早稲田実業学校中等部の傾向と対策

  • 併設大学あり
  • 高校外部募集あり
  • 男女共学

志望にあたって知っておきたいこと

卒業生のほとんどが早稲田大学に推薦入学をします。早稲田大学の教授が特別授業を開催するだけでなく、高校2年生以上の生徒が早稲田大学の正規授業を聴講できる制度や、推薦入学が決まった高校3年生の1月以降は進学する学部別の特別授業の開催など、早稲田大学との高大連携も密に行われています。初等部(小学校)からの内部進学、高校からの外部募集が共にあります。入試では4科目ともに難度が高く、普段の演習を積み重ねてきた成果を問うタイプの問題と、その場で思考力を発揮させるタイプの問題の両方が混在します。国語の読解問題では、語彙レベルが高い文章が出され、日頃からの読書量の違いが得点に表れるようになっており、理科・社会では幅広い知識が求められるといった、テキストに向っての勉強だけでなく、身の回りにある様々な機会から知識を得ること、知的好奇心を高く持って生活を送ることを求める問題が多く出されるテストです。

出題傾向と適した有利なタイプ

科目別学習対策

算数

2022年度は大問5題で小問が全16題の構成です。大問1が計算問題と小問集合で全4題、大問2が小問集合の応用型が3題、大問3は和と差に関する問題が3題、大問4に立体図形を使った規則性と場合の数の複合問題で3題、大問5が平面図形から点の移動の問題で3題という構成です。大問1、大問2の計算問題以外の小問は標準レベルの問題で、テスト全体からすると、全問正解が必要となります。大問2の小問の中には、解き方の説明を記述する問題が1題含まれます。大問5の難度が高いことから、大問3と大問4が合否を分けるポイントの問題と言えます。典型題とまでは言えないまでも、解き方からわからないというタイプの問題ではありません。それでも簡単に解けるレベルではなく、思考力を求める問題も含まれます。大問5は時間によっては深追いしない判断が必要です。

算数が苦手な受験生

大問1、大問2の小問集合は模試などでも出題されるパターンに近いですが、高いレベルの解法を使いこなすことが求められます。合格ラインを突破するポイントは、これらの前半の問題で満点を取ることにあります。後半の問題の中でも特に最終問題で無理に解答を目指すよりも、前半の問題を見直す時間を作る方針で臨む方針が有効でしょう。大問3以降は(1)の得点を目指したうえで、それ以降の問題は解ける問題を選び、それ以上に時間をかけないかたちになります。普段の演習では、テキストの標準レベルから応用問題を通して解法を豊富に身につけておきましょう。単元としては幅広く、複数が混合するかたちも出題されます。図形が出てきたから図形の問題、と決めつけずに、柔軟な体勢で解法を導き出す必要があります。そうした姿勢を身につける目的で演習を重ねましょう。

算数が得意な受験生

大問1、大問2では満点が必須です。過去問演習を通して前半の問題での取りこぼしがあった際にはすぐに単元復習を進める必要があります。そのうえで合格ラインを突破するポイントは、大問3、大問4で出される応用問題で正解を重ねることです。これらの問題は大問1、大問2とは明らかに一線を画す問題で、普段の演習で応用問題を数多く解いてこなければ対応ができません。さらに難問の大問5にかける時間を多く確保するためにも、短い時間で解答できればベストです。普段の演習ではテキストの応用問題レベルを数多く解いたうえで、入試問題レベルの難問にも早めに取り組む意識で進めましょう。最終問題では作図が出されています。難度が高いので無理に時間を使うことは避けるべきではありますが、得点のチャンスを広げるためにも、普段から作図の練習も取り入れておきましょう。

国語

2022年度は大問3題の構成で、大問1が物語文の読解、大問2が随筆文の読解、大問3が漢字5題とことわざの穴埋め問題9題でした。大問1の小問数が9題、大問2の小問数が4題という少なめの問題数です。読解問題の種類は、大問1は書き抜き問題が2題、空欄に入る言葉を自分で考えて答える問題が2題、残り5題は全て選択肢問題です。大問2は全て記述問題となっています。文章量は、大問1は標準的ですが、大問2は短めで、問題数の少なさと合わせて考えると、60分の制限時間には余裕が感じられそうですが、問題の難度を考えると、時間の使い方への高い意識が必要になります。
大問1の物語文は、小学生の女子とその叔父(おじ)が2人で旅をする様子を描いたもので、2人の会話の掛け合いで物語が進行します。登場人物が2人だけというシンプルな構成で、読みやすそうに見えますが、小学生にとっては内容の理解が難しい世界観が展開します。ポイントは物語の内容を正確に把握していることを前提としている問題が圧倒的多数である点です。内容の細かいところまでわからなくても解けるような問題はほんの少数で、その他は文章が理解できなければ太刀打ちできないものばかりです。
大問2の随筆文も文章量は少ないのですが、随筆文ならではの抽象的名表現が満載で、一見読みやすそうですが、内容の理解には高い読解力を必要とします。その上、問題はすべて記述問題であり、文章のポイントをしっかり解答に含めなければ得点になりません。
同校の国語の問題は、豊富な語彙力と文章への慣れを求める高いレベルのテストと言えます。普段から読書に慣れ、大人向けの本も含めて多くの文章に慣れていれば、問題を難しく感じることはないでしょう。一方で文章を読むことに慣れていないと、何が書いてあるのかわからない、結果として問題が解けないという事態になりかねません。その意味で、得点差が大きく生まれるテストとも言えます。
普段の演習から、漢字・語句の演習も含め、まずは基礎的な力にもれがないように、テキストの問題演習量を多く積み重ねておくことが必須となります。そのうえで、語彙を増やし、読みづらい文章にも対応できる力を養うために、読書の時間を重視することが有効です。6年生になると本を読む時間を確保するのが難しいですが、寸暇を惜しんで文章に触れる機会を絶やさないようにしましょう。

