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読書する習慣が中学受験において大きなアドバンテージになることは言うまでもありません。なるべく低い学年のうちから読書習慣がつけばそのアドバンテージはさらに大きくなります。本好きになるために効果的な方法は“本にはまる”経験をすることです。それがシリーズものや長編であれば、読了した際の達成感が自信となり、壮大な物語が終わってしまった寂しさが、すぐに次の本を読みたくさせますのでなお良いでしょう。そこで今回は、新4年生・新5年生向けに本の世界に一瞬で没入してしまうような内容の本を5冊ご紹介します。ぜひこの冬休みに“本にはまって”もらえれば幸いです。
解説の中での【文章の難しさ】は★が多いほど文章が難しいことを表します。★4つ以上は新5年生にお薦めです。
amazon『願いがかなうふしぎな日記』本田有明(PHP研究所)
★★☆☆☆
亡くなったおばあちゃんが残した「願いがかなう日記」に自分の願いを書き込んで行く小学5年生・光平の姿を描いた物語です。初めは日記に願いを書いただけでそれがかなうことに半信半疑であった光平が、次第にその日記がもたらす力に気づき、やがて日記の持つ真の意味を理解するまでの過程が、新4年生のお子様にも読みやすい文体で、ゆっくりとしたペースでつづられています。読み初めてしばらくは、淡々と物語が進んで行きますが、光平が日記の意味について気づき始めてからは、物語の面白さ、深さが一気に増して行きます。光平の言葉には大人が読んでも感じ入るものが多く、夢をかなえるために何が必要かを読み手に感じ取らせるメッセージが、押しつけがましさのない語り口で表されて行きます。
本作品には受験生の多くにとって難敵である中学受験的テーマ「恋心」が含まれています。幼なじみの石原さんの転校を知った際にとった光平の言動が、本心とは相反するものである点を読み取ることが、このテーマを攻略するきっかけになりますが、今回は読解のことは気にせずに読んでください。
本作品の続編に、光平の友人の竜也を主人公とした『望みがかなう魔法の日記』、光平がさらに高い目標に挑んで行く姿を描いた『願いがかなうふしぎな日記 光平の新たな挑戦』があります。特にシリーズ2巻目の『望みがかなう魔法の日記』は、登場人物が重なるだけでなく、『願いがかなうふしぎな日記』のある場面から物語が始まる構成になっており、シリーズものならではの楽しみが味わえます。
表紙のイラストや、文字の大きさは、読書が苦手なお子様にとっても取り組みやすさを感じられるもので、物語自体も複雑な部分がありませんので、スムーズに読み進められるでしょう。完読された際には、達成感だけでなく、夢を持ちそれをかなえるために奮闘することの重要性も感じ取られる点で、中学受験に臨む新4年生の皆さんにぜひ読んで頂きたい作品です。
★★☆☆☆
骨董品を扱うお店「銀杏堂」に引き寄せられた小学生のレンちゃんが店主の高田さんという女性から聞かされる、不思議な品々にまつわる冒険エピソードからなる連作短編集です。続編に『銀杏堂 スフィンクスのつめ』があります。1編が10ページ前後と短く、字も大きめですので、読書習慣がないお子様でもすいすいと読み進められるでしょう。
本作品の最大の魅力は、その世界観にあります。まず出てくる骨董品が、巨大な錦鯉のうろこや、サバンナの逃げ水、溶岩コーヒーなど、その名を聞くだけで読みたい気持ちがそそられる、摩訶不思議なものばかり。そうした品々にまつわるエピソードも荒唐無稽で、予想もつかない物語が目まぐるしく展開して行きます。不思議な冒険物語ですが、銀杏堂の店主、高田さんの語り口は淡々としていても読み手の心に届きやすい柔らかさに満ちていて、読み疲れすることがありません。
そして特に注目して頂きたいのが、著者の橘春香氏自身が描いた挿絵の数々です。この挿絵がとにかく美しい。カラーで描かれたものには、それだけでひとつの美術品と言えるほどの圧倒的な美しさがあります。この挿絵があることで、ファンタジー要素が強い物語にもスムーズに入って行けます。購入される前にぜひ立ち読みでページをめくって挿絵をご覧になってみてください。
おとぎ話のような物語が多い本作品ですが、時に深いメッセージが込められた言葉が出てきます。例えば第3話『四つ葉のクローバー入りエメラルド』の最後に高田さんが語る「ひめられた悲しみもまた、人を美しく見せるものかもしれないね」という言葉などは、悲しみをポジティブにとらえるといった、そのまま中学受験の入試問題で問われそうな考え方を示してくれます。
不思議で美しい世界観に身をゆだねながら、細やかな言葉の数々に触れられるといった貴重な読書体験が味わえる一冊です。
amazon『十年屋 時の魔法はいかがでしょう?』廣嶋玲子(静山社)
★★★☆☆
『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』の著者・廣嶋玲子氏によるファンタジー物語で、2022年12月時点でシリーズ全6巻が発刊されています。客の大事なものを一年の寿命の代わりに十年間預かってくれるという「十年屋」。その「十年屋」に訪れる客の物語をつづった短編集です。ストーリーが面白い上に、ひとつひとつの短編がコンパクトな分量ですので、読書が苦手なお子様でも読み進めやすい作品です。預けられた品々は十年の間そのままの状態で保管されますが、預けた客の方は長い時間の中で生活環境や心情を変化させて行くという構成の面白さが、各短編に深みを持たせています。
