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染織家として人間国宝にも認定され、数々の著作を残す志村ふくみと、水俣病について綴った『苦楽浄土』などの著者として知られ、昨年の2月に逝去された作家の石牟礼道子とが交わした往復書簡と対談とで構成される作品です。
往復書簡の章では、二人が交わす言葉に終始魅了されます。日本語がこれほどまでに細やかで美しいものなのかと驚きさえも感じるほどです。今やLINEでのやりとりがメインになっているからこそ、お子様方に手紙ならではの言葉の使い方や、日本語が醸し出す美しさを存分に味わって頂きたいのです。
対談の章は、話し言葉で構成されていますのでとても読みやすいものですが、根底にある現代文明への警鐘、自然が破壊されていくことへの危惧は、強くメッセージとして伝わってきます。
圧巻は98ページから126ページの「藍」について語り合うところです。藍という色の持つ神秘的な魅力、その色を建てる(藍をつくり出すことを「建てる」というそうです)過程に満ちる染織家の色に対する深い愛情、そしてその色の原材料の入手が困難になっていることから、現代文明の自然との対し方への危機感などが、語られていきます。 とても柔らかな言葉遣いで交わされる対談ですが、綴られている内容は深く、染織についての知識がなくとも、否、ないからこそより新鮮な驚きも感じられるのです。その内容の魅力は圧倒的としか言いようがなく、読んでいて涙が出てきてしまうほどです。
本書の巻頭に掲載された写真の中に、志村ふくみから石牟礼道子に贈られた染め糸が写されたものがあります。カラー写真ですのでその美しさが堪能できますが、作品を読み終えた後でまたその写真を見てみると、その感銘がより深くなることでしょう。
まずはぜひ本屋でご覧になってみてください!
amazon『遺言 対談と往復書簡』(志村ふくみ・石牟礼道子 ちくま文庫)
以上、中学受験の現場から貝塚がお伝え致しました。
中学受験鉄人会 入試対策室
室長 貝塚正輝
(筑波大学附属駒場中高卒)
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