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2024年度から新傾向のグラフ読み取り問題が出されました。作業量が多いテストから思考力を問うテストに移行しています。整理した解き方ができるタイプ向きです。
神奈川男子御三家の1校で、東大合格者数は神奈川県の学校で最多です。2024年度には東大合格者数が100名(うち現役86名)に達し、大きな話題になりました。カリキュラムの枠を超えた体験型学習を実施する「聖光塾」の設置など、生徒の自主的な考えを育成する教育が行われています。
入試問題は特異な設定や奇抜な問題はなく、4科目とも日々の訓練の成果が反映されやすいタイプのテストと言えますが、求める知識レベルは高いうえに、制限時間に対して行うべき処理数が非常に多い特徴があります。
算数では2024年度に、これまでにはない新傾向の出題がありました。正確に資料を読み込めば難度が高い問題ではありませんでしたが、これまで同校受験の際に必須であった「作業を多く正確に積み上げる力」だけでなく、「情報を正しく整理し思考する力」も求められるようになってきています。
また国語、理科、社会は共通して選択肢問題の難度が高い特徴があります。正確な知識を問題に合わせてスピーディーに活用する力が求められます。国語の物語文で、小学生には実感をもって理解することが難しい設定の作品が多く出題される点も特徴的です。
2024年度から新傾向のグラフ読み取り問題が出されました。作業量が多いテストから思考力を問うテストに移行しています。整理した解き方ができるタイプ向きです。
難度の高い文章をもとにした選択肢問題が多い点が特徴的です。物語文は大人を主人公とした文章が使われることが多いです。選択肢問題に強いタイプ向きです。
正確な知識を問題内容に合わせて的確に組み合わせて解く力が求められます。リード文、実験結果からスピーディーに解答要素を導き出すことができるタイプ向きです。
正確な知識だけでなく、時事的な知識、大人向けの語彙が必要となるテストです。小問数が多く時間が短く時間配分に注意が必要です。選択肢問題に強いタイプ向きです。
2024年度第1回は大問5題で小問が全17題の構成です。大問1が計算問題1題、小問が2題で、大問2が平面図形と規則性を合わせた問題、大問3が立体図形の回転移動の問題、大問4が速さと周期の問題、そして大問5が新傾向のグラフ読み取りの問題でした。
2024年度第1回の大問5は、与えられたグラフからデータの特性を読み取り、そこに割合の計算を交えるタイプの問題でした。割合の計算では、もとにする量を100から200、300に調整するという加工が求められました。新傾向ではありますが、小問5題すべてが難問ではなく、(1)(3)は算数の基本的な知識で対応できる内容でした。そのためか合格者平均点110.9点(2023年度第1回は105.3点)、受験者平均点93.1点(2023年度第1回は81.5点)ともに2023年度より高くなりました。
新傾向の大問5以外では、大問2、4の難度が高く、この2つの大問に時間をかけ過ぎてしまうとテスト全体の点数が上がらなくなってしまう構成になっていました。2023年度までの多大な作業を要する問題は少なくなりましたが、その分、大問2、4では思考力を求める問題が多く見られました。また、大問2の「平面図形+規則性」、大問4の「速さ+周期」といった複数の単元が組み合わさる同校ならではの問題が2024年度でも出されました。
大問1では満点を目指し、さらに短時間で正解まで行き着きたいところです。特に2024年度第1回のように大問1の難度が低い場合は、多くの受験生が満点をとってくると考え、スピーディーかつ正確に解答を進める必要があります。書き出しや図を使う解法を確実に使いこなしましょう。
合格ラインを突破するポイントは大問2以降の問題を解く順番を早急に判断することにあります。特に2024年度第1回では大問5に新傾向の出題がありましたが、問題の難度自体は大問2、4より低く、「新傾向なので難しい」といった考えは捨ててチャレンジする姿勢が求められました。
難度の高い大問でも(1)は正確な作業をすれば得点できるケースが多くあります。特に作図やグラフをかく問題(2024年度第1回では大問4(1)のグラフをかく問題)は何としても正解したいところですので、普段の演習から作図・グラフをかく問題は多く演習しておくようにしましょう。
2023年度までであれば、手数の多くかかる作業をスピーディーに正確に進めることがポイントでしたが、2024年度第1回のような思考力を求める問題が多く出される年度も今後増えてくると見込まれるため、合格ラインを突破するポイントは新傾向問題以外の、典型的な出題タイプにひとひねりを加えられた問題(2024年度であれば大問2、4)で正解数を重ねることにあります。
ひとひねりと言っても同校では発想力やひらめきを求める問題は多く出されません。問題内容を正確に読み取り、図を再現する、書き出しを行うといった作業を通して、これまでに学習したどの解法を使えばよいのかを見つけ出す、といった流れが必須になります。さらにこの流れをいかに速く進めるかが勝負の分かれ目になりますので、基本的な解法は早期に身につけ、普段のテストや公開模試の終盤の問題を通して、解法の使い方を鍛錬するようにしましょう。
