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転塾についてご相談を頂くことが多くあります。その際に親御さんが最も心配されていることが「算数のカリキュラムに穴が開かないか」ということです。
そこで今回は、SAPIX(サピックス)、早稲アカ四谷大塚、日能研について、算数の最重要単元である「比と割合」を習うタイミングを中心にカリキュラムを比較して、転塾のベストタイミング、バッドタイミングについて考察したいと思います。
今回の内容は以下の3点です。
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1.SAPIX(サピックス)、早稲アカ四谷大塚、日能研 カリキュラムの特徴
2.転塾のベストタイミングとバッドタイミング
・SAPIX→早稲アカ四谷大塚、SAPIX→日能研の場合
・早稲アカ四谷大塚→SAPIX、早稲アカ四谷大塚→日能研の場合
・日能研→SAPIX、日能研→早稲アカ四谷大塚の場合
3.最後に
・よりよい転塾とするために。
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SAPIX・早稲アカ四谷大塚・日能研の算数カリキュラム比較図(筆者作成)
SAPIX算数カリキュラムの最大の特徴は「連続性」を重視する点です。例えば4年2学期の「円とおうぎ形」は2回続けての授業で、基本から応用問題まで一気に学習します。また、同じく4年2学期に「深さの変化」を学習した直後の次の回で「グラフの読み取り方」を学習します。別の単元ではありますが、実際の入試問題では深さの変化の問題はグラフを使うことがほとんどで、関係性の強い単元を連続して学習することになります。
特にその連続性が顕著になるのが、5年の1学期(6月)に「割合」を学習した後のカリキュラムです。割合の初回で基本を習った後は、総合回をはさんで、相当算、売買損益、食塩水の濃度と、割合を使う単元が次々と登場してきます。割合を基本から学び、そこから一気にステージアップして文章題を解く、というカリキュラムの構成はとても理にかなっているのですが、生徒さんの側からすると、毎回の復習が不十分だと、気がついた時には授業の内容に全くついて行けなくなる、という危険性があります。立て続けに進むカリキュラムに対応するために自宅学習で毎回の授業の復習を万全にしておくことが求められるのです。
さらに5年の夏期講習で「比」を学習してから後も、「比と割合」を利用する文章題や図形の問題がたたみかけるように連続します。受験算数の最重要単元である「比と割合」を演習してからのカリキュラムの連続性こそが、SAPIXらしさと言えます。
『予習シリーズ』カリキュラム最大の特徴は、「割合」を4年2学期という早めの段階で学習する点にあります。SAPIXでは「割合」を5年の1学期に学習しますので、割合に関してはSAPIXより半年以上も速くなります。この時期に習う割合はあくまで基本にとどまり、5年のカリキュラムが始まってすぐ、春期講習前に割合の復習、そこから相当算、倍数算といった文章題の学習へと進みます。
カリキュラムの進度が速いのはSAPIX、と思われることが多いですが、『予習シリーズ』も改訂を重ねることで、進度はSAPIXと大きく変わらなくなっています。特に2年前の改訂で「比」の学習をSAPIXと同じように5年の夏期講習の後半で演習するようになりました。違いは『予習シリーズ』では5年の夏期講習の前半をそれまで学習した内容の復習にあてるため、「比」のスタートがSAPIXより若干遅くなることにあります。また、扱う問題が上位生対象をメインとしているSAPIXに比べて、『予習シリーズ』は対象とする生徒の成績の幅が広くなっています。
日能研カリキュラムの最大の特徴は、基本分野の学習に多くの時間をかける点にあります。特に顕著なのが計算学習にかける回の多さです。4年2学期の最初の4回をすべて小数計算に、また分数計算も5年春期講習前に3回をあてています。
基本を重視する傾向は5年夏期講習にも見られます。講習のほとんどが「数の性質」「平面図形」「割合」「文章題」の復習にあてられます。夏期講習中に「比」の学習をスタートさせるSAPIX、早稲アカ四谷大塚と大きな違いがあります。
そして、重視する単元にも特徴が見られます。SAPIX、早稲アカ四谷大塚では独立した単元としては学習しない「集合とベン図」を4年2学期の冬期講習前に2回にわたって学習します。
