東邦大学付属東邦中学校の傾向と対策

  • 併設大学あり
  • 高校外部募集なし
  • 男女共学

志望にあたって知っておきたいこと

2023年度大学入試では、東邦大学に医学部への20名、薬学部への13名を含めて37名が現役で合格しています。他大学の実績でも、千葉大学に18名(現役13名)、東京工業大学に11名(現役8名)など国公立大学で高い実績を上げ、早慶上理へ過去5年で毎年300名(既卒含む)前後の実績を上げ続けています。東邦大学が理系の大学ということもあり、全体の約7割が理系学部への進学を希望しますが、多様な進路希望に対応できるように、リベラルアーツ型のカリキュラムが実施され、文系志望者に対しても進路指導が徹底されています。入試問題は4科目に共通して、高い処理能力が求められる点が特徴的です。算数であればグラフの読み取りや書き出し・調べ上げといった手数のかかる問題を正確に進める力を求める問題が多く、理科・社会では同校の特徴である「組み合わせて解く」選択肢問題が多数並びます。国語においてはほぼすべてが選択肢問題で、小学生にとっては難度の高い文章を正しく理解することを前提としています。文章の要旨を選択肢で問う問題も出されます。こうした処理能力を求められるだけではなく、45分という、問題数、解答にかかる手間を考えると非常に厳しい時間設定のもとで力を発揮することも求められます。4科目ともに制限時間45分で100点満点と均一で、理科・社会も重視されており、どの科目も、すべてを応用問題レベルにまで仕上げておく必要があります。そして、理科・社会の独特な選択肢問題、国語の難解な文章、算数の手数のかかる問題といた同校ならではの問題形式に少しでも早く慣れるように、過去問演習を早めに進める必要があります。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2024年度前期は大問6題で小問数が全18題でした。大問1は計算問題3題、大問2は小問集合5題で数の性質、速さと比、食塩水の濃度、平面図形(角度)、集合と推理の問題、大問3は仕事算の問題、大問4は階段の上がり方に関する場合の数の問題、大問5は立体図形から見取り図を使った問題、大問6は平面図形から相似・面積比の問題が出されました。解答は全て答えのみを書かせるタイプで、式や考え方を書かせる問題はありません。
同校の算数は、ひらめきを求める問題や超難問はありません。難度は基本から標準、発展と幅広く、問題が後になるほど難度が上がるといったパターンではなく、難度の高い問題がテスト前半から散見されます。2024年度前期でも、大問3の仕事算は比を使いますが難度としては基本的なものでした。一方、大問2の小問集合の中にも、平面図形の角度や集合と推理の問題といった難度の高い問題が含まれます。大問1の計算問題も複雑ですので、前半だから簡単といった考え方は捨てて、難しい問題に時間をかけ過ぎないといった時間配分を考えて解き進める必要があります。また、出題される単元も幅広いので、普段の演習から苦手分野を作らないことが必須です。2024年度前期の最終大問6の平面図形のように、問題で与えられる条件が多めになることがあります。問題文は長くなりますが、それらの条件をヒントにできれば解きやすくなりますので、問題文の読み取りが雑にならないように注意しましょう。同校の問題は、超難問はありませんが、条件を正しく整理する、また調べ上げを正確に進めるといった高い処理能力が求められます。全般に解答に時間のかかる問題が多いので、時間配分を強く意識して過去問演習を進める必要があります。

算数が苦手な受験生

同校の算数は出題される範囲が幅広く、問題の難度も幅広いので、まずは苦手分野がないように日々の演習で基礎力を万全にしたうえで、早期に応用問題まで取り組む時間を確保しましょう。合格ラインを突破するポイントは時間配分を高く意識することです。2024年度前期であれば、大問4の場合の数の問題、大問6の平面図形の問題は、解答に時間がかかるため、それら以外の問題をスピーディーに処理する必要があります。また、大問1の中にも難度の高い問題が含まれますので、迷わず抜かす勇気を持ちましょう。大問3の仕事算の問題と、大問5の立体図形の問題で、難度は高くありませんので、解答必須となります。特に大問5は立方体を3つのパターンでくり抜いた立体の見取り図を素材とした問題で、一見複雑ですが、同じようなタイプの問題が塾テキストの標準から応用の範囲で見られるものです。普段の演習で、複雑な難問に時間をかけるよりも、単元を問わず標準から応用レベルの問題を万遍なく解き進めておくようにしましょう。年度によって難度の違いはありますが、時間に余裕がない点は共通しています。早めの段階で一度過去問を実際に解いてみて、同校の算数での45分がどれくらいの長さなのかを体感しておきましょう。

