聖光学院中学校の傾向と対策

  • 併設大学なし
  • 高校外部募集なし
  • 男子校

志望にあたって知っておきたいこと

神奈川男子御三家の1校で、東大合格者数は神奈川県の学校で最多です。カリキュラムの枠を超えた体験型学習を実施する「聖光塾」の設置など、生徒の自主的な考えを育成する教育が行われています。入試問題は特異な設定や奇抜な問題はなく、4科目とも日々の訓練の成果が反映されやすいタイプのテストと言えますが、求める知識レベルは高いうえに、制限時間に対して行うべき処理数が非常に多い特徴があります。特に算数は書き出しなどの作業を多く正確に積み上げなければ正解できない問題ばかりです。また国語、理科、社会は共通して選択肢問題の難度が高い特徴があります。正確な知識を問題に合わせてスピーディーに活用する力が求められます。また、国語の物語文の内容が大人向けであることが多い、社会で神奈川に関する出題が多いといった傾向があります。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2022年度第1回は大問5題で小問が全18題の構成です。大問1が計算問題1題、小問が2題で、大問2が3けたの整数の各位の和についての数の性質の問題、大問3が点の移動の問題、大問4が並べ方の問題と数の性質を合わせた場合の数の問題、大問5が線の移動と正方形の移動を扱った図形の移動の問題でした。特異な設定の問題はありませんが、最初の計算問題以外は解答に必要な作業に時間がかかるタイプの問題ばかりです。難度が上がれば自ずと作業の手間も増えますので、解いた小問で使った作業が次の小問でどこまで使えるかを判断したうえで、多大な時間を要する問題は抜かす意識も強く持つ必要があります。作業は図をかくというよりも書き出しが多くなりますので、書き漏れが生じないように高い注意力を維持して解き進めることが必須です。

算数が苦手な受験生

大問1は満点を目指したいですが、計算問題以外の2題は簡単な問題ではありません。書き出しや図を使って少し時間をかけてでも確実に正解に行き着けるようにしましょう。合格ラインを突破するポイントは大問2以降の問題を解く順番を早急に判断することにあります。制限時間60分に対して、問題を解く際に必要な作業量が多いのが同校の算数の特徴です。少しでも作業時間をかけずに解ける問題を早めに見つけ、書き漏れなどが生じないように注意力を最大限高めて解答を進めましょう。2022年度第1回では最終問題の図形の移動の問題が、大問2~4よりも解きやすい内容でした。他の大問は(1)は確実におさえ、(2)以降は難しければ抜かして最終問題に多くの時間を使う、といった時間配分が有効となります。時間の使い方を意識した過去問演習を早めに進めるようにしましょう。

算数が得意な受験生

大問1と最終の大問5は満点をとったうえで、大問2~4で完答正解できる問際を増やす方針となります。合格ラインを突破するポイントは数の性質の問題で書き出しをスピーディーに正確に進めることにあります。同校の問題は上位生であれば見たことのあるタイプの問題が多いですが、いざ解答を始めると式をすぐには立てられない内容です。ここで正確な書き出しにすぐに着手したうえで、そこからの作業のスピードを上げる必要がありますが、作業が複雑になった際に、そのまま続けるか抜かすかの判断が難しくなります。できれば中断せずに作業を完遂するために、普段の演習から書き出しなどの作業を求める難問を数多く解いておきましょう。また、グラフを完成させる問題も出されますので、図やグラフをていねいに作る習慣を早めに固めておく必要があります。

国語

2022年度第1回は大問1が漢字の書き取り5題、大問2は語句知識が5題、大問3が物語文の読解、大問4が論説文読解という4題構成でした。読解の小問数は大問3、4とも8題で2つ合わせて全16題と少なめですが、文章量が多く難問が多いので、制限時間60分で解くには余裕がありません。
同校の物語文は近年その内容が独特になっています。等身大の人物ではない大人が主人公となり、大人ならではの心情の移り変わりが描かれています。2022年度第1回も、副業で着ぐるみのアルバイトをする男性が職場の同僚に自分の想いを吐露する場面からの出題で、他者の言葉を通して自己理解を深めるというテーマ自体は中学受験で多く扱われるものなのですが、設定が小学生には受け止めづらく、また主人公が着ぐるみに執着するという心情も理解が難しいものでした。問題も文章内容の理解を前提とした難問揃いです。
大問4の論説文も文章の難度が高く、内容は容易に理解できるレベルではありません。それでも物語文と比べると、中学受験で出される論説文の中での難度の高さですので、普段の演習で難解な論説文読解の練習を多く積んでおけば、対応の糸口は見つけられます。文章内容を正確に理解しなければ得点できない問題ばかりである点は物語文と共通しています。
物語文、論説文ともに選択肢問題が占める割合が高くなっていますが、合格ラインを突破するポイントはこの選択肢問題を攻略することにあります。同校の国語の特徴は選択肢問題の難しさにあります。選択肢の文章の長さは標準よりも短めですが、内容の違いが細かく、明らかに消去できる選択肢が少なくなっています。先にも触れましたように、問題内容の正確な理解が前提となりますので、文章の読み込みが甘いと解答に時間がかかるうえに正しい選択肢を選ぶのが困難になります。普段の演習では、選択肢問題の見直しに時間をかけて、ただ正解したかどうかだけではなく、選択肢を絞る過程が正しかったかまで確認をするようにしましょう。一方の記述問題は制限字数が多くても80字ですので、特別な対策は必要ありませんが、同校の受験生レベルを考えると得点は必須ですので模試や過去問演習では精度の高い文章を書けているか、ていねいに見直す必要があります。

