日能研算数の落とし穴

日能研はどのように合格するかに目を向けて「学び」を考えています。子どもたちは自分の学びを自分で選択し、実行します。その過程で子どもたちを自立した学習者に育てていこうというのが狙いです。日能研は子どもたちが学習できる「教材・場」などの環境を用意し、子どもたちが自ら学び進めるような仕組み作りをしています。

一方、対極にあるのがSAPIX(サピックス)でしょう。SAPIX(サピックス)は、勉強も運動と同じで、『運動選手が素振りをするように受験勉強では「脳に素振り」をさせる必要がある』と、プリントなどの教材をどんどん与え、生徒は自ら考えるのではなく、むしろひたすらSAPIX(サピックス)のカリキュラムについていこうとします。

もちろん、一長一短あるのですが、今回は日能研算数の弱点について、また、その弱点を知った上で、どのように算数を強化していけばよいかについてお話したいと思います。

日能研には、本科教室、栄冠への道、計算と漢字、算数強化ツール、難関校対策問題、日特問題集(銀本)などの数多くの教材が用意されています。特に、難関校対策のための応用問題は充実しており、子どもたちはそれをやりきればかなりの実力をつけることができると考えられます。しかし、それをやりきることができる子どもは少数派であり、多数の子どもたちは本科教室の基本問題や練成問題の段階でつまずいてしまい、もがき苦しんでいる状態です。練成問題まで確実に身に付ければ、男子、共学中堅校とほとんどの女子校は十分対応できるはずなのに、それができていないのです。(4・5年生であれば「学びのひろばのまとめ」だけは確実に身に付けておきたいところですが、実際にはなかなか難しいようですね。)それはなぜでしょう?

さまざまな理由が考えられますが、大きな理由のひとつに教材の不足を挙げることができます。学習を点数に結び付けるには「分かる」だけでは足りず、「できる」ようになることが必要です。そのためにはどうしてもある程度のトレーニングが必要となります。いわゆるドリル学習ですね。塾の授業内では「練成問題」や「学びのひろばのまとめ」をクラスによってはすべては扱えませんし、まして確実に身につくまでドリル学習はできません。それは主に家庭学習で行われることになります。本科教室、栄冠への道、算数教科ツールをうまく使いこなせれば、本科教室の例題、発展問題あたりまでの数値替え問題もいくつか練習することができます。しかし、確実に身につけるのに十分な量の問題は準備されていません。本科教室練成問題については数値替え問題が用意されていないものの方が多いようです。もちろん身についたかどうかを確認する確認テストのような教材もありません。塾はそれを確認するのがカリキュラムテストであるとするのでしょうが、カリキュラムテストができなければクラスの上昇は難しいのですから、カリキュラムテストの前の段階でその週の内容がちゃんと身についたかどうかを確認する教材がほしいですよね。

そこで、対策です。子どもたちはどうやって確実に算数を身につけたらよいのでしょう?

まず、ドリル学習のための適切な教材を用意することができないかどうか考えましょう。前期の日特問題集は分野別にできているので使えそうですが、類題を探すのはかなりの労力を要しますし、適切な問題が載っていないこともあります。また、致命的なのは日特問題集には解説がないことです。解説がない問題集は適切な指導者なしには使えません。市販の教材から類題を探すという方法も考えられますが、準拠問題集があるわけでもないので、それは困難でしょう。そこで、とりあえず塾に相談してみることをおすすめします。もしかするとうまくまとまったプリントなどの教材が手に入るかもしれません。

次に、教材が入手できない場合です。その場合、家庭で数値替え問題を作ってしまうという方法も考えられますが、現実にはなかなか難しいでしょう。そこでお子さん自身に数値替え問題とその解答、解説を作らせるという方法が考えられます。もちろん、全部の問題を作る必要はありません。授業や家庭学習の途中で、テキストにはできたかできなかったかを示す○や×などの印がついているはずです。(もしついていなければつけるようにしましょう。)なかなか○にならない問題について数値替え問題を作ってみましょう。もちろん数値は適当に入れるのではなく、自分が塾の先生になったつもりできれいな答えになるような数字を選びましょう。答えをきれいな数字にするためには何度も計算を繰り返さなければならないはずですから、問題が完成するまでにその問題の構造や解法が身につくでしょう。

また、1日に1問、子どもが先生になってお母さんに問題の解説をするという方法も考えられます。子ども自身が身についたと考える問題で、初めは×で、2度目以降に○になった問題の中からお母さんが選んで子どもに説明してもらうと良いでしょう。子どもが本当に理解しているかどうかが分かるはずです。この方法を提案すると、お母さんの中には自分は分からないと躊躇される方もいらっしゃいますが、お母さんはその問題は解けなくても良いのです。むしろ解けないほうが良いといってもいいでしょう。お母さんが子どもの説明を聞いて分かることが重要だからです。お母さんが分からなければ「ここがよく分からない」というようにツッコミを入れてみましょう。お母さんが分かるように説明できないということは、説明している子どもは分かっていないということです。1問15分くらいでできるはずです。「最初はできなくて当たり前」くらいの軽いノリでやってみましょう。やっているうちに少しずつできるようになるはずです。また、子ども自身が「本当に分かった」という感覚をつかむことができるようになるでしょう。本当に分かっていれば次に類似の問題を解くときには確実に正解できるはずです。また、この方法をきっかけに親子の間で受験勉強に関する話をするということも期待できるかもしれませんね。

もしかしたら、このようにいろいろな方法を模索することこそ自ら学び進むということなのかもしれません。

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