入試で狙われそうな今月の理科時事問題

今月は、“国産ジェット旅客機MRJ”、“COP21”、“はやぶさ2”“金星探査機”について説明しましょう。

<国産ジェット旅客機MRJ初飛行へ>

11月11日三菱リージョナルジェット(MRJ)旅客機が愛知県名古屋空港から離陸し、初飛行に成功しました。国産旅客機としてはプロペラ旅客機YS-11以来50年ぶり2機種目となります。
新型機の特徴は、米国のプラット・アンド・ホイットニー社製の最新型低燃費エンジンを使っていること、機体の空気抵抗を少なくし、競合同型機より燃費が2割向上していること、騒音も大幅に減らしたこととなっています。

MRJは約95万もの多数の部品で組み立てられていますが、これは一般的な自動車の30倍の部品数になります。残念ながら7割の部品は外国製だそうです。でも最適な部品を使い、最高水準の設計をして、信頼性の高い機体を作るのは最先端技術の結晶と言えるでしょう。運行開始は2017年頃と言われています。搭乗が楽しみですね。

<COP21>

2020年以降の地球温暖化対策を話し合うため、11月30日フランスのパリで約150か国・地域の首脳が集まりCOP21が開催されました。COPとは締約国会議の略で、色々な条約毎に関係する国が集まる会議のことです。一般的に国連気候変動枠組条約を議論する第21回締約国会議がCOP21と言われていますが、他にも生物多様性にも砂漠化対処条約にもCOPが有ります。
地球の温暖化については10月17日と11月22日の理科時事ニュースにも書いておきましたが、今回はどの様な影響が有るかについて考えてみましょう。

(1)海面上昇

陸上の氷河・氷床の溶け出した水と、海水の温度膨張が原因で、1900年から現在で20cm、2100年では82cm上昇すると言われています。

(2)海岸の浸食、湿原や干潟の消失

海面が上昇することで海岸線が波によって浸食され、低い土地が水没しています。国そのものが海に沈むことも予測されています。

(3)豪雨による河川の氾濫、地滑りの多発
(4)スーパー台風接近による高潮による水害の多発
(5)地域的な最高気温の記録更新や熱波、低温現象、吹雪や豪雪等の異常気象の増加
(6)地域的な水不足・異常乾燥による砂漠化、森林火災の増加
(7)熱帯亜熱帯風土病や病害虫の高緯度地域への拡散
(8)農作物の生育環境変化による生産地域の移動、食糧不足・飢きん

大人の話ですが、ワイン大国のフランスでは、温暖化によりブドウが早く熟し甘味がありアルコール度数の高い美味しいワインができているそうです。一方、平均雨量の増加と湿度の上昇でブドウのカビの被害が急増し、収穫量が減ってしまいました。そのため、品種変更や品種改良、発酵に使う酵母菌の研究が懸命に行われています。

(9)生態系、生物多様性の損失

今度は子供のお話しです。皆さんは砂浜で涙を流して産卵する“ウミガメ”の姿をTVで見たことがあるでしょう。温暖化でウミガメが激減するかもしれないのです。なぜならウミガメのオスメスは産卵の時に決まっているのではないのです。ひよこが親鳥の体温で温められるように、ウミガメの卵は砂の熱で温められてかえりますが、温められる砂の温度によってオスメスが決まることが知られています。そのオスメスを左右する温度の境目が29℃で、高いとメスが低いとオスが多く生まれます。温暖化でオスメスの比がくるってしまうとやはり絶滅の方向へ向かうことになるでしょう。

<はやぶさ2 地球を利用したスイングバイで“リュウグウ”へ>

天文ファンだけでなく多くの方が12月3日の夜、“小惑星リュウグウ”へ旅立つ“はやぶさ2”が上空を通過する映像を、初代はやぶさの感動を思い出しながら見つめたことでしょう。

“はやぶさ2”は、地球と火星の間の軌道を回る小惑星帯の内の、900m程の大きさでサトイモの形に似た小惑星リュウグウに向け、2014年12月3日に打ち上げられました。小惑星は太陽系ができた約46億年前の状態を保ち、生命の源となる水と有機物が存在すると言われています。“はやぶさ2”は地下の地質サンプルを持ち帰ることを目的としています。1年間地球軌道近くを回っていましたが、小惑星帯に向け加速しなければならないので、地球によるスイングバイを行うために去る12月3日再度地球に接近しました。リュウグウ到着は2018年夏、地球への帰還は2020年東京オリンピックの年になる予定です。

『初代の“はやぶさ”とは』

初代はやぶさは、2003年5月に打ち上げられ、帰還までの7年間で“太陽電池パネルの劣化”、“姿勢制装置3個中の2個の故障”、“エンジンの不具合”など数々の故障を知恵と工夫で乗り切り、小惑星イトカワまで総移動距離60億kmにおよぶ長い旅を終え、2010年6月地球に帰還しました。この時、衛星本体は燃え尽きましたが、切り離されたカプセルからはイトカワの地質サンプルが回収されました。予定外の苦難を乗り切り、精根尽きて帰還した“はやぶさ”の中継映像に日本中が感動しました。

『スイングバイってなに?』

今年の8月号のメルマガでも出てきましたね。惑星探査衛星などは、出来る限り燃料を姿勢制御や通信、観測、航法に使用し、運用期間を延ばしたいので、燃料を使わずに軌道の方向変更や加速、減速が出来るこの手法を使います。なぜその様なことが可能なのでしょうか? それは惑星の重力と公転スピードを利用するからできるのです。衛星が惑星の進行方向の後方から、惑星の後ろ側を通過すると、惑星の重力と公転速度で引っ張られ、衛星は加速します。逆に衛星が惑星の進行方向の後方から、惑星の前を通って近づくと、衛星は惑星の公転方向と逆の方向へ向きを変えるので公転速度の分が減速することになります。

<日本初の惑星探査機“あかつき”金星軌道投入に成功>

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2010年5月に打ち上げた金星探査機“あかつき”は2010年12月、主エンジンの故障で金星の周回軌道に入れずに太陽の周りを5年間で9周も回っていました。再び金星に近づく機会をとらえ、今月12月7日に、本来1秒程度しか噴射しない姿勢制御用のエンジン4台を20分連続噴射させ、衛星を減速させるという裏技を使い、軌道投入に成功しました。

いったん宇宙に送り出したら故障の修理はできません。“はやぶさ”の帰還の時と同じように、故障に備え、対策が出来るような創意工夫を盛り込んだ設計をしているのは素晴らしいですね。

太陽からの距離や大きさが地球と似ている金星が、なぜ表面温度が460℃の灼熱状態になったのでしょうか?その理由を調べる本格的な観測は来年の春からになるようです。ただ、すでに設計寿命を過ぎていて、予定外の長期間太陽の高熱にさらされていたので、観測機器が期待したデータを送ってくれるか心配だそうです。

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