[2022年度の出典]
大問1:村木美涼『商店街のジャンクション』
大問2:小松和彦『妖怪文化入門』

理科

2022年度第1回は大問が4題で、小問が全31題の構成です。語句を答える問題、選択肢問題、計算問題を中心に記述問題も3題出されました。
大問1は生物分野から樹木の生息と標高の関係についての問題、大問2は地学分野から星に関する問題、大問3は化学分野から水の状態変化の問題、そして大問4は物理分野から滑車を使った問題でした。
どの大問も特殊な設定や実験はなく、問題内容を理解すること自体は難しくありません。ただし、問題を解くには正確な知識を身につけるだけではなく、問題の内容に合わせて知識を組み合わせ、時には思考力もフル活用しなければなりません。
語句を答える問題の中には「道管」や「融点」などの基本レベルの難度が含まれますが、「黄葉」や「過冷却」といったレベルの問題も出されます。記述問題は比較的標準レベルの問題が多く、「簡単にまとめなさい」という問題の指示に従ってコンパクトにわかりやすく説明ができれば得点のチャンスは大きく広がります。
これらの問題は同校の受験生のレベルを考えると得点必須となりますので、確実に正解する必要があります。合格ラインを突破するポイントは選択肢問題での正答率を上げることにあります。同校の選択肢問題の中には組合せを答えるタイプのものがありますが、この組合せの数が多く、スピーディーに進める意識を持っていないと、思わぬ時間のロスが生じてしまいます。また正誤を答えるタイプの選択肢問題も、一見すぐに解けそうですが、持っている知識をいくつも組み合わせなければ、正誤の判断が間違ってしまう難問が含まれます。普段の演習から知識はとにかく正確に習得することはもちろん、問題演習をできるだけ多く取り入れて、問題を解くための知識の使い方を早めに身につけましょう。
また、最終問題では滑車の組合せを考えて解答欄に記入する問題が出されています。それまでに解いた問題の情報を活用して解くのですが、高得点での戦いになりますので捨て問にはできないでしょう。早めに過去問演習に取り組んで、最終問題に時間を使うためのテストの解き進め方をマスターするようにしましょう。

社会

2022年度第1回は大問4題で小問は全38題でした。地理・歴史・公民分野が独立して出される大問の中に公民分野と時事問題、歴史分野が混在する総合的な大問が含まれます。問題の種類としては圧倒的に選択肢問題が多く、そこに語句を答える問題10題と、記述問題2題が含まれるかたちです。
大問1は日本の「飛び道具」の使われ方の変遷をたどる歴史分野からの問題、大問2は核兵器廃絶へ向けた世界の動きをまとめた総合型の問題、大問3は「多様性」をテーマにした公民分野の問題、大問4は同校がある神奈川県についての地理分野・歴史分野両方からの問題でした。
同校の社会の特徴となっているのが選択肢問題の多さです。合格ラインを突破するポイントはこの選択肢問題で正解を積み上げることにあります。選択肢問題の中には単純に知識を使って解くのではなく、リード文や資料を利用してそこから解答のヒントを見つけ、知識を的確に結びつけるといった思考力を求める難問が含まれます。また、大人であれば容易に推測できるタイプの問題もあります。語句を答える問題で「アイデンティティ」や「核の傘」といったものが含まれることからも、同校が大人の視点を求めていることがうかがえます。普段の演習では、選択肢問題を解く際に、ただ正解したかどうかだけでなく、その問題ではどのように知識を使えばよかったのかまで確認しておくようにしましょう。また、大人の視点を鍛えるためにも、時事問題の演習を通して、世界の情勢や新聞で取り上げられるようなテーマにも目を配っておく必要があります。
記述問題はリード文や資料から解答のポイントが見つけやすいので難度は高くありませんが、同校の受験生レベルと考えると、満点解答が必須となりますので、わかりやすく記述答案を作る練習は欠かさないようにしましょう。
リード文は標準的な長さで、資料も独特なものでなく読み取りやすいですが、小問数が多いので、40分は短く感じられるテストです。選択肢問題をスピーディーに解く意識と、難度の高い選択肢問題は深追いせずに抜かす意識は欠かさないようにしましょう。
また、同校の社会の特徴として、神奈川に関する出題が多い点もあります。過去問演習に早めに取り組んで、神奈川に関してどのような出題がなされているのか、確認をしておくとよいでしょう。

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