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「酷暑」・「猛暑」という言葉が表すように、今年の夏も暑い日が続きました。8月には日本の最高気温記録が塗り替えられ、また東京では一日の平均気温が観測史上初30度を超えました。受験生にとっては日々の受験勉強に加えてこの猛暑ですから、体力の消耗が激しかったことでしょう。
近年見られる特徴的な「異常気象」は、入試問題でもその内容がしばしば出題されますが、今回はその「異常気象」について、「ゲリラ豪雨」・「日本最高気温」の二つの現象を取り上げ、理科・社会の視点から、どのように理解しておけば入試問題に対応できるかを解説していきたいと思います。
ゲリラ豪雨とは、夏、急激に発達した積乱雲がもたらす短時間で集中的な大雨のことです。気象庁は「ゲリラ豪雨」を気象用語としては正式に用いておらず、「局地的大雨」としています。しかし、一般的な定義として「ゲリラ豪雨」とは、(1)狭い範囲であること、(2)短い時間で大量の雨が降ること、(3)予測しにくいこと、とされることが多いようです。時に浸水被害や死亡事故にもつながるこの局所的な大雨。この言葉が広く使われ始めたのは2008年のことです。同年8月5日に練馬区周辺での局地的豪雨の際に下水道工事中の作業員5名が流され死亡したことが大きく報道され、この事件からゲリラ豪雨という用語がニュ−スで頻出し、一般的に用いられるようになりました。
なぜゲリラ豪雨が起きるのか?発生のメカニズムはまだ研究段階ですが、
そもそも、雲が発生し降雨をもたらすには湿った空気が必要です。夏の気圧配置は「南高北低」といわれ、南から暖かく湿った空気が流入してきます。これにより雲ができやすい状態になります。社会科で習った「夏の南東の季節風」をイメージしましょう。
雲の中でも大雨を降らせる積乱雲を発生させるためには、上空に冷たい空気(寒気)が流れ込んでいる必要がありますが、日本の北方には絶えず偏西風という西風が吹いています。その偏西風の北側には比較的冷たい空気が存在しており、この偏西風が南側に張り出して来ると、それに合わせて冷たい空気が南下し日本の上空に入って来るのです。
この2つの条件がそろって、集中豪雨をもたらす積乱雲が発生する可能性が出てきます。そして、地面付近の暖かい空気の上昇による対流の発生で、集中豪雨へとつながります。また、東京などの都市部におけるゲリラ豪雨の発生はヒートアイランド現象が原因となっている場合に起こりやすいとも言われています。ヒートアイランド現象とは都市部の気温がその周辺の郊外部に比べて高温を示す現象のことでしたね。都市部においては自動車やエアコンの室外機から出る排熱、アスファルトやコンクリートの熱などが、狭い地域で集中して発生することで急激な上昇気流を引き起こし、都市部の上空における積乱雲の発達につながり、大雨をもたらすということなのです。
各自治体が避難勧告や避難指示を出し、危険区域の住民への対応を行っています。また、大雨による河川の増水で浸水被害が起こらないよう、巨大な排水処理施設が日本各地に建設されています。(江戸川の首都圏外郭放水路は世界最大級で全長6.3キロメートル)さらに現在、気象庁や各研究機関がゲリラ豪雨の正確な予測ができるよう研究が進められています。
今年の8月12日、6年ぶりに日本最高気温が塗り替えられました。まずはこれまでの歴代最高気温をおさらいしましょう。
気温の観測方法は理科の分野に譲るとして、今回は気温の上がりやすい地形をクロ−ズアップしてみます。1位〜5位の都市に共通する地形はズバリ「盆地」です。盆地とは、周囲を山地に囲まれた、周辺よりも低く平らな地形ですよね。ド−ナツをイメージしてください。外側(食べるところ)が山地、内側(中にできた空間)が盆地です。夏の盆地は暖かい空気が淀んだままになりますので、高温になりやすいのです。
さらに、そこに山の斜面を下って乾いた熱風が吹き降ろしたらどうなるでしょう?とんでもなく盆地の内部は気温が上がることになりますよね。このような暖かく乾いた空気が山から吹き降ろす現象を「フェーン現象」と言います。つまり、夏の季節風が山地を越えて盆地に入り込むと、乾いた熱風になるので、ただでさえ気温が高い盆地の気温がフェーン現象によってさらに上昇すると考えられるのです。
そう考えると、なぜ東北の山形県が約70年間も日本最高気温だったのか納得できると思います。太平洋側から吹く夏の季節風が奥羽山脈などの山脈を越えて、山形盆地にフェ−ン現象をもたらしたのです。一つ一つは社会科で習う単なる知識ですが、つなぎ合わせて原理現象を深く探っていくと、「日本最高気温」にはこのような共通点が浮かび上がってくるのです。
このように、誰も変えようのない自然界の原理原則や根本原理を頭に入れておくと、暗記もスム−ズにいきます。「なぜそうなるのか」が納得できているからです。また、算数の公式と同じように自然界の摂理はどんな場合にも応用できるため、知のネットワークが無限大に広がっていくのです。
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