基本分野を重視し、単元によっては他塾以上の時間をかけることもあってか、日能研で「比」の学習がスタートするのは、5年2学期の中盤以降と、少し遅めになります。比の学習がスタートしてからは、一気に相似を含めた「図形と比」の問題まで学習します。
そして、日能研カリキュラムのもうひとつの特徴として5年2学期に学習する単元が非常に多いことがあります。比を学習した直後に速さの復習、そしてSAPIX、『予習シリーズ』では5年1学期に学習する「旅人算」を基本から応用まで一気に進めます。さらに「通過算・時計算」を合わせて1回で、「図形上の点の移動」も基本から応用まで1回で学習します。基本分野に時間を割いた分、この5年2学期のカリキュラムの密度の濃さは、他塾にはないものです。
また、もう1点、本格的な学習をする前段階に早い時期に「さわり」だけ触れる回がある点も特徴的です。「割合」の本格的な学習はSAPIXと同じく5年1学期ですが、「百分率」のみ小数計算を終えた4年生の春期講習明けすぐに学習します。割合の考え方までは入らず、あくまで計算演習の一環として学習します。5年1学期に割合を学習する時にも、もちろん百分率を使った問題を解きますので、その前触れとしてかなり早い時期に百分率のみが出てくるのです。また、「速さの基本」を4年2学期に学習するタイミングも、他塾よりやや早くなります。ただ、次に速さを演習するのが約1年後と時間が空きますので、5年2学期に「旅人算」を学習する前に「速さと単位」として速さの基本の復習が組み込まれています。
単元の分布、バラつきに他塾にない特徴があるのが日能研カリキュラムと言えます。
ここからは、他塾に移る場合の、おすすめのタイミング(ベストタイミング)と、おすすめできないタイミング(バッドタイミング)について解説します。
・ベストタイミング ⇒「5年の夏休み前」
『予習シリーズ』では上記のように、「割合」を4年2学期にSAPIXより早く学習します。そして5年の春期講習前には割合の文章題である「食塩水の濃度」、春期講習明けに「売買損益」(どちらもSAPIXでは5年夏期講習で学習)を学習します。タイミングとしては、SAPIXで売買損益、食塩水の濃度を学習し終える5年の夏休み前がベストでしょう。早めに転塾するとすれば、『予習シリーズ』で割合を学習する前の4年夏期講習明け、という選択肢もあります。
・バッドタイミング ⇒「4年2学期終わり~5年1学期の半ば」
逆に転塾のタイミングとしておすすめできないのは、SAPIXで割合を学習する前で、『予習シリーズ』では学習済みとなってしまう期間、4年の2学期終わりから5年1学期の半ばとなります。割合の基本だけであれば、4年の冬休みに『予習シリーズ』を使って自宅学習で追いつくこともできるかもしれませんが、食塩水の濃度、売買損益を自宅学習のみで追いつくのは難しいでしょう。
・ベストタイミング ⇒「5年2学期が始まるタイミング」
日能研の場合は、「割合」の学習タイミングはSAPIXとほぼ同じで、他の単元でもSAPIXの方が遅れているものはありません。そのうえではどのタイミングでも問題はないですが、SAPIXの夏期講習で比をしっかり学習した後の、5年2学期が始まるタイミングであれば、日能研の独特のカリキュラムにも慣れながら、その後の学習をよりスムーズに進められるでしょう。
・バッドタイミング ⇒「5年の2学期の途中」
どのタイミングでも問題ないとしても、日能研のカリキュラムが急速に密になる5年の2学期の途中での転塾はおすすめできません。カリキュラムの違いに戸惑うだけでなく、最重要単元の「比」の学習に支障をきたす可能性が出てしまいます。
・ベストタイミング ⇒「5年の春期講習前」
カリキュラムの進み方としては現在の『予習シリーズ』はSAPIXと大きな差はなくなっています。それでも上位生向けの問題を多く扱い、自宅学習の組み立て方が難しいSAPIXへの転塾は少しでも早い方がよいでしょう。特にテキストの違いには注意が必要です。SAPIXのテキストは『予習シリーズ』のような冊子型ではなく、毎回配布されるものですので、すでに終わった単元のテキストの入手は極めて困難です。できるだけ重要な単元の復習の必要がないようにするためにも、「割合」の基本をまだSAPIXで学習する前で、「食塩水の濃度」を『予習シリーズ』で学習し終えた5年の春期講習前の転塾がおすすめです。
