中学入試頻出作品から見る「国語の出題パターンと勉強法」

2010年の入試も終わり、各塾の説明会でも、どの作品が入試に出たのかいろいろと説明がなされているところです。そういった説明会でもお聞きになっているかと思いますが、今年最も出題された作品は、森浩美「夏を拾いに」でした。この作品は、首都圏では、駒場東邦、筑波大付属、大妻、暁星、淑徳与野、東京女学館で出題されました。

そこで、今回は「夏を拾いに」のどんな場面が出題されたのか分析し、近年の出題パターンに適した勉強法をご説明したいと思います。

【よくでる場面は決まっている】

「夏を拾いに」を出題した学校のうち、駒場東邦、大妻、暁星、淑徳与野は、多少前後しますが、ほぼ同じ場面から出題しています。ちなみに、合不合判定テストでも、同じ場面が出題されていました。このことから、1冊の本のなかでもよく出る部分とそうではない部分があることがわかります。

【どんな場面がよく出るか】

「夏を拾いに」で出題された場面を簡単にご紹介しますと、「幼なじみとケンカする」→「転校生に仲直りを勧められる」→「仲直りをしに出かける」→「相手の母親に謝られる」→「家に帰って、親の仕事を手伝う」という流れでお話が進んでいきます。

これだけみるととても単純なお話に見えますが、実際はもっと複雑です。たとえば、転校生はまわりから意地悪されていたのですが、素直に友達と遊ぶことが楽しいのだと仲直りを訴えています。また、仲直りに出かけた場面では、「子供のことを心配しない親はいない」と言われ、主人公は「羨ましさと嫉妬」を感じています。さらには、親が自分を大切に思ってくれていることを知ったけれども、素直に感謝の言葉が言えず、無言で嗚咽してしまいます。

このように、「つらいけれども、がんばろう」とか「感謝の言葉を言いたいけど言えない」といった複数の気持ちが混在する場面が問題になっています。ですから、単純に「うれしい」「かなしい」の一言では片付けられないような心情を理解できるようにしておく必要があるのです。

【ふだんの勉強で理解力を養う】

実体験の少ない子供たちにとっては、まず「気持ちは一つとは限らない」ことを意識させることからはじめましょう。たとえば、オリンピックで銀メダルをとった浅田真央選手の「くやしいけれども、自分の力を出せて満足している」というコメントにもあるように「くやしい気持ち」と「満足している気持ち」は同時に存在することがあるのだということを理解させましょう。

単純に「うれしい」「かなしい」では解決できないことに気づくことができれば、あとはさまざまな物語を読んで、複数の気持ちが混在している箇所をきちんと整理させるようにします。ノートに複数の気持ちを書き出して、その理由を考えてみるものいいでしょう。たとえば、先ほどの浅田真央選手のお話であれば、「金メダルを取れなかったからくやしい」でも、「自分の得意なジャンプが成功したから満足」というように、一つ一つの気持ちに理由をつける勉強が効果的です。

この点、勉強の進み具合によっては、「一つの気持ちを整理するだけでもやっとだ」というお子様もいらっしゃるかもしれません。そうしたお子様の場合は、いきなり複数の気持ちで混乱させることはかえって逆効果ですから、一つの出来事に対して、一つの気持ちをきちんと対応させるようにしてください。今年度の入試でも、学校によっては、非常に易しい物語文を出題しています。狙う学校の入試問題にあわせて、学習方法を組み立てることが大切になってきます。

注意していただきたいのは、「たくさん読解問題を解けばよい」というのは間違いだということです。「30分で問題を解いて、○つけをしました」というだけでは、複雑な気持ちを理解する力がいつまでたってもつきません。一つの文章を読んで、主人公が悩んでいたことは何なのか、どんなことでとまどっていていたのかなどを話し合っておくことが重要です。この方法は時間がかかりますが、丁寧に勉強をしていくことで確実に実力をつけることがでます。

以上、頻出作品の分析から、複雑な気持ちを理解できるかが合格のカギになっていること、ふだんの勉強から二つ以上の気持ちが混ざっている場面をきちんと整理しておくことが、複雑な問題に対応する力を養うことができることを述べてきました。出来事と気持ち対応させる勉強で、一つずつ確実に国語の力を積み重ねていってください。

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