鷗友学園女子中学校の傾向と対策

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志望にあたって知っておきたいこと

 2023年度東大合格者13名(現役12名、13名中の6名は理科1類・理科2類)をはじめとして、海外大学を含め、高い大学合格実績で人気を集めています。

 4科目ともに100点満点の配点ですので、理科・社会も十分に対策しておかなくてはなりません。算数では式を書く問題がほとんど、国語は漢字の書き取り以外は全て記述問題と、書いて答える問題が多い点が特徴的です。

 理科でも記述問題が多く出されます。普段から頭の中だけで処理するのではなく、考え方を整理して書いて解く練習を重ねることが必須です。1問あたりの配点や解答用紙の使い方などを確認できるように過去問演習は早めに進めておきましょう。

 2025年度より算数の出題形式に変更があり、これまでは大問2以降はすべての問題で式や考え方を書かせる形式でしたが、2025年度からは答えのみを書かせる小問集合の割合が高くなります。出題される単元の構成、難度に変更はありません。詳細は学校HPにサンプル問題付きで公開されています。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

 2024年度第1回は大問7題で小問が全12題の構成でした。大問1が計算問題、大問2が比と割合の文章題、大問3が平面図形の角度の問題、大問4が規則性の数表の問題、大問5は立体図形の回転体の問題、大問6が平面図形の面積比・相似の問題、大問7が速さとグラフの問題でした。

 大問2以降の全ての問題が式や考え方を書かせる形式になっています(2025年度からはこの形式が変更となります)。問題の難度は基本から標準レベルで、テキストや模試で解き慣れたタイプの問題がほとんどです。その中でも同校で頻出なのが、平行四辺形(2024年度第1回は台形でした)を使った面積比・相似の問題と、速さとグラフの問題です。これらの単元を中心に、苦手単元がないように、普段の演習から幅広く単元演習を重ねておきましょう。

 同校では問題内容を正確に読み取る力と、考え方をわかりやすく伝える力が求められます。2024年度第1回でそれが顕著であったのが、最終の大問7でした。一見すると複雑な速さの問題ですが、問題内容を正確にグラフに反映させれば、動きの変化が一気にわかりやすくなり、正解まで行き着くことができます。普段から問題内容を正確に受け止める意識を持って、テスト問題の復習では解説をよく読むようにしましょう。

 また、同校では計算の結果が小数や分数になるなど複雑になるケースが多く見られます。大問1の計算問題も簡単ではありませんので、計算演習も徹底的に進めておきましょう。

《2025年度の出題形式の変更について》

 これまでは大問2以降はすべての問題で式や考え方を書かせる形式でしたが、2025年度からは答えのみを書かせる小問集合の割合が高くなり、前半の小問集合と後半の記述式の問題で、出題割合が1:1になる予定です。

 問題用紙の形態も、これまでは問題と解答がひとつにまとめられていましたが、2025年度からは問題はA4冊子、解答用紙はA3両面印刷で2つ折りにして問題冊子に挟み込みとなる予定です。

 小問集合が増えるため、全体の問題数は少し増えますが、出題される単元の構成、難度はこれまでと変わりませんので、過去問演習が有効である点は変更ありません。

 詳しくは学校HPにサンプル問題付きで解説されていますので、参照されてください。

算数が苦手な受験生

 2025年度からは小問集合の出題割合が増えますので、合格ラインを突破するポイントは、それらの小問集合での得点を多く重ねることにあります。注意すべきは、出題が予想される単元の幅が広いことにあります。かつてはニュートン算も出題されたことがあるように、同校ではどの単元も出題対象となり得ます。普段の演習から標準レベルの難度の問題は単元を問わず対策をしておくようにしましょう。

 また、同校の算数では、計算結果が複雑になるケースが見られます。自分が出した計算の答えが間違っているのではないかと不安になることがないように、計算練習は徹底的に進めておきましょう。

 出題割合が減るとはいえ、後半には記述式の問題が出されますので、ここでも得点を重ねれるように、普段から式を丁寧にかいて解く練習、グラフや図形に見やすくかき込みをする練習を徹底しておきましょう。

算数が得意な受験生

 2025年度から出題形式の変更がありますが、記述式の問題でいかに多く得点を重ねるかが、合格ラインを突破するポイントとなります。特に平行四辺形を題材とした面積比・相似の問題、速さのグラフの問題は同校では定番と言える頻出単元ですが、この単元での問題の難度は引き続き高くなると予想されます。これらの単元については、男子難関校の問題も類題として取り組み、対応力をアップさせておきましょう。

