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理科は覚えることが多すぎて大変という話をよく聞きますが、本当でしょうか?実は入試に必要な知識はそれほど多くありません。理科の学習には、覚えるべき知識と、覚えなくてもよい知識があります。覚えなくても良い知識を、一所懸命に覚えていませんか?
例えば電流の話をします。「電熱線の長さ」が同じ時、「電熱線の[断面積]」と「電流の大きさ」の関係は正比例で、「電熱線の[断面積]」が同じ時、「電熱線の長さ」と「電流の大きさ」は反比例であると、授業では習います。
ちょっと注意してほしいのは、「電熱線の長さ」が同じ時、「電熱線の太さ」と「電流の大きさ」は正比例の関係であるとはかぎらないことです。「太さ」を表す方法は2種類あります。「断面積」で表す場合と「直径」で表す場合です。「電熱線の長さが同じ」時、「電熱線の[直径]」が2倍だと「電流の大きさ」は2×2の4倍になります。(直径が2倍だと面積は4倍になりますね。)
なんだかごちゃごちゃしてきました。とても複雑です。これらを知識として覚えようとするとなかなか大変ですね。しかし、この「電熱線」と「電流」の関係は、覚えるべき知識なのでしょうか?
この回のテキストには、必ずグラフや表があります。また、実際の問題でも、単純にこの知識を答えさせることはなく、実験を行ったという設定で、グラフや表をのせるはずです。ということはグラフを読みとる、または表を読みとる力があれば、知識を暗記する必要はないのです。
そこで、今回はグラフを読みとる『3つのポイント』をご説明致します。
まず大切なのは、そのグラフが『何のグラフなのか』をしっかり認識することです。当り前のことですが、この当たり前が大切です。一定量の塩酸に水酸化ナトリウム水溶液を加える場合と、一定量の水酸化ナトリウム水溶液に塩酸を加えるとでは、やっていることは同じに見えますが、まったく違います。
次にグラフの形から、『きまり』を見つけます。中学受験に出てくる『きまり』は、「正比例」・「反比例」・「一方が2倍ならもう一方が4倍」の3つ。それと、気体の発生や中和の問題で出てくる「途中で折れ曲がったグラフ」の4つです。まずは、きまりが何なのか認識しましょう。
次にすることは、『メモ』することです。例えば、「塩酸100cm3」に「亜鉛」を加えて、「水素」がいくら発生したかを調べる実験のグラフでは、完全反応の場所をメモします。(完全反応の場所はグラフの折れ曲がった場所です。)
100cm3・・・0.6g →150cm3
といった形です。(このメモは塩酸100cm3と亜鉛0.6gが完全に反応して、水素が150cm3発生したということを表しています。)そこで、問題が次のようだったとします。
問題:この濃さの塩酸200cm3に亜鉛1.8g入れたら、水素は何cm3発生しますか?
こうした問題の場合、多くの参考書などに解説で記載された内容ですと、
200÷100×150=300(cm3)
または、
150×200/100=300(cm3)
といった式のかたちで答を導き出しています。前後に細かい解説がついているものの、それぞれの数字が何を表すかがわかりづらく、結局何がどのように出されたのか、よくわからなくなります。
そこで、次のように考えてみてはどうでしょうか?
先ほど完全反応の場所をメモしました。その下に、問題文の条件を並べましょう。
100cm3・・・0.6g →150cm3
↓×2 ↓×3 ↓×2
200cm3・・・1.8g →[ ]cm3
亜鉛が3倍量になっているのに、塩酸の量は2倍しかありません。水素の発生はどちらかの材料がなくなれば、反応は終わってしまいます。だからこの場合、水素の発生量は300cm3になります。(150×2=300) このようにメモを活用して、書き方を工夫すると、一目で自分の考えた道筋をたどることができます。ただ式を覚えていては、数字が変わった際に混乱しますが、考えた道筋が頭に入っていれば、問題の出され方が変わっても、スムーズに対応できるようになります。
ここで注意すべきは、「単位」を大切に扱うことです。雑に書いてしまうと、途中で良くわからなくなることがあります。例えば、先ほどのメモの最初の部分を、
100・・・0.6 →150
と書いてしまうと、何がどの数字で何の条件になるのかがわかりませんね。せっかくのメモの効用も活かしきれなくなってしまいます。繰り返しますが、「単位は大切に、そしてメモは丁寧に」することが、この作業でグラフを使った問題を解くコツです。
中学受験の理科では頻出度の高いグラフ問題でも、このようなポイントを身につけておけば、問題を解くスピード、確実さも変わってきます。何よりグラフに対する苦手意識を払拭できれば、気持ちのうえでも大きなプラスになります。これから過去問演習を進めるにあたって、ぜひ今回ご紹介したポイントを試してみて下さい。
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