浦和明の星女子中学校の傾向と対策

  • 併設大学なし
  • 高校外部募集なし
  • 女子校

志望にあたって知っておきたいこと

 埼玉県の女子進学校の中でも絶大の人気を集め、2月に最難関校を受験する女子生徒の多くが併願校とする学校です。英語は中2で中学校の学習内容を終え、高校のリーディングでは1、2年生時に精読の力を鍛え、3年生では自主的に様々な取り組みができるようなカリキュラムが組まれています。

 入試問題は4科目とも独特の設定やひらめきを求める問題はありませんが、基本から標準レベルの難度の問題は少なく、応用レベルの問題が多く出されます。算数では、例えば立体図形をくり抜く問題で、立体を段ごとに分けた断面図で考える解法など、普段の演習の積み重ねで身につけた頻出の解答パターンを使いこなして難問を解く力を求める問題が合否を分けるポイントとなっています。

 国語は物語文の文章量の多さ、論説文の語彙難度の高さが特徴的で、問題自体の難度は高くないため、文章を制限時間内にどれだけ正確に読み取れるかで得点の差が大きく生まれます。

 どの科目も制限時間が問題量に比して短く設定されていますので、スピーディーに難問を解き進める力が求められます。特に理科・社会は制限時間が合わせて50分という上位難関校では珍しい形式がとられています。どちらの科目にどれだけの時間をかけられるかを体感するために、早めに過去問演習に取り組む必要があり、そのためにも基本知識を早い時期に固めておくことを強く意識する必要があります。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

 2024年度第1回は大問5題で小問が全17題の構成でした。すべて解答のみを答える形式で、式や考え方を書かせる問題はありません。

 大問1が計算と小問集合、大問2が通過算の問題、大問3が立体図形のくり抜きの問題、大問4が円周上の点の移動の問題、大問5がタイルを並べる規則性の問題でした。

 大問1の小問集合は基本から標準レベルの問題がほとんどですが、問題を見てすぐ解ける基本レベルの問題はなく、テキストなどで頻出単元の標準的な出題パターンに慣れておく必要があります。大問2、大問3も頻出タイプの応用問題で、大問2の通過算であれば電車の進行を示す図、大問3の立体図形のくり抜きの問題であれば、立体の段ごとの断面図といった典型的な図をかくことで解答方針が立てられる問題となっています。

 大問4、5はどちらも最初の小問が解きやすい問題なので、それらを得点することが必至です。難問にかける時間を多くするよりも得点すべき問題を確実にとる方針が必須です。

算数が苦手な受験生

 合格ラインを突破するポイントは、大問1の計算と小問集合の中で標準レベルの問題を確実に得点することがです。計算問題を除く小問数は7題ですが、幅広い単元からの出題となるため、普段の演習から苦手な分野をつくらないように強く意識しましょう。特に速さの問題、平面図形・立体図形の問題は重点的な対策が必要です。

 それでも(6)の数の性質の問題、(8)の多角形の面積の問題は解答に時間がかかる可能性が高いので、それらを抜かして後半の大問の(1)を確実に解くべく、時間の使い方を意識するようにしましょう。

 大問2、大問3も上述の通り、典型的な応用問題であり、解答方針を明確にしてどちらも(1)で得点できるように、テキストの応用問題に出てくる問題を丁寧に見直して解法を増やす習慣をつけておきましょう。

算数が得意な受験生

 合格ラインを突破するポイントは標準から応用レベルの問題で正解を重ねることにあります。2024年度第1回であれば、大問1から大問3までは満点を目指したいところです。

 特に大問2、大問3をスピーディーに解答し、大問4、大問5にかける時間を捻出、得点差が生まれるそれぞれの後半の問題で正解をとる方針で臨むとよいでしょう。大問3以降は、算数が得意であっても図をかいて解く姿勢が求められますので、普段から図をかいて解く習慣をつけておく必要があります。

 2024年度第1回の大問4のように、問題内容を理解して、小問を順に解き進めれば解答の方針が固まってくるタイプの難問が多いので、まずは各問の最初の小問を確実にとることを意識しましょう。

 頻出の平面図形、立体図形の問題については、男子校を含めた他校の入試問題や、模試の難題を題材として、解き方を多く見につけておくことが有効です。時間がないテストですので、難題を深追いしないように注意しましょう。

国語

 2024年度第1回は大問2題、大問1が論説文読解、大問2が物語文読解という構成で、小問数は全22題でした。同校の国語の 特徴のひとつが文章量の多さで、2024年度第1回も論説文は標準よりやや多めでしたが、物語文は男子校・女子校を問わず上位難関校の中でも多めの分量でした。

 問題は選択肢問題と抜き出し問題がほとんどで、記述問題は大問2の最後の小問の1題で10~15字という短い制限字数でした。漢字は大問1に書き取りが2題、大問2で読み取りが2題出されました。

 大問1の論説文はスマホが普及した現代における人間関係の変化と、「一人でいること」の重要性を訴える内容で、テーマ自体は近年多く取り上げられるもので概要まではつかめるものですが、語彙の難度が高く、説明文が苦手な場合、文章を読むだけで多くの時間を費やしてしまうことになる内容でした。

 ただし、選択肢問題は正解以外の選択肢を消去しやすいタイプで、抜き出し問題も問題該当部から近い場所に正解があるため、見つけづらさは感じられないものでした。文章の難度に比して問題の難度は低いですが、それでも文章内容についてポイントをおさえるための高い語彙力は必要となります。

 大問2の物語文は学校で孤立してしまった主人公(中学2年生の女子)の葛藤と、主人公の家族が互いに理解できていなかった部分に気づくという内容で、頻出のテーマを題材としていて読みやすいですが、文章が非常に長いので、読むスピードを上げても読み取りが雑にならないような練習が必要となりました。

