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新6年生の生徒さんにとっては、いよいよ勝負の1年がスタートしようとしています。先輩達に続くべく、お気持ちを新たにされていることでしょう。
塾のカリキュラムでも特に算数は、一通り5年生までの間に培ってきた基礎力を、応用問題でいかに結び付けて行くか、という点に重きを置いたものに移行します。確実に階段をひとつ上った状況になります。
そこでこれまで受けてこられた算数のテストを振り返ってみると、テストの前半にあたる計算・基礎問題での正答率がなかなか安定しない、といった実感を持たれてはいませんでしょうか。テスト会場から帰って、家で見直すと簡単に正答できる問題なのに、なぜか会場で間違えてしまう。こうした傾向を抱えている生徒さんは決して少なくありません。
図形などの応用問題で正解しているのに、計算の1問目が得点できない、あるいは、速さの応用問題では正解できているのに、同じ速さでも大問2問目の小問集合で出題される、「分速100mで3時間走ると何kmになりますか」といった基本問題で間違えてしまう。といったことも十分に起こりうることです。
そうした際に、ただ「もったいなかった」「見直しをしないから」といった言葉だけで済ませてしまうことは、とても危険です。もちろん、計算ミスは誰にでもあることで、それを防ぐ意識をしっかりと持つことで、同じような間違いが防げれば、状況は改善されて行くでしょう。ただし注意すべきは、テストの前半にある、全体正答率の高い問題で、普段の授業ではしないような間違いを繰り返ししてしまう時に、ただ「気をつける」といった抽象的な言葉で終わらせてしまうことにあります。
これから新年度を迎える今の時期だからこそ、間違えた原因をしっかり振り返り、そうした間違いが習慣にならないように、具体的な対策をすることが必要になります。その対策さえしっかりできていれば、夏以降の実践的な問題演習に臨んでも、大崩れしない安定感を築くことができます。
それでは、具体的にはどのように対処すればよいのでしょう。
テストになると、普段間違わないような前半の問題で取りこぼしをしてしまう原因のひとつに、「頭が算数に切り替わっていない」ことが挙げられます。
例えば国語のテストと比べてみましょう。算数でいう計算問題の位置づけにあたるのが、漢字・語句ですが、これらの問題は「覚えているかどうか」がポイントですので、深く考える状況には至らずに終わります。そして読解問題については、まず文章を読むことが大前提になり、文章を読み進めることで、自然と国語の世界に入って行くことができます。そして問題を解く段階では、しっかり国語の頭ができあがっていることになります。
また社会や理科の暗記問題も、国語の漢字・語句と同じことが言えるでしょう。
その点で、算数の場合は、科目の特質として「頭」の切り替えが、より重要であり、また難しいと言えるでしょう。テストの最初にある計算問題でも、しっかり算数の頭をフル回転させなければなりません。まして塾などで、「計算問題には時間をかけてはいけない」と繰り返し言われているために、解くスピードへのプレッシャーが過度にかかってしまい、車で言えばエンジンが温まっていない状態でアクセルを全開にすることになって、思わぬ間違いを起こしてしまうことになります。
同じことは、基礎小問集合にもあてはまります。計算問題を通して幾分かは頭が算数に切り替わったとはいえ、まだ完全に算数としての頭が切り替わっていない段階で、問題は考察力が必要な内容にランクアップしています。そしてやはりここでも「早く正確に解かなくては」の意識が先立って、取れる問題を取れずに時間が経ってしまう、という状況になることが起こりがちです。
このように算数では、頭がいかに切り替わっているか、がテストの前半問題を確実に得点するための大きな鍵となります。
特にこれから模試を受けられる場合、多くの模試が実際の入試を想定して、国語→算数の順番になっています。そこで国語から算数への頭の切り替えがなかなかできないままにテストが始まる、といった状況は少しでも防ぎたいところです。
そうした問題への具体的な対策は、ひとつに限定されるものではありません。
例えば、計算問題・小問集合を終えた段階で、すべての問題を見直してから次へ進む…確かに確実さは増すかもしれませんが、それだけの時間を使ってしまうとテストのほとんどの時間が終わってしまうことになるでしょう。結果、後半の問題で確実に解けた問題に手がまわらない、という事態を招いてしまう危険性もあります。
そこで、これから何度も受けるテストを通じて、より効率的な自分の見直しパターンを作ってみてはいかがでしょうか。
例えば一例としてですが、
①まずは「正確に」という意識を持ちながら、解きやすい問題から解き進めて行く。②残り大問2,3問になったところで、問題を見て、自分にとって難しい問題であれば思い切って捨てて、できるだけ時間を7、8分残した状態を作る。③その残った時間で、計算の還元型(自分の答えを穴に入れて、正否を確認することで見直せます)、基礎小問集合を一気に見直す。テスト時間を30分もかければ、さすがに頭はしっかり算数に切り替わっているため、そこで間違いを見つけることができる。
この方法では、配点の大きな後半問題を得点するチャンスが減るという点は確かにあります。ただし、これから夏までのテストでの鉄則は「全体正答率の高い問題は確実に取る」ことにあります。捨て問題をつくることをデメリットやリスクとは決して思わずに、頭を算数に切り替える練習をしっかり重ねて、取るべき問題は確実に取ること、を徹底しましょう。そのことで、より確実に点数が固まって行きます。そうした演習を通すことで、自分の間違いやすいパターンが見つかります。つまり、頭が算数に切り替わっていない時に、陥りやすい間違いに「自分で気づく」ことができます。それは例えば「13−9」の繰り下がり計算であったり、単位換算でのゼロの間違い、など様々な種類があるでしょう。そうした課題を自分で把握することで、次第に問題に臨む際に、頭の中のセンサーが働き、間違いを未然に防ぐこともできてきます。
そうして、前半部分での間違いが目に見えて減ってくれば、必要以上に見直しに時間をかけることなく、応用問題にもしっかり時間をチャレンジすることができるようになるでしょう。そこでさらに自信もつけば、先に触れたような「急がなければ」という焦りは減り、事態がさらに好転する可能性が増します。
ここでもうひとつの対策として、テスト前のウォーミングアップを挙げてみます。テストが始まる段階で、少しでも算数の頭を目覚めさせるために、短い時間で頭を切り替える「準備演習」を取り入れる方法です。
メジャーリーガーのイチロー選手は、打席に入る前に必ず決まった動きを連ねて準備運動をするそうです。ネクストバッターズサークルから出て、ひざを屈伸、足場を固めて、バットを立てたままでスコアボードの自分の名前を見る、ユニフォームのそでを少しつまむ…確かにイチローの打席を見ていて、常に目にする一連の動きです。こうした完全にパターンとした動きを重なることで、打席に入ってからの状態を、精神的な面も含めて常に同じに保つ効果があるそうです。それによって、あれだけの安打数を固めることができているようです。
それに近いことが、算数のテスト前にもできないでしょうか。
テスト前のほんの短い時間で、必ずあるパターンの計算問題を解いて備えておく。その計算は12×15=180や3.14×4=12.56、のように、何度も解いてきたパターンで、簡単すぎないレベルを選びましょう。そうした計算をいくつか頭の中で暗算したり、実際に紙に書いて、頭を算数に切り替える、といったパターンを自分のものにすることです。イチローの実践している、パターンで平常心と集中力を高める効果と、より早く算数の頭を目覚めさせる効果の両方が望めます。
ぜひ一度、試してみてはいかがでしょうか。
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