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いじめが原因で傷つき、学校に通うことができなくなった少女が、移住先の長野で出会う人々との触れ合いを通して、閉ざした心を開放していく様子を描いた本作品は、来年度入試で出題されることが高い傑作です。主人公がゆっくりと心を解き放ち、成長していく過程を読み取ってください。
著者・村山由佳氏の作品は、『天翔る(あまかける)』が駒場東邦の2014年度入試で、『約束』が今年度の攻玉社、2020年度の法政第二などで出題されており、本作品も来年度入試で注目を集めること必至です。
物語のテーマは心の成長ですが、特に主人公が「心の傷と向かい合うこと」を通して成長する様子の読み取りがポイントとなります。
以下に主な登場人物と簡単なあらすじをご紹介します。
《主な登場人物》
島谷雪乃(しまたにゆきの・小学5,6年生の女子)
竹原大輝(たけはらだいき・雪乃が長野で出会う同級生)
島谷航介(しまたにこうすけ・雪乃の父)
島谷英理子(しまたにえりこ・雪乃の母)
島谷茂三(しまたにしげぞう・雪乃の曽祖父)
島谷ヨシ江(しまたによしえ・雪乃の曾祖母)
山崎正治(やまざきまさはる・雪乃たちが曽祖父母と住む地域の自治会の役員)
《あらすじ》
東京の小学校でいじめが原因で不登校になった雪乃は、父と共に、父の祖父母が住む長野で暮らし始めます。東京から離れ、父の幼馴染の息子である同級生の大輝やその友人、曽祖父母、地元の人々との交流を重ねることで、雪乃の深く傷ついた心が癒えてゆく成長物語です。
《P.319~331 主人公・雪乃が大輝に自分が抱える心の痛みを打ち明ける場面》
長野の生活を通して少しずつ閉ざした心を溶かしていく雪乃が、物語の終盤で大輝との会話を通して、東京の学校で受けた心の傷に向かい合い、大輝の言葉から心を解放させるきっかけをつかむ場面です。
この場面から、雪乃の心の痛みはどのように説明されるものなのか、大輝の言葉が雪乃の心にどのように響いているのかを読み取りましょう。
「楽しい」と「不安」という対照的な心情がなぜ雪乃にとっては同じものになってしまっているのか、なぜそのような心情を抱くようになったのかを把握することが必要になります。
ここでは、問題の箇所と同じ内容を言い換えた表現を解答のヒントとしましょう。特に大輝が雪乃にぶつけるストレートな表現が、解答の内容を的確に表していますので、そこを見逃さないことが大切です。
〇同じ内容で表現を言い換えた箇所
① P.326 5行目
「雪っぺが言ってるのはさ、俺らが雪っぺんちに遊びに行かなくなんのが怖いってことなわけ?」
自分の胸の内を話した雪乃の言葉を受けて、大輝が返した言葉です。
雪乃がこの後に、自分の心情の説明として「…違って、ないけど。」と答えていることからも、大輝の言葉が、雪乃の心情を的確に表していることがわかります。
人物の心情は、必ずしも本人が語るのではなく、このように他者の言葉を通してわかりやすく説明されることがあります。問題に該当する人物と関係の深い人物の言葉には注意するようにしましょう。
② P.327 15行目
「一緒にいられる時間を楽しいって思っている自分に、いちいちもう一人のあたしがお説教するんだよ。<明日もあの子たちが遊びに来るなんてどうしてわかるの?>」
この後に雪乃は、東京の小学校での体験を語ります。いじめられていた友人をかばったために、急にいじめの標的が自分へと変わり、普通だった毎日が一変、楽しいはずの明日が急に訪れなくなってしまったことが明かされるのです。
こうした体験を経て雪乃は、学校での人間関係が自分の気づかないうちに急変し、友人関係などもろくも崩れてしまうことを思い知ってしまうのです。
この2つの内容を踏まえて、解答をつくってみましょう。記述の前半で雪乃が不安を抱く原因について、後半で不安の内容についての説明を記す文章構成になります。
東京の学校での経験で、周りの人々との関係は気づかないうちに急に変わり、友人関係も簡単に崩れてしまうと思うようになったことで、大輝の友人達と過ごす楽しい時間も続かないのではないかと考えてしまっている。
以下の3か所の雪乃の気持ちに共通する説明として最もふさわしいものを、記号をアからエの中からひとつ選びなさい。
P.329 13行目 びっくりして、雪乃は大輝を見た。
P.330 5行目 気を呑まれた雪乃は、思わずうなずいた。
P.331 7行目 雪乃は、なんだかぼうっとなって大輝を見やった。
ア.相手の心情に気をつかわずに自分の意見をぶつけてくる大輝の態度が許すことができず、その言葉を受け止められないでいる。
イ.自分のことではないのに、人のために本気になってこれまで見たこともないような怒りを表す大輝の言葉に驚いている。
ウ.東京の学校で孤立していた経験があるだけに、乱暴な口調だが自分に親身になってくれる大輝の言葉に喜びを感じている。
エ.大輝と自分の考えの違いを感じ、仲良くなりかけた大輝との関係も壊れてしまうのではないかと不安を感じ始めている。
まず、アの「大輝を許すことができない」とエの「不安を感じ始めている」が解答にふさわしくないので、この2つはすぐに消去しましょう。
残りの2つを絞り込む際に、問題の3つ目にある「ぼうっとなって」という表現、その後に書かれている「もしかして大ちゃんは、あたしのために怒ってくれているんだろうか」から、雪乃が喜びの感情を抱いている、と考えて、エを選んでしまわないように注意が必要です。
東京の学校で人間関係に強い不信感と不安を抱いている雪乃からすれば、大輝の言動は嬉しいもので、実際にこの後の物語の展開では、大輝の言葉に力をもらい、それが雪乃の固く閉ざされた心が溶けていくきっかけになるので、雪乃にとって大輝の言葉は喜びにつながるものではあるのですが、この3か所の段階では、まだ雪乃が喜びを自覚している表現を見つけることができません。
よって答えはイとなります。イの選択肢があまりに当たり前と考えて消去しないように注意してください。問題の解答は、その段階で文章中に説明されている内容から答えなければならず、時間的に先に起こると推測される内容を解答の要素にしてはいけません。
イ
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