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四人の中学生が思わぬかたちで出会い、バンドを組み、それぞれに悩みや夢を抱えながら友情を深めて行く、といった、まさに中学受験の王道、最頻出テーマ「友人関係」を真正面から描き切った傑作です。
著者の眞島めいり氏は本作品が2作目で、デビュー作の『みつきの雪』(第50回児童文芸新人賞を受賞)は、今年度の学習院中等科で出題されました。
小学生のお子様にとって読みやすい表現で、人物たちの細やかな心情の変化が丁寧なタッチでつづられた本作品は、来年度入試で幅広い偏差値層の、多くの学校で出題される可能性が高いです。
≪主な登場人物≫
霜村典(しもむらつかさ・動画サイトで音楽を聴くことを趣味にしている。)
瀬尾幹(せのおみき・美声の持ち主でありながら、その声をからかわれるため目立つことを極端に避けている。)
鯨井夏野(くじらいかの・幹と同じピアノ教室に通っていたことがある。勝気な性格。)
寺佐々矢(てらささや・見た目は運動部系だが部には属さず、ギターを趣味としている。明るく社交的な性格。)
≪あらすじ≫
霜村典は中学に入学して最初の夏休みに、図書委員の仕事で図書室に通ううちに、同じ図書委員に選ばれた同学年の幹、夏野、佐々矢と出会います。佐々矢がアコースティックギターを趣味としていたことがきっかけとなり、四人でバンドを組み、作った曲を夏休みの自由課題として提出することになります。典の作詞した曲を、それぞれのパートで演奏することで曲は完成したのですが、目立つことを極端に避ける幹が、同級生にからかわれたことでバンドから抜けると言い出します。
本作品の中学受験的テーマは、「友人関係」です。たまたま委員が同じというきっかけで出会った四人が、同じ目的に進むことで次第に心を通わせ、互いが欠かせない存在になっていくという中学受験でも定番の友人関係の変化・深化を的確につかむことがポイントになります。
幹のバンド脱退の意志を聞き、感情を高ぶらせる夏野に対し、佐々矢と典がそれぞれの思いを打ち明ける場面です。ここでは特に変化の振れ幅が大きい夏野の感情について、様々な表現から変化の様子を正確に読み取ることが重要になります。
抜き出し問題の答えを探すためには、ただ闇雲に文章を見渡すのではなく、解答のポイントを見定めて、それを元に場所を絞り込んで行きましょう。抜き出し問題は、森の中に隠された宝物を探すような作業です。何の手がかりもなしに宝物を探そうとしても、ただ道に迷うだけで、時間ばかりが過ぎて行きます。文章中から確かなヒントを得ることは、宝物の場所を示す貴重なコンパスを得ることと同じです。まずは手がかりを見つけて、宝物を探す道のりを定めて行きましょう。
まず問題に「根っこでは」とあります。ここから、佐々矢が示す行動や言葉が、表面的には夏野や典の感情とは異なっていると読み取れます。
この場面で佐々矢が表面的に示している内容は、以下の部分に表されています。
これらの言葉に示されているのは、「幹のことを放っておくべき」という内容です。それに対して、「根っこでは」とありますから、佐々矢が言葉とは逆の思いを抱いていると考えられます。
そして、問題の中でもうひとつの重要な言葉、冒頭の「だとしたら」にも注目しましょう。もちろんこの言葉は、前の内容を受けてのものです。そこで直前の部分を見てみると、以下の2つの文から、佐々矢の根っこにある感情が読み取れます。
ここから、佐々矢が言葉とは裏腹に、幹を放っておくことへの歯がゆさを感じていると、典が考えているとわかります。
以上から、佐々矢が根っこで抱いている感情が、幹を放っておきたくないというものであることが読み取れます。
これで内容は固まりましたので、あとは、それが表された場所を探すことになりますが、佐々矢は思いとは裏腹な内容を言葉にしていますので、その言葉から正解を探すのは難しくなります。そこで、佐々矢と対峙している夏野の言葉に目をつけてみましょう。というのも、夏野は自分の思いをはっきりと言葉にする性格であることが、文章から読み取れます。そんな夏野の言葉には感情が的確に表されている可能性が高いと考えられるのです。
そこで佐々矢と言い合いになった場面で、以下の夏野の言葉を見つけることができます。
この後半にある言葉こそ、先の佐々矢が抱いている、幹を放っておかないことと同じ感情になります。答えは、この後半の一文の最初と最後の5文字を選ぶことになります。
この問題で解答を探すにあたって、後半に進めた、人物の性格をヒントにするという方法はいつでも使えるものではありません。特に、人物がつかみどころのない性格の持ち主であると、言葉に真の思いが表れているとは限らなくなります。今回の夏野は、思いをストレートに表すことが文章を読んでいてはっきりと伝わってきますので、その言葉をヒントとしやすくなります。人物の言葉や表情から、その性格を把握する意識を持つことは、物語文読解の力を大きくアップさせるための大事なステップになります。
黙って見て~わらない。
P.136の6行目に、「窓を抜けてくるオレンジ色の光で輪郭がぼやけて、表情がかげで見えない。」とありますが、この表現について説明したものとして、最も適切なものを次の中から選び、記号で答えなさい。
ア.夏野の表情をあえて見せないことで、夏野の怒りを受け止められないでいる典の弱気な心が表されている。
イ.夏野の輪郭をあえて見えづらくし、表情をあえて見せないことで、夏野が無力感を抱いていることを強調している。
ウ.夏野の顔にかかる夕日のオレンジを見せることで、典たちの関係に明るい未来が待っていることが示されている。
