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慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部 画像引用元:ウィキペディア
分析結果は驚愕の英検○級レベル!慶應湘南藤沢中は一体どのような受験生を想定しているのか、語彙・文法は英検何級レベルまで必要か、この問題を通してどのような生徒が欲しいのか、そして対策は?ベテラン英語プロ家庭教師であり、大学でも教鞭をとるT先生が徹底解剖します。
― 慶應湘南藤沢中等部(以下、SFC)の英語ですが、リスニング、リーディング、文法、語彙そして作文という構成になります。このうち作文は問題が未公表です。まずは作文以外の英語の問題について、先生のご印象をお聞かせ頂けますでしょうか。
T先生「率直な感想として、6年生がこの問題を解くことが想像できないくらいの難しさですね。リスニングに関してはそんなに難しくはないかもしれませんが、それでも中学1年生レベルではないでしょう。リーディングや文法はざっくり言うと、英検の準2級のレベルと感じます。どこかが際立って難しい、簡単というのではなく、全体的なレベルが英検準2級で統一されていると感じました。長さ、量的にはその上を行っていますね。
単語のレベルもとても高いです。受験生が何割正解することを想定してこの問題を作っているのかわからなので何とも言えませが、推測を使って解くとしても最低限必要なレベル、これがわからなければ答えに結びつかないという単語のレベルは、準2級、2級、準1級、1級レベルなんですよ。例えば、リーディングの問題文にある「malicious(悪意のある)」という単語なんて1級レベルです。しかもそこに線が引いてある、つまりその単語が問題の対象となっている。直後にhackerという言葉があって、文章全体の内容から、おそらく悪い意味だと類推できたとしても、問題の選択肢に出てくる単語(mean、foolish、clumsy、stubborn)がさらに難しい。4つの選択肢のうち、中学生が知っているのは1つくらいです。とても難しい問題です。
― 英語を一般入試で受験する場合には、算数・国語と英語になります。例えば英語の力が英検準2級にないお子様が、苦手な理科・社会よりは英語で受けた方がよいだろう、といった考えで受けられるようなレベルではない、ということですね。
T先生「その通りです。理科・社会の代わりに受けよう、と思って太刀打ちできるレベルの問題ではありません。帰国子女かインターナショナルスクールに通われている生徒さんでないと解けない印象です。」
― 文法問題のレベルも高いでしょうか。
T先生「そうですね。コツコツと勉強している中学生、高校生を対象にしたとして、文法の問題7題を高校生の範囲、中学生の範囲と分けてみたんですが、中学生の範囲が3題、つまり半分以上が高校で習う文法なんですね。」
― 大学入試センター試験と比べたらいかがでしょうか。
T先生「センター試験まではいかないでしょう。単語レベルも文章の知的レベルもセンター試験の方が高いです。」
― この問題はどのような生徒さんを対象にしているのか、という点ですが、大きく以下の2つに分けられると思われます。
1.帰国生入試の枠には該当しないけれど3年以上などある程度の期間海外で生活をしていた、あるいはインターナショナルスクールに通い、生活の中で英語に触れている生徒さん。
2.日本で日本語の中で生活をしている生徒さん。
それぞれの生徒さん達は、どのように対応されるとお考えでしょうか。
T先生「まず海外で生活していた生徒さん、特に4年生以上の年齢で海外生活の経験があれば、難しくは感じないでしょう。まずリスニングはほとんどできる。リーディングでもわかる単語量が多いので、わからない単語があっても憶測ができる。そして読むのが圧倒的に早い。そういったアドヴァンテージがありますね。
その一方で、海外生活を長くしていても文法問題は間違えてしまうことが多いかもしれないですね。英語で話せるし、英語を聞くこともできるけれど、それを文法的に認識しているのではないですから。文法的に理解しようとはしていないので、帰国生でも文法が弱いことは多いですね。」
― それでは、文法については対策が必要ですね。
T先生「そうなんですが、おそらくそれ以外の部分でかなりの得点ができますので、それだけで合格できる可能性は高いのではないかと思います。
― 日本で生活している生徒さんはいかがでしょうか。
T先生「このテストは、日本で暮らして、英語をコツコツ勉強してもなかなか到達できるレベルではないと思います。ただ、小学校1年生から何らかのかたちで週2回以上、6年間というペースで、単語を覚えるだけでなく、将来を見据えた英語教育をしてくれるような塾に通っていれば、話は別かと思います。」
― 小学校6年生で英検準2級をすでに取得している生徒さんですといかがでしょうか。
T先生「この問題をおおざっぱですが、40~50%ならとれると思います。英検は合格点が高くなくて、60~65%なんですよ。そうなれば60%はとれるということにはなります。ただ、SFCの合格基準点がわからないので、何とも言えないですね。」
― この問題を通して、SFCがこういう生徒さんが欲しい、というメッセージは感じられましたでしょうか。
T先生「はっきりとはないですが、まずはSFCの教育方針に、「将来、グローバル社会の先導者として活躍することを期す」とある通り、SFCから大学へ進み、大学を卒業してからグローバルに活躍する人材を求めていると感じられます。高い英語力を持ったうえでリーダーシップを発揮できる人材が求められていると、テストを通じても思いますね。
また、他の生徒さん達に良い影響を及ぼしてくれる生徒さんを求めているとも思います。帰国生がいるクラスは、そうでないクラスよりも全体の英語の成績が良いことが多く、中学生にとって身近に英語の強い生徒がいると、英語力をアップさせる方法を習得できる機会に恵まれることはあると思います。