 大問1と同じく選択肢問題、抜き出し問題ともに難度は低く、同校受験生のレベルを考えると、まずは選択肢問題を確実に正解したうえで、抜き出し問題で得点を重ねなければなりません。

 合格ラインを突破するポイントは、制限時間内に分量の多い文章を正確に読み取ることです。論説文では難度の高い語彙を含む文章でも論旨を的確につかむ力が必要となるため、桜蔭や豊島岡女子といった高難度の論説文を出題する学校の問題にも取り組み、また頻出の著者が記した文章に触れることも有効な対策となります。

 物語文では長い文章を集中して短時間で正確に読み取る力が不可欠となります。対策として、同校の過去問以外にも、麻布や駒場東邦といった長い物語文を出す学校の文章に触れておくことが有効となります。

[2024年度第1回の出典]
大問1:谷川嘉浩『スマホ時代の哲学―失われた孤独をめぐる冒険』
大問2:櫻いいよ『世界は「 」で沈んでいく』

理科

 2024年度第1回は大問数が4題で、物理・化学・生物・地学からそれぞれ1題という例年通りの問題構成でした。小問数は全23題で、問題の種類は、計算問題、選択肢問題、語句を答えさせる問題で、2024年度第1回では記述問題が出されませんでした。

 大問1はLED回路に関する物理分野の問題、大問2は原子についての化学分野の問題、大問3は呼吸をテーマとした生物分野の問題、大問4は柱状図を使った地層に関する地学分野の問題でした。

 同校の理科では基本レベルの問題が出されることがほとんどなく、標準以上の難度の問題が大半を占めます。知識として高難度の問題(2024年度であれば、大問3の「気胸」の問題)もありますが、大問ごとに設定されたリード文と実験の内容を正確に読み取ることが求められる難問が多い特徴があります。

 合格ラインを突破するポイントは、リード文と実験の内容をスピーディーかつ正確に読み取ることにあります。同校の理科のリード文と実験は、じっくり時間をかけて読み込めば理解に苦しむ内容ではありませんが、社会と合わせて50分という限られた時間の中で、複数の項目の違いと共通点を的確に導き出すのが非常に困難なものです。

 2024年度第1回の大問1ではLEDと電池の接続方法が6パターン提示されますが、LEDが光る場合とそうでない場合の違いを即時判断できるかどうかが得点を分けるポイントとなりました。また大問4問2の8種の柱状図も、時間をかけずに違いを読み解くことができれば正答率が大きく上がりますが、短時間で読解するのが難しい図でした。

 リード文と実験のボリューム、問題の難度を考えると25分で解答するのはかなり難しく、社会のテストにかける時間を少しでも削って、できるだけ多くの時間を理科にあてる方針で臨む必要があるでしょう。

 解ける問題から先に解く方針が必要であることは言うまでもありませんが、そうした問題の数が少ないため、標準以上の難度の問題に十分に慣れておく必要があります。テキストの実験を題材とした応用問題、模試などで出てくる難しい実験問題について、時間をかけて見直して、単に正解できていたかではなく、実験内容を正確に理解できていたかまでのチェックを欠かさないようにしましょう。

社会

 2024年度第1回は大問2題の例年通りの問題構成で、小問数は全33題、問題の種類はすべて選択肢問題で、記述問題、語句を答えさせる問題は出されていません。制限時間は理科と合わせて50分ですが、理科に半分以上の時間をかけることは避けられず、速く正確に問題を解き進める力が求められるテストです。

 大問1は森林と私たちの暮らしの関係をテーマとした会話文からの出題、大問2は同校で定番の前の年(2024年度入試であれば2023年)に起きた出来事についての出題でした。

 問題の難度はほとんど基本から標準レベルですが、一部細かい知識を求める問題が含まれます。2024年度も、大問1問9の東経136度線が通る県を選ばせる問題や、大問1問15の1940年と1964年に起きた国際情勢と国内情勢の出来事について正しい組み合わせを選ばせる問題では、地理・歴史分野の細かい知識が必要となりました。

 2024年度第1回の社会の合格者平均点が約80%であったように、同校の受験者レベルから考えると高レベルでの戦いになりますので、取りこぼしがないように注意力を高めてテストに臨む必要があります。合格ラインを突破するためのポイントは、難度の高い選択肢問題で正解することで、特に歴史分野の現代史や、地理分野の地図や各県別のデータでは、細かい部分まで正確におさえておく必要があります。

 特別な対策は必要ありませんが、テキストの応用問題レベルの知識は徹底的に固めて、それを短い時間で導き出す訓練を重ねておきましょう。一問一答式の問答を口頭で高速で行う演習も効果的です。

 大問2は完全な時事問題ですので、普段から話題となったニュースについての知識を集積しておき、大手塾などが出版する時事問題テキストが発売され次第、テキストを使った対策を始めましょう。2024年度第1回で、30年前に成立した連立内閣の首相(細川護熙)を選ばせる問題が出されたように、「周年問題」の対策も不可欠です。

 2024年度第1回の大問1問19で2022年にサッカーワールドカップが行われたカタールと接している国としてサウジアラビアを選ばせる問題など、世界に関する問題も出されます。近年話題となった世界の国の地図上の位置や、歴史上重要な外国の人物、時事として話題になった外国の人物の名前は確実におさえておきましょう。

 制限時間が短いテストですので、難しい問題には時間をかけ過ぎずに、解ける問題から確実に解くといった時間の使い方を意識した過去問対策が必須です。大問2の時事問題から先に解くといった、時間短縮につながる戦略は徹底的に練っておきましょう。

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