本作品の魅力としてまず挙げられるのが、各短編に出てくる人物たちの心の揺れ動きが丁寧に描かれている点です。「十年屋」に預けられるものは、亡き母親が作ってくれたぬいぐるみや、ほんの出来心で盗んでしまった友達の指輪など、持ち主にとっては悲しみや後悔といった心の傷を表すものです。戸惑いながらも品物を預けに来る人物たちの心情、そして十年の間に彼らの心情が変化して行く過程が、わかりやすく丁寧に描かれているのです。設定こそファンタジーの要素が強いですが、物語の内容は人物たちの心情を深く描き出した人間ドラマになっています。
また、中学受験物語文の重要テーマである「家族関係」や「友人関係」が含まれている点も特徴的です。特に第1話『懐かしの白うさぎ』での主人公リリと継母の関係、第4話『悔やみの指輪』の友人同士の嫉妬心、第5話『残された時計』の主人公ジンと父親、祖父の関係は、入試問題にも出てくるような「家族関係」や「友人関係」の核となる要素が多く含まれています。
物語を楽しみながら、中学受験物語文の重要テーマの基礎を学ぶ機会も得られる作品です。
★★★★☆
タイトルは物語のベースとなる『古事記』にならって『あめとつちのほうていしき』と読みます。まさにシリーズものの醍醐味を満喫できる傑作です。エンターテインメント性に満ちたストーリー展開ですので、漫画やゲームが大好きで本を読むのが苦手なお子様にこそ読んで頂きたい一冊です。全3巻シリーズで、1つの巻では物語が完結せずに次の巻へと話がつながる「続きもの」ですが、第1巻を読み終わる頃には、すぐに第2巻を読みたくなるくらいに、読み手を物語の世界に強く惹き込むパワーがみなぎっています。
抜群の記憶力を持つアレイと数学の天才Qを中心に天ツ神に選ばれた7人(1匹の猿を含みます)のカンナギ(世界を守る者)たちが、この世に災いをもたらす黄泉ツ神との戦いに挑むという冒険ファンタジーなのですが、それぞれに特殊能力を持つカンナギが活躍する姿は、多くのお子様を魅了し続けている漫画『ワンピース』や、不朽の名作漫画『サイボーグ009』を彷彿させます。第1巻の途中までは物語の設定の説明にあてられるため、少し読むのに時間がかかりますが、黄泉ツ神とカンナギたちの戦いが始まってからは、ページをめくる速度が一気に加速して、気がつけば物語の世界観にどっぷりとはまり込んで行きます。カンナギの存在が物語を追う中で一人また一人と明らかになって行く過程や、黄泉ツ神との戦いの行方を追う際に味わうワクワク感は、漫画や映画を見ているような読書体験になります。
カンナギ同士の関係は中学受験物語文のテーマ「友人関係」に通じるものがありますが、本作品についてはテーマ学習というよりも、物語の展開を追ってその世界観を存分に楽しむことを目的とする方がよいでしょう。小学校高学年から中学生を主な対象年齢としていますので、新4年生のお子様には少し難しいかもしれませんが、このシリーズを完読した際の達成感は、これからの読書を楽しむための大事なステップになりますので、ぜひともチャレンジして頂きたいです。
★★★★☆
2021年度の第62回講談社児童文学新人賞で佳作を受賞した作品です。時代は19世紀、スコットランドの街エディンバラを舞台に、旧市街に住む少女カトリが新市街の少女リズと協力して街に蔓延する謎の病気「眠り病」の謎を解き、街を救う冒険に挑む物語です。シリーズものではありませんが、本作品1冊を完読した際の達成感はシリーズものに劣らないものです。
本作品の魅力は何といってもストーリー展開の圧倒的な面白さです。眠り病の謎が少しずつ明かされて行く過程には、まるで『ハリーポッター』シリーズの映画を見ているような高揚感があり、探偵小説を読んでいるかのような印象が強く与えられます。特にタイムリミットが迫ったクライマックスは、時間を忘れて読むことに没頭してしまうくらいに読み手を強く惹きつけます。
本作品のもう一つの魅力は、登場人物たちの個性を際立たせる表現や、エディンバラの街並みを描写した表現のリアリティにあります。勇敢に難局に立ち向かって行くカトリの姿は爽快感に満ちていて、気がつくと駆け抜けて行くカトリを応援してしまうような心境になります。情景の描写が細かく美しいため、まるでエディンバラの街中に自分がいるような臨場感も味わえます。物語を読み進めて行くうちに、人物像やその場の情景を鮮明にイメージできるようになるのです。
また、初めは互いに警戒し合っていたカトリとリズがやがて相手を受け入れて、共に冒険に向って行く様子を2人の言葉や表情から読み解くことは、そのまま中学受験物語文の最頻出テーマ「友人関係」の理解につながります。
新4年生以下のお子様には少し難しい言葉もありますが、親御様の助けを受けながらでも読み進めて頂ければ、作品の世界観を十分に楽しむことができます。
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