[2022年度第1回の出典]
大問1:乗代雄介『旅する練習』
大問2:池澤夏樹『旅をした人 星野道夫の生と死』

理科

2022年度は大問が3題で、小問が全20題の構成です。選択肢問題の割合が高く、記述問題2題、語句を答える問題2題と計算問題2題の他はすべて選択肢問題です。記述問題は20字以内、40字以内と制限字数が付きます。また計算問題では式を書かせる問題が含まれます。
大問1は物理分野からモーターを題材とした電気回路の問題、大問2は化学分野の気体の性質と生物分野の植物が複合した問題、大問3が地球温暖化をテーマとした時事問題を含む総合問題でした。
同校の理科の問題は、見た瞬間に正解が浮かぶような基本レベルの問題からそれぞれの大問が始まりますが、それはほんの数問で、そこから一気に難度の高い問題が立て続けに出され、全体的には難問の割合が圧倒的に高いテストになっています。解答必須の基本問題には記述問題も含まれますので、記述問題の対策もしっかり積んだうえで、まずは取りこぼしがないように基本問題を全問正解することが大前提になります。
そのうえで合格ラインを突破するポイントは、細かな知識を必要とする選択肢問題で1問でも多く得点を重ねることにあります。選択肢問題には2つ以上を選ばせる問題が多く含まれ、選択肢の区別が難しいものばかりです。また、2022年度であれば大問3が該当しますが、リード文を使った問題は、他の大問のような、実験や問題設定の内容が複雑で理解に時間がかかってしまう難問とは異なり、リード文にも解答のヒントが含まれるタイプの問題です。時事問題を含めた知識を確実に固めて、他の大問に時間をかけられるように、このタイプの大問をスピーディーに解き進める必要があります。普段の演習からリード文を使った問題の対策を徹底的に進めておきましょう。
同校の理科で大半を占める難問に対応するためには、テキストの演習だけでは十分ではありません。問題の設定が複雑な応用問題に慣れるためにも、知識の集積を早急に進めて、男子校・女子校を問わず最難関校の中でも理科の平均点が低い学校を選んで、解くだけでなく解説を熟読することで問題内容を理解する道筋を習得しましょう。30分という制限時間はあまりに短いので、どの問題で解答速度を上げるかの感覚をつかめるように、過去問演習には早めに取り組みましょう。

社会

2022年度は大問3題で小問は全27題でした。地理・歴史・公民分野それぞれから大問が1題ずつ出されています。語句を答える問題が11題、選択肢問題が13題と、この2種類の問題が大半を占め、記述問題は2題と少ないです。ただし、そのうちの1題は問題文に会話を交わす人物たちの意見のうち1つを選んで、その賛成意見と反対意見を説明するといった独特の内容になっています。
大問1は大阪に関する古代から現代にまでわたる歴史分野の問題、大問2は千葉県の地形上の特徴や古地図との比較、県別産業の比較と
いった地理分野の問題、大問3は天皇制についての公民の問題でした。地図や表などの資料が多く使われますが、独特の設定の資料は見られません。資料問題については普段の演習に加えて特別に進める必要はないでしょう。
同校の偏差値レベルから考えると全般に難度の高い問題は少なく、高い水準での戦いになります。実際に2022年度の合格者平均点は50点満点中の33.5点と得点率では4科目で最も高く、同じく50満点の理科より10点近く高くなっています。ただし制限時間に比べて問題数が多く、一部に細かな知識を必要とする問題があり、独特な内容の記述問題が1題含まれますので、時間的余裕は全くありません。短い時間で高得点を獲得するために、まずは分野を問わず基本的な知識は確実に固めて、模試や塾のテストで全体正答率の高い問題で間違いがあった場合には即時復習をして、もれがないように徹底的に知識の集積をしておきましょう。そのうえで合格ラインを突破するポイントは、思考力を求める問題で確実に得点することです。先にご紹介した公民分野の記述問題だけでなく、歴史分野では小林一三が経営した阪急百貨店が異なる業種を結び付けたとして、それが何と何を結びつけたのかを答える問題が出されました。阪急+百貨店で、大人であれば鉄道と百貨店とすぐに浮かびますが、首都圏の中学受験生にとっては難しい問題です。思考力だけでなく幅広い知識が必要です。また記述問題は全てが難度の高い内容ではありませんので、普段の演習で記述練習をくり返して、短くわかりやすく文章をまとめる練習を重ねておきましょう。人名などの漢字表記で間違いがないように、知識を正しく書いて覚えることも必須です。

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