今度の入試で出るかもしれない今週の時事ニュース(関東にあるジュラシックパーク「小網代の森」)

「わあ、ジュラシックパークみたい!」

神奈川県、三浦半島の先端に広がる「小網代(こあじろ)の森」を訪れた女性利用者から、感嘆の声があがりました。

小網代の森のニュースは流域という地学的な要素や、カニやホタルの生態など、一見理科の題材に思われがちですが、環境保護という観点からは社会の問題にもなります。
また、自然を多くの生き物が生活できる環境にするには、手つかずではなく、人間が的確に手を入れることが必要であるという考え方は、国語の環境保全を扱った説明文読解の定番テーマのひとつです。
様々な要素を含むこの「小網代の森」に関するニュースは、中学受験の題材として貴重なものなのです。

【関東圏最大の自然の流域】

小網代の森は、川の源流から海までの生態系が自然のまま残された森です。今年の夏に源流から河口までの散策路ができ、7月20日より一般開放されるようになりました。小網代の森の広さは面積約70ha(東京ドーム約15、16個分)まで及びます。森には浦の川という全長1.3kmの川の源流があり、水が山あいの湿地、河口の干潟などを形成しながら、相模湾まで流れています。森と湿地と干潟と湾とを川が結ぶひとつの流域が、まるごと自然のまま残された場所、しかもこれだけの広さの自然の流域は、関東圏でも小網代の森だけになります。

【小網代の森の歴史】

1980年代の半ばに小網代の森の土地を買収した企業が、この地にゴルフ場とリゾートホテルなどを作る予定でした。それに反対するNPO団体や市民団体などの働きかけから始まり、NHKが特集番組を放送したことも契機となって、保全を進めようという流れが加速。神奈川県、ついには国が動いて小網代の森は「近郊緑地特別保全地区」に指定されました。

【森の象徴、アカテガニ】

小網代の森を象徴する生物はアカテガニです。アカテガニは小網代の森全体に住んでいて、夏になると海におりてきて、子どもを産みます。満月の夜と新月の夜に、1回につき約三万匹から四万匹もの子どもを海に放すのです。山と海の間に家や道路があっては、アカテガニは海におりられなくなり、また子どものカニが山に戻れなくなります。山と川と海がつながっていることの象徴が、このアカテガニの存在であると言えます。

【森の自然を保つために】

2010年頃までは、小網代の森は人間の手が入っていなかったため、木が茂りすぎて暗くなったり、湿地が乾燥してササに覆われたりなど、荒れ野、荒れ山になってしまっていました。その結果、小網代の自然の多様性はどんどん失われていったと言われます。
その後、NPOや協力団体、大学生や企業のボランティア、地元の有志など多くの人々の手によって、常緑樹の間伐、ササの伐採、湿地の再生作業などが行われました。その積み重ねの結果、ようやく自然が息を吹き返しました。
川に光が入るようになって、ホタルも森に戻ってきました。川を覆っていた木を伐採することで川に光が入り、川底の石に藻が生えます。藻が生えるとカワニナという貝が増えます。このカワニナがホタルの幼虫の餌になります。光と川を人間がマネジメントしたことで、ホタルが生活の場を見出すことができたのです。ぜひお子さんと一緒に、小網代の森のニュースを見直してみてください。

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