算数が得意な受験生

同校の算数は奇抜な内容はなく、日頃の演習の成果が出やすいタイプの問題がほとんどですので、まずは単元のもれなく、すべてを応用問題レベルにまで仕上げておきましょう。そのうえで合格ラインを突破するポイントは、手数のかかる問題をいかにスピーディーに処理するかにあります。算数が得意な生徒さんの中には、グラフや図を自分で書き出すこと、調べ上げた結果を書き出すことを面倒に感じて、頭の中で処理する傾向がありますが、どんなに高い計算力をもってしても、同校の算数を攻略するには地道な作業が不可欠になります。2024年度前期では、大問4の階段の上がり方に関する場合の数の問題や、大問1の(5)の集合と推理の問題などで、もれがないように正解するために頭の中だけで処理せずに書き出しを使って処理する力が求められました。また難度は高くありませんが、最終大問6の平面図形の問題では、複数の条件を的確に使ってスピーディーに正解まで行き着くことが、テスト全体の時間の使い方を考えると必須となります。独特の設定などがありませんので、解き進めやすそうに見えて、解答の手順が多くなり、そこで正確に処理を進める力を求められる点が、同校の算数の特徴です。まずは幅広い範囲に対応できるように、苦手分野をつくらず、普段の演習から手数のかかる問題に対した際は、ただ正解不正解をチェックするのではなく、解答のプロセスをしっかり積んだかどうかまで細かく確認するようにしましょう。

国語

2024年度前期は、大問2題で小問数が全21題でした。大問1が随筆文の読解、大問2が物語文の読解で、漢字は大問1の中に含まれ、指定された言葉の中の一文字と同じ文字を使う言葉を「すべて」選ばせる問題でした。問題の種類は、空欄補充を含め、選択肢問題の割合が圧倒的に高く、そこに抜き出し問題が混ざるかたちで、記述問題は例年通り出されませんでした。
大問1の随筆文は、「東京の景色」に寄せる筆者の想いがつづられたもので、大問2の物語文は中学3年生の女子二人の会話を通して相手の言葉から感じるいら立ちや自己嫌悪に苛まれる主人公の姿を描いたものでした。文章の長さはどちらも標準より短めでボリュームは感じられませんが、内容はどちらも小学生にとっては難解で、読み取りづらい表現が多く含まれています。
同校の国語の最大の特徴は選択肢問題が占める割合が高いことにあります。論説文であれば文章の段落構成や論旨について問うもの、物語文であれば心情理解を問うものがほとんどで、問題形式としてはスタンダードと言えます。ただし、随筆文、物語文どちらにも文章全体に関する問題があり、その問題では選択肢の文章が一気に長くなり、他の問題の倍以上の分量となります。それら全体の理解を確かめる問題は、問題内容さえ理解できていれば難なく選別できるのですが、同校の国語で出題される文章は上記の通り難解な内容が多い特徴があります。2024年度前期も、随筆文、物語文ともに大人の文章に慣れていないと読み取れない表現が多く、例えば随筆文での「たかだかの距離感」、物語文での「手打ち」など、小学生が普段から使う言葉の範疇を超えたものが注釈なしで出され、そのまま問題部分に含まれてきます。もちろんそれらの言葉の意味を厳密に理解できていなくても、前後の文脈から理解はできるのですが、その理解が少しでも曖昧になると、紛らわしい選択肢が区別できないように、巧妙に問題が作られているのです。合格ラインを突破するポイントは難解な語彙を含む文章を正確に読み取ることにあります。2024年度前期の物語文で中学3年生の女子の相手の言葉に翻弄される女子の心情が問題対象とされていましたが、問題該当部以外にも、文章の全体の流れから心情を「類推する力」を必要とする問題が多く見られました。大人の感覚であれば十分に理解できますが小学生にとっては大きな負荷がかかるものが多く見られます。普段から難しい設定の文章を題材にした問題に多く取り組んで類推力を鍛えることが必要で、聖光学院中や浅野中で出される文章を読むことも対策の一環となります。また、文章全体の要旨を問う問題が頻出ですので、模試などでそうしたタイプの問題が出てきた際には、重点的に見直しをしておきましょう。

