入試で狙われそうな今月の理科時事問題(IPS創薬、離岸流、熱中症、温暖化対策)

今月は、“IPS創薬”、“離岸流”、“熱中症”そして“温暖化対策”について取り上げてみましょう。

<IPS創薬>

2012年ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学山中伸弥教授が開発したIPS細胞を使い、難病に効果のある薬を見付け患者に投与する臨床試験が京都大学などのチームで9月7日から始まることとなりました。IPS細胞を活用した臨床試験は世界初だそうです。

IPS細胞の医療への期待は、拒絶反応のない臓器を作って移植する「再生医療」と、その人に最適な治療薬を見付ける「創薬(そうやく)」なのだそうです。
今回の臨床試験は200万人に1人という難病の方の治療なのですが、患者さんが少ないので病気の原因を見付けるのが困難でした。そこでIPS細胞を増殖し、細胞レベルで病気の状態を再現させることに成功したので、その組織を多数作り、候補となる薬を幾つも並行して投与すれば効果の有無が短時間で判ることになります。
患者さんその人に最適な治療を施す高度なオーダーメード医療に一歩近づいたようです。新しい治療法の開発が進み、難病に苦しむ方への朗報(ろうほう)が早く届きますように。

<離岸流>

毎日暑い日が続いて、海水浴に行きたくなる時期ですね。浜辺で怖いのは電気クラゲやサメ、ガンガゼの毒針、ヒョウモンダコなどの危険生物だけではありません。水泳が得意な人でも溺れる危険性があるのが離岸流(りがんりゅう)なのです。

『離岸流の起きる仕組みは?』

沖から波が次々と押し寄せると海岸線の引っ込んだ所に集中します。押し寄せた海水は浜辺から反射するように沖に向かって押し戻される強い流れとなります。これが離岸流なのです。
離岸流が起きやすい場所は、浜辺から沖に向かって作られた堤防に沿った場所にも発生します。打ち寄せた波は堤防の根元に集中するので、離岸流は堤防に沿って沖に流れます。

『流れの大きさは?』

離岸流の発生は、海岸の形、海岸に流れ込む川の有無などの地形、さらに風向き及び風速などの気象条件に加え、潮流(付近の海流)及び潮汐(潮の満ち引き)など海象条件で様々な影響を受けます。
従って、離岸流の大きさは一律ではありませんが、沖に向かって最大で100m程度、幅は10mから30m位、流れの速さは秒速1~2m以上と言われています。

もし、離岸流に流された場合は決して岸に向かって泳いではいけません。急流の川を泳いで上るようなものです。ですから、岸と平行になる様に泳げば脱出できます。25mプールを泳げれば抜けられます。
最悪でも浮いてさえいれば沖に100m程度流される間に監視員やライフセイバーに見付けてもらえる可能性があります。監視員の居る海水浴場で泳ぎましょうね。

<熱中症>

本格的な夏になり、日中の最高気温が35度以上の猛暑日を伝える気象予報と同時に熱中症注意警告が頻繁に出ていますね。

『熱中症って?』

高気温や運動によって体温が上昇した時に、人間の体は汗線から汗を出し、蒸発する時の気化熱を利用して体温を一定に保っています。その調節機能が失われてしまうと体温が上昇し、頭痛や体のだるさがでて、症状が重くなると脳に障害が出たり、最悪死んでしまう場合もあります。

『なぜ体温調節が出来なくなるの?』

原因はいくつかあります。

  1. 汗のかき過ぎで体から水分が失われ汗が出ない場合
  2. 高温高湿度の環境では汗の水分が蒸発しないため、気化熱を利用できない場合
  3. 普段から汗をかかない生活をしていると最大で約500万有ると言われている汗腺の内で働かない汗腺が増えてしまい、水分をとっても汗が出ない場合
『対策は?』
  1. 汗のかき過ぎが原因の場合は、のどが渇いたと感じるまえに頻繁に少しずつ水分を飲む。
  2. 高湿度が原因の場合には冷たい物で体を冷やす、エアコン、除湿器を使う。
  3. 汗腺が減った人の場合は、とりあえず前の項2.と同様の対応をするか、普段からエアコンの温度設定を少し上げ、インターバル速歩(普通に歩く速度と速足で歩く速歩を数分ごとに交互に繰り返して歩く運動方法)などの運動を心掛け、汗をかくように努力をする。

