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早稲田実業の2020年度入試で、社会の合格者平均点が昨年度から5点近く(50点満点)下がりました。過去5年間の早稲田実業の社会合格者平均点と、4科目の合格者最低点をまとめたのが以下の表です。
受験者平均点が下がった原因のひとつと考えられるのが、最終問題の記述で苦戦した受験生が多かったことと推測されます。そこで今回はその記述問題について分析をしてみます。
早稲田実業の社会の特徴を挙げると以下の通りとなります。
・制限時間30分に対し、小問数が30から40題の問題構成で、スピードと正確さが求められる。
・問題の難度は標準レベルがほとんどだが、高い知識水準を求める問題が毎年1,2問は含まれる。
・資料が多く掲載され、その読み取りを速く正確に進めることが必須となる。
・受験者平均点は60%(50点満点の30点)以上となる年がほとんどである(過去10年で7回)。
・選択肢問題は「すべて選びなさい」のパターンが多く見られる。
・2019年度より記述問題が出題されることになった。
上記から早稲田実業の社会攻略のポイントを端的にまとめると、「時間配分を十分に意識して、捨てる問題をつくり、それ以外の問題を速く確実に正解する。資料の読み取りについても、それらの際立ったポイントを瞬時に読み取る練習をして、男子であれば60%強、女子では70%の得点を目指す!」ということになります。
2019年度から導入された記述問題にどれだけの時間を費やせるかが、新たな攻略の決め手として注意が必要です。記述問題の内容ですが、2019年度は「世界幸福度調査」をテーマとした文章、資料をもとに、福祉のあるべきかたちについて自分の考えを150字前後で述べさせるものでした。資料の文章がヒントとして活用しやすかった問題ではありましたが、この年の受験者平均点は32.2点と、記述問題が導入されてもこれまでの水準から下がることがなかったのです。早稲田実業の受験生が、社会の特徴を把握したうえで過去問演習を重ね、取るべき問題を確実に正解したうえで、記述問題でも部分点を獲得したことが推測されます。
では、受験者平均点が5点近く下がった原因と推測される今年度の最終問題の記述とは、どのような内容だったのでしょうか。
記述問題が含まれる第3問は、「世界の自動車生産」をテーマとした問題でした。その中の最終問題は以下のような内容です。
※問題の資料は四谷大塚の過去問データベースより抜粋しました。
《早稲田実業 2020年度社会 第3問 問7》
問題のポイントは、トランプ大統領を説得するにあたって、「相手の言い分を認める」「それをふまえてこちらの言い分を伝える」「相手にもメリットがあることを理解させる」の3つの要素を含めるという点です。3つの要素と、与えられた資料をどのように結びつければよいのかに苦慮した結果、問題を解かずに抜かしてしまい、部分点もとれなかった受験生が多かったのではないかと思われます。
また、資料の数が7つと多かったことで、どの資料を活用すればよいのかがまとまらなかったことも考えられます。相手を説得させるという目的の元に、3つの条件すべてを満たさなくてならず、かつ題材とする資料の数が多いという、難度の高い問題でした。
この問題を攻略するポイントを以下の3つに絞ってみました。
1.満点を目指すのではなく、部分点をとりにいく。
これは早稲田実業をはじめとした最難関校を目指す受験生であれば周知のことではありますが、入試で満点を目指す必要はありません。受験者平均点、合格者最低点が高い早稲田実業の社会でも男子であれば60%強、女子は70%をとればよいのです。そのためには難しい問題に時間をかけ過ぎず、あくまで部分点をとる判断をしたうえで、他の問題での正答率を上げるための見直しに時間を使う方が合格最低点を超える可能性が断然高くなります。満点にこだわらず、部分点でも構わない意識を強く持って、決して白紙答案にはせずに、何かは書き残す意識を持っておくことが必須です。
2.資料からではなく、3つの要素から解答の方針を立てる。