・バッドタイミング ⇒「5年の夏期講習明け以降」
SAPIXのカリキュラムの中でも最重要なのが5年の夏期講習です。比を演習するだけでなく、速さ・図形の重要単元を集中して学習します。この夏期講習のスタートからSAPIXカリキュラムが急速にスピードアップします。『予習シリーズ』でも夏期講習中に比を学習しますが、先に触れました通り、SAPIXカリキュラムは連続性がありますので、それが本格化する、5年の夏期講習明け以降の転塾はおすすめできません。
・グッドタイミング ⇒「5年2学期が始まるタイミング」
基本的にはSAPIX→日能研と同じ考え方になりますので、5年2学期が始まるタイミングがベストですが、算数が苦手な場合は、日能研が復習中心のカリキュラムを組む5年の夏期講習前に転塾して、日能研で苦手分野の克服を進める、という選択肢もあります。
・バッドタイミング ⇒「5年の2学期の途中」
SAPIXへの転塾のように、扱う問題の難度の差を意識する必要はありませんので、SAPIX→日能研と同じく、日能研のカリキュラムが急速に密になる5年の2学期の途中での転塾は避けた方がよいでしょう。
・ベストタイミング ⇒「4年冬期講習前まで」
扱う問題の難しさ、自宅学習で取り組む学習量に大きな違いがありますので、少しでも早い時期での転塾をおすすめします。日能研で4年2学期に「速さの基本」を学習した後の4年冬期講習前までには転塾する方がよいでしょう。
・バッドタイミング ⇒「4年冬期講習以降」
上記のグッドタイミングの逆になりますが、4年冬期講習以降の転塾はおすすめできません。テキストのかたち(日能研も『予習シリーズ』と同じく冊子型です)ひとつとっても大きな違いがあります。SAPIXへの転塾は早めの判断をおすすめします。
・ベストタイミング ⇒「4年夏期講習明け」
テキストのかたちや扱う問題の難度からすると、SAPIXまでの大きな差はありませんが、カリキュラムには大きな違いがあります。特に「割合」について、日能研では5年1学期に割合の基本、夏期講習前に「売買損益」と進み、「食塩水の濃度」の学習は5年2学期になります。日能研で割合の学習を終えるタイミングを待っていては遅くなってしまいますので、早ければ『予習シリーズ』で割合を学習する前の4年夏期講習明け、「割合」の範囲を自分で『予習シリーズ』を使って学習できるのであれば、4年の冬期講習明けまでに転塾するという選択肢もあります。
・バッドタイミング ⇒「5年の1学期が開始した後」
注意すべきは、『予習シリーズ』のカリキュラムはSAPIXほど速くない、との思い込みです。何度か触れてきました通り、SAPIXと『予習シリーズ』のカリキュラムに大きな差はありません。SAPIXへの転塾と同じように少しでも早い方がよいです。ただ、テキストのかたちなどはSAPIXほどの違いがないことを考えると、SAPIXほど急いで動く必要はないでしょう。それでも、『予習シリーズ』で「旅人算」を学習する5年1学期の前までには転塾をしておきたいので、5年の1学期が開始した後の転塾はおすすめできません。
「比と割合」を中心に各塾の算数カリキュラムについて考察してきましたが、勉強以外にも友だちとの関係や塾の先生との相性など、様々な要素が転塾の理由になります。そうしたやむを得ない事情で転塾をする際には、お子様がどこまで学習していて、まだ何を習っていないのかについて、転塾先の先生に相談されるとよいでしょう。塾の先生方は他塾のカリキュラムについて詳しくご存じないケースがほとんどです。これまで通っていた塾のカリキュラムを提示して具体的なお話をすれば、個別に補習などの対応をしてくれる教室もあるかもしれません。
また、今回ご紹介したバッドタイミングで転塾をすることになった場合には、塾と相談のうえ、未習の単元についてテキストを購入するなどして、追いつけるように自宅学習に力を入れるとよいでしょう。
カリキュラムの違いがあるため、転塾のタイミングにはおすすめできる時期とそうでない時期がどうしても生じてしまいます。それでも何より優先すべきはお子様がよりよい環境で勉強を進めることです。タイミングが合わなかったとしても、そこからの対応で、結果としてよい転塾とすることは十分に可能ですので、お子様にとって現在の塾の環境が最適かどうか、ご検討されてはいかがでしょうか。
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