駒場東邦中学校の傾向と対策

  • 併設大学あり
  • 高校外部募集なし
  • 男子校

志望にあたって知っておきたいこと

2022年度卒業生数226名のうち東京大学に現役39名(既卒生と合わせて60名)が進学という高い実績を挙げる進学校で、その人気は東京男子御三家に迫るものです。中高6年の間にクラス替えはあっても、5月に行われる体育祭のチームは変わらず、先輩が後輩を指導するという伝統があるように、学年の超えたつながりが深く、学校OBと在校生の交流も盛んに行われています。入試問題は4科目とも難度が高く、特に高水準の記述力と問題処理能力が求められます。記述問題が国語や社会で多く見られるのは当然として、算数でも出題されるという他校にない特徴があります。どの科目も単に問題を解くだけでなく、問題内容についての深い理解と、自分の考えを正しく表現する力を持つことが大前提となるテストです。算数や理科では問題の内容が複雑なだけでなく、解答に要する手間が非常に多く、解答に多くの時間を必要とします。また国語の文章が長い点も同校の特徴で、超長文にも向き合えるだけの集中力が求められます。社会では独特の資料から解答の要素を見つけ出す処理能力が問われ、選択肢問題、記述問題ともに難度が高いです。独特で難度の高い問題に慣れ、制限時間の使い方を習得するためにも過去問演習には早めに取り組む必要があります。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2022年度は大問4題で小問が全14題の構成です。大問1は計算問題1題と小問集合4題、大問2は平面図形で、正方形の辺を移動させる問題、折り曲げて切り取りを入れる問題が出されました。大問3は円周上を回転移動した目盛りを問う場合の数の問題、大問4は立方体と直方体を組み合わせる立体図形の問題でした。同校の算数には、簡単に解ける問題はないと思っておいた方がよいでしょう。最初の計算問題も項が多く複雑で、計算の工夫も必要となります。また小問集合はN進法や数の性質、図形を使った場合の数で構成され、いわゆる一行問題タイプの文章題や図形の基本的な問題などは全くありません。大問2以降には、ほんの一部解法が浮かびやすい問題がありますが、それでも解答の手順は複雑で、何より問題の設定が難解、内容を理解するだけでも大きな負担がかかります。単元としては図形と数に関する問題が圧倒的に多く、割合や比を使った文章題や速さの問題は見られません。普段のテキストの演習だけでは太刀打ちできないのが同校の算数のテストです。当然、時間も余ることは想定できませんので、解かない問題をどれにするかを早めに判断する必要があります。

算数が苦手な受験生

先に触れました通り、簡単な問題はありませんので、解ける問題を少しでも見つけることです。単元として図形と数に関する問題が苦手では同校の算数は解けません。合格ラインを突破するポイントは図形、数の性質を得意まで行かずとも、苦手にしないように対策しておくことです。普段の単元演習でこれらの単元で得点が伸び悩んだ時には、早めに時間を捻出して集中特訓をしましょう。その際にもテキストの標準レベルの問題を解くだけでは対応力が養えませんので、応用問題、手数を多く使わせる難問を多く解くように心がけましょう。解けなくとも解説を読んで解法を増やす地道な積み重ねが不可欠です。制限時間以内に全ての問題を解こうとすると、結果解ける問題を取れなくなってしまいますので、捨てる問題をスピーディーに判断して、その分、解くべき問題に時間をかけて失点を防ぐという戦略を試す目的で過去問演習を進めましょう。

算数が得意な受験生

複雑な設定の問題にも粘り強く取り組んで、問題の意味を確実に理解することが大前提です。同校の算数の問題は高い難度の中でわずかに難易の差がありますので、どれが解けない問題かの判断が難しいです。合格ラインを突破するポイントは問題選定にあると言えるでしょう。難しいのは、一見すると解けそうで実は多くの手数をする難問であるケースや、逆に複雑に見える問題が設定さえ理解できれば解答の方針が立てやすいケースがある点です。普段から設定が複雑な難問に多く取り組んで、見た目の難しさに惑わされない力を養っておきましょう。また同校では、算数でありながら記述問題が出されます。2022年度は場合の数で、当てはまらないケースについてその理由を書かせる問題でした。問題の設定が理解できていれば対応できるのですが、言葉で説明する練習ができていないと、書き方に迷って時間がかかり過ぎてしまいます。算数の記述問題専門のテキストや、同校の過去問を通して、考え方を整理して記述する練習をしておきましょう。算数が得意でも同校の制限時間は余裕がないと考えておくべきでしょう。過去問演習で時間の感覚をしっかり身につけることが必須です。

国語

毎年、物語文1題の問題構成です。2022年度は小問数が全13題でした。問1が漢字の書き取り15題、問2は語句の意味を選ばせる問題が3語、他は選択肢問題と記述問題で、選択肢問題が6題、記述問題が5題と、問題の種類が幅広く、偏差値レベルからすると漢字や語句の意味問題が多い特徴があります。文章量は毎年多く、2022年度も9000字を超える長文でした。
駒場東邦で出題される物語文は年度によってテーマ、内容が異なりますが、自分の力では変えようのない事情を抱えた人物や、人間関係に悩む人物の姿を描いた作品が対象となることが多いです。2021年度の『あした、また学校で』は不登校になってしまった息子のことで学校の対応に悩まされる母親が主人公になり、2020年度の『夜の間だけ、シッカは鏡にベールをかける』ではブラジル人と日本人のハーフであることに悩む中学生の主人公が義足のダンサーと出会って変化して行く姿を描いています。2022年度は母親との関係に悩む中学生女子が主人公となる物語でした。女子が主人公となる物語や、恋心を扱う物語といった小学生男子が苦手とする内容が扱われることも多くあります。長い文章に対応する高い集中力、様々な内容にも対応できる力をじっかり養っておくことが必須です。
同校の選択肢問題は文章中の細やかな表現について問うものが多いですが、難度は高くありません。選択肢の内容が区別しやすいケースが多いので、ここでの失点は防いでおきたいところです。漢字や言葉の意味も難度の高い問題は少ないので、得点源にできるでしょう。合格ラインを突破するポイントは記述問題での得点です。同校の記述問題は全て制限字数が付きます。制限字数が付く記述問題はその字数をヒントに内容を決められるメリットがありますが、同校の記述問題についてはその字数におさめるのが難しいような内容を聞いてきます。主に人物の心情の内容やそれを抱く理由について問われますが、まず解答の要素が見つけづらい部分を対象としますので、正しく読解する力が求められ、それを答える字数が絶妙にまとめづらく設定されています。言葉の言いかえや使う要素と捨てる要素の判断をスピーディーに進めなければ時間ばかりがかかって得点も低くなってしまいます。普段の演習から、制限字数付きの難度の高い記述問題を重点的に解く対策が不可欠です。

