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amazon『座右の世阿弥 不安の時代を生き切る29の教え』齋藤孝(光文社新書)
室町時代を代表する能楽師、世阿弥。教科書では、ほんの数行しか書かれていません。
『座右のゲーテ』、『座右のニーチェ』、『座右の諭吉』で、数々の明言を紹介してきた齋藤さん。この6月、世阿弥の名言がぎっしりつまったこの本が登場しました。
実は、本書の中にある夏目漱石の言葉が、過去に入試問題で掲載されたことがあります。歴史上の人物が残した名言が入試問題の文章で使われることは多く、例えば、本郷中の2016年度第1回では哲学者サルトルの言葉が、明治大学付属明治中2015年度第1回では古代ギリシャの哲学者アリストテレスの言葉が問題文で使われていました。
それらの言葉は中学受験生にとっては抽象的に感じられるものが多いのですが、その意味するところを的確にとらえる力が求められるのです。世阿弥の残した言葉に対し、齋藤さんがわかりやすく解説をしていますので、本書を読み通すことは抽象的な言葉を具体的に理解する練習になります。
また本書に掲載された世阿弥の言葉は、中学受験生のお子様方を励まし、また生きる指針を示してくれるものがたくさん見られます。
多くの名言を掲載した本書は来年度入試で出題される可能性があるだけでなく、お子様にとって生きていくうえでのヒントとなる言葉がみつけられる一冊です。ぜひ親子で読んで、感想を話し合われてみてはいかがでしょうか。
齋藤さんは、世阿弥のいう「真の花」とはなんだろうか、と考えました。そして、夏目漱石の言葉を発見します。
その<真の花>をつかむ感覚を「鉱脈」と表現したのが、夏目漱石です。漱石が、文学に対して探しつづけていた答えを見つけだした実感です。
この漱石の言葉が、攻玉社中の2018年度第1回入試で掲載されたのです。攻玉社の問題では、この漱石の言葉を含む文章全体から、仕事というものは自分の個性を発揮できるものであるべき、という意味を読み取ることが求められました。
漱石が「鉱脈を掘り当てる」とした言葉を、世阿弥は、「真の花」と表現します。どちらも比喩表現ですが、そこから、自分の個性が発揮できる場を探し続けることが重要である、という意味をくみとりましょう。
世阿弥は,決して順風満帆、自信たっぷりの人生を送ったわけではなく、むしろ先の見えない不安と闘いつづけていた人です。
少年の頃から才能を発揮し、将軍足利義満にもかわいがられました。しかし、21歳で父を亡くし、一座の棟梁という立場を背負うことに…。年を重ねてからはライバルに座を奪われ、10年間、表舞台から姿を消したことも。
世阿弥のすごいところは、どんな状況になってもへこたれなかったことでした。「どうやったらお客さんに満足してもらえるだろう?」と、一生をかけて追いもとめたのです。
ちなみに、筆者の齋藤さん自身も、「鉱脈」を掘り当てるまでには長い苦労がありました。20代後半から5年以上心血を注いだ研究は、なかなか認められませんでした。明治大学に職を得たのは、30代前半。40歳を過ぎて、ついに『声に出して読みたい日本語』が認められ、出版の仕事が波に乗るようになったそうです。
これから中学・高校・大学へと進まれるお子さんたち。いつ、どのように「鉱脈」を掘り当てるのでしょう?
世阿弥といえば、「離見の見」。舞台で大勢の人に見られる世阿弥が、特に強調したのは、「うしろ姿」でした。齋藤さんが、単に身体のうしろのことだけではない、と言っている通り、うしろ姿を単に背中の意味だけを表しているととらえないように注意しましょう。
精神的なありようとしての意味です。…すなわち、俯瞰視点を持つと言うこと。…メタ認知と表現してもいいかもしれません。全体の中でものを見、場の空気や流れの中でその場の成功を考えるということです。
受験勉強においても、常に全体でものを見て、自分の勉強の状況を客観視する。「合格」というゴールにむかって進むために、大切な視点ではないでしょうか。
謡の文言が先に聞こえ、そこにしぐさが加わる方が風情があって美しく見える。
まず「言葉」を聞かせ、少し遅らせて動作を入れることで、人の心に残りやすくなると、世阿弥は言います。
中学では、今、「アクティブラーニング」がつぎつぎと導入されています。自ら考え、探求する学習法は思考力を向上させ、大学合格率にも大きく影響します。そのアクティブラーニングで欠かせないのが、「プレゼン」。「まずは言葉から」、そしてそのあと視覚にうったえる。たったこれだけのことですが、大きな効果があるそうです。中学でプレゼンをするとき、ぜひ思い出してみて下さい。
齋藤さんは言います。
夢は大きい方がいい。そのほうが人生の可能性は絶対に広がります。
ところで、幼い頃から美少年として評判だった世阿弥。青年期の声変わりが、彼を苦しめました。
<まづ、声変わりぬれば、第一の花失せたり>
しかし、世阿弥は、あきらめません。ここが踏ん張りどきだ、と肚(はら)を据える。挫けないぞ、これだけは一生捨てないんだ、という気構えを持つ。
齋藤さんは、これを「胆力」と呼びます。
将来、自分は何をしようか.高校生から大学生の時期にみんな考えます。…自分の思い描いている将来像、夢や志は、肚から生じているものですか?
この資格を取れば有利だろう、というレベルでは、何かあったときくじけやすい。予想外のことがあったとき、はたしてそれで踏ん張れるのか?と、齋藤さんは問います。
この道でやっていく、「自分はこれで生きていく」という覚悟のある人は強いのです。…志を持つと言うことは、自分の人生に責任を持って生きていく、ということでもあるのです。
将来、お子さんは進路に迷うかもしれません。そんなときにぜひ思い出してしてもらいたい言葉です。
齋藤さんがこの本を書いたのは、2020年5月。コロナの時代に、世阿弥の言葉はどう響くのでしょうか?齋藤さんの選んだ世阿弥の29の言葉。ぜひ読んでいただければ幸いです。
最後に、「おわりに」の齋藤さんの言葉を記して、終わりとします。
世阿弥の人生と言葉のなかには、不安を乗り越えて、より充実した人生に向かっていくヒントがたくさん詰まっています。…(世阿弥の)メンタルの強さは、「頭の整理力」に支えられていたと私は思っています。
ネガティブな状況に対して、思考停止することなく、「ならば何ができるのか」と考えることで、自分を一段成熟させていく。だから、新しいものをうみだしていくことができたのです。 (齋藤 孝)
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