駒場東邦中学校の傾向と対策

  • 併設大学あり
  • 高校外部募集なし
  • 男子校

志望にあたって知っておきたいこと

 2024年度卒業生は、東京大学に現役36名(既卒生と合わせて44名)、京都大学に現役3名(既卒生と合わせて8名)、東京工業大学に現役2名(既卒生と合わせて4名)が進学という高い実績を挙げました。その人気は東京男子御三家に迫るものです。中高6年の間にクラス替えはあっても、5月に行われる体育祭のチームは変わらず、先輩が後輩を指導するという伝統があるように、学年の超えたつながりが深く、学校OBと在校生の交流も盛んに行われています。

 入試問題は4科目とも難度が高く、特に高水準の記述力と問題処理能力が求められます。記述問題が国語や社会で多く見られるのは当然として、算数でも出題されるという他校にない特徴があります。どの科目も単に問題を解くだけでなく、問題内容についての深い理解と、自分の考えを正しく表現する力を持つことが大前提となるテストです。

 算数や理科では問題の内容が複雑なだけでなく、解答に要する手間が非常に多く、解答に多くの時間を必要とします。また国語の文章が長い点も同校の特徴で、超長文にも向き合えるだけの集中力が求められます。国語では2023年度から資料や会話文をもとに思考力を試す問題が出されています。社会では独特の資料から解答の要素を見つけ出す処理能力が問われ、選択肢問題、記述問題ともに難度が高いです。独特で難度の高い問題に慣れ、制限時間の使い方を習得するためにも過去問演習には早めに取り組む必要があります。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

 2022年度は大問4題で小問が全16題の構成です。大問1は小問集合4題、大問2は平面図形で、正十一角形と円を組み合わせる問題、大問3は長方形を並べてできた図形の中で、長方形の頂点を結んででできる図形を考察する問題、大問4は連続する整数の平方の和に関する問題でした。

 同校の算数には、簡単に解ける問題はほとんどありません。2024年度は計算問題は出されず、いきなり難度の高い小問集合からスタートしました。その小問集合に含まれる場合の数の問題は、テスト全体の中でも難度が高く、深追いしない判断が求められるレベルでした。

 同校では速さや割合と比といった文章題が出されるケースが少なく、2024年度でも大問1の時計算以外は、平面図形と場合の数、数の性質からの出題となりました。テスト全体を通すと、基本的な問題は限られますが、2024年度では大問1(1)①、大問2(1)、大問3(1)、と各大問の最初の小問には易しい問題が見られました。ただ、それ以降は解答の手順が複雑を極め、何より問題の設定が難解、内容を理解するだけでも大きな負担がかかるケースが多くなります。また、記述問題が出される点も同校算数の特徴のひとつとなっています。

 普段のテキストの演習だけでは太刀打ちできないのが同校の算数のテストです。当然、時間も余ることは想定できませんので、解かない問題をどれにするかを早めに判断する必要があります。

算数が苦手な受験生

 先に触れました通り、簡単な問題はなく、上述のような2024年度の基本的な問題は全ての受験生が正解すると考えておくべきです。まずは、解ける問題を少しでも見つけて、確実に得点することが必須です。単元として図形と数に関する問題が苦手では同校の算数は解けません。合格ラインを突破するポイントは図形、数の性質を得意まで行かずとも、苦手にしないように対策しておくことです。2024年度であれば、大問2の全問、大問3の最終問題以外は正答できるような対策を積んでおく必要があります。

 普段の単元演習でこれらの単元で得点が伸び悩んだ時には、早めに時間を捻出して集中特訓をしましょう。その際にもテキストの標準レベルの問題を解くだけでは対応力が養えませんので、応用問題、手数を多く使わせる難問を多く解くように心がけましょう。解けなくとも解説を読んで解法を増やす地道な積み重ねが不可欠です。

 制限時間以内に全ての問題を解こうとすると、結果解ける問題を取れなくなってしまいますので、捨てる問題をスピーディーに判断して、その分、解くべき問題に時間をかけて失点を防ぐという戦略を試す目的で過去問演習を進めましょう。

算数が得意な受験生

 複雑な設定の問題にも粘り強く取り組んで、問題の意味を確実に理解することが大前提です。同校の算数の問題は高い難度の中でわずかに難易の差がありますので、どれが解けない問題かの判断が難しいです。合格ラインを突破するポイントは問題選定にあると言えるでしょう。難しいのは、一見すると解けそうで実は多くの手数をする難問であるケースや、逆に複雑に見える問題が設定さえ理解できれば解答の方針が立てやすいケースがある点です。2024年度であれば、大問1(3)がまさに前者のパターンに該当します。この問題の難しさに気づくには、数多くの難関校の問題を解いて、難度の判断を的確にできるような対策が必須となります。

