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ホームメールマガジン宝箱合格に導く魔法の本棚安東みきえ『満月の娘たち』(講談社)は来年度中学入試で出題が予想される、母と娘の想いのぶつかり合いを描いた傑作です!

安東みきえ『満月の娘たち』(講談社)は来年度中学入試で出題が予想される、母と娘の想いのぶつかり合いを描いた傑作です!

amazon 安東みきえ『満月の娘たち』(講談社)

  『天のシーソー』『夕暮れのマグノリア』などの著者、安東みきえによるこの作品は、母と娘の心のやりとりを描いた物語です。先日11月5日に本作品が2018年の野間児童文芸賞を受賞した旨が発表されました。
 この作品の中で交わされる母娘の言葉のやりとりは、心温まるものとは言えず、互いに辛辣な言葉でぶつかり合う、むしろバトルの要素が強いと言える内容となっています。それでも読み終えた後には、胸の中にあたたかく灯る優しさが宿るようになります。母娘が強く想いをぶつけ合うからこそ見える真の気持ちというものが、様々な視点で描かれている作品です。

【娘の成長と親子関係の変化】
「世界中でママほどにくらしい人はいないと感じる時がある。ママもわたしをみつめた。ママもきっと同じことを考えているのだろう。」(90ページ)

 など、主人公である中学1年生の志帆の母に対する厳しい言葉がところどころで噴出しています。それらの言葉は作品中の母親と同じく、読む側の胸にも突き刺さってきますが、それだけに、おそらくお子様、親御様それぞれがリアリティを感じながら読み進められるのではないでしょうか。そして様々な事件を通して、次第に志帆の母親への想いが移ろいで行きます。その様子には、まさに中学受験国語で多く問われる「人物の心情の変化」が内包されており、その変化の根本に母親の真の想いを認識して行くという志帆の心の成長も描かれているのです。

【リアリティに満ちた会話を通して伝わる親子関係の複雑さ】

 描き方によっては深く重いものとなってしまう、複雑な母娘関係ですが、この作品では、どこでも聞かれるようなリアリティに満ちた会話を通して、その関係の複雑さが軽やかに伝わってくるのです。
作品中で主人公の志帆と友人の美月、祥吉が以下のような言葉をやりとりする場面(197ページ)があります。

「親と子ってむずかしいね。」
「親と子のきずな、なぁんてよく言うけどさあ、そのきずなっていったいなんだろうね。」
「きずなって漢字、糸へんに伴うっていう字の右側に似てるね。」
「糸だったら、こんがらがるわなぁ。」
「からみあって、こぶができて、ぐちゃぐちゃになったりするね。」
「そうなったら、切ってしまうんかな?」
「切って結び直す?それか、捨てちゃう?」

 中学生同士のたわいない会話に見えて、親子関係の複雑さを容赦なく描いています。人物たちが交わす会話は上記をはじめ、淡々としたものが圧倒的に多いのですが、淡々としながら、たわいないながらも伝えるべきことが胸の奥まで伝わってくるところが、この作品の大きな魅力のひとつとなっています。

【中学受験的ポイント!】

 中学受験の視点からぜひ注目して頂きたいのが、142ページから154ページまでの第12章と、213ページから224ページの第18章です。
 第12章で注目すべきは、母との口論から、友人の美月が万引き事件に巻き込まれたことを知った志帆が電話で美月と話す場面。ここで美月が志帆に話す「うちのほんとうのおかあさんはお月さんなんよ。」という言葉が、本作品のタイトルにつながっています。志帆が話す、月が母親であることの真意を二人の会話を通してぜひ受け止めてください。そして、美月の言葉を受けた志帆が感じた悲しみと迷いを認識したうえで、第18章にもぜひ注目してください。志帆の悲しみや疑問がすべて解消されるまで行かないまでも、この第18章で志帆の母への視線に変化が生まれているのです。第18章は、淡々とした描写ながらも胸がしめつけられるような切なさに満ちた名場面です。 

 『満月の娘たち』は、母と娘という親子関係の中でも複雑であるが故に国語の出題対象にもなりやすいテーマを描き切った傑作です。まずはぜひ本屋でご覧になってみてください!

入試対策室 室長 筑駒 貝塚正輝

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