理科が得意になるためのニュースの見方

【世界で最も醜い植物】

7月22日夕方、東京文京区の東京大付属植物園(小石川植物園)で、世界最大の花と言われる「ショクダイオオコンニャク」が開花し、ニュースを賑わせていたことを覚えていますでしょうか。このショクダイオオコンニャクはインドネシア原産の絶滅危惧種で、7年に一度、たった2日間しか花が咲きません。ちょうどその開花の時期が訪れたことで大きな話題となりました。

その話題にさらに拍車をかけたのは、その見た目、そして臭いでした。この植物は、突き出た軸のまわりに数千の雄花と雌花があり、花弁のような赤紫色の葉が取り囲んでいるような形態になっています。その様がロウソクを立てた燭台(しょくだい)に似ているため、この名前がつきました(和名はスマトラオオコンニャク)。ニュースを見ていない方は、ぜひインターネットで検索をして、写真を見てみて下さい。何とも異様な見た目は、文章ではとても伝えることができません。イギリス王立園芸教会がインターネット投票で決めた「世界で最も醜い植物」の第一位にも選ばれたそうですが、納得できます。

そしてその臭い。この植物をニュースとして取り上げた番組では、決まってリポーターなどが臭いを嗅ぎ、激しくリアクションを披露するパターンを繰り返していたようです。「肉が腐ったような悪臭」や「生ゴミよりも臭い」など聞いていてめまいがするような言葉で表現されており、あるニュースの見出しでは「強烈な腐臭を放つ世界最大級の死体花」と、まるでホラー映画の宣伝文句のように称されていました。

【悪臭の秘密】

ではなぜそのような悪臭を放つのでしょうか。その秘密に迫る前に、まずショクダイオオコンニャクの構造に触れてみましょう。

先にも記しましたが、ショクダイオオコンニャクの花の部分は、太い軸のまわりに小さな雄花と雌花が集まったもので、その花を取り囲んでいる赤紫色の葉(正確には葉が変形したもの)は「仏炎苞(ぶつえんほう)」と呼ばれます。太い軸の先は太くて大きな「花序付属体」と呼ばれるものになっています。

燭台で言えば、台の部分が「仏炎苞」で、ロウソクが「花序付属体」となります。強烈な悪臭はロウソクの部分、「花序付属体」から放たれます。ショクダイオオコンニャクの開花期間は2日間なのですが、その間に付属体に巻きついていた仏炎苞が開き、これと同時に付属体から悪臭が放たれるのです(仏炎苞が開く過程を追った写真もネットで検索できます)。

改めて、この悪臭はなぜ放たれるのでしょうか。その答えは「授粉を目的としている」ことにあります。強烈な悪臭は花粉を媒介させる甲虫を呼び込むためのもので、スマトラオオコンニャクは腐肉や獣糞で繁殖するシデムシなどに花粉を運ばせるために、そうした虫が寄り付きそうな臭いを発しているのです。

2日間の開花期間の初日に腐臭を発して甲虫を集めます。仏炎苞の内面はツルツルとして滑りやすくなっているために、甲虫は仏炎苞の筒の内部に落ちて出られなくなります。そこで甲虫達を待っているものは何か…「花」の部分です。まずは雌花から花粉が放たれ甲虫の体に付着します。次の日には、今度は雄花から花粉が放たれ、同時にそれまで開いていた仏炎苞が閉じてゆきます。そして付属体と仏炎苞が死に枯れてしまうことで、甲虫は脱出することができ、別の花序に移動して授粉を行う、といったメカニズムになります。

【理科の視点でニュースを見ること】

理科の対策を強化させることと、この奇妙な植物とがどのように結びつくのでしょう。それは、つねに「なぜ?」の問いかけを念頭に置いて、理由を探る習慣を身につける必要があるということです。今回のニュースについても、レポーター達が強烈な悪臭にのたうちまわっている姿を見て、ただ笑って流してしまっていては何の成果もありません。なぜそんなに臭いのか?強烈な臭いになぜ虫は耐えられるのか?なぜこのようなかたちをしているのか?…などなど。様々な疑問の目でニュースを見て、それを解決して行く過程に生徒さんがしっかり立ち会うことが、理科の力を大きくアップさせるきっかけにもなります。

