臨んで対応力を磨き上げる、といった分厚い対策が中等部の社会で高得点をとるうえでは必須となります。

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