桜蔭中学校の傾向と対策

  • 併設大学なし
  • 高校外部募集なし
  • 女子校

志望にあたって知っておきたいこと

東京女子御三家の1校であり、女子最難関の学校です。「礼と学び」を建学の精神とし、学識だけでなく品性も養成することが重視され、食事の作法、訪問と来客接待の作法、さらには襖の開閉などを指導する「礼法」の授業(中学3年間と高校2年時)があります。2023年10月には新しい東館が完成する予定です。2023年度の大学合格実績では卒業生数231名のうち東京大学に72名、東京医科歯科大学に12名、京都大学に6名が合格(すべて既卒生含む)するなど、高い合格実績を挙げています。入試問題は、4科目の中で算数・国語の難度が非常に高く、理科・社会と難度の差が大きいという特徴があります。算数は女子最難関にして、男子最難関に匹敵する難しさです。問題内容をスピーディーに理解し、手数の多い解法を正確に積み上げ、そして異様に複雑な計算をミスなく処理する、といった受験算数の総合的な力が高レベルで求められます。国語も難度の高い文章を正確に読み通すための語彙、問題の半分以上を占める最高難度の記述問題で伝わりやすい文章を作るための語彙の両方を持つことが必須となります。理科・社会は基本から標準レベルの問題が多いですが、同校の受験生であればそれらを確実に全問正解してきますので、高難度の選択肢問題を得点することが大前提となり、そのためには深い知識をアウトプットできるような訓練が必須です。どの科目のテストも制限時間に余裕は全くありませんので、過去問演習で時間配分を徹底的に鍛えておく必要があります。算数・国語については男子最難関校の問題を類題として活用することも有効です。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2022年度は大問4題で小問数が全14題の構成です。大問1が計算と小問集合、大問2が速さから時計算の問題、大問3も速さで、流水算の問題、大問4は立体図形と条件整理が合わさったタイプの問題でした。大問1以外はすべて式と計算を書かせるタイプの問題で、立体図形の問題では作図も出題されています。
桜蔭の算数が女子最難関のテストと言われる要因は、テキストの問題演習で培った力だけでは対応できない問題が多く出される点にあります。2022年度であれば大問4の立体図形の問題。立方体の底面となる正方形の並べ方を場合分けしたうえで、その上に積み上げる立方体の形状について考察する問題なのですが、図形の問題としての要素だけでなく、条件を整理する問題の解法も使うことになります。問題内容を正確に理解することが難しいだけでなく、当てはまるケースを絞り込んでからは立体図形の形状を正しくイメージする力も求められます。途中の小問にある作図問題の解答を通して解答の方針を定めることができますが、複数の要素を組み合わせて解かなければならない難問です。この大問を全問正解することが難しいため、その他の問題を確実に正解する必要がありますが、他の問題にも難問が含まれるため、制限時間50分の中で正解数を増やす戦略が非常に立てづらいテストです。

算数が苦手な受験生

大問1の小問集合から難問が多い桜蔭の算数ですが、取り組みやすい問題も含まれます。特に後半の大問の中には最初の小問で解答方針が立てやすいものが多く、2022年度も大問2、大問3の最初の小問は標準レベルの問題でした。桜蔭の算数では、特に「立体図形」「規則性」「速さ」の出題頻度が高いです。合格ラインを突破するポイントはそうした頻出単元で標準レベルの問題を確実に得点することにあります。標準レベルとは言っても、2022年度の大問3のようにグラフを使って複雑な流水算の内容を整理するなど手間のかかる問題が多いので、普段の演習では上記の頻出単元について、テキストの応用問題以上のレベルの問題を多く解いて、解法を多く備えておくようにしましょう。また、同校の算数の特徴のひとつとして、問題の答えが非常に複雑な数値となることがほとんどです。自分の求めた解答が正しいのか迷ってしまう程の複雑さですので、普段から計算練習は徹底的に固め、普段の模試などで式や計算を見やすくかいて細かなミスを起こさないような対策をくり返し行っておくことが重要です。全ての問題を解くことが難しい可能性が高いので、過去問演習では抜かす問題を早めに判断することも練習しておきましょう。

