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6年生の生徒さんは過去問演習などの実戦的な演習に入り、最終仕上げの段階を少しずつ進めているところでしょう。生徒さんにとってはちょうど心身ともに疲れも出てくる時期かと思われます。気分転換をさせてあげたいけれども、一方で演習時間が少しでも必要である、といったジレンマを親御さんが抱える時期でもあるかもしれません。
そこで今回は、生徒さんの頭と心の癒しになり、同時に美しい文章に触れる機会を得ることもできるような気分転換に適した書籍をご紹介します。いずれも芸術性の高い内容になっていますので、言葉の使い方に少し難しさを感じるかもしれません。それでも第一線で活躍している人物によるものだからこそ成しえる、文章への思いの込め方が感じられる作品になりますので、ぜひ触れてみて下さい。実際の入試問題に作品が使われた作家も登場します。そうなると気分転換とは矛盾するかとお思いになるでしょうが、「課題図書だ」などといった張り切った気持ちで臨むのではなく、一息つきたい時などに気楽な気持ちで向き合うことができる作品です。ぜひくつろいだ環境でページをめくってみて下さい。気持ちを休めながら、自ずと美しい言葉に触れることもできます。
4、5年生の生徒さんにも、ぜひ手を伸ばして頂きたいと思います。親御さんのサポートを受けながらでも、できるだけ早い時期から、書き手の心がこもった文章に触れる機会を生徒さんに持させて頂きたいと思います。
染織家である筆者によるエッセイですが、非常に美しい言葉が連なっています。文庫本で一章が見開き2ページ強ほどの分量で成り立っていますので、読む量としては全く負担になりません。しかも優しく語りかけるような調子で、言葉が紡がれています。たとえば「緑という色」という章。染色の世界では、緑色を草木の染液から直接染めることはできず、かわりに青と黄をかけ合わせることで緑が得られるそうです。そこを踏まえて以下本文からの抜粋です。「朝、太陽がさし昇るとき、天地は金色の光に包まれ、夜、闇が迫るとき、天地は青い幕に閉ざされる。この大自然の循環は、光に近い色は黄色であり、闇に近い色は青であることを私たちに教えてくれる。この黄色と青こそは、あらゆる色彩をなす二原色であり、その間に無量の色彩が存在する。私たちが草木から色を染め出していることも、じつはこの自然のごく一部分の出来ごとであり、その中に、どんな些細な現象であれ、神が自然に托して私たちに示している秘儀がかくされていると思うのである。」抽象的に見えますが、作者の色彩、さらには自然、神に対する敬意が強く感じられる文章です。小学生には難しすぎると思われるかもしれませんが、実際に志村ふくみの文章は、平成21年度の日本女子大附属の出典(『母なる色』より)として出題対象になっているのです。
もちろん同校が毎年のように芸術色の濃い出典が出題することを考慮するにしても、これから他の学校で出題されても不思議のない作家と思われます。ぜひ多くの生徒さんに美しい世界に触れる機会を持って頂きたいです。
それでも文章を読むことすら疲れにつながる生徒さんも少なくないはずです。実はこの作品を紹介するさらなる大きなポイントは、この本に掲載されている写真の数々にあるのです。文庫本にしては幾分か高い本書ですが、それも納得できるほどに、つい見とれてしまうほどの美しい写真がたくさん掲載されています。染色された生地などを写したものが主にはなりますが、中には美しい自然風景なども混じっていて、写真集としての価値も十分にあると言えるほどです。6年生の生徒さんが少し疲れた時に、目の保養として眺めるだけでも気分転換になります。
5年生以下の生徒さんであれば、まずは言いたいことすべてを理解しようとするのではなく、言葉の響きをしっかり受け止めて、親御さんが少し助言をしてあげるというかたちでよいでしょう。6年生も、書いてあることについて要約などは決してしようとはせずに、ぜひ親御さんと何が書いてあったかについて話し合って下さい。それだけで国語の世界観が変わるきっかけにもなります。