今後、2024年度第1回の大問5のような新傾向タイプの問題が出される可能性がありますので、大問4まででも抜かすべき問題は抜かし、新傾向タイプの問題に落ち着いて取り組めるように時間を捻出するようにしましょう。さらに2024年度大問5の(2)(4)のグラフを読み込んでデータを比較すれば正解できるような、時間を使えば得点のチャンスが広がるような問題で正解を重ねられるように、時間配分に意識した解き進め方を身につけましょう。
2024年度第1回は大問1が漢字の書き取り5題、大問2は語句知識(難語を意味から字数に合わせて答える)の問題が5題、大問3が物語文の読解、大問4が論説文読解という大問4題構成でした。読解の小問数は大問3が11題、大問4が10題で2つ合わせて全21題と標準的ですが、文章量が多く難問が多いので、制限時間60分は余裕が持てる時間設定ではありません。
同校の物語文は、中学受験生にとって等身大ではない人物が主人公となり、その年代ならではの心情の移り変わりが描かれる作品が使われる傾向が強まっています。2024年度第1回も、好意を寄せる女性にプロポーズする機会を探る男性が、女性と風変わりなレストランに訪れる場面を描いた内容でした。女性の言葉が意味するところを深く理解しなければ解答できない問題が多く含まれる難問でしたが、同校では標準レベルの出題であったと言えます。
大問4の論説文は、「友情」についての哲学者カントの見解を紹介する内容で、語彙レベルも高く、容易に理解できるレベルではありませんでした。それでも物語文と比べると、中学受験で出される論説文の中での難解さですので、普段の演習で難度の高い論説文読解の練習を多く積んでおけば、対応の糸口は見つけられます。ただし、文章内容を深く正確に理解しなければ得点できない問題ばかりである点は物語文と共通しています。
物語文、論説文ともに選択肢問題が占める割合が高くなっていますが、合格ラインを突破するポイントはこの選択肢問題を攻略することにあります。同校の選択肢の文章の長さは標準よりも短めですが、内容の違いが見えづらく、明らかに消去できる選択肢が少なくなっています。先にも触れましたように、問題内容の正確な理解が前提となりますので、文章の読み込みが甘いと解答に時間がかかるうえに正しい選択肢を選ぶのが困難になります。
例えば2024年度第1回大問3の物語文読解の問2は、主人公が「小箱を鞄の中へ滑らせた」場面を対象に、主人公の心情を選ばせる問題でした。選択肢の文末の表現から絞り込みはできるのですが、主人公と一緒にレストランに来た女性の心情がどのように変化し、それを主人公がどのようにとらえているかを的確にとらえなければ正解をとれない問題でした。
この問題では、文章の冒頭にあるリード文(これまでの状況を説明する文)を正確に理解し、傍線部から少し離れた場所での女性の様子にまで着目するといった「視野の広さ」が求められました。同校の選択肢問題で正解を得るには、普段の演習でから文章全体を見渡す視点を持ち、解答のヒントを選び出す力が求められるのです。
記述問題は制限字数が多くても80字で、書くべき内容も文章中から見つけやすいですが、2024年度第1回の大問3問8の、指示語の意味するところが外れてしまうと得点が大きく下がってしまう問題のように、注意深く指示に従わなくてはならない問題が多く出されます。同校の受験生レベルを考えると記述問題は高得点での戦いになりますので、模試や過去問演習では、問題の指示に正しく従えているか、そのうえで精度の高い文章を書けているかを、丁寧に見直す必要があります。
また、同校で出題される大人の世界を描いた物語文を正確に読み取るためには、読書はもちろん、ドラマや映画といった映像を通しての「疑似体験」も有効となります。
文章、問題の難度は2023年度第1回と大きく変わりませんでしたが、合格者平均点は109.9点と2023年度第1回の94.9点から15点アップ、受験者平均点も81.9点から97.2点と大きく上がっています。同校受験者層の国語読解力のレベルアップがうかがえ、来年度以降も高水準での戦いが予想されます。
[2024年度第1回の出典]
大問3:冬森灯『すきだらけのビストロ うつくしき一皿』
大問4:戸谷洋志『友情を哲学する 七人の哲学者たちの友情観』
2024年度第1回は大問が4題で、小問が全32題の構成です。語句を答える問題、選択肢問題、計算問題に加えて記述問題も1題出されました。
大問1は生物分野から種子植物に関する問題、大問2は地学分野から人工衛星に関する問題と地震の観測をテーマとした問題、大問3は化学分野から「シュリーレン現象(水にものを溶かしたときに「もやもや」が生じる現象)」についての問題、そして大問4は物理分野から「てこのつり合い」に関する問題でした。
同校の理科では特殊な設定や実験はなく、内容の理解が難しい問題が出されることは多くありませんが、2024年度第1回の大問3の化学分野の問題は、ものの溶け方を調べる実験が複数に及び、後半の実験が複雑になる構成で、問題文の説明を注意深く読み取らなければ正解するのが難しい内容でした。
