入試で狙われそうな今月の理科時事問題(「はやぶさ2」リュウグウを撮影、日本海寒帯気団収束帯、世界最大と最小ロケット)

今月は、“「はやぶさ2」リュウグウを撮影”と“日本海寒帯気団収束帯”そして“世界最大と最小ロケット”について取り上げてみましょう。

<「はやぶさ2」リュウグウを撮影>

2014年12月に打ち上げられ、小惑星リュウグウを目指して約29億kmを飛行している2代目の無人探査機「はやぶさ2」が、地球‐月の距離の約3倍強の130万kmまで近づいて、直径900mの小惑星リュウグウの撮影に2月26日初めて成功しました。
初代の「はやぶさ」には世界初の実用化されたイオンエンジンという高効率で長時間推進力を出すエンジンが登載されたのですが、今回の「はやぶさ2」にも改善されたイオンエンジンが載っていて、順調にいけば6月下旬から7月上旬に到着するものと予定されています。
その後、観測やサンプルの採取を行い、2020年末帰還(きかん)する予定です。

『なぜ小惑星を調べるの?』

火星と木星の間に小惑星帯として無数に存在する小惑星は、以前はその軌道に有った惑星が壊れて出来たものと思われていました。しかし、現在では太陽系が出来た当時、惑星にならなかった残りの物質だと思われています。これから調査する「リュウグウ」は炭素を多く含む小惑星ですが、この一部を地球に持ち帰って詳しく調べることで、太陽系の起源や進化を解き明かし、かつて太陽系空間にあった有機物や水がどのようなものであったのかが判り、地球上の生命の起源がどこから来たのかが解明できるものと期待されています。

『初代の「はやぶさ」は?』

2003年5月打ち上げられ、2010年6月満身創痍(まんしんそうい)で帰還した「はやぶさ」は、イオンエンジンによる新しい航行方法を確立しながら、太陽系の起源の解明の手がかりを求めて、小惑星イトカワのサンプルを持ち帰りました。詳細はメールマガジン2015年12月19日号に載っていますので見ておいて下さいね。

<日本海寒帯気団収束帯>

全国的に冷え込みが厳しく、最低気温が統計開始以来最も低くなった所が多数あった今年の冬、東京では1月末に4年振りとなる20cmの積雪、34年振りの8連続冬日、48年振りとなる最低気温−4℃を記録しましたね。
特に、2月6日から8日にかけ日本海側で記録的な豪雪が降り、福井県と石川県を通る国道8号線で車1500台以上が立ち往生する大きな被害があったことを皆さんは覚えていますか?
冬季の日本海側、特に北陸、近畿、山陰地方の沿岸部などにしばしば豪雪による被害を発生させる原因となっているのが「帯状の雲」、これがJPCZと呼ばれる「日本海寒帯気団収束帯」なのです。

『何で雪雲が帯状に次々発生するの?』

冬季にはユーラシア大陸に強い寒気を持つシベリア高気圧ができ、吹き出した寒気が日本海上空で暖流である対馬海流からの水蒸気を冷やして雪雲を作りだします。その雪雲が日本列島の日本海側に雪を降らします。この時の雪雲は天気予報の気象衛星の雲画像でよく見かける、並行した筋雲となります。ところが、気圧配置によって、シベリア高気圧から吹き出す強烈な寒気が朝鮮半島北側にある長白山脈に阻(はば)まれて、二手に分かれ再び日本海上空で合流することがあります。合流時には上昇気流が発生し暖流からの大量の水蒸気を雪雲に変えて帯状の雪雲を作り出します。そうなると豪雪が降り続くことになり交通機関がマヒするような被害となってしまいます。

『エルニーニョ・ラニーニャ現象との関係は?』

太平洋の貿易風(東風)が弱くなり、中部太平洋からチリ沖の海水温が高くなる現象をエルニーニョ(スペイン語で男の子)、逆に貿易風(東風)が強くなり、中部太平洋からチリ沖の海水温が低くなる現象をラニーニャ(スペイン語で女の子)と言いますが、この現象は世界の気象に影響を与えていることが判っています。ちなみに、気象庁は現在ラニーニャ現象が継続中と発表しています。
ラニーニャ現象の場合、冬型の気圧配置が強まり、シベリア寒気団から吹き出す冷気が強まります。
今年は何度も何十年ぶりの寒さなどと聞きましたね。今回の豪雪は気圧配置の影響もあるようですが、気象庁によれば、記録的な寒波はラニーニャ現象によりシベリア寒気団が強まった結果なのだそうです。
それではラニーニャ現象の夏への影響はどうでしょうか?
太平洋高気圧の北への張り出しが強くなるので、日本の平均気温が高くなる傾向があります。
一方、エルニーニョ現象の場合、冬季は西高東低の気圧配置が弱まり、気温が高くなる傾向があります。夏季は太平洋高気圧の張り出しが弱くなり、気温が低く、日照時間が少なくなる傾向があります。

『台風の時期の長期豪雨被害でも似たことが?』

雨雲・雪雲の連なりが災害を発生させるという点で似たような現象があります。
2015年9月9日から11日にかけ、関東・東北地方の64河川の氾濫、14河川で堤防の決壊をもたらしたのが、「線状降水帯」という雨雲が同じ地域を長時間通過することで生じる気象現象でしたね。これはメールマガジン2015年10月17日号で説明していますので、比較の意味から読んでおいてくださいね。

<世界最大と最小ロケット>

期せずして2月3日に日本からは衛星を搭載するための世界最小級ロケットが、6日には米国から輸送力最強ロケットが発射されました。

『SS520』

超小型衛星を搭載した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型ロケットSS520 は全長10m弱、主力ロケットH2Aの5分の1弱の大きさですが、費用は約20分の1で打ち上げられます。世界的に地球観測などに使われる超小型衛星の需要が増大し、国内外で小型ロケットの開発が盛んになっているようです。

『ファルコンヘビー』

米国宇宙航空局NASAではない、民間の企業である「スペースX社」が開発したのが超大型ロケット「ファルコンヘビー」。このロケットは火星に17トンの物資を輸送可能なのだそうです。現役では最大のロケットで、かつてアポロ計画で月に人類を運んだNASAの「サターン5」に次ぐ大きさなのだそうです。今回は試験発射で、スペースX社の最高経営責任者であるイーロン・マスク氏が別会社として経営する「テスラ社」製の電気自動車(EV)のスポーツカーを火星に向かっている宇宙船に乗せていることで話題をとっています。

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