[2022年度の出典]
相沢沙呼『教室に並んだ背表紙』

理科

2022年度は大問が5題で、小問数が全34題の構成でした。選択肢問題、語句を答える問題、計算問題、記述問題と問題の種類は幅広く、その中で計算問題は2題と少なめでした。記述問題は6題で、すべて制限字数なしです。また作図問題が1題、グラフを完成させる問題が1題含まれています。小問の数が多く、思考力を求める問題が多いうえに、記述問題、作図問題などが含まれるため、ボリューム感が非常に大きいテストです。
大問1は同校独特の各分野からの小問集合8題です。小問と言っても高い思考力を求める問題が含まれます。大問2は中和に関する化学分野の問題で、大問3は水中で生活する「水生生物」を題材とした生物分野の問題、大問4は川の流れのはたらきを中心とした地学分野の問題、大問5は電流回路と発熱についての物理分野の問題でした。
同校の理科は基本的な問題から難度の高い応用問題まで幅広く分布されています。基本問題には例えば川の「浸食作用」や「食物連鎖」を答えさせるなど瞬時に解答できる問題があり、また一見問題文が長く複雑そうな問題でも、文中のヒントを使えば簡単に解ける問題も含まれます。ただ、そうした問題はほんの一部で、大半は思考力や分析力を求める高難度の問題です。合格ラインを突破するポイントは、思考力を求める記述問題で正解を重なることです。同校の記述問題は難度が標準よりやや難しいレベルで、問題内容を的確に把握できれば、解答を作ること自体はさほど困難ではありません。もちろん正確な知識とコンパクトに解答をまとめる力は大前提になりますが、問題文の意味が複雑でなく、解答方針は立てやすいです。こうした記述問題で正解するためにも、普段の演習から、現象の背景や理由まで一歩踏み込んで「なぜ」の問いかけを忘れずに考える習慣を着実につくことが重要です。
また、同校の問題はボリュームがあり、最終問題は難度が高いので、そこに至るまでにできるだけ多くの時間を捻出すべく基本から標準レベルの問題はスピーディーに解く必要があります。思考力を求める問題が散らばっていますので、考える力を最後まで保たせる持久力が必要になります。普段から、長い時間でも集中が途切れないような練習を重ね、ボリューム感に慣れるために早めに過去問演習に取り組みましょう。

社会

同校の社会は、大問1題で、地理・歴史・公民それぞれの分野からの問題、そして時事的問題で小問が構成されます。2022年度は新型コロナウィルスによって人々の移動が制限される話題を切り口に、「ものと情報の移動」をテーマとした出題でした。小問数は全20題で、記述問題が5題に、穴埋めを含めた語句を答えさせる問題が7題、他は選択肢問題という構成です。ひとつの長いリード文が出されるのではなく、小問ごとに短めのリード文と地図を含めた資料が与えられます。小問数からすると制限時間40分は十分に思えますが、実際に解いてみると、時間的な余裕は全く感じられません。
語句を答えさせる問題には「福沢諭吉」や「祖(租庸調)」など基本的な内容が含まれ、記述問題も全てが難しくはありません。そうした基本的な問題は確実におさえるとして、合格ラインを突破するポイントは思考力を求める問題で正解数を重ねることです。同校の社会のひとつの特徴は、他では見ることのない独特な資料が使われることにあります。例えば2022年度であれば江戸時代の物価の上昇を「たこあげ」の様子に見立てて描いた絵画や、奈良時代の地域別の木簡を並べた写真などが示されました。また、複数の資料を照合させて解答させる難度の高い問題も出されます。時間的に余裕があればそれらの資料が示す内容を理解することは難しくはなく、その内容さえつかめれば解答のヒントが一気に掌握できるのですが、それらを限られた時間内に理解し、問題内容と照らし合合わせる作業をスピーディーに進めるには、瞬時に思考力を発揮させる訓練が必要です。その思考力は記述問題でも選択肢問題でも同じく求められます。単に記述問題の練習を闇雲に積んでも同校の社会を攻略する対策にはなりません。まず基本的な知識を徹底的に積み上げたうえで、資料を多く用いる入試問題を出す学校の問題を解き、知識をどのように組み合わせれば資料を読み解けるのかを認識できるようにしましょう。同校のリード文は読みづらいものではありませんので、長いリード文をもとにした入試問題は多く解く必要はないでしょう。それよりもリード文と資料を組み合わせて解かせる問題、独特の資料を用いる学校の問題を多量に解き、解説を熟読して、資料を見る目を養うことが有効です。制限時間の使い方も勝敗の分かれ目になりますので、同校ならではの時間の感覚を習得するためにも、過去問演習には早めに取り組みましょう。

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