あとは問題文の知的レベルが高い。リーディングの2問のうち、物語文の方はまだ子供の視点がありますので、そこまで読みづらくはないのですが、論説文の方はとても難しい。この単語レベルで書かれた内容ですので、高校1年生でないと理解できない世界観になっています。成熟した内容とも言えます。
― 精神的にも成熟した生徒さんを学校が求めていると言えるでしょうか。
T先生「そうですね。このテストは文章、単語レベルと問題内容のレベルが一致している。つまりオリジナルの文章をそのまま出しているんですね。もしも小学校6年生でも読めるように単語レベルを下げるのであれば、中等部の先生が問題をリライト、書き直すはずなんですが、それをしていない。単語レベルに合わせて問題内容を選ぶと、今度は内容が子供向けになってしまう。そうしたことをせずに単語と問題内容のレベルを一致させて、そのオリジナルのままの文章を理解できる知的レベルを求めているのでしょう。」
― そこまでのレベルとなりますと、こういった問題を解いて合格した生徒さんは、大学受験でも有利と言えますね。
T先生「ものすごく有利、有利なんてものではないですね!英語教育ってとても時間がかかるんです。中学1年生から高校3年生の6年間では英語の力を上げるのには足りないんです。通常6年間で習ううちの半分くらいのレベルで構成されているこのテストを受けて合格してきたお子さんであれば、楽にトップレベルの大学、まさに慶應義塾大学は大学入試の中でも英語のレベルが高いのですが、そのレベルかそれ以上にまで達する可能性がとても高いと思います。」
画像引用元:ハーバード大学ホームページ
― それでは、この問題を解いて合格するための対策はいかがでしょうか。
T先生「リスニング、リーディングに対応できるだけの英語レベルに達していて、文法だけが足りないというお子さんでしたら、対策はしやすいでしょう。文法は聞かれるポイントは多いのですが、そのポイントは決まっているので、対策の仕方も決まってきます。それをコツコツと積み上げればよいので、文法だけであれば難しくはないでしょう。テキストとしては英検準2級の問題集でよいでしょう。あと作文ですが、作文も対策は難しくないですね。自分のわかっている言葉を使えばよいので、知らない言葉を見せられるよりも、取り組みやすいと思います。自分の考えを的確な英語で表現する練習をすれば、十分に書けるようになりますね。」
― 日本で英語の勉強をするしかない場合に対策はやはり難しいでしょうか。
T先生「そうですね。ゼロの状態から単語も文法もやらなければならない、となると、ちょっと想像ができないですね。ただ前半の問題(リスニング、リーディング)に対応できる力をつけるために、あるとすれば、英語の文章を多量に読むこと、それしかないかもしれないです。そのお子さんが興味がある内容を、英語原文で定期的に多量に読む、ということしかないでしょう。また聞く力をつけるためにも、その文章をCDで聞いて、自分も音読をする必要があります。」
― かなりの量の原文に触れる必要があるということですね。
T先生「毎日お母さんと30分やる、などの努力をしないといけないですね。帰国生は8時間は寝るとしても毎日16時間は何かしらのかたちでずっと英語に触れているのですから、日本で生活して16時間日本語で話すことを前提とすると、毎日30分でも追いつかないくらいですから。」
― 読む文章内容の知的レベルは、やはり高い方がよいでしょうか。
T先生「そんなことはないですね。小学生がその年齢で日本語で読むような内容を英語で読むことです。1年生であれば1年生が読むような内容を英語で、それを2年生であれば2年生レベルにと引き上げていく。その積み重ねですね。
小学生に言語を教える際には、ただ説明しても理解はできないんです。中高生とは教え方が違う。小学生は、理屈ではなくて同じような文章に何度も当たらせてなんとなく理解させることしかできないんですね。言語の対する理屈がまだ理解できていない、言語の仕組みを説明してもちんぷんかんぷんで頭に入っていかないと思うんです。だから体験でしか理解してくれない。説明をすればその型にはめようというルールを理解して、そのルールを使おうとできるのは、中学生以上です。それは小学生の高学年ではできないことです。
英語で言えば、文型は理解できるかもしれないですね。ゲームのように直感的に理解できるかもしれないですが、be動詞や一般動詞と言われても基本からわからない。同じ3年間でも中学の1年から3年と、小学4年から6年の3年では文法の理解は全く違ってくるんです。
だからこそ、理屈ではなく体験で理解する方法として、本を読むことが有効になり得るんです。」
以上が、T先生の見解です。まとめると以下のようになります。
(1) SFCの英語テストの難易度
1.全体的には英検準2級のレベル。
2.単語は英検1級レベルのものも含まれる。文法問題は半分以上が高校で習う範囲。
3.センター試験よりは易しい。
(2) 想定される受験層
1.帰国生枠には該当しないが、3年以上海外で生活していた経験がある生徒。
2.インターナショナルスクールに通い、日常的に英語を聞き話している生徒。
3.日本で生活しているが、小学1年から週2回以上6年間というペースで、実践的(単語を覚えるだけというレベルではない)な英語教育を受けてきた生徒。
(3) このテストから感じられるSFCが求める生徒像
1.将来グローバルに活躍できる人材となる可能性の高い生徒を求めている。
2.入学後にクラスに好影響を与えてくれる生徒を求めている。
3.精神的にも成熟した知的レベルの高い生徒を求めている。
(4) このテストを攻略するための対策
1.リスニング、リーディングが合格水準に達していれば、英検準2級の問題集を使って文法対 策をすることは難しくない。
2.日本で生活している生徒さんがリスニング、リーディングの問題に対応するためには、毎日最低30分以上のペースで継続的に英語の文章を原文で多量に読み、合せてCDでその内容を聞いて耳を鍛えること。それをとにかく継続的に。
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