No.789 入試最頻出テーマ「友人関係」は佐藤いつ子『キャプテンマークと銭湯と』に学べ!

佐藤いつ子『キャプテンマークと銭湯と』(角川書店)

 物語文読解の最頻出テーマのひとつ「友人関係」。その中でも、部活動などで行動を同じくする人物同士の関係を描いた作品は入試で大変多く出題されます。そのパターンを公式化すると、以下のようになります。

 相手への反感・不審・嫌悪→挫折・孤独→新たな出会い→心の成長→相手への理解→友人関係の構築

 今回ご紹介する『キャプテンマークと銭湯と』は、まさにこのパターンにそって主人公の心情を追うことができる傑作なのです。

 主人公の周斗は所属するサッカークラブのキャプテンだったのですが、入団したばかりの大地にその座を奪われることになります。その悔しさや孤独の中でもがきながらも、様々な人々との出会いを通して周斗が成長していく様子が描かれています。
 その重要な舞台となるのが銭湯です。自分をサッカーの世界に導いてくれた祖父が生前に連れていってくれた銭湯に周斗が偶然出くわすのですが、そこで出会う人々との交流を重ねることで、周斗の頑なになった心が解けていく様がゆっくりとしたペースで描き出されています。

 特に注目して頂きたいのが第10章です。周斗が大地と共に銭湯の湯につかりながら会話を交わすこの章では、相手の苦しみや苛立ちを互いに受け止め、相手への理解を深めることによって関係が一気に深化していく過程が生き生きとした会話でつづられていきます。まさに最初にご紹介したパターンが合致する場面で、物語文読解の養成につながる極上の教材と言えます。

 物語展開が典型的(いわばベタ)な場合、時に先が見えてしまうことでお子様が退屈さを感じてしまいがちです。ただこの物語では、随所に見られる心情表現に読み手を惹きつける強さがあり、それが凡庸ならざる傑作へと作品を昇華させているのです。
 例えば、周斗がキャプテン交代をコーチに告げられた場面での

「重たい頭をいつも当然のように支えている細い首が、今はとても頑張って、懸命にこらえている。(P.26)」

や、周斗の言葉が原因で仲たがいをしてしまった友人・克彦との関係が修復されることを暗示する

「まんまるみたいでまんまるではない、もうちょっとの月が、ときおり雲から顏を出した。(P.188)」

など。そうした表現に触れることもまた、読解力の養成には重要なプロセスとなります。

 10代前半の少年の心を癒し成長させるのが、今となっては見ることが少なくなった昔ながらの銭湯というアイロニカルな設定も、物語に深みを持たせる要素となっています。

 友人関係をここまでストレートに美しく描き切った作品とはなかなか出会えないものです。来年度入試でも出題される可能性が高いと思われる作品です。
 まずはぜひ本屋でご覧になってください。

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