 また、2024年度第1回の大問4(規則性の問題)のように、与えられた情報をどの視点から受け止めるかによって解きやすさが大きく変わるような問題も出されます。算数が得意であれば、解き方に関わらず、高い計算力をもってすれば解けるタイプの問題ではありますが、解き方を変えることで、解答速度、正確さに大きな差が生まれます。普段の演習から、自分の解き方にこだわり過ぎず、柔軟に解法を使い分ける意識を高く持っておくようにしましょう。

 2025年度の形式の変更では、全体の問題数が増えることになりますので、時間の使い方への意識をより高く持つ必要があります。HPに公開されたサンプル問題を参照にして、前半の小問集合と後半の記述式問題にかける時間のバランスを確認しておきましょう。

国語

 2024年度第1回は大問3題で、大問1が物語文読解、大問2が説明文読解、大問3は漢字の書き取り5題という例年通りの構成でした。読解は全て記述問題で、小問数は大問1が4題、大問2が2題の全6題と少なく、満点が100点ですので1問あたりの配点は最も低くて12点、最高で18点と高くなっています。問題数は少ないですが、大問1の物語文がとても長いため、時間配分を十分に意識して進める必要があります。

 大問1の物語文の分量が多いことが同校国語の特徴のひとつで、2024年度第1回の文章も実際の問題用紙で9ページと非常に長くなりました。普段から長い文章に慣れていないと多大な時間を費やすことになってしまいます。

 内容は浅草の和菓子屋で働く女性が、男性社会の和菓子の世界で、先輩の職人たちの支えを受けながら奮闘する様子を描いたもので、等身大の人物が主人公の物語ではなく、人物どうしの関係が一部わかりづらい部分がありますが、物語の展開自体はつかみやすいものでした。

 問題は登場人物の心情変化と、物語の内容を端的にまとめるといった内容で、同校の国語らしく、文章全体の流れを正しく整理できていなければ満点解答がつくりづらいようになっています。

 大問2の説明文の分量は標準レベルで、周りの声に流されずに自分の行動に責任を持つことの重要性を訴える文章でしたが、難しい語句は含まれず、理解しやすい内容でした。

 2題の記述問題はいずれも表現について説明するものですが、問2は文章全体が訴えている内容を100字以内でまとめる問題です。難度は高くはないのですが、普段から要旨をまとめる作業をしておく必要があります。

 大問1、大問2ともに文章の内容は読み取りづらいものではなく、問題も記述すべきポイントがはっきりしていますが、いざ文章にまとめようとすると、どこまで詳しく記述すればよいのか、どのような構成で文章を作ればよいのか、といった様々な課題に直面します。

 合格ラインを突破するポイントは、記述答案の解答要素を文章中から抽出して、それを伝わりやすい文章となるように、的確な構成の中に含める点にあります。同校で高得点を得るような答案を作成するには一朝一夕の訓練では足りません。早めの時期から記述答案の作成方法を基礎から築き上げて、同校の問題以外にも、学習院女子や男子の武蔵といった記述問題を多く出す学校の問題も活用して、表現力を高めておく必要があります。

 また、非常に長い物語文の内容を的確に把握することも同校の対策として不可欠です。物語文の圧倒的な分量にひるむことがないように、普段から少しでも多くの文章に触れる習慣を身につけておきましょう。

 例えば模試で解いた物語文の出典を入手して、テストで扱われた場所の2倍分の分量を読むなど、長い文章を一気に読み通す練習も有効となります。説明文については要旨を100字以内でまとめるといった対策も取り入れるとよいでしょう。

[2024年度第1回の出典]
大問1:上野歩『お菓子の船』
大問2:森達也『集団に流されず個人として生きるには』

理科

 2024年度第1回は大問が4題で小問が全33題の構成でした。大問1は地学分野から火成岩に関する問題、大問2は混合物から物質を区別する実験を題材とした化学分野の問題、大問3が物理分野からレンズを用いた光に関する問題、大問4はヒトの心臓と血液の循環についての生物分野の問題でした。

 問題の種類は、計算問題が8題、記述問題が5題、図に書き込みをする問題2題の他は、選択肢問題、語句を答えさせる問題からなります。

 全ての大問の中で基本・標準レベルの難度から難問まで幅広く小問が分布しています。各大問の前半には、塾テキストやテストでよく見るタイプの問題が出され、知識レベルは一部応用に近いものが含まれますが、ほとんどが基本から標準レベルの問題です。

 ただし、生物分野・地学分野の知識問題では、2024年度第1回の火成岩の分類のように、細かいところまで問われることがありますので、標準レベルの知識の集積にもれがないように備えておくことが重要です。