[2024年度前期の出典]
浅田次郎『東京の緑』
前川麻子『パレット』

理科

2024年度前期は大問7題で小問数は全20題でした。問題の種類は選択肢問題と計算問題のみで、語句を答えさせる問題、記述問題は出されていません。
大問1は地学分野から災害に関する問題、大問2は化学分野から硝酸カリウムの飽和水溶液の問題、大問3はNHKドラマ『らんまん』を素材に植物の分類の問題、大問4は物理分野からバネを使った実験の問題、大問5は生物分野から外来生物に関する問題、大問6は化学分野から化学反応の計算問題、そして大問7は物理分野から水圧を使った実験の問題でした。
同校の理科は小問数が20題で、語句を答えさせる問題、記述問題が出されませんので、制限時間45分には余裕が感じられそうですが、解いてみると独特のボリューム感があり、問題形式に慣れないうちは解き疲れするほどに頭の体力を必要とします。まず特徴的なのが、大問に含まれる小問数が少ない点です。2024年度前期は、大問4が小問2題、その他の大問はすべて小問3題という構成でした。大問に多くの小問が含まれ、前の問題の答えを利用して解き進めるといった誘導型の対極にあり、大問1題を解き終えたらすぐに頭を切り替えて次の問題に進む、という取り組みが必要になります。また、問題文の書き方が複雑で、何を求めるための実験なのかといった要点をつかむのが難しい内容となっています。2024年度前期は特に物理分野、生物分野の問題内容が複雑でした。そして最大のポイントは選択肢問題の複雑さです。合格ラインを突破するポイントはまさに同校ならではの複雑な選択肢問題で確実に正解を重ねることにあります。ただ単純に正誤の選択肢を選ぶのではなく、複数の要素それぞれに選択肢が設定され、その組み合わせを答えさせる問題が多いという特徴があります。組合せで答えるために、選択肢の数が12にも及ぶことがあります。それらの問題すべての難度が高いのではありませんが、集中して組合せを選び出さなければ、ミスを起こしてしまう可能性が高くなります。ただ知識を問うだけでなく、正確でスピーディーな処理能力も求めるという同校の選択肢問題に対応するためには、まず基本知識を早急に固め、問題演習を通してその知識を盤石にするといったアウトプット重視の取組みが不可欠です。その上で同校ならではの選択肢問題に慣れるために、また45分という制限時間の短さを体感するために、過去問演習には早期に取り組むべくスケジュール立てをしておきましょう。

社会

2024年度前期は大問3題で、小問数は全25題でした。問題の種類は、選択肢問題の割合が高く、その他、語句を答えさせる問題、数字を答えさせる問題が出され、記述問題は出されていません。
大問1は日本各地の路面電車を題材とした地理分野の問題で、時事的な問題も含まれました。大問2は歴史分野から各時代の人物や出来事についての問題、大問3は漫画『はだしのゲン』を素材として、公民分野を中心にG7サミットなどの時事が含まれる問題でした。
同校の社会は、理科と同じく選択肢問題に特徴があります。正誤を単純に答えるのではなく、いくつかの要素について挙げられた選択肢や語句を組み合わせて正しい組み合わせを答えるタイプの問題で、ミスが起こりやすいものです。理科同様に早めに過去問演習に取り組んで、いかに正確にスピーディーに同校ならではの選択肢問題を処理するかを考えておく必要があります。
また、同校では問題の素材となる資料にも特徴があります。2024年度前期の大問3は、広島市教育委員会『ひろしまへいわノート~いのち・しぜん・きずな~』(旧版)で、漫画『はだしのゲン』が使用されている部分を素材としており、漫画の部分が掲載されました。漫画ですので表されている内容はわかりやすいのですが、そこで示唆されるメッセージを正しく理解するためには、問題文の漫画以外の部分までしっかりと理解する必要があるという秀逸な問題でした。また大問1では、富山市近辺の地形の起伏を表した写真を地図にあてはめるというパズルのような問題が出されています。資料の読み取りに大きな負担がかかるものではないのですが、多種多様な資料に対応できるように、普段から資料問題の対策を欠かさないようにしましょう。また、大問1ではLRT(次世代型の路面電車の交通システム)の効果と課題を答えさせる問題が出されており、近年話題となったニュースに対して、ただ知識として覚えるのではなく、その背景や効果にまで思考を及ばせる姿勢が求められています。大問3ではG7各国について、TPPやAPEC、EUへの加盟で分類して答えさせる問題が出されており、時事問題について表面的に理解するのではなく、付随する情報まで取り入れる視点が求められています。深く広く時事問題をとらえる姿勢が必要となります。記述問題は出されていませんが、独特な資料、そして複雑な形式の選択肢問題で構成されるテストですので、小問数以上に時間がかかるテストと考えておく必要があります。過去問演習では45分の使い方をしっかり体感するようにしましょう。

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