額賀澪『風に恋う』(文藝春秋)は来年度中学入試で出題が予想される、青春の息吹がほとばしる傑作です!

amazon『風に恋う』額賀澪(文藝春秋)

読んでいて、目頭が熱くなる瞬間が何度あったでしょう。青春の素晴らしさを感じながら、中学受験のテキストとして活用することもできる傑作です!

中学受験の国語の視点から、その魅力を絞りに絞って以下の3つに。
1.美しく力強い表現の数々
2.気持ちがぶつかり合う場面の力強さ
3.志望校に入って部活がしたい!と思わずにいられないストーリー展開

以下にそれぞれについてご説明します
1.入試で頻出となった『屋上のウインドノーツ』『ヒトリコ』や、『タスキメシ』など、額賀澪の作品は共通して美しい表現に満ち溢れています。
本作でも「落胆と怒りと憤りと、寂しさの入り交じった玲於奈の表情と静かなたたずまいは、行きが降っているみたいだった。夜闇に降りしきる雪だ。」(P.13)や、「ホールを、風が吹き抜ける。音や色や匂いにあふれ、大勢の人の想いや決意や覚悟が詰まった風が。戦って戦って、たくさんの敗者に背を向けてここまで走ってきた風が。」(P.290)など、ただ美しいだけでなく、そこにいる人物の心情が色濃く込められて、読んでいて痛みすら感じる程に切実に想いが迫ってくるのです。こうした表現を体感することは、物語文読解での心情理解力を培ううえで、とても貴重になります。

2.本作では特にP.152の最終行からP.166の9行目までの、主人公の基が部長としての意気込みを部員に伝える場面、P.275の6行目からP.281の12行目までの、基と幼馴染の玲於奈がサックスのソロパートを競い合う場面で、強い気持ちのぶつかり合いが展開されます。後者の場面で、基の「ぶつかり合うから、僕達は昨日までの自分になかったものを手に入れる。」という言葉が示すように、吹奏楽部を舞台にしたこの物語では、部員どうしがお互いに競い合い、励まし合いながら頂点を目指す様子が描かれています。その過程で、時に激しく気持ちをぶつけ合い、時に表面には見せない深い優しさを寄せ合ったり、強く気持ちが交差して行きます。そうした気持ちのやりとりを感じることで、物語文で必須の心情のやりとりを読み解く力が養われていくのです。

3.これは物語文読解と直接に結びつくことではありませんが、本作を読み終えると、「部活っていい!」と大人でも感じる程に、部活動の魅力を強く感じることができます。これは単なるノスタルジーではありません。吹奏楽部の活動に全身全霊を傾け、体中で音楽を奏でる人物達の姿に触れることで、まだ本格的な部活動を経験していない小学生のお子様も、大いに刺激を受けることと思われます。中学受験において、志望校で部活動をしたい、と言う気持ちが受験生のモチベーションを上げる効果は絶大です。本作は部活にかける情熱が本全体からほとばしっているのです。

数多ある部活をテーマにした物語の中でも、本作ほどに熱い情熱に満ちた作品には、なかなか出会えることはありません。まずはぜひ本屋でご覧になってみてください!

入試対策室 室長 筑駒 貝塚正輝

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