<温暖化対策>

地球の温暖化が海面上昇や異常気象に現れ、現実味を帯びてきましたね。
産業革命以来人類は生活の質の向上のため、石炭や石油など化石燃料を燃やし温室効果ガスである二酸化炭素ガスを放出し、農地を増やすために二酸化炭素を吸収する森林を伐採し続けてきました。加えて、温室効果が二酸化炭素より大きい、北極圏の永久凍土に閉じ込められていたメタンガスが温暖化により溶けだし空中に拡散しています。国際的な温暖化対策への取り組みや影響については2015.12.19号のCOP21に関する記事にも載せてありますので、参考にして下さい。ここではどの様な具体的対策が取られているかの一端を最近のトピックを交えて紹介しましょう。

『クリーンエネルギー』

化石燃料を燃やさずに作るエネルギーをクリーンエネルギーと言います(再生可能エネルギーという場合もあります)。作る方法は皆さんご存知の水力発電、太陽光発電の他、次のように色々ありますが問題点も数多く有り、残念ながら2014年の調査では全てを集めても全体の3.2%と微々たるもので、火力発電や原子力発電のような主力に加わるにはまだ時間が掛かるようです。

《風力発電》

風の力でプロペラを回し発電する風力発電は年間を通じて平均秒速6.5mの風が吹いている場所が設置の目安だそうです。ただ、風切り音、景観の問題、渡り鳥などへの自然保護の問題があり、海上に設置したり、反対運動との調整で時間が掛かっています。それでも計画段階の発電容量は2015年の2.5倍となっているようです。

《潮流発電》

海の恵みを運んでくる黒潮。その潮の流れで海中に設置したプロペラを回して発電するのが潮流発電。2020年の実用化をめざして来月から官民一体の実証実験が開始されます。太陽光発電や風力発電より稼働(かどう)効率が良いそうです。

《地熱発電》

世界有数の火山国日本。地下の高温の地熱を利用して水蒸気を発生させタービンを回して発電する地熱発電。実用化はされていますが、設置に適している場所の多くが国立公園内なので、なかなか開発が進まないのが実情の様です。

『自動車』

環境省によると、発電所、工場に次いで二酸化炭素排出量が多いのが自動車。最近では排出量が減少傾向の様です。オイルショック以降の原油価格の上昇でガソリン代が高騰しエコカーの開発と普及が促進されたことがその要因でした。

《ハイブリッド(HV)車》

従来のガソリンエンジンと発電機にもなるモーターと大型大容量の充電可能電池(2次電池)が搭載された車。1997年のトヨタプリウスの登場でエコカーの普及が始まりました。

《プラグインハイブリッド(PHV)車》

次に開発されたのが、HV車の電池に家庭のコンセントから充電できるようにしたPHV車。短距離ならガソリンを使わずに電池だけで走行が可能で、災害時の家庭用の電源としても使用可能となっています。

《電気自動車(EV)》

搭載された大容量電池に貯めた電気だけで走るのがEV。搭載された二次電池の性能によって走行距離は決められるので、安全で大容量の電池の開発競争が激化しています。

《燃料電池車FCV》

搭載した水素と空気中の酸素とを反応させて電気を作る燃料電池の電力のみで走るのが燃料電池車で、排気ガスは無く、出すのは水のみという最も期待されている車。燃えやすい水素を安定して大量にタンクに保存する技術が開発の鍵の様です。

欧州の排出ガス規制強化の実施期限が3年後の2020年となり、自動車メーカーは排出ガスを出さない車の開発競争にしのぎを削っています。

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