算数が得意な受験生

算数が得意な受験生にとっても桜蔭の算数は解き進めることが難しく感じられるでしょう。まずは頻出単元である「立体図形」「規則性」「速さ」については、普段受ける模試で最終問題に入るような難問でも解答方針が立てられるように、日々の演習で難問を多く解いておきましょう。同じ女子校の豊島岡女子、男子最難関校の中でも開成、麻布、栄光学園など難問ぞろいの学校の問題も演習して、正解できないまでも見直しを通して解法を多く積み上げることも有効な対策となります。合格ラインを突破するポイントは、時間の使い方にあります。同校の受験生レベルを考えると、最高難度の問題以外では正解数を多く積み上げてくることが想定されますので、最高難度の問題でどれだけの得点を上げるかが勝負の分かれ目になります。そのためには、時間をかけて解く問題とスピーディーに解き進める問題とのバランスを見極めることが重要です。同校の算数では計算が非常に複雑なため、計算力の高い受験生にとっても大きく解答時間を削るのはリスクを高めてしまう可能性があります。無理にスピーディーに解き進めることよりも、問題を見て解答方針を立てるまでの時間を短縮させる方が得点が上がる可能性が高くなりますので、難問に慣れることを第一に日々の演習を重ねましょう。

国語

2022年度は大問2題で、小問数が全13題の構成です。大問1が説明文読解、大問2が物語文読解でした。同校の文章の種類は例年、物語文が1題、もう1題が説明文か随筆文となっています。文章量は年度によって異なり、2022年度は大問1が短めでしたので、全体としては短めになりました。同校の国語で出題される説明文は語彙の難度が高く、量も多いため、読み進めるのが困難なケースが多いのですが、2022年度の説明文は語彙、量ともに標準レベルで読みやすいものでした。ただこの傾向が続くとは言えず、難度の高い文章が出るとして備えておくべきです。問題の種類は圧倒的に記述問題が多く、2022年度は全13題のうちの7題が記述問題で、すべて字数制限なしでした。その他は漢字の書き取り、慣用句を含む言葉の知識の問題が出されました。
桜蔭の国語で合格ラインを突破するポイントは全問題数の半分以上を占める記述問題で高得点を取ることにあります。その他の問題が漢字知識になることが多く、同校の受験生であれば全問正解する可能性が高いので、差がつくのは記述問題となります。この記述問題の難度レベルが最高峰にある点が、桜蔭の国語が最難関と言われる所以です。その特徴は、解答のポイントを文章中の広い範囲から見つけ出すことが必要なため、どの場所を選んで、どのようにつなげるかといった高い編集力が求められるところにあります。その過程で自分の言葉を交えたり、文書中の言葉をよりわかりやすい内容に変換しなければ、解答が破綻してしまうような問い方をあえてしてくるのです。2022年度の大問1の記述問題は異例と言える程に解きやすく、解答のポイントに当たる箇所を要約すれば解答になる問題が多かったのですが、このパターンが続くとは思わない方がよいでしょう。文章を正確に読み取る語彙、採点者にわかりやすく伝える語彙の両方を持っていなくては桜蔭の記述答案を作成することは不可能です。過去問演習の採点をする際の注意点として、過去問題集の模範解答が難解な文章になるケースが多く見られます。難解な言葉を使い過ぎて、わかりづらい文章となることは避けなければなりませんので、記述答案の添削は塾の先生などにお願いする方がよいでしょう。記述対策として、学習院女子や武蔵中、栄光学園中といった高難度の記述問題を出す学校の問題も類題として活用することも有効です。