 また同校では、算数でありながら記述問題が出されます。2024年度は正三角形の問題で、面積が等しくなる理由を説明させる内容でした。前の小問の解答をそのまま使える点では、解答方針は立てやすいものでした。ただ、言葉で説明する練習ができていないと、書き方に迷って時間がかかり過ぎてしまいます。算数の記述問題専門のテキストや、同校の過去問を通して、考え方を整理して、まずは言葉にして説明したうえで記述する、といった流れで練習をしておきましょう。

 算数が得意でも同校の制限時間は余裕がないと考えておくべきでしょう。過去問演習で時間の感覚をしっかり身につけることが必須です。

国語

 毎年、物語文1題の問題構成です。2024年度は小問数が全14題でした。問1が漢字の書き取り15題、問2は語句の意味を選ばせる問題が3語、他は選択肢問題と記述問題で、選択肢問題が4題、記述問題が6題と、問題の種類が幅広く、偏差値レベルからすると漢字や語句の意味問題が多い特徴があります。また、2023年度から思考力を問う新しいパターンの出題が見られますので注意が必要です。文章量は毎年多く、2024年度は例年よりはやや少なめでしたが、それでも8000字近い長文でした。

 駒場東邦で出題される物語文は年度によってテーマ、内容が異なりますが、自分の力では変えようのない事情を抱えた人物や、人間関係に悩む人物の姿を描いた作品が対象となることが多いです。2021年度の『あした、また学校で』は不登校になってしまった息子のことで学校の対応に悩まされる母親が主人公になり、2020年度の『夜の間だけ、シッカは鏡にベールをかける』ではブラジル人と日本人のハーフであることに悩む中学生の主人公が義足のダンサーと出会って変化して行く姿を描いています。2023年度の『マイスモールランド』は、難民申請をしているクルド人一家の長女を主人公とした内容でした。

 2024年度は「男らしさ・女らしさ」という固定観念に悩む中学1年生男子を主人公とする物語で、2024年度に最も多く出題された連作短編集からの出題となりました。駒場東邦では、女子が主人公となる物語や、恋心を扱う物語といった小学生男子が苦手とする内容が扱われることも多くあります。長い文章に対応する高い集中力、様々な内容にも対応できる力をじっかり養っておくことが必須です。

 同校の選択肢問題は文章中の細やかな表現について問うものが多いですが、難度は高くありません。選択肢の内容が区別しやすいケースが多いので、ここでの失点は防いでおきたいところです。漢字や言葉の意味も難度の高い問題は少ないので、得点源にできるでしょう。

 合格ラインを突破するポイントは記述問題での得点です。同校の記述問題は全て制限字数が付きます。制限字数が付く記述問題はその字数をヒントに内容を決められるメリットがありますが、同校の記述問題についてはその字数におさめるのが難しいような内容を聞いてきます。主に人物の心情の内容やそれを抱く理由について問われますが、まず解答の要素が見つけづらい部分を対象としますので、正しく読解する力が求められ、それを答える字数が絶妙にまとめづらく設定されています。言葉の言いかえや使う要素と捨てる要素の判断をスピーディーに進めなければ時間ばかりがかかって得点も低くなってしまいます。普段の演習から、制限字数付きの難度の高い記述問題を重点的に解く対策が不可欠です。

 そして、2023年度から導入された思考力を問う出題ですが、2024年度は問題文の中のひとつの台詞をテーマとして、2人が会話する文章が掲載され、その中で穴埋めとなっている箇所に入る文章を考えて記述させる問題でした。「らしさ」という固定観念で物事が見られている具体的事例を説明する内容で、2023年度は日本の難民制度に関する資料が提示され、それをもとに選択肢問題を解く内容でした。

 これらに共通するのは、普段から社会に対して、どれだけの問題意識を持ち、ニュースに関心をもっているかが問われるものであるという点です。社会の時事対策にもつながりますが、ニュースを知識としてとらえるのではなく、そこから問題意識まで持つことを求められますので、時事的なニュースについて家庭内で話し合うことも有効な対策となります。

[2024年度の出典]
村上雅郁「タルトタタンの作り方」(『きみの話を聞かせてくれよ』所収)