今ではインターネットで検索することで、知りたい情報が簡単に手に入るようになっています。今回のニュースでも「ショクダイオオコンニャク」で検索することで、ニュース動画から専門的な分析まで、様々な情報が閲覧できます。生徒さんが「なぜ?」という問いかけをしてきたら、間をおかずにすぐに調べて始めて下さい。そして一緒に調べてみて下さい。そこで少しずつでも正解に向かう過程を味わうことは、生徒さんにとって理科の考え方を培う、貴重な体験になるはずです。

【実際の入試問題から】

実際の上位難関校の中学入試問題でも、日頃培った観察力・思考力を問う内容が非常に多く出題されており、今年の問題を見ても、様々なかたちでそうした力が問われていることがわかります。ニュースを見る目という観点では以下のような出題がありました。

 <頌栄女子学院 第2回・第4問>(川のはたらきをテーマとした文章をもとに出題)

「四万十川は、図のように(橋の図あり)、橋に欄干(手すり)のない『沈下橋』が見られることで有名ですが、なぜあえてこのような構造にしているのかを考えて書きなさい。」

「大雨で川が増水したときに、流木などが欄干に引っかかって、橋が流されてしまうのを防ぐため」というのが解答例です。この問題に対するにあたって、大雨が降った際などに荒れ狂ったように流れる川のニュース映像をイメージとして残していれば、大いに対応しやすくなったはずです。ニュースを漫然と眺めずに、なぜそうなるのか?の問いを自分の中にしっかり持つことが大事です。

ニュースに限らず、日常生活でどこまで理科の視点を持っているかを問うタイプの問題としては以下のような出題がありました。

<女子学院 第Ⅴ問>

電車内の人が窓ガラスを見るとき、[外の風景]も見えるが[電車内の様子]も映って見える。しかし、昼と夜とでは見え方が異なる。このことについて次の文章の(ア)〜(ウ)にあてはまることばを書きなさい。

窓ガラスは光の大部分を通し、残りを(ア)。夜は、太陽が沈み、外の光の量がとても少ないので【外の物に当たってはねかえり、窓ガラスを通って電車内の人の目に入ってくる光の量】より【電車内の物に当たってはねかえり、さらに窓ガラスではねかえり電車内の人の目に入ってくる光の量】の方が(イ)なる。よって、夜は、窓ガラスを見るときに(ウ)の方がはっきり見える。」

「(ア)反射する (イ)多く (ウ)電車内の様子」が解答となります。問題で挙げられている様子は、電車やバスに普段乗っている時に体験することがあるでしょう。そこで、ただぼおっと窓の外を見ていたり(その時間も大切ですが)、鏡に映る自分の姿ばかりに気を取られずに、「なぜ夜やトンネルの中の方がはっきり見えるのか?」といった疑問を持つことが大事になります。

さらに、学校で使う実験用具にも、アンテナを張っておくことが求められます。

<麻布中 第3問>

(図を示したうえで)電流計の目盛板は水平でなく、図3のようにななめの面になっています。そのため電流計の指針には工夫がしてあり…(中略)…電流計の指針に工夫がしてあるのはなぜですか。指針に重さがあることを考えて答えなさい。

「重心の位置が回転軸と重なるため、針の重さで回転できないから」が解答となります。この問題では問題文をよく読んで、指針に重さがあることをヒントにする読解力も必要ですが、学校の実験でも使う電流計をどれだけ注意して見て、「なぜ?」の視点を持つことが大事になります。

中学入試の受験勉強で培った力は、中学入学後の勉強や生活の根幹にもなってゆく貴重なものです。特に今回取り上げたような、ニュースや身の回りの事象を、つねに疑問の目を持って注視する習慣を身につけておくことは、中学・高校での学校の授業がどんなに論理的思考を要求するものであっても、それについて行けるだけの素地をつくることにつながる点でとても重要になります。この夏休みから、ぜひニュースを見る目を養って下さい。

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