エ.夏野の表情にかかる影を強調することで、何もできないでいる典に夏野が絶望している様子が表されている。
表現がもたらす効果を答える問題を解くには、いかにその情景をイメージできるかがポイントになりますが、大人と比べて小学生のお子様方は、例えばドラマや映画としった映像を見る体験が少ないこともあり、視覚的なイメージをつかむのを難しく感じることが多いです。
そうした問題にあたった際は、仮にイメージができなくても、その場面での人物の心情を正確につかむことができれば、正解に行き着くことができるのです。
ここでは夏野の心情をつかむために、その表情や言葉を、時間をさかのぼって確かめてみましょう。
まず、幹がからかわれたことを知った直後の表情が以下になります。
ここには明らかに夏野の「怒り」が見て取れます。
次に、幹の気持ちについて自分の考えを話す佐々矢の言葉を受けた、以下の部分があります。
佐々矢の言いたいことが理解できないでいる夏野の「いら立ち」が際立っています。
その後、≪予想問題1≫でも取り上げた、幹を放っておいた方がよい、という佐々矢の言葉を受けた後の夏野の様子が以下のように表されています。
細かな動きでわかりづらいですが、これは佐々矢の言葉が夏野に響いている、否定できないところを突かれた反応と考えられます。
そして問題該当部の前後に以下のような表現があります。
心情変化の流れを見ても、夏野が勝気な性格であることがわかります。そんな夏野の「ことばが落ちた」「あいまいではっきりしなかった」「途方に暮れている」といった様子からは、佐々矢の言葉を聞いて明らかに落胆し、何もできないことが受け入れられないでいることが読み取れます。
そこで選択肢を見ると、この夏野の様子を最も的確に表しているのは、イの「無力感」とわかります。アについては夏野が怒りを表していない点で、ウは明るい未来がいずれはあるとしても、この時点では文章中に一切書かれていない点で、エは夏野の絶望は典ではなく自分に向けられたものである点で、それぞれ不適切になります。よって正解は、イです。
この問題では、選択肢の前半にある表現についての記述ではなく、後半にある人物の心情の説明のみを手掛かりに正解に行き着くことができました。必ずしも表現がもたらす効果を視覚的にイメージできなくても、人物の心情の動きを確実に追うことができれば、正解できる問題が中学受験の物語文で出されることがあります。
イメージを喚起する力はあるに越したことはありませんが、それが苦手だからといって解くことを諦めるのではなく、人物の心情という物語文読解の骨子にあたる部分さえ把握できれば十分に解くことができる、と自信を持って問題に臨むようにしましょう。
イ
この問題のように、「気持ちを答えなさい。」という、いわばザックリとした聞き方をしてくるタイプの記述問題にあたると、どう答えてよいのかわからなくなってしまうというケースが多くあります。答えようとする抽象的な内容と指定された字数や解答欄の大きさが合わず、結局どのように答えをまとめればよいのか迷ってしまい、時間がなくなってしまう、というパターンに陥ってしまうことが大きな要因と考えられます。
そのパターンから抜け出すポイントは、言葉の肉付けを、早く正確に行うことにあります。まずは答えの核となる部分を定めたうえで、それを説明する内容を見つけてまとめて行く、そうした過程を進めるうえで、自分に対して、何が?なぜ?といった問いかけをすると、思考を整理しやすくなります。
この問題であれば、答えとなる気持ちが、「さびしい、悲しい」という感情であることまではすぐに答えられるでしょう。ここからの言葉の肉付けをする過程が、正解に至るポイントになります。
まず、何がさびしく、悲しいのか?ここで「図書委員を一緒にできないこと」としてしまうと、説明不十分になります。以下の場所に、何が?の答えが表されています。
典にとっては、三人と一緒にいる場所、一緒に過ごす時間がなくなってしまうことが、さびしく悲しい、と説明できます。
ここでさらに、なぜそれがさびしく、悲しいのか?と自分に問いかけてみましょう。その答えのヒントになるのが、以下の部分です。
予想しない形だからこそ、出会い、心が通じ合えたことがより一層嬉しいものである、という点は、大人である私たちであれば経験上すぐにわかることですが、小学生のお子様方にはイメージが容易ではありません。それでも、「特別だと感じている。」という言葉を見逃さなければ、この部分をヒントとして使えると考えられます。
以上から、あらためて典の気持ちの流れを整理すると、次のようになります。
あとは、「予想しない形で知り合う」を「たまたま委員になった」(P.137の8行目)とすると、より丁寧な説明になります。
たまたま同じ図書委員になり、予想しない方法で仲良くなった、自分にとって特別な存在である三人と一緒に過ごす場所と時間をなくしてしまうことが、さびしく悲しい。(77字)
性格も得意なことも異なる登場人物たちが、限られた時間を一緒に過ごす中で、互いにかけがえのない存在になって行く、といった中学受験の物語文で頻出の友人関係の変化を描いた本作品は、テーマを理解するための貴重な教材となります。それぞれの人物が抱える悩みや夢が、素直な表現で描かれ、互いの思いをぶつけ合う場面では、細やかに変化する感情の動きが丁寧につづられています。6年生のお子様方にとっては通読する時間はないかと思いますので、今回ご紹介した予想問題を通して、入試頻出の友人関係を読み取る練習としてください。
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