入試で狙われそうな最近の時事ニュース(世界文化遺産 韮山反射炉と幕末の知られざる巨人・江川英龍)

先日7月5日の午後、ドイツのボンで開催されたユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産委員会で、福岡など8県の23施設からなる「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の世界文化遺産登録が認められました。世界文化遺産の登録は「富士山」、「富岡製糸場と絹産業遺産群」に続き3年連続で、これで日本の世界遺産は文化15件、自然4件の合計19件になります。

世界遺産の登録はこれまでも多くの中学校が出題対象にしてきたニュースで、また今回の産業革命遺産は、幕末から明治時代という日本の歴史上大きな変換点にあたる時期につくられた施設ですから、来年の入試での出題可能性はより高まるでしょう。

今回はその産業革命遺産の中から、静岡県伊豆の国市にある「韮山反射炉(にらやまはんしゃろ)」に注目してみます。

そこでこんな問題が考えられます。

  • 「韮山反射炉は当初、伊豆の下田で築造される予定でしたが、ある事件がきっかけとなり、現在地の韮山に築造場所が変更となりました。この事件に加え、1854年に締結された日米和親条約が、この築造場所変更に大きな影響を及ぼしました。日米和親条約で開港となった港は下田と、あと1つはどこでしょうか」
  • 「韮山反射炉の煙突部には、岬と呼ばれる凸形状になっている部分があって、ここを通過する空気は流速が高くなります。流速が高くなると、その部分の圧力は周囲よりも高くなるでしょうか、低くなるでしょうか。」

今回は世界文化遺産に登録された産業革命遺産のうち、韮山反射炉を題材として、中学受験の社会・理科の観点から分析を進めたいと思います。

【反射炉築造の背景とは】

第1問の答えは「函館(開港当時は箱館)」です。1858年に締結された日米修好通商条約で開港となった「函館・神奈川・長崎・新潟・兵庫」の5港との区別を確実にできるようにしておきましょう。

1840年に清とイギリスの間で勃発したアヘン戦争をきっかけとして、日本では列強諸国に対抗するための軍事力の強化が急務となりました。薩摩藩や佐賀藩などでは、積極的に西洋の技術の導入が進められ、江戸幕府でも蘭学に通じていた代官・江川英龍(えがわひでたつ)などによって、近代的な軍事技術の導入が画策されるようになりました。

この江川英龍が、今回のテーマにおいて大変重要な人物となります。

江川英龍は様々な技術・制度の導入を推し進めたのですが、その中で鉄製砲を鋳造するために必要とされたのが「反射炉」でした。1853年のペリー来航を受けて、いよいよ幕府直営の反射炉として築造となったのが、「韮山反射炉」だったのです。

反射炉は1853年に伊豆の下田で築造が開始されましたが、翌1854年に下田に入港したペリー艦隊の水兵が敷地内に侵入するという事件が起こりました。この時はすでに日米和親条約が締結され、下田は開港場になっていたので、今後も同様の事件が起こるであろうと予想されたことから、築造場所が下田から伊豆韮山に変更となりました。

韮山反射炉築造の中心人物であった江川英龍は多くの功績を残した、幕末の知らざれる巨人のひとりと言われています。日本の海防に強く問題意識を持っており、反射炉の築造以外にも、西洋砲術の導入、西洋式海上砲台の設置、海軍の創設、西洋式の訓練を施した農兵制度の導入など、様々な進言を幕府に対して行いました。

この時に現在の東京品川区に建設された西洋式の海上砲台が、あの「お台場」にあたります。フジテレビのあるお台場は江川英龍によって造られたものだったのです。

また、西洋式軍隊を組織するにあたって、江川は一般の人々が使いやすいようにと、指示する掛け声を西洋の文献から和訳させました。「気をつけ」や「回れ右」、「右向け右」などを最初にとりいれたのも江川英龍だったのです。

極めつけは、江川英龍が日本で初めてパン(堅パン)を焼いた人物であるという事実です。軍用の兵糧としてパンが有用であると着目した江川は、韮山の自宅にパン焼きかまどを作成して、パンの製造を始めたと言われています。そのことから、日本のパン業界では江川英龍を「パン祖」と呼んでいるそうです。

現代にも残る様々な技術や設備を西洋から導入した江川英龍は、勝海舟や福沢諭吉といった幕末から明治にかけて日本を築いた多くの偉人たちからも、高く評価、尊敬されていたと言われています。

そんな江川英龍にかかる負担は大きく、あまりの激務のために体調を崩し、1855年に韮山反射炉の完成を見ることなく他界してしまいます。その意を継いだ長男の江川英敏が築造を進め、韮山反射炉が完成となったのは1857年のことでした。

韮山反射炉についてのニュースを聞いたときには、この江川英龍という幕末の巨人の存在があったことを、ぜひ思い出してください。

【ベンチュリー効果】

第2問の答えは「低くなる」です。流速が高くなると圧力が低くなることを明らかにしたのは「ベルヌーイの定理」です。定理の名前を覚える必要はありませんので、圧力が低くなることだけ気をつけておいてください。またこれも名前を覚える必要はありませんが、物が流れる通路を絞ることによって、流速を増加させて低速の部分に比べて低い圧力を発生させることを「ベンチュリー効果」と言います。韮山反射炉ではこのベンチュリー効果が使われているのです。

そもそも反射炉とは、鉄鉱石から直接製造した鉄である「銑鉄(せんてつ)」を溶かして、優良な鉄を生産するために造られた炉です。銑鉄を溶かすには、1000度を超える高温が必要なのですが、反射炉では、炉の天井部分が浅いドーム形になっていて、そこに熱を反射集中させることで、その高温を実現する構造になっているのです。

炉と煙突をつなぐ部分は岬と呼ばれる凸形状になっていて、ベンチュリー効果によって圧力が低くなり、その圧力差から炉の中の空気が煙突に吸い上げられることになります。こうして熱を逃がさずに、自然通風が可能になっているのです。

ベンチュリー効果が使われている他の例として、鉄道車両のベンチレーター(換気装置)や、車でガソリンを吸入するエンジンのキャブレターがあります。ただ、いずれもお子さんがイメージしづらいものかと思われますので、「霧吹き」で説明するのがよいでしょう。霧吹きと言っても、洗剤などで使われるノズル式のものではなく、香水の容器などで使われる、空気を送り込む形のものです。管の上部に高速で空気を吹き付けると、ベンチュリー効果で管の上部の圧力が低くなり、圧力差で管から液体が吸い上げられるという仕組みになっています。

こうした高度な構造を持った反射炉が、江戸末期の日本で造られたと思うと、今回の世界文化遺産登録の知らせがより感慨深く受け止められます。これからもこの韮山反射炉をはじめ、日本の産業革命遺産に関するニュースには、ぜひ気をつけておいてください。

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