 問題の題材となる実験は、奇抜な内容や独特の設定のものは見られませんが、複数の実験を組み合わせるタイプの設定が出されることがあります。2024年度第1回では、化学分野の大問2で、砂糖や炭酸カルシウム、塩化ナトリウムなど5種類の物質の混合物からそれぞれの物質を取り出すための実験として、8種の実験を連続して行う問題が出されました。

 物質の特質をふまえて、その物質を抽出する実験内容を理解する力が求められる問題でしたが、こうしたタイプの問題で得点を重ねるためには、普段から実験について目的から結果までの過程を細かく見る習慣が必須となります。テストの実験問題では、どこまでその目的を理解できていたかまで、丁寧に見直す意識を高めておきましょう。

 合格ラインを突破するポイントは大問の前半で出題される内容を的確に後半の応用問題に利用することにあります。同校の理科では、大問の前半には各分野の基本的内容を出題して、後半にその内容を踏まえた応用問題が出されるケースが多く見られます。

 2024年度第1回でも、大問3では前半にレンズの基本問題が出され、後半にはヒトの目でレンズにあたる「水晶体」を題材とした問題が出されています。また、大問4ではヒトの心臓と血液循環の基本問題が前半に出されたうえで、後半には胎児の心臓が出題対象となりました。

 こうした問題に対応するために、塾テキストやテストの応用問題を見直す際に、どのような基本的知識が必要であったのかを確かめる意識を強く持つようにしましょう。同校のようなひとつの大問で基本から難問まで幅広く分布する問題を解く際に、問題どうしのつながりを意識しながら解く力の養成につながります。

 問題数の多さから、難度が高くても極端に配点が高い問題はないと推測されますので、難しい問題は抜かすことも意識して過去問演習に取り組みましょう。

社会

 2024年度第1回は大問3題で小問が全29題の構成です。記述問題が9題、語句を答える問題が6題と、書かせる問題の割合が半分を占めます。記述問題に制限字数はありませんが、後半に思考力を求める難度の高い問題が出されます。選択肢問題は一部細かな知識を求めるものがありますが標準レベルの難度の問題が多いです。

 大問1は日本の農業を題材とした地理分野の問題、大問2は「税」をテーマとした歴史分野の問題、大問3は日本の政治に関する公民分野の問題と時事問題の複合問題です。

 全ての大問に共通して資料を使った問題が多く含まれています。雨温図や円グラフといった普段の演習でも目にすることが多いものだけでなく、写真や表が何を表しているのかを理解するところから始めなくてはならない、独特の資料が出される点が特徴的です。

 2024年度第1回では、ロシアをめぐる国政情勢に関連する新聞記事や、江戸時代の年貢のかけ方の変更を表した表などが出されましたが、例年よりも独特の資料は多く見られませんでした。

 ちなみに同校の資料はほとんどがカラーで提示されます。そうした資料で得た情報をどのように活用するかについて、問題の指示を正しく受け取る力も必要となります。特に記述問題では、問題の中で条件が指定されることが多いので、問題の読み取りが雑にならないよう十分に注意しなくてはなりません。

 合格ラインを突破するポイントは記述問題での正答率をアップさせることにあります。鷗友学園女子の社会といえば記述問題が特徴であることが知られていますが、出題される記述問題全てが難しくはありません。資料やリード文を読み取り、問題の指示にしっかり従えば、標準レベルの知識で十分に解答を作ることができる問題もあります。

 2024年度第1回でも、日本の自動車会社が東南アジアに多くの工場を建設する日本の自動車会社、現地の人々それぞれにとってのメリットを説明する問題や、鎌倉時代の守護の役割を説明する問題といった、テキストにそのまま記載されてるような頻出パターンの問題が出されています。

 まずはこうした頻出パターンの記述問題を確実に得点につなげられるように、普段から記述問題の練習をくり返し、模試やテストで間違えた記述問題については解説を熟読し、自分で再度解答をつくるといった対策を徹底的に重ねておきましょう。

 そのうえで注意すべきは、特に大問3の公民分野で出されるような難度の高い記述問題でいかに得点をとるかにあります。2024年度第1回では、大問3の最終問題で、ChatGPTなどを代表する生成AIに関する資料文をもとに、生成AIの問題点について説明させる問題が出されました。

 こうした問題では、単に資料を読み取るだけでなく、そこから考えられることを整理して時事的内容を含む知識と組み合わせて説明する、高い思考力が必要となります。普段の演習から時事的な重大ニュースは必ず整理して知識を固めたうえで、難度の高い記述問題に多く取り組み、知識をどのように解答に活用させればよいかといった考察を、時間をかけてでも進める対策が有効です。

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