平成19年度の武蔵中で、安野光雅の『蟻と少年』が出典となりましたが、蟻と少年の両方の視点に切り替わりながら文章が進む、かなり独特の文章であったこともあり、話題になりました。その筆者、安野光雅は著名な絵本作家であり、海外でも多くの賞を受賞しています。その中から『旅の絵本シリーズ』をお薦めします。
絵本についてはまた改めて別の回に取り上げたいと思いますが、高学年になっても絵本はぜひ読んで頂きたい、むしろ年齢が上がることで、より世界観を吸収できることもあり、非常に有効なテキストになります。我々も大人になって絵本を読み返すのは、懐かしさに浸りたいだけでなく、その年齢だからこそ自分の視点で絵本の世界により深く入ってゆけることがあるからではないでしょうか。生徒さんはこれまで国語の読解演習を通して、多くの文章に触れてきました。無意識のうちに世界観も築かれています。その目でぜひまた絵本を見直してみると、新しい何かを感じるかもしれません。もちろん昔読んだ絵本でも構いませんが、武蔵中以外でも平成20年度の逗子開成でも出典(『わが谷は緑なりき』より)となった安野光雅の作品にはぜひ触れて頂きたいです。
このシリーズは現在第7集まで発刊されていますので、書店で立ち読みすることができれば、ぜひ選んでみて下さい。インターネットでも画像検索できますが、やはり絵本そのもので画質に触れて頂きたいです。繊細なタッチで描かれた風景は非常に温かで、しばらく目が離せなくなります。全景を観て、また細部に目をやるなど、様々な見方をすることで、観る度ごとに新しい発見があります。癒されながらも、自分の感じたイメージを広げるとはどのようなことか、を知るきっかけにもなります。
その他、今年5月11日配信のメルマガ「今年度入試注目のテーマは『生物多様性』」でもご紹介しました、『Michio’s Northern Dreams シリーズより vol.3 最後の楽園』(星野道夫 PHP研究所)も改めてご紹介したい一冊です。詳しくはメルマガをご覧頂きたいですが、星野道夫の文章も平成19年度の湘南白百合中の出典(『著作集5』より)、また平成20年度の成城中の出典(『旅をする木』より)になっており、中学校側もぜひ生徒さんに出会って頂きたい作者と考えていることがわかります。
作者名を見てお気づきになった親御さんもいらっしゃるかと思いますが、こちらは漫画になります。また作品の名前を見て、SFがお好きな方であれば聞いたことがあるかもしれませんが、原作はアメリカのSF作家レイ・ブラッドベリによるものです。ブラッドベリを愛好する萩尾望都が、彼の作品のいくつかを短編集として漫画化したものが本書になります。
萩尾望都といえば『ポーの一族』や『トーマの心臓』といった漫画史に残る稀代の名作を残していることで伝説的な作家となっていますが、今回ご紹介するのはそうした理由からだけではありません。実は本書に掲載されている一編『宇宙船乗組員』のブラッドベリによる原作が、平成15年度の麻布中の出典となっているのです。過去問をお持ちの方はぜひ見比べて頂きたいのですが、漫画では原作が非常に忠実に再現されています。内容がSFだけに、電動式ほたるや遠心分離機など、文字だけではなかなかイメージができないものが登場しますが、それが漫画ではしっかりと驚くほど見事に再現されています。原作と漫画をよく見比べて頂くと、再現にあたってどれだけ細かい点にまで目が行き届いているかがわかります。多くの漫画家が作品を作り出すために、どれだけ多くの情報を集めて戦っているかは、最近の『バカボンド』や『ワンピース』といった作品を見ても明らかなことでしょう。
このような原作のある漫画を見ると、イメージを再現するという作業がどのようなものかが如実にわかり、これから生徒さんが文章(特に物語文)にあたった際に、自分の頭の中にイメージを再現させる際の重要なヒントをつかめるきっかけになるかもしれません。たかが漫画と言い切れない効果はこのようなところにもあります。まして萩尾望都の作品をご覧になった親御さんでしたらおわかりのとおり、画風は非常に美しく詩的ですので、ただ目で追ってゆくだけでも気持ちは和んでゆきます。生徒さんにとっても貴重な出会いになるかと思います。
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