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以前にもご紹介しましたように、中学受験の国語に臨む際に、文章の背景にある「テーマ」をどれだけ身につけているかどうかが、問題を解く速度と正確さに大きく影響してきます。学校によってどのようなテーマがより多く出題されるのか、といったかたちで学校別に傾向を調べることも大いに効果的です。そうした学校ごととは別に、時代を反映したテーマについて注意をすることもまた重要なことです。重松清の『きみの友だち』や三浦哲郎の『ユタと不思議な仲間たち』などを題材として、「いじめ」をテーマとした文章を出題する学校が目立つことなどにも、時代の反映が伺えます。また今年度の桜陰と女子学院は奇しくも「メディアリテラシー」を題材とした文章を出題しています。メディアリテラシーという言葉自体、生徒さんがご家庭や学校で使うことはほとんどないでしょう。それでもあえてこうした内容がテーマとして出題する背景には、中学校側の明確なメッセージがあるように思われます。生徒さんがどれだけ普段から考える習慣を身につけているかを見極めるために、その時代を反映し、生徒さん達の周りで起こりうることを題材としたテーマを提示しているのではないでしょうか。
そこで来年度ですが、特に気をつけるべきテーマは、「家族」と「生命・死」ではないかと考えます。6月の秋葉原での事件をはじめ、無差別殺傷事件が連動するかのように起こったことは記憶に新しいところです。また、これまでは考えられなかったような家族内での事件が多く発生したことも大きな話題となっています。もちろんこうした事件が多発するからといって、中学校が過敏に反応し、まるで社会の時事問題のように事件を扱うとは考えられません。あくまでも対象は小学校6年生の生徒さん達です。残忍な事件を再現するようなことに学校側が意義を見出すことはないでしょう。ただ、これほどまでに多発する事件の背景に、「家族の絆の崩壊と、助長される孤独、命の重さの軽視」があるとすれば、それはテーマとして十分に成り立つものです。
「家族」と「生命・死」といったテーマはこれまでも多くの学校で扱われて来ました。それだけに学校側としてもさらにテーマを深く掘り下げてくる可能性も大いに感じられます。そうした内容に臨むには、まず生徒さんがテーマをよく理解しておくことが大前提となります。その備えがあれば、出題される内容が難しくても、しっかりと取り組むことができます。逆にテーマについての意識が固まっていなければ、文章で何が書いてあるかがわからない…といった状況になり、問題の正答率は上がりきらないでしょう。それだけテーマというものは点数に直結する重要な要素なのです。
今回は、これまでの過去問から、特に物語文の中から「家族」と「生命・死」を扱った問題をご紹介します。ぜひ問題を実際に解いてみることや、出典の原文を読むなど、様々なかたちで参考にしてみて下さい。
麻布中ではこれまでも他校と比べて「生命・死」をテーマとして扱うことが多くありました。麻布中といえば、心情・人間関係の「変化」を適確に読み取ることが求められますが、その変化のきっかけとなる事件に「死」が現れることが多くあります。平成13年度・吉本ばなな『みどりのゆび』での祖母の死、平成17年度・重松清『タオル』での祖父の死、などがその例となります。今回ご紹介する平成14年度のマイケル・ドリス『朝の少女』では、それまで喧嘩を繰り返していた姉と弟が、妹の死産をきっかけに深い絆を持ち合うまでの過程が書かれています。姉と弟の関係が変化する契機に、生まれ来るはずであった妹を失った「喪失感」があるのですが、それを読みきれなければ、ほとんどの問題は解くことができません。特に最終の記述問題では、その「喪失感」を踏まえて、今そこにいることのできる家族同士が「絆」を持ち合うに至るまでをしっかりと把握することが必要になります。この傾向は翌年度に同校で出題されたレイ・ブラッドベリ『宇宙船乗組員』にもつながります。麻布では、例えば平成17年度に桜蔭中と武蔵中で同じく出題された桂望実『ボーイズ・ビー』のように、登場人物が声高に喪失感を訴えるパターンはあまり出されません。それだけに人物の言動からその根底にある心情を把握する練習としては、極めて効果的なテキストと言えます。
この文章も上記の麻布と同じく、姉と弟の関係の変化が扱われています。そのきっかけとなったのが二人の父の死でした。ここでは姉と弟の間の「絆」というよりも、姉の心情変化を把握することが重要になります。特に最終問題では、かつて暮らした旧家に訪れて父の優しさを思い出すことで、自分の中にもこれまでなかったような「やさしさ」が芽生えてくることの説明が求められます。父を失った「喪失感」から、娘がその父の持つ魅力を「継承」する過程が描かれていることに注意が必要です。
いとこの死に直面して、生きることの意味を見失いかけた主人公が、祖父との会話を重ねる中で自分の中に生きる答えを見出してゆく過程が書かれています。祖父や祖母といった、家族の中で両親とは異なる存在とのコミュニケーションを通して、主人公が成長してゆくという話はこれまでも数多く出題されて来ました。梨木香歩『西の魔女が死んだ』『りかさん』はその代表例と言えます。核家族化という現実を踏まえたうえで、祖父母とのコミュニケーションは、その重要性から今後も頻出のパターンとなりますので注意が必要です。この桜蔭が出題した物語文では祖父の言葉に強いインパクトがあります。「若いころは戦争やったから、死ぬことは特別なことやない…」「人は死ぬ。早いかおそいかはあるけど、かならずやってくる。じつに公平や」など、まるで論説文の主張のように、ストレートな表現が使われています。できれば問題を解き、それが難しいまでも文章は読んでみて下さい。学校からのメッセージがとても受け取りやすい文章になっています。
先に触れた「メディアリテラシー」を題材とした随筆文と併せ見ると、今年度の桜蔭の国語は、時代の抱える問題点を踏まえて警鐘を鳴らしている印象を強く受けます。平成20年度に限らず、数年度分をぜひ読んでみて下さい。
いくつかの学校で出題された文章を紹介してきましたが、これらの文章、出題する学校は、「家族とはこうあるべき」や「いのちとはこうあるべき」といった主張はしていません。様々な考え方が存在するテーマで、答えをひとつに定めることが意味のないことは学校側も十分に承知しています。答えを求めるのではなく、テーマ性の強い文章を出題することで、生徒さん達に自分の身の回りで起きている、これから起きる可能性の高いことについて「考える」ことの重要性を訴えているように思われます。ぜひ、上記を含めた様々な出題文に触れ、またそれをもとにご家族でお話を交わすことで、生徒さん達と多くのテーマを共有してみて下さい。
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