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国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運ぶ米国とロシアの3機の補給船が、打ち上げロケットの事故により、昨年の秋以降相次いで補給に失敗していたために、日本の無人補給船「こうのとり」5号機には国内外から高い期待がかかっていました。その無人補給船「こうのとり」5号機を搭載した国産大型ロケット「H2B」5号機が8月19日午後8時50分、6基のエンジンを噴射し、ISSに向け、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。
「こうのとり」は約15分後に高度約290キロの予定の軌道に入り、高度約400kmのISSに向け高度を上げ、打ち上げ5日後の8月24日、7月からISS滞在中の油井亀美也宇宙飛行士によるロボットアームの操作でキャッチされ、翌25日無事ISSにドッキングしました。
「こうのとり」にはISS滞在中の宇宙飛行士の生活に必要な水や食料、実験機器の他、米航空宇宙局(NASA)の緊急要請で搭載した「水の処理装置」など、合計5.5トンの物資が積み込まれていました。日本のロケットの打ち上げは、2009年のH2B初飛行から5回連続、前のモデルH2Aと併せ連続27回成功し、高い信頼性を誇っています。今回の「こうのとり」のISSへのドッキング作業は、ISSの船長を務めたことのある若田光一宇宙飛行士が米国航空宇宙局(NASA)管制センターで通信役のリーダーを務めました。ドッキングを宇宙側も地上側もいずれも日本人が担うのは初めてのことです。ちなみに、油井さんは初代日本人宇宙飛行士の毛利衛、向井千秋、野口聡一、若田光一、土井隆雄、星出彰彦、山崎直子、古川聡各氏の後の9代目となります。
今回は、ISSを知るだけでなく、その背景にある宇宙開発の歴史や衛星の種類、問題点の概要を取り上げました。
1991年ソ連崩壊より9年前、東西冷戦時代さなかの1982年、宇宙ステーション開発で後れをとった米国は、航空宇宙局(NASA)で国際宇宙ステーション(ISS)の計画を話し合い、レーガン大統領が1984年「人が生活することのできる宇宙基地を、10年以内に建設する」と発表を行ったことで、国際宇宙ステーション開発計画がスタートしました。この時代は冷戦下ではありましたが「競争から協調へ」と変化していった時代でもあります。その始まりが1975年の米国アポロ宇宙船と旧ソビエト連邦(旧ソ連、現ロシア)ソユーズ宇宙船のドッキングでしょう。その後、1998年ISSの建設が開始されることになります。
1961年5月、有人宇宙飛行を先行された米国は国の威信をかけて旧ソ連に勝つため、ケネディ大統領が上下両院合同議会の演説で、「今後10年以内に人間を月に着陸させ、安全に地球に帰還させる」というアポロ計画をスタートさせた経緯と似ていますね。皆さんは実話に基づいて制作された1995年の映画「アポロ13号」を見る機会があれば、その時代と宇宙環境の厳しさを体感出来るかもしれませんね。
しかし、現在は冷戦も終わり、宇宙の平和利用の時代になっています。人類にとり数少ない国境のない場所、 それがISSです。米国、日本、カナダ、欧州各国(イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、スペイン、オランダ、ベルギー、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)、ロシアの計15ヶ国が協力して計画を進め、利用しています。無重力・真空の環境で研究を行う実験棟は4棟あり、米国は「デスティニー」、欧州は「コロンバス」、日本は「きぼう」、ロシアは「多目的実験モジュールMLM」という名前が付いています。
ISSの重量は約420トン、大きさはサッカーのフィールドと同じくらいの約109m×約73mで、地球を約90分で周回しています。
晴れた夜空なら、1等星より明るい光の点がゆっくりと数分かけて空を横切って行きますので、肉眼でも見ることが出来ます。勉強で疲れた目を休めるためにも、たまには夜空を見上げてはいかがでしょう。
宇宙ロケットは1951年頃の弾道ロケットから発展してきました。1957年11月には地球で生まれた生物として初めて「ライカ犬」が軌道飛行を経験しました。人間が初めて宇宙へ進出したのは1961年4月。旧ソ連(ロシア)によってウォストーク1号が打ち上げられ、ガガーリン飛行士が搭乗して宇宙飛行を成功させました。以来、米国と旧ソ連の宇宙開発競争により進展したといっても過言ではないでしょう。
宇宙開発は地球を周回する人工衛星と地球外の衛星・惑星・彗星等を調査する宇宙探査機があります。
8月8日の時事ニュースでご覧のとおり、探査機は比較にならない距離と厳しい環境に耐えなければならないので失敗した探査も数多く有ります。初めて成功した探査機を年代順に並べると概略次のようになります。1959年月探査衛星、1960年太陽探査衛星、1961年金星探査衛星、1965年火星探査衛星、1973年木星探査衛星、1974年水星探査衛星、1979年土星探査機、天王星・海王星探査は1977年打ち上げられたボイジャー2号により(今も太陽系外に向け進んでいる)、小惑星探査衛星は1991年から成功しています。技術的に困難なミッションほど後年の成功となっているようですね。
人工衛星は高度200kmから36,000kmの静止衛星の軌道まで色々な軌道で回っています。これまでに世界各国で打ち上げられた人工衛星の総数は7,000個を超えていますが、地上に回収されたものや、高度が下がって落下したものを除いても、周回中の衛星は約3,500個以上あると言われています。
ISSの様に高度400kmを周回する衛星を「低軌道衛星」と言いますが、カーナビでお馴染みのGPS衛星は「中軌道衛星」で、約20,000kmの高度を24個の衛星が連携して一周約12時間で回っています。
皆さんは、今年7月7日運用が開始された気象衛星「ひまわり8号」によって天気予報に出てくる雲の画像が格段に鮮明になったことに気が付きましたか?気象予報の精度向上に貢献している「ひまわり8号」は日本の南方赤道上空36,000kmに位置する「静止衛星」です。静止衛星にはBS/CS放送用の放送衛星や長距離の中継に使われる通信衛星もあります。科学研究用の衛星や探査機は皆さんには身近な存在とは言えないでしょうが、今や実用衛星が数多く運用され皆さんの生活向上にしっかりと貢献しているのです。
人工衛星にとり大敵は、オーロラのもとである「太陽風」と言われる極めて高温の粒子、彗星から分離した粒子等です。太陽風は秒速数100km、彗星の粒子では秒速40km以上の速さで飛んで来ます。これらは弾丸よりも桁違いの早い速度ですので、精密な電子機器を搭載した人工衛星に衝突すると機能が損なわれるか破損する事が有ります。これらは自然現象ですので、あらかじめ可能な限りの対策がとられています。
一方、人為的な問題として、今まで7000個以上の人工衛星を打ち上げたために、打ち上げロケットの機体や、寿命を終えた衛星本体、人工衛星同士の衝突による破片、爆発した衛星の破片などの「スペースデブリ」と言われる宇宙ゴミが無数に周回しています。これらのごみは低軌道では秒速7km以上の高速で運動しているので人工衛星や宇宙ステーションに衝突すると大変な被害をもたらします。実際イリジウムという衛星がデブリとの衝突事故で破壊されています。直径10cm以上のものについては、地上のレーダで監視し、米国の人工衛星追跡ステーションと連携して、危険回避のために衛星の軌道変更を行うこともあります。
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