入試で狙われそうな今月の理科時事問題(割れても元に戻るガラス、人工知能AIの活躍、海溝型地震の予測)

今月は、“割れても元に戻るガラス”と“人工知能AIの活躍”そして“海溝型地震の予測”について取り上げてみましょう。

<割れても元に戻るガラス>

東京大学の教授と博士課程の大学院生らの研究グループが、割れても断面を押しつけるだけで修復するガラスの開発に世界で初めて成功しました。
研究グループは新たな接着剤の開発を進めていた時、偶然にも固くさらさらした手触りの物質に元どおりになる自己修復機能があることを発見したのだそうです。

この物質は通常のガラスとは違って、水族館の水槽に使われている様なアクリルに近い材料なのだそうです。このガラスは割れても数十秒間、断面を押しつければ元どおりに修復でき、数時間あれば元の強さに戻ることも確認できたということです。こうした室温で壊れても自己修復できる物質はゴムのような柔らかい材料では見つかっていましたが、ガラスのような固い材料では無かったものです。
具体的には、ヒビが入っただけで捨てられる車のフロントガラスや建材、水槽など身の回りのガラス製品の寿命を大幅に延ばすことになりそうです。これからは壊れたら捨てるという文化を変え、環境に優しい素材として活用されて行く事でしょう。また、超耐久性ガラスの開発につながる発見として期待されています。

<人工知能AIの活躍>

人工知能AIの驚異の能力について一般の人々に知られるようになったのは、ディープラーニングというテクノロジーを搭載した人工知能AIが、チェスや将棋より格段に打つ手の数が多い「囲碁」で世界トップ棋士に勝利したニュースの有った2016年4月頃からかも知れません。このことはメールマガジン2016年4月18日号でも取り上げ、色々な分野で急速に応用が広がっていくことを紹介しました。

『ディープラーニングって何?』

人工知能AIの能力を劇的に進化させた“ディープラーニング”とは何なのでしょうか?それはコンピュータ上に人間の脳を真似て神経細胞のネットワーク(神経回路)を再現したことで、コンピュータが人間と同じように学習して考えることが出来るようになったことです。その結果、認識する力、数多くのデータの中から特定の特長を抽出する力、想像力、連想力を持つことが可能となりました。AIにとっては大量のデータを扱うことが得意としているので、現代のコンピュータ社会にある大量のデータは格好の材料なのです。

『AIが見付けた太陽系外惑星』

昨年の3月太陽系からおよそ40光年離れた宇宙に、地球と似た大きさの惑星が7つあることが発表されましたが、今度はケプラー宇宙望遠鏡の観測データをAIで分析したところ、「ケプラー90」と呼ばれ、7個の惑星系を持つと思われていた恒星に、まだ未発見の惑星が1個あったことが判りました。
グーグル社が開発したAIは地球から2,545光年離れた「ケプラー90」の明るさの変化データを元に惑星の数や大きさを分析したのだそうです。
残念ながら今回の惑星系には生命が居る可能性はないとの事です。しかし、それこそ天文学的な数の観測データの解析にAIを活用することで今回の発見につながったのですから、地球型系外惑星の発見に弾みがつくことでしょう。

『太陽フレアの予報にAIを活用』

太陽フレアについては昨年のメールマガジン9月14日号に解説しましたので、ご覧いただいていると思います。大規模な太陽フレアが起きると各種衛星の故障、通信障害や大規模停電の原因になってしまいます。その予防対策をするために、国の研究機関の情報通信研究機構NICTが電波望遠鏡で太陽の黒点の位置や大きさの観測、地球大気中の磁気の異常を観測して予測しています。
ところが現在の予測精度では5割程度なのです。そこで政府は予測精度の向上のために、現在の数ヵ月分の黒点画像や地磁気のデータを最低でも数年分蓄積してAIに解析させることにしたのだそうです。
皆さんご存知の通り太陽の活動周期は11年毎に活発化するので、次のピークが来る2020年代半ばに太陽フレアの発生も増加するとみられていますので、成果が活用されると良いですね。

<海溝型地震の予測>

政府の地震調査委員会は昨年末の12月に、2011年に発生した東日本大震災の状況を分析した結果、海溝型地震の発生時期と規模の予測の見直しを公表しました。
“千島海溝地震”については想定する最大級の地震規模を従来のマグニチュードM8.3から5.6倍のM8.8 へ引き上げ、“南海トラフ地震”については今後30年以内に発生する確率を「70%」から「70〜80%」に引き上げることにしました。

『海溝型地震ってなに?』

日本列島の東側には北東から南西にかけて北から順に「千島海溝」「日本海溝」「伊豆小笠原海溝」「相模トラフ」「南海トラフ」「南西諸島海溝」があり、各々陸のプレート(板状の岩盤)に海側のプレートが沈み込んで陸のプレートを地球内部に引きずり込んだり押し上げています。その圧力が限界になると陸側のプレートが跳ね返り、その時地震が発生します。
一方、陸のプレートに加わる圧力により、プレート内部で断層が発生したり断層がずれたりするときに起こるのが活断層型地震と言います。

『千島海溝地震』

千島海溝地震源は「十勝沖」「根室沖」と「色丹島沖及び択捉島沖」の3地域があり、各々の規模はM8.0〜8.6程度で発生確率7%、M7.8〜8.5程度で70%程度、それにM7.7〜8.5程度で60%程度となっています。十勝沖の発生確率が低いのは2003年にM8.3の地震が起きているためだそうです。
いずれにせよ、この地域のどこかで30年以内にM8.8以上の地震の発生する確率は7〜40%なのだそうです。
調査委員会が地震の規模を引き上げた理由は、道東部の湿原や沼で見つかった津波堆積物からです。巨大津波は過去6500年で18回起きた可能性が有り、発生間隔は100年から800年とばらついていたようです。平均すると340年から380年周期であり、直近の発生から約400年が経過しているので、巨大地震発生は切迫している可能性が高いとされています。

『南海トラフ地震』

東日本大震災が別個に発生するという従来の想定をくつがえし、岩手県沖から茨城県沖までの南北約500km、東西約200kmの海域で連動して発生しました。予測を超えた規模の地震であったことを踏まえ、駿河湾から日向灘、更に九州・沖縄海域で発生する「東海地震」「東南海地震」「南海地震」が連動して起こるとの前提で地震調査委員会は発生規模と確率を想定しました。
地震の規模は従来の想定M8〜9級と変更はないのですが、発生確率は、今年1月時点で30年以内の確率が現在の「70%程度」から「70〜80%」に引き上げられることが決められました。調査委が今年1月1日を算定基準日として再計算した結果なのだそうです。
その計算は、南海地震(1946年)を基準に、平均発生間隔を約90年として算出しており、地震は一定の周期で発生するとの前提で計算しているので、想定した地震が発生しなかった場合、発生確率は時間の経過とともに増加するという計算上の見直しであり、特に危険要素が増加したためでは無いそうです。
尚、海溝とトラフの違いは、海底の最深部が6000mを超えるものを海溝、6000mより浅いものをトラフと言います。

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