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本年度入試のひとつの特徴として、「国語で『随筆文』の出題が増えた」ことを、以前このメールマガジンでもお伝えしました。随筆文は、開成や女子学などの難関校を筆頭に、約3割の学校で出題されています。この傾向が、来年度も続くかどうかはわかりませんが、多くの受験生が「随筆文対策」をして受験に臨むものと考えられます。入学試験は厳しい世界です。最終的に合否をわけるのは1点です。できるだけ弱点を作らないようにして試験に臨みたいものです。
そこで今回は、より具体的に、「随筆文の問題は、どのように解けばよいのか」について考えてみたいと思います。今回ご紹介する随筆文の読解法を身につければ、随筆文にとまどうことはありません。ぜひ「読解法」をマスターして、国語に自信がもてるようになってください。
随筆文といいますと、「徒然なるままに」自由に書いてある文章だというイメージが一般的です。どちらかというと、パターン化になじまない文種だと考えられています。しかし、入試問題をよく読んでみると、随筆文にもパターンがあることに気がつきます。
随筆文で一番多いのはこのパターンです。「大人」になった筆者が「子供」のころのことを思い出しながら、昔を懐かしんでいる内容が多いです。
たとえば、向田邦子の随筆文のように、子供のころの父親のようすを描いた随筆文は、このパターンにあてはまります。
ここで、何よりも重要なのは、筆者は「大人になってから、昔を思い出している」という前提をしっかり意識しながら読むことです。大人が、自分の子供時代を思い出すとき、「あのころはよかったな」としみじみしたり、苦い体験を思い出して反省したりするものだということを覚えてしまいましょう。もちろん、例外もあることは、頭の隅に入れておかなければなりませんが、このパターンを押さえておくことで「全くわからなかった」という事態に陥ることを防ぐことができます。
もうひとつは、筆者が現代の社会のなかで体験したことについて、「批判的」な意見を述べるというパターンがあります。
たとえば、バリアフリーについて障害者の立場からの意見や、現代の乱れた言葉遣いについての意見など、筆者自身の体験から感じた意見を述べた文章です。
ここで注意しておきたいのは、筆者の意見は「批判的」であることが多いということです。筆者は、何か気に入らない体験をしたから、わざわざ文章にしようと思ったのです。ですから、「筆者は何に対して怒っているのだろう」と考えながら読むことで、文章が読みやすくなるはずです。
随筆文は「体験」と「意見」の組み合わせで構成されています。その体験が子供のころの体験なのか、現代の社会での体験なのか読み分けることで、筆者の意見により近づくことができるでしょう。
では、随筆文では、どのような問題が出題されるのでしょうか?随筆文からどんな問題が作られることが多いのか、頭の中に入れておきましょう。
随筆文をはじめ、国語の読解問題の大きな柱となるのが「抽象と具体」を読み分けられているかを試す問題です。すなわち、筆者の具体的な「体験」と抽象的な「意見」が読み分けられているかを問うのです。たとえば、「なぜこんな意見を持ったのですか?」と聞いて、「筆者の体験」を答えさせたり、「筆者はどんなことを感じましたか?」と問うことで、その「体験」に対応する「意見」を答えさせたりするのです。普段の勉強でも、具体的な体験が書いてあるのか、抽象的な筆者の意見が書いてあるのか、気をつけることが大切です。
「抽象と具体」という言葉が、少し難しいというお子さまに説明される場合は、「くだもの」の例を使うとよいかもしれません。「みかん」「りんご」「ぶどう」は具体的。「くだもの」は抽象的。「抽象と具体」の意味を理解することが第一歩です。
では、実際に出題された入試問題を見てみましょう。
次の問題は、2007年の開成中学校の入試問題の一部です。
筆者がずっとかわいがっていたブルドックの「鉄」が、病気で死んでしまった場面です。
僕は四年前の春寒いころに松屋(デパートの名前)の屋上で支払った二十円の金を思い出し、その虎の子に似たブルドックの子どもを自転車につけて、僕の家に届けてくれた配達夫の顔を思い出した。それから二日目にディステンパー(命取りになりかねない、幼犬特有の病気)にかかり入院させた時に、例のお医者が今度と同じような言葉で、まああきらめてもらいましょうかと言ったことを頭にうかべた。あの時も今度も同じことを言ったじゃないか、と僕は自問してみた。ディステンパーが治ってから毎晩、鉄は湯たんぽを犬舎のなかに入れてもらい、湯たんぽに抱きついて寝ていた。そのころいた女中が縁側でその湯たんぽを入れながら言う声が、僕の耳にまだ記憶を残していた。 お温かにしましたからお休みなさいな。
(室生犀星「鉄の死」より)
問六 「あの時も今度も同じことを言ったじゃないか、と僕は自問してみた」とありますが、ここから筆者のどのような気持ちが読み取れますか。「自問してみた」とあることに注意して、できるだけ自分のことばでわかりやすく説明しなさい。
開成中学校の最後の問題です。決して簡単な問題ではありませんが、さきほど説明した読解法を使って解いてみましょう。
まず、文章全体が、筆者が昔のことを思い出してしみじみしているパターンであることを押さえます。今回は、子どものころを思い出しているわけではありませんが、過去のことを懐かしむというパターンに分類できます。筆者が、過去を振り返って、飼い犬が死んだことをしんみりと思い出しているというところまで、パターンを利用すれば楽に読み取ることができます。
次に、問題を見ます。「筆者のどのような気持ちが読み取れるか」という問いですので、気持ち(抽象)を答えることになります。その気持ちを考えるとき、筆者が「どんな体験をしているのか(具体)」を読み取るようにします。 ここでは、①ブルドックの鉄は、幼いときに命にかかわる病気をしたこと、②そのときも医者は「あきらめてもらいましょう」と言ったこと、③しかし、その病気は治って、湯たんぽに抱きついて寝ていたということ、という筆者の「体験」が述べられています。 そして、湯たんぽを用意する女中の声が、④今も「僕の耳にまだ記憶を残していた」と述べています。
①〜③の「体験」から、「医者が駄目だといったけれど治ったこともあったのに、今回は本当に死んでしまったことがやりきれない(悲しい)」という気持ちが読み取れます。 ④からは、「まだ、生きているような気がする。(死んだということが信じられない)」という気持ちがうかがえます。「自問してみた」というところからも、「あの時は大丈夫だったよな。なのになぜ・・・」と自らに問い直している様子が感じられ、死をいまだに受け入れられていないことがわかります。
以上の2要素をまとめて答えれば正解です。
「今回は医者の言うとおり、本当に死んでしまったことがやりきれないと同時に、鉄の死を受け入れられないでいる。」
いかがでしたでしょうか。国語はどのように解いていいのか、わからない。という話をよく聞きます。しかし、国語もきちっと読解法に当てはめて、順序通り考えていけば、正解を導きだせる科目なのです!国語が苦手は生徒さん、ぜひ、中学受験国語の専門プロ家庭教師の無料体験授業を受けてみてください!
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