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アルフレッド・ノーベル 画像引用元:ウィキペディア
今月は、スウェーデンのカロリンスカ研究所から10月7日にノーベル生理学・医学賞が、スウェーデン王立アカデミーから翌8日にノーベル物理学賞が、翌9日にノーベル化学賞が発表され、日本人として27人目となる吉野彰・旭化成名誉フェローが化学賞を受賞しましたので、“ノーベル自然科学3賞”と“リチウムイオン電池”について取り上げてみましょう。
ノーベル賞はダイナマイトの発明で知られるスウェーデンの発明家であり企業家のアルフレッド・ノーベルの遺言によって1901年から授与されはじめた最も権威ある賞です。ノーベルの遺産を運用し「人類に多大な貢献をした人々」に授与されていて、物理学、化学、生理学・ 医学、文学、平和および経済学の6分野から選出された方に贈られています。授賞式はノーベルの命日である12月10日ストックホルムで行われます。
ストックホルム・コンサートホールでの授賞式 画像引用元:ウィキペディア
高山への登山をした時や貧血等で体内が酸素不足状態になった時、細胞内で起きる現象を詳細に明らかにし、ガンや貧血等への治療に道をひらいたとして米国ハーバード大ウィリアム・ケーリン教授、英国オックスフォード大ピーター・ラトクリフ教授、米国ジョンズ・ホプキンス大グレック・セメンザ教授の3名が受賞しました。
宇宙の始まりである「ビッグバン」から約40万年以降に宇宙空間に広がった放射線を分析すれば宇宙の成り立ちを解明できるという理論を1960年代の半ばから提唱した米国プリンストン大学のジェームズ・ピーブルズ名誉教授に授与されました。提唱された理論から星や私達を構成する物質は宇宙全体の約5%しかなく、残りの約95%は「暗黒物質」や「暗黒エネルギー」だとわかりました。
同時受賞者として、約50光年離れたペガスス座の51番星という恒星に、太陽系以外では初めて惑星があることを観測で明らかにした、スイス・ジュネーブ大のミシェル・マイヨール名誉教授と英国ケンブリッジ大のディディエ・ケロー教授に授与されました。
高出力で軽量のリチウムイオン電池を開発し、化石燃料に頼らない社会の実現に貢献し、人類への大きな恩恵をもたらしたとして、旭化成の吉野彰名誉フェロー、米国テキサス大オースティン校のジョン・グッドイナフ教授、米ニューヨーク州立大ビンガムトン校のスタンリー・ウィッティンガム卓越教授の3名が受賞しました。
吉野名誉フェローは日本人化学賞受賞者としては8人目ですが、企業の研究者としては2002年の島津製作所の田中耕一氏以来2人目となります。
NASAの大型リチウムイオンポリマー二次電池 画像引用元:ウィキペディア
電池には、充電はできなくて、中にある化学物質を消費してエネルギーを生み出す一次電池(マンガン乾電池、アルカリ乾電池、酸化銀電池、リチウム電池、等)、とエネルギーがなくなっても充電して繰り返し使える二次電池(鉛蓄電池、ニカド電池、ニッケル水素電池、等)があり、他にも太陽エネルギーを電気に変える太陽電池や、ガスを電気に変換する燃料電池もあります。ここでは二次電池のお話です。
160年も前の1859年に発明された鉛蓄電池は、電極に鉛、電解液に希硫酸を使った大型で重い電池ですが、現在も改良が重ねられ車のバッテリーなどに広く使われています。
ニッケルカドミウム(ニカド)蓄電池は1899年発明されましたが商品化は1960年代となり、公害で問題となったカドミウムを使用しているためと、より大容量のニッケル水素電池が1990年に商品化されました。両者とも電圧が1.2Vと低い為、より高い電圧を使う機器には複数の電池を直列に接続しなければならず、かさばる上に短時間で切れてしまう難点がありました。
水素やヘリウムに次いで軽く金属であるリチウムを使って、高い電圧を出せる蓄電池を作る試みは以前からあったのですが、今回受賞したウィッティンガム氏が1970年代に金属リチウムを使った電池を開発しました。ところが、使っていると発火する危険が有り実用化しませんでした。グッドイナフ氏は電極にコバルト酸リチウムを使って4Vという高い電圧を作る事ができたのですが、安全性はまだ解決されませんでした。
吉野氏はグッドイナフ氏の成果から着想を得て、プラスの電極にコバルト酸リチウムを、マイナス極に旭化成の特殊な炭素繊維を使い、安全性を飛躍的に向上させ、電極が接触しないようにする膜を開発し、特許を取得しました。これが原型となり、小型・軽量・高出力で安全なリチウムイオン電池は1995年の「ウィンドウズ95」パソコンの急速な普及とともに世の中に浸透して行ったのです。
リチウムイオン電池は小型・軽量・大出力・安全という特徴を生かし、机上で使っていたパソコンを安心して持ち運び使用ができるノートパソコンへと進化させ、携帯やスマホの普及に貢献するとともに、世界中の人々の行動や文化の変化にまで影響を与えています。
自動車への普及はガソリン燃料一辺倒からハイブリッド車、電気自動車へと向かい、化石燃料の使用削減と地球温暖化防止に貢献しています。来年導入される新幹線の新型車両「N700S」には停電時安全な場所への移動用としてリチウムイオン電池による自走システムが搭載予定であり、人々の安心・安全へも貢献するでしょう。
さらに、太陽光や風力発電などで作られた電力を貯蔵することにも使え、環境保護の基幹技術となっています。
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