一方で2024年度第1回は基本的な知識で解答できる問題も多く、全体を通せば高得点での戦いとなりました(合格者平均点は78.0点で、2023年度より4.6点アップしました)。大問1の語句を答える問題の中に、「受粉」「子葉」「光合成」といった基本レベルの問題が見られましたが、これらの問題は同校の受験生のレベルを考えると得点必須となります。
合格ラインを突破するポイントは問題内容を正しく読み取ることにあります。同校の理科では実験内容が難しくても、それを補足するリード文が付けられ、その文章と実験結果を示す表から、解答要素を正しく抽出できれば正解に至ることができる問題が出されます。2024年度第1回では大問3の化学分野の問題がそれに該当しました。
この大問3は計算問題と選択肢問題で構成されましたが、解答に使うデータを正しく選び出し、問題の指示に慎重に従えば、正解できるチャンスが大きく広がる一方で、思い込みや早とちりでデータを取り違えてしまうと、正答数が一気に減ってしまう、聖光学院らしい問題でした。
こうした問題に対応するためには、普段の演習からリード文を含みボリュームのある問題を多く解いて、リード文や実験結果から正しくデータを抽出する練習を重ねることが必須となります。記述問題は多く出されませんが、常に解答の根拠を正しく説明できるように自分が解答したプロセスを確認して、見直しの際には間違えた問題だけでなく、解答根拠が曖昧な問題も、しっかり解説を熟読するように徹底しましょう。
また、同校の選択肢問題の中には組合せを答えるタイプのものがありますが、この組合せの数が多く、スピーディーに解答を進める意識を持っていないと、思わぬ時間のロスが生じてしまいます。普段の演習から基本知識を正確に習得することはもちろん、テキストの選択肢問題では応用問題をできるだけ多く解いて、問題を解くためにはどの知識が必要であったのかも必ず確かめるようにしましょう。
制限時間に比べて問題数が多く、上記のように慎重にリード文、実験結果を読み取る必要のある問題が含まれますので、基本問題はスピーディーに処理して、ボリュームのある問題に多くの時間を費やせるように、時間配分への意識を高めて過去問演習に臨みましょう。
2024年度第1回は大問4題で小問は全34題でした。地理・歴史分野が独立して出される大問2題と、公民分野と時事問題が合わさった大問1題、歴史分野と時事問題が合わさった大問1題の構成です。問題の種類としては圧倒的に選択肢問題が多く、そこに語句を答える問題8題と、記述問題4題が含まれました。
大問1は時事問題として「グローバルサウス」と「エンゲル係数」を答えさせる問題、「物流2024年問題」についての記述問題、そして憲法第7条の穴埋め問題で構成されました。大問2は短歌・俳句といった韻文(いんぶん)の歴史についての問題、、大問3は近所の商店街の移り変わりを題材とした地理分野の問題、大問4は「男女平等」をテーマとした歴史分野と時事が組み合わさった問題でした。
同校の社会の大きな特徴となっているのが選択肢問題の多さです。合格ラインを突破するポイントはこの選択肢問題で着実に正解を積み上げることにあります。選択肢問題の中には単純に知識を使って解くのではなく、リード文や資料を利用してそこから解答のヒントを見つけ、知識を的確に結びつけるといった思考力を求める難問が含まれます。2024年度であれば大問3の問3のスーパーマーケットの果実担当の人物とのQ&Aの組み合わせを答える問題や、問8の店舗の経営戦略を地図から読み取らせる問題で、「資料を読み解く力」、「問題の指示にそって解答を導く思考力」が求められました。
また、2024年度で大問1の「グローバルサウス」「エンゲル係数」、大問2の「季語」といった、時事的な知識、常識問題、国語の範疇とも言える知識が問題対象となったように、社会のテキスト以外から得られる知識も求められる点も同校の特徴です。普段から時事問題の演習を通して、世界の情勢や新聞で取り上げられるようなテーマにも目を配っておく必要があります。
記述問題はリード文や資料から解答のポイントが見つけやすいので難度は高くありません。2024年度を見ると、大問1の「2024年問題」は注目度の高い時事問題で、書くべき内容もわかりやすいものでした。大問4の「イクメンが差別的表現と考えられる理由」を記述する問題も、リード文に解答要素が含まれており、例年よりも記述問題が解きやすい内容となっていました。それでも同校の受験生レベルと考えると、記述は高得点の戦いになることは必至ですので、わかりやすく記述答案を作る練習は欠かさないようにしましょう。
同校の社会のリード文は標準的な長さで、資料も独特なものでなく読み取りやすいですが、小問数が多いので、40分は短く感じられるテストです。選択肢問題をスピーディーに解く意識と、難度の高い選択肢問題は深追いせずに抜かす意識は欠かさないようにしましょう。
また、2024年度第1回は出されませんでしたが、「神奈川に関する出題」が出されることがある点も同校の社会の特徴です。過去問演習に早めに取り組んで、神奈川に関してどのような出題がなされているのか、確認をしておくとよいでしょう。