社会の問題で資料が与えられた場合、ついすべてを活用しなくてはいけないと考えてしまいがちですが、この問題のように資料が多くなると、そのすべてをどのように活用すればよいのか考えるだけで莫大な時間が過ぎてしまいます。
問題には活用した資料がどれかまで答える指示はありません。つまり使わない資料があっても構わないのです。3つの要素を説明するために使える資料だけに絞って活用すればよいことになります。
そこで3つの要素それぞれの内容を発想の起点として、どの資料を使えばよいか考えてみましょう。
要素1「相手の言い分を認める」
ここで言う相手の言い分とは、日本がアメリカに多くの自動車を輸出しているということです。そこで資料1を見れば、日本がアメリカに輸出した車が多いことは数値上も正しくなります。その点を含めれば、要素1は解決です。
→「たしかに日本が多くの自動車をアメリカに輸出していることは事実です」
要素2「それをふまえてこちらの言い分を伝える」
こちらの言い分ということは、トランプ大統領が言う、「日本がアメリカ製の車を買わない」という点、または「日本製の車を大量にアメリカに輸出している」という点を崩すことになります。前者についてはそれを裏付ける資料がありません。後者について「大量に」という言葉に注目しましょう。資料では際立った点に注目することで活用の糸口が見えてきます。トランプ大統領の言う「大量に」は資料2のグラフで、日本の対米自動車輸出の台数がピーク時の1986年から最近は半分にまで減っていることがわかります。グラフの際立った点に注目するという鉄則を使えば、この要素もクリアーできるのです。
→「日本からアメリカへの輸出台数は、多いときの半数ほどにまで減っています。」
要素3「相手にもメリットがあることを理解させる」
問題はこの要素です。アメリカにとってのメリットが何かを考えるにあたって、資料3の内容をどう読み取るかがポイントになります。表1に掲載されている日本の自動車会社の販売台数の合計が、表3にある国別生産台数を大きく上回っていることから、日本の自動車会社がアメリカの工場で現地生産していることがわかります。そこで資料3を見れば、日本の自動車会社の現地生産は、アメリカの衰退した工業地帯での雇用を活性化させることに貢献していると言えるのです。
→「日本の自動車会社はアメリカの現地工場の多くで生産をしており、それがアメリカの自動車産業の雇用を増やすことに貢献しています。」
以上を総合して、以下のような解答を作ることができるのです。
3.資料の使い方がわからない場合は知識で答える。
この問題では、日本の自動車会社がアメリカの工場で現地生産をしていることを知識として持っていれば、資料に頼らなくても答えは出すことができます。先に述べたように、記述問題では部分点をとれる可能性がありますので、とにかく白紙答案にしないことが必須です。限られた時間内に記述答案を完成させるには、問題の指示(この問題であれば3つの要素を含めること)を第一に、根拠となる資料がなくても知識をフル活用して、知識が浮かばない場合には推測した内容でも構いませんので、何としても3つの要素を満たす内容で、解答用紙の7割を埋める記述を仕上げることが重要となります。
まずは資料の読み取りに慣れるために、早稲田実業の過去問だけでなく、他校の過去問も活用しましょう。資料を用いて思考力・表現力を求める問題は、以下のような学校でも見られます。
・浅野中
・大妻中
・駒場東邦中
・渋谷教育渋谷中
・白百合学園中
・明治大学付属明治中
・横浜雙葉中
・立教池袋中
また、先にも触れたように、資料の活用方法が浮かばない場合には知識を使って解けば記述答案は作れますので、時事問題を含めた知識の集積は怠らないようにしましょう。
30分という短い制限時間の中で、条件に合わせて資料を活用して記述を完成させるという極めて高いレベルを求める出題が見られたのが今年度の早稲田実業の社会でした。来年度入試でも今年度のような、あるいはそれを凌ぐ難度の記述問題が出題される可能性がありますので、十分に対策を重ねておきましょう。
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