理科

 2024年度は大問が5題で、小問数が全32題の構成でした。選択肢問題、語句を答える問題、計算問題、記述問題と問題の種類は幅広く、その中で計算問題は6題と多く、記述問題も4題出されています。さらに、グラフを完成させる問題が1題含まれています。小問の数が多く、思考力を求める問題が多いうえに、記述問題、作図問題などが含まれるため、ボリューム感が非常に大きいテストです。

 大問1は同校独特の各分野からの小問集合5題です。小問と言っても知識だけでなく、高い思考力を求める問題が含まれます。大問2は星座についての地学分野の問題、大問3は音の速さに関する物理分野の問題、大問4は水の温度変化を題材とした化学分野の問題、大問5はヒトと他の生物の心臓についての生物分野の問題でした。

 同校の理科は例年、基本的な問題から難度の高い応用問題まで幅広く分布されますが、2024年度は全体的に難問の割合が高くなりました。例えば、大問2の星座早見での太陽の位置を正しく表したものを選ばせる問題で、選択肢が8個と多く、差が見えづらい構成になるなど、解答に時間を要する難問が多く見られました。

 合格ラインを突破するポイントは、問題内容の正確な読み取りにあります。2024年度であれば大問3の音の速さの問題、大問4の水の温度変化の問題で計算問題が多数出されたのですが、これらの計算問題すべてが、問題内容を深く理解することを大前提としていました。計算自体はいたってシンプルなのですが、問題内容、特に実験の内容を正しく理解しなければ式が立てられないような難問です。

 記述問題も難度自体は標準よりやや難しいレベルで、問題内容を的確に把握できれば、解答を作ること自体はさほど困難ではありませんが、問題内容を正しく踏まえなければ満点答案を作ることはできません。されに、正確な知識とコンパクトに解答をまとめる力も当然求められますので、普段の演習から、現象の背景や理由まで一歩踏み込んで「なぜ」の問いかけを忘れずに考える習慣を着実につくことが重要です。

 また、同校の問題はボリュームがあり、最終問題は難度が高いので、そこに至るまでにできるだけ多くの時間を捻出すべく基本から標準レベルの問題はスピーディーに解く必要があります。思考力を求める問題が散らばっていますので、考える力を最後まで保たせる持久力が必要になります。普段から、長い時間でも集中が途切れないような練習を重ね、ボリューム感に慣れるために早めに過去問演習に取り組みましょう。

社会

 同校の社会は、大問1題で、地理・歴史・公民それぞれの分野からの問題、そして時事的な問題で小問が構成されます。2024年度は私たちが暮らす「社会」の在り方、変化をテーマとした出題でした。小問数は全20題で、記述問題が6題、語句を答えさせる問題が4題、他は選択肢問題という構成です。ひとつの長いリード文が出されるのではなく、小問ごとに短めのリード文と地図を含めた資料が与えられます。小問数からすると制限時間40分は十分に思えますが、実際に解いてみると、時間的な余裕は全く感じられないテストです。

 語句を答えさせる問題には「執権」や「イギリス(EUから離脱した国として)」など基本的な内容が含まれ、記述問題も全てが難しくはありません。そうした基本的な問題は確実におさえるとして、合格ラインを突破するポイントは思考力を求める問題で正解数を重ねることです。

 2024年度であれば、「学校という社会で起こる問題を解決するためのルール」について、資料をもとに3人の中学生が会話する形式の問題が出されました。問題自体はスタンダードですが、形式に戸惑わない対応が必要となります。また、室町時代には社会において祭りが重要であった理由について、提示された村の特徴をもとに考察する記述問題も出されています。

 さらに、最終問題では、冒頭のリード文における「社会」の考え方に基づいて適切な選択肢を選ばせる問題が出されました。選択肢の文章はどれも内容としては正しく、リード文の考え方を反映させるといった国語の読解問題のような解き方を求めるものです。

 こうした思考力を求める問題に対応するためには、単に知識を増やして標準的なテキストにあるような記述問題の練習を闇雲に積むだけでは十分とは言えません。まず基本的な知識を徹底的に積み上げたうえで、資料を多く用いる入試問題を出す学校の問題を解き、知識をどのように組み合わせれば資料を読み解けるのかを認識できるようにしましょう。同校のリード文は読みづらいものではありませんので、長いリード文をもとにした入試問題は多く解く必要はないでしょう。それよりもリード文と資料を組み合わせて解かせる問題を多量に解き、解説を熟読して、資料を見る目を養うことが有効です。

 制限時間の使い方も勝敗の分かれ目になりますので、同校ならではの時間の感覚を習得するためにも、過去問演習には早めに取り組みましょう。

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