早稲田中学校の傾向と対策

  • 併設大学あり
  • 高校外部募集なし
  • 男子校

志望にあたって知っておきたいこと

早稲田大学の系属校で、卒業生の約5割が早稲田大学へ推薦入学、残り5割が受験をします。自分の進路を考えさせるキャリア教育が高校1年時から積極的に行われ、医学部受験を希望する生徒以外も、他大学での学習を積極的に選択肢して受験を選択する生徒が多くいます。入試では4科目それぞれに特徴がありますが、奇抜な問題や独特の設定に対応するタイプではなく、持っている知識を正しく活用する解法をしっかり考えて取り組むことが求められます。満点が算数・国語が60点、理科・社会が40点と低く設定されていますので、1問を正解することの重要性が高くなります。算数では的確な書き出しなどの作業を必要とする問題が多く、国語は難度の高い文章を精読できる力、そして理科・社会では複数の知識を正しく組み合わせて正解を導き出す力が求められるといった、地道な訓練の積み重ねが必須となるテストです。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2022年度第1回は大問5題で小問が全16題の構成です。計算問題はなく、大問1が文章題の小問3題、大問2が図形の小問3題、大問3がニュートン算の問題、大問4は時計算の特殊型、そして大問5が立体図形の切断の問題でした。大問1の小問集合から難度の高い問題が含まれます。また、大問3以降の応用問題では、単元としては速さの問題であっても解き方は周期を使うなど、優先して解くべき問題の選別、問題に対する柔軟な考え方が求められます。全体を通じて、頭の中だけで処理しようとするとミスをしてしまいそうな問題が多く見られます。図や書き出しをスピーディーに正確に行う力を求めるテストと言えます。作図問題が1題含まれる点にもその特徴が現れています。

算数が苦手な受験生

大問1から難問が出される問題構成の中で、抜かすべき問題は抜かすという判断を的確に進める必要があります。後半に複雑な問題があるからといって、大問1、大問2は満点をとらなければいけないという意識は捨てて、大問1でも難しい問題は抜かして、その分、後半の問題の(1)を確実に、できる限り(2)以降を得点するという方針が有効です。合格ラインを突破するポイントは図形問題で得点を重ねることです。同校の問題の中では比較的図形分野に取り組みやすい問題が多く含まれます。もちろん自分で図に書き入れをするなどの作業は要しますが、解き方自体はテキストの応用問題で練習しておけば浮かぶ範囲のものです。立体の切断や相似、面積比はもちろん図形分野については苦手な単元をつくらないに気をつけましょう。

算数が得意な受験生

大問1、大問2では誤答を1問にとどめたいところです。特に図形の小問集合は難度が高い問題が少ないので満点を目指しましょう。大問3以降でも平面図形、立体図形の問題では失点を最小限にとどめるだけでなく、大問3、大問4に時間を多く使えるように、解答時間を短縮できるようにスピーディーに解き進めることが重要です。合格ラインを突破するポイントは的確な書き出しをして、調べ上げを必要とする問題で得点をすることにあります。2022年度で言えば大問4の時計算がそのタイプに当てはまります。(1)(2)までは周期の考え方の活用方法は浮かびやすいので、その2つの小問の解き方を踏まえて(3)を何としてでも正解するという方針が必要です。特に同校の受験生であれば、正確な処理能力を高く持った生徒が多いので、書き出しといった作業に正確さが欠けると差が生じてしまいます。手を使って解く難題を他校の入試問題から選んで解く練習も有効です。

国語

2022年度第1回は大問2題の構成で、大問1が物語文の読解、大問2が論説文の読解でした。小問数は全16題です。問題の種類は大問1に含まれる漢字の書き取りが3題、慣用句を完成させる穴埋め問題が1題、30字以内の記述問題が1題、選択肢問題が6題、そして抜き出し問題が5題という構成でした。小問数、記述問題の数も少ないことからすると制限時間の60分は余裕がありそうですが、問題文の読み取りづらさ、選択肢問題の難度の高さ、そして時間がかかってしまいがちな抜き出し問題の数の多さを考えると、60分は決して余裕のある時間数ではありません。時間配分を高く意識しなければ、解けない問題が多く発生してしまいます。
 大問1の物語文は過去の失敗で不登校になった主人公が、転居先の離島での他者との心の交流を通して再生して行く話で、内容自体は珍しくないのですが、人物の関係についての説明が少なく、誰が誰に対してどのような心情を抱いているのかを把握するのが難しい設定です。問題の解答を通して文章内容が理解できればよいのですが、文章を細かく理解できていることを前提とした問題が大半を占めるため、そうしたプロセスも成り立ちません。文章を自力で正確に理解して、問題に臨むことが必須となります。
 大問2の論説文も、物語文ほどわかりづらくはないのですが、それでも中学受験生の多くが苦手とする随筆文に近い、いわば随想的論説文であるため、やはり正確な理解は容易ではありません。しかも文章量が多いので、問題で正解するためのヒントの選び出しが難しい構成になっています。
 合格ラインを突破するポイントは抜き出し問題で正解を重ねることにあります。もとより高難度の問題が多いのが抜き出し問題で、大人からすれば答えが必ずあるのだから簡単に思えますが、中学受験生にとっては深い森の中で小さな宝物を見つけるような、困難を極める問題となるケースが多いです。同校の抜き出し問題は、該当箇所を見つけることは決して難しくはないのですが、先にも触れましたように、文章の内容が難しいので、抜き出すべき内容が当たっているのかの判断に迷うことあります。普段の演習から抜き出し問題については、不正解の場合でも時間をかけて見直して、文章のどこに注目すべきであったのかまで必ず確認するようにしましょう。