[2022年度の出典]
森田真生『僕たちはどう生きるか 言葉と思考のエコロジカルな転回』
高橋克弘『そらのことばが降ってくる 保健室の俳句会』

理科

2022年度は大問が4題で、小問数が全26題の構成でした。選択肢問題、語句を答える問題、計算問題、記述問題といった問題の種類の中でも計算問題の割合が高い特徴があります。記述問題は3題ですが、いずれも理由を短い字数で説明させるものでした。
2022年度の大問1は動物の分類についての問題、大問2が熱による状態変化をテーマとした問題、大問3は飽和水蒸気量に関する問題、そして大問4はものの燃え方についての問題でした。例年、化学・物理・生物・地学分野から万遍なく出題されることが多いですが、2022年度は化学分野の問題が多く出されました。
桜蔭の理科の中には、驚くほどに基本的な問題が含まれます。2022年度も、「関節」や「筋肉」を答えさせる問題や、理科の知識ではなく日々の生活の常識の範囲で答えられる問題が見られました。また、記述問題も年度によっては難問となりますが、2022年度はスチールウールの燃える原理という頻出の問題が出されており、最難関の桜蔭の問題がこんなに簡単でよいのか、と思わせる程に難度が低い問題が散在する特徴があります。言うまでもなく、このレベルの問題は桜蔭受験生であればほぼ全員正解すると考えられ、失点してしまうと大きく差をつけられると思って臨む必要があります。合格ラインを突破するポイントは計算問題での得点です。先に触れたような基本的問題からは大きく難度がレベルアップする桜蔭の計算問題は、理科の知識をもちろん必要としながら、与えられた資料、グラフ、そして問題文を正確に読み取り、そこからヒントを的確につかみ取る力が求められる、まるで算数のようなタイプの問題が多く見られます。そして前の問題で求めた数値を次の問題で利用するといった「誘導型」の問題が多いため、1問を間違えてしまうと雪崩式に間違いが連なってしまいます。制限時間が30分のため、細かく計算の見直しをする時間は多く持てません。まずは難度の低い問題を最大限のスピードで解き進め、計算問題に時間をかけられるような配分で進めましょう。そのうえで計算式をわかりやすく残しておいて、見直しができた際には即時チェックができるような体勢がとれるように、過去問演習の段階でしっかり練習をしておく必要があります。普段の演習でも計算問題は重点的に対策したうえで、早稲田中や巣鴨中といった男子難関校の計算問題を類題として活用することも有効です。

社会

2022年度は大問3題で、小問数は全52題という構成でした。問題の種類は、選択肢問題、記述問題、語句を答えさせる問題ですが、特に語句を答えさせる問題の割合が高いです。分野は地理・歴史・公民すべてからの出題ですが、公民分野の問題数が他分野と比べて少ない特徴があります。
2022年度の大問1は人や物の交流をテーマにした地理分野の問題、大問2は日本の医療の歴史についての問題、そして大問3は日本の現代史と政治に関する問題でした。
桜蔭の社会は、理科と同じく基本的難度の問題が多く見られる特徴があります。特に地理・歴史分野の穴埋め問題はテキストの基本問題に掲載されるような問題が大半で、解きやすい内容が多く見られます。ただし、漢字指定ですので、人名・地名を正確に書けるような練習は不可欠です。桜蔭の受験生レベルを考えると、標準的な難度の問題はすべて正解することが必須ですので、漢字のミスなどは断じて許されません。記述問題は、2022年度は「摂政・関白になるために天皇とどのような関係を築いたか」といった基本的な問題が多かったですが、中には「北関東自動車道の完成前後の変化について」など、リード文にも明記されていない内容を正しく推察してまとめる問題など、思考力を問う出題もあります。また、独立した時事問題は出題されませんが、「自然災害伝承碑」や「復興税」といった最近話題となった内容をヒントなしで答える問題が出されるように、日頃のニュースなどの情報を敏感にキャッチする姿勢が求められます。その中で、合格ラインを突破するポイントは難度の高い選択肢問題での得点にあります。2022年度であれば、複数の内容について、正誤の組合せを答えさせるタイプの問題で細かな知識と選択肢の区別が求められる出題がそれに該当します。こうした問題も、時間をかけられれば正解に行き着くチャンスは広がるのですが、それが許されないのも桜蔭の社会の大きな特徴です。制限時間30分に対して小問数が50を超え、その中に記述問題が含まれ、また問題の題材となるリード文や資料を正確に読み取る時間も必要になります。スピーディーに問題を解き続け、記述問題も正確に解答し、漢字に留意して語句を書いたうえで、難度の高い選択肢問題での正答を重ねるといった、高い集中力と思考する体力が求められるテストと言えます。

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