[2022年度第1回の出典]
大問1:乾ルカ『明日の僕に風が吹く』
大問2:三宅香帆『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』

理科

2022年度第1回は大問が4題で、小問が全22題の構成です。選択肢問題と計算問題がほとんどで、そこに説明記述問題が1題と図を完成させる問題1題が含まれる構成でした。
大問1は新型コロナウィルスを題材とした生物分野の問題、大問2は音と光に関する物理分野の問題、大問3が化学分野から中和反応の問題、そして大問4が地層に関する地学分野の問題でした。
大問1の中に比較的解答しやすい問題が見られましたが、全体的に難問ぞろいで、30分で解くには時間が短すぎるテストです。合格ラインを突破するポイントは計算問題で正解を重ねることにあります。同校の計算問題の難しさは、2022年度では大問3の化学分野で顕著に見られました。中和した状態がどこにあるのかを与えられた表から読み取ることが前提となるため、ここで間違えてしまうとほぼ全滅になってしまいます。計算そのものは複雑ではないのですが、問題の設定を確実に理解することが困難なパターンです。
また、物理分野での図を完成させる問題や、大問4の地層に関する問題は、与えられる設定は複雑ではないのですが、成り立ちを正確に把握するのに時間がかかります。社会の問題と同じく、複数の知識を頭をフル回転させて組合せ、解答方針を速く正確に立てる力が求められます。
30分という短い制限時間内で解答する問題を多くさせるためには、テキストの応用問題や他校の入試問題を数多く解いて、問題を解くためにどの情報を活用すればよいのかを徹底的に見直して、解答スピードを上げる訓練を積み上げる必要があります。一見すると複雑でもなく難しそうに見えないながら解いてみると難しい問題が圧倒的に多い問題構成に慣れるためには、同校の過去問をできる限り早めに解き始めることが重要になります。30分という時間の感覚をつかむことも目標にして過去問演習を進めましょう。

社会

2022年度第1回は大問3題で小問は全32題でした。地理・歴史・公民分野それぞれの大問1題ずつで構成されています。記述問題は1題で、その他は語句を答える問題と選択肢問題で、選択肢問題の方がやや多めになっています。
大問1は地理分野から、山口県萩市の地図をもとに日本各地の産業の特色や、地形図の読み取りなどの問題、大問2は歴史分野から、聖徳太子をテーマとした特別展に訪問した親子の会話をリード文とした各時代についての問題、そして大問3は新型コロナウィルス、緊迫する米中関係、核兵器廃絶などの文章を題材とした公民分野からの問題、時事問題で構成されていました。
どの大問もスタンダードな出題形態で、リード文や資料の読み取りづらさはありません。ただ、一見してわからないところに同校の社会の難しさが存在しています。その難しさが際立つのが選択肢問題で、合格ラインを突破するポイントは、それらの選択肢問題で高い得点率を獲得することです。同校の選択肢問題は文章もとりたてて長くはないのですが、区別がしづらく、また問題がいくつかの要素を複合的に織り交ぜた内容になっている点で難度が高くなっています。例えば、いくつかの陶磁器の産地とそれらがある都道府県の県庁所在地の雨温図の組合せを答えさせる問題では、陶磁器の産地となる都道府県を的中させたうえで、その県庁所在地がどこに位置するかまで考えなければなりません。また、歴史分野の問題でも、1940年から1949年までの期間に起きた出来事を6つの選択肢から4つ選び、それを年代順に並び換えるといった問題が出されています。こうした一筋縄ではいかない問題を正解する力を鍛えるために、普段の演習では知識をただ正確に覚えるのではなく、一問一答式ではない標準レベル以上の問題を多く解くことで、覚えた知識をアウトプットする練習を重ねる必要があります。
また時事問題については、事柄の正式な名称を漢字で書けるように、しっかり覚えるようにしましょう。記述問題の難度は高くありませんので、確実に満点答案が書けるように、標準レベルの記述問